<両軍スタメン>
前年、大半が残留争いを強いられると予想されていたのを見事に覆した鳥栖。
主力選手をほぼ全員引き抜かれた中でも、秩序と信念を貫いての戦いを繰り広げた姿は、予想が裏切られた側にも感動を与えた事でしょう。
しかし今季も厳しい編成は続き。
スクラップ&ビルドの作業は、J1に居続ける限り永遠といった感じでありますが、それがいつも盤石になるとは限らない。
開幕から自慢のビルドアップがままならない試合展開が続き、あれだけ一体感の塊であった前年のチームの姿は影を潜め。
そして深刻な得点力不足に陥り、それは緊急的にJ2・大宮からFW河田を引き抜いて来た編成面にも影響を及ぼすという具合に、チーム固めが巧くいっていない節が伺えます。
幸いにして今季は降格枠は1のみなので、多少のスロースタートを覚悟で、前半戦を棒に振ってでも……という戦いが出来るかどうか。
そんな状況で、京都のホーム(サンガスタジアムbyKYOCERA)へと遠征した今節。
プレッシングの強度においてはリーグでも屈指のチームだけに、ボールポゼッションに不安を抱えたなかで相対したくなかった相手といえるでしょうか。
立ち上がりはその懸念の通りの展開に。
鳥栖は前半1分にロングボールを右サイド奥に蹴り込んだ以外では、敵陣への侵入すらままならない状態を強いられます。
持ち前の球際の強さで、同じくインテンシティ勝負に持ち込む鳥栖の反則を呼び込み、セットプレー攻勢に入る京都。
3分に右コーナーキックから、キッカー松田が意表を突いてグラウンダーで遠目にクロスを入れ、豊川がシュートを放つも枠外に。
しかしここからが本領発揮という京都。
続く鳥栖のゴールキックからのビルドアップを遮断、右サイド深めでボール奪取に成功してショートカウンター(シュートには繋がらず)と、早速相手のやりたい事を潰し。
これで流れを得た京都は、以降自身も最終ラインからのビルドアップを目立たせて攻撃。
鳥栖もプレッシングを掛けて対抗せんとしますが、1トップでかつ運動量に不安がある小野を頂点としてのそれは、相手のパスワークを遮断するには厳しいものがあり。
かくして「攻撃・防御双方が駄目」という流れが出来上がってしまう鳥栖。
唯一の形がGK朴を中心に最終ラインで左右にパスを振ったのち、ロングフィードを裏に送るという疑似カウンター狙いですが、そこからも好機は生む事が出来ず。
反対に京都はやりたい放題という感じであり。
前述のプレッシングに拠るショートカウンターのみならず、サイドからの前進でポケットを突く攻めあり、ターゲットへのロングパスありと多彩な手段で好機を量産していきます。
その中で決定機を迎えたのが9分で、井上ロングパス→山﨑凌ポストプレイから前へ運んでいき、スルーパスを受けた豊川が中央からエリア内を突き。
そしてシュートを放つも原田がブロック、こぼれ球を拾ってさらにシュートするもこれも長沼がブロックと、身体を張って守られます。
鳥栖は16分に豊川のドリブルを後ろから腕でチャージした河原が警告を受ける等、守勢故の被害も膨らんでいき。
この流れに乗っているうちに得点したい京都。
迎えた21分、GK若原のスローからロングパスの連続で組み立て。
右から白井がサイドチェンジ、これを受けた佐藤がアーリークロスを入れると、ファーサイドで収めた豊川が切り返しを経てシュート。
GK朴のセーブを弾いてゴールに吸い込まれ、ダイナミックな空中での運びにより先制点に辿り着きました。
しかし喜びも束の間、待ち受けていた落とし穴。
直後のキックオフから組み立てる鳥栖、最終ラインへ戻したのち山﨑浩が左へロングパス。
これを岩崎が中央方向へ落とすと、京都の心理面の隙を表すように誰もいない所に転がるボール。
そしてそれを突くように右から原田のアーリークロスに持っていくと、ピンポイントでファーサイドに走り込む小野の頭に合ってのヘディングシュート。
左ポスト内側を叩いてゴールに入り同点とした鳥栖、結局京都リードの時間は約1分に終わってしまいました。
その後は空中戦が頻発する中、京都は井上、鳥栖は菊地と競り合いで痛み倒れ込むシーンが続出。
双方テンポが悪くなってきたものの、依然として鳥栖がボールを繋げないという流れは変わらず。
奪われる場所がサイドだから大事故になっていないだけで、中央でそれが起こってしまえば……という意識もあるでしょう、思い切った繋ぎも敢行出来ず。
得点の場面こそ岩崎の落としが誰にも拾われず繋がったものの、そこで得点出来ていなければ……と言いたくなる展開。
ようやく鳥栖が、GK朴からの繋ぎで京都のプレッシングをいなせたのが28分。
しかしこの時も、敵陣に送ったミドルパスをカットされて京都のカウンターを誘発してしまいます。(シュートまではいけず)
その後30分に京都はまたも敵陣でボール奪取してからの好機、一美のミドルシュートがブロックされたのちも継続させ、左サイドからポケット奥をスルーパスで突いて豊川がクロス。
クリアボールをエリア内中央で拾ったのは絞っていた白井で、そのままシュートを放つもGK朴がキャッチ。
京都にやる事なす事全て封じられる、といったここまでの鳥栖。
しかし仮にもビルドアップを成功させたのが好循環を齎す契機となったでしょうか。
上記の京都の好機直後も、GK朴からの繋ぎで京都のプレッシングに挑む姿勢を貫き。
そして左サイドから前進に成功し、岩崎の中央突破からのラストパスを受けた長沼がシュート。(ブロック)
やっと主体的な攻撃の下地が出来上がったという印象で、こうなると結果が出るのも早く。
31分に再び左サイドから前進、小野のスルーパスで奥を突き、受けにいった岩崎がディフェンスに遭うも左CKへ移ります。
鳥栖がこの日初めて(既に京都サイドは3本)となったこのCKから、キッカー河原のクロスが中央に上がり、田代が合わせにいき。
しかし触れられずに流れると、奥に居た一美がクリアしきれず、反対方向つまりゴールへとボールが吸い込まれてしまいます。
またも偶発的な得点というようなオウンゴールですが、呼び込んだのは鳥栖が攻撃の流れを作れたからに他ならず。
これで今季初の複数得点を果たしました。
一方あれだけ攻勢を続けたにも拘わらず、リードされる展開となった京都。
34分にはスローインの判定を巡り豊川が小野とヒートアップを見せる等、そのギャップに苛立ちを隠せないといったシーンも生まれ。
失点場面が運の無さも関与した影響でしょうか。
36分には右サイドから白井がゴールへ向かうクロスを送ると、山﨑凌が跳ぶも触れず、そのままシュートのように枠内を襲うボールをGK朴が何とかセーブ。
相手を見習うように、偶発的な得点を狙いにいった節が見受けられ。
しかし偶発的という事は、1失点目が示すように守る側にとっては心の隙が生まれたという事でもあり。
そして京都はそれを再度見せてしまう事となります。
41分に鳥栖は中盤右サイドからのスローイン、これを原田が長い飛距離を投げ入れると、それだけで一気に裏を取られてしまう事態に。
反応した小野が奥からマイナスのクロス、これをニアサイドでしっかりと収めた本田がシュートを放ち、ゴール右上へと突き刺します。
あれだけ劣勢だったチームが、前半のみで3点を挙げるというギャップ満載の展開となりました。
結局4分あったアディショナルタイムでも、京都はその後さしたる見せ場は無く。
前半を1-3で終え、巻き返すべくハーフタイムで2枚替えを敢行。
福岡・豊川→平戸・木下へと交代し、後半に臨みました。(一美が右ウイングに回り、木下が左WG)
WGという位置にも、一美・豊川そして木下と、ターゲットになれる人材を置く京都。
サイドバックはじめその他の選手がクロスを入れる際には、同サイド側のWGもターゲットとしてエリア内に入り込むのが特徴であり。
その代わりWG自身が仕掛けるのは苦手となり、後半1分にはその一美が右サイド奥へ切り込んでクロスを供給する(ブロック)、狙い通りでは無い場面が早速生まれ。
4分にも逆サイドで、木下が同じく奥を突いてクロスに辿り着き。(エリア内でクリア)
入りから好機を作っていくも、何処と無くぎこちなさを感じさせるのはそんなギャップからだったでしょうか。
そしてその影響が現れた感があり。
6分にロングパスを山﨑凌が落とすも、拾いにいった一美があろう事か田代を足裏で削ってしまい反則に。
カードは避けられないというシーンに主審(池内明彦氏)から目を背け判定を待った一美でしたが、掲げられたそのカードは何と赤色。
これには向き直った一美も驚愕の色を隠せずと、強度満天のチームスタイルが仇となった格好の退場劇となってしまいました。
以降10人での戦いを余儀なくされる京都、ベンチも直ぐに動き山﨑凌→パウリーニョへと交代。
木下を1トップとした4-4-1へシフトと、3人も居たターゲットは一気に1人のみとなってしまい。
これで数的優位となった鳥栖。
あれだけ猛威を振るっていた京都のプレッシングも、鳥栖のビルドアップに対抗する事はままならず。
1トップ+2サイドハーフで規制を掛けにいく京都ですが、当然ながら前半とは打って変わって鳥栖の繋ぎが冴え渡る展開となります。
しかし京都にとって本当の問題は、2点リードされているという事実。
即ち主体的に攻撃しなければいけない状況であり、ターゲットも減った以上はショートパスでのビルドアップの割合を増やさなければ逆襲の糸口は生まれません。
そしてそのショートパスの繋ぎで、パスコースが見出せずに奪われるシーンが続出してしまいます。
14分に中盤で菊地がボール奪取した鳥栖、一旦戻したのち左サイドへ展開し、岩崎がドリブルで広大なスペースを駆け上がる攻撃。
そして一気に左ポケットまで持っていった岩崎、マイナスのクロスを中央ややファー寄りで合わせたのは本来逆サイドの原田。
シュートはゴール上へ惜しくも外れるも、こうした流れで京都ゴールを脅かしながら、時間と攻撃機会を減らしていく鳥栖の立ち回り。
18分にさらにカードを切る京都。
松田→木村へと交代し、空いたボランチには平戸が回り。
攻撃的な選手を中盤センターに置き、前への圧力を掛けようという意思は見せたものの、やはり苦境は変えられず。
20分にパウリーニョのミドルパスをエリア手前で収めた木下、逆向きのままヒールパスをエリア内へ送り。
そこに川崎が走り込んだものの、原田のチャージに遭って受けられず(反則無し)と、差し込んだ一筋の光というような好機もモノになりません。
25分に早くも最後の交代を敢行し、佐藤→荒木。
一方の鳥栖は22分に最初の交代を行い、小野→河田。
こちらは特に流れを変える必要性も無く、運動量の維持に努めるのみという振る舞い。
26分に森谷が足を攣らせるという具合に、その問題が露呈する場面もありましたが、大きな破綻が生まれる事は無く。
28分に中盤でのボール奪取から再び岩崎が持ち運ぶ好機となり、河田がディフェンスに遭うも、エリア内で岩崎が拾い直してシュート。(麻田がブロック)
32分の右CKからは、クロスが流れたのち逆サイドから再度河原がクロス、これを原田がヘディングシュート(ゴールバー直撃)とひとしきり決定機を生み出します。
しかし追加点は生まれる事は無く時間は進み。
35分に森谷・岩崎→福田・堀米へと2枚替え、40分に菊地・本田→樺山・西川へと2枚替えと、メンバーを入れ替えていく鳥栖。
最終的に長沼が左SBに回りましたが、これが京都にとって光明となったでしょうか。
スタミナ面の不安が露わとなりがちな終盤戦で、疲弊した攻撃型の選手をこの位置に置いた隙を突くように、以降白井の突破力に活路を見出します。
44分にその白井のドリブルから右CKを得た京都。
キッカー平戸のクロスはニアの井上の頭を越えると、鳥栖のカットに遭いカウンターに持ち込まれ。
堀米ドリブルからパス→樺山ドリブルからエリア内へスルーパス→西川という運びでゴールを脅かしにかかる鳥栖でしたが、荒木のカバーでシュートは撃てずに終わった西川。
しかしそれでは終わらず、鳥栖が自陣エリア内で原田がカットした際、腕に当たったとしてハンドかどうかのVARチェックが行われます。
OFRへと移行し、原田が突き出した肘に当たった映像が晒された結果、判定が覆りハンドならびに京都のPKに。
一転して得点チャンスを得た京都、既に時間はATへと突入するも、目安は9分なためここで決めればまだ判らない状況。
キッカー木下は上部への強いシュートを選択し、GK朴は反応するも届かずゴールネットを揺らします。
これで1点差に迫った京都、同点とするべく尚も前掛かりな姿勢を強めます。
しかしその分、鳥栖の陣地を回復する立ち回りでやり直しを強いられ。
しかもやり直しどころか、そのボールを繋がれて奥へと運ばれ、エリア内を窺うパスワークで時間を使われてしまうという始末。
焦らずにはいられない京都ですが、(麻田を前線に上げたうえで)GK若原がターゲットにボールを送るぐらいしか手段は既に無く。
ATも終盤、その流れの中で鳥栖が逆に決定機を得ます。
山﨑浩の裏へのロングパスで河田が抜け出し、エリア内右へ持ち込んでシュート。
加入直後の初出場(6節・FC東京戦、1-0)でも、ラストワンプレーで決勝ゴールを挙げたようにこの時間帯でも得点意欲旺盛な河田でしたが、このシュートはゴール左へ外れてしまいモノに出来ず終わります。
結局スコアは動かせなかった京都。
2-3で鳥栖が勝利と、数的優位の中しっかりと勝ちきりました。
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