![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/d4/10ff85c901225976da118cdf44403335.jpg)
鏡が池
昨日と同様 地名・人名と欠かせないモチーフに絞って10章以後を進める
10章
・・・観海寺の裏道の杉の間から谷へ降りて鏡が池へ行く
池の淵は熊笹が多く 不規則な形をしている・・・
観海寺の名は漱石の創作 モデルは昭天寺か?(特定は出来ていない模様)
「昭天寺のおよその場所」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/44/60b7a2318a40ed28c413a7c48778c6d8.jpg)
「昭天寺」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/a7/e4df72c07ae231fbcf9d8ca5f9b9729e.jpg)
・・・画家は 絵の道具を置き 池の淵へと降りてゆく
池の端の椿が血を塗った人魂のように ぽたりぽたりと際限なく落ちる
こんな所へ美しい女が浮いているところを描いたらどうだろう・・・
・・・那美さんの顔を借りるとしてもあの表情では駄目だ 苦痛が勝ちすぎる
といって気楽では困る ほかの顔ではどうか・・・
「那美」~前田卓(ツナ)
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・・・やはり那美さんの顔が一番似合う しかし何処か物足らない
嫉妬を加えたら? 憎悪では? 怒り? 恨み?
色々考えた末に 数ある情緒のうちで 憐れと云う字を忘れていた
憐れは神の知らぬ情で しかも神にもっとも近い人間の情である
・・・那美さんの表情にはこの憐れの念が少しもあらわれていない
そこが物足らないのである・・・
・・・馬子の源さんが現れたので 池がいつ頃からあったのか訊く
何代も昔 志保田の嬢様が禅寺の僧を恋し 願いかなわず池に身を投げた
その時 鏡を持って死んだので 鏡が池と呼ぶようになった
以来 志保田の家には代々気違いが出るという
今の嬢様も少し変だという噂 去年亡くなったお袋様も変だった・・・
ミレー「オフィーリア」
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・・・源さんが去り 今日は下絵くらい描こうと 画家は腰を据える
水面から視線を上げてゆき 眼前の風景を視野に収めようとする
その刹那 晩春の彩りの中 夕日を背に岩の上に立つ女の顔を見た
何度か驚かされた顔 と思う間もなく 女は岩の向こうに身を翻した
夕日は樹梢を掠めて幽かに松の幹を染める 熊笹はいよいよ青い
また驚かされた・・・
要約しているつもりが ついつい引用が長くなってしまう
というのは最終13章で 那美さんの絵が(画家の頭の中で)突如完成する
そのキーワードが"憐れ"・・・その伏線がこの10章に仕込まれていた
今ようやく私はそのことに気がついた
というわけで今日は10章だけで終ってしまった
それでは明日またお会いしましょう
[Rosey]