※前回の長崎の記事はこちら(38節・愛媛戦、5-1)
※前回の仙台の記事はこちら(35節・横浜FC戦、3-0)
※仙台遠征記はこちら(38節・大分戦、2-1)
※両クラブの対戦の記事=1戦目(2節、長崎 1-2 仙台)2戦目(20節、仙台 2-2 長崎)
<長崎スタメン> ※()内は前試合のスタメン
- エジガルが27節(山形戦、2-4)以来のスタメン。
<仙台スタメン>
- ベンチメンバーをマテウス・モラエス→松下へと変更。
あっという間に、今季のリーグ戦も全試合を消化。
残るは昇格枠の残り1つを争う場であるプレーオフのみとなりました。
前年の「オリジナル10」クラブが織りなした血みどろの争いからは、幾ばくか爽やかな成分が増した感があるものの、それでも4クラブとも意地でもJ1の切符を掴みたい立場に変わりは無く。
当然求められるのは結果のみ。
そんな孤独の場である以上、長崎サイドは「5連勝でフィニッシュ」「新ホームスタジアムで無敗」、仙台サイドは「長崎に対し勝ち越し」といったポジティブな要素に縋りたいものであり。
しかしそれを無にしかねないのが「最終節から3週間空いての開催」という、Jリーグ側の事情よる、かつ両クラブに及ぼしかねない要素。
日程調整の側面があるとはいえ、勢いをもって臨みたいサイドに対し無効化される懸念が膨らむ事となりました。
かくして3位と6位の対決。
自動昇格圏にあと勝ち点1まで迫った長崎が、その実績を下にほぼ満員のホーム(PEACE STADIUM Connected by SoftBank、以下ピースタ)での雰囲気を味方に付ける。
即ち「立場的優位故の振る舞い」を演じて勝利に辿り着きたいという思惑は少なからずあったと推測します。
それを塗り替えたいのが仙台で、そのためかキックオフからガツガツと仕掛け。
アバウトなボールをレイオフで繋いだのち、前を向いてゴールへと直進を果たすという姿勢でペースを掴まんとします。
前半2分にはそこから、長崎が攻撃を切ったのちのゲーゲンプレスで中島が再奪取して好機。
左ポケットを取った相良がボールキープからワイドに流れて奥へ切り込み、ヴァウドに倒されるも反則の笛は吹かれずに終了。
すると奪った長崎もギリェルメが右サイドをドリブルに入ってカウンターに突入(中央へ展開し、ジェズス前進→エジガルポストプレイもフィニッシュは撃てず)と、お互い縦に速い攻めの応酬という入りとなりました。
その流れが終わると、長崎は今季の基本である、最終ラインからの地上での繋ぎで隙を伺う体制へ突入。
しかし終盤の連勝の流れと違うのは、ハイプレスとリトリートの使い分けが巧みな仙台が相手という事。
そのため、アンカーの秋野も2トップの限定を嫌って最終ラインに降り、3枚での繋ぎがメインとなりました。
この「普段のサッカー」から若干弄った事が、勝負の分かれ目となった感があり。
最終ラインでひたすらサイドを振りながら繋ぐも、仙台のメリハリの利いた守備の前に、最後はエジガルへ向けて浮き球を送る局面が膨らみ。
8分にはそこから、こぼれ球を左へ展開ののち笠柳がカットインの姿勢からエリア内へ縦パス。
エジガルのポストプレイは掻き出されるも、拾った秋野のミドルシュートがゴール右へ外れという具合に、成果はそこそこながら何処かが違う感が付き纏う攻撃に。
秋野が仙台2トップの前方で受ける事で、仙台サイドも左サイドハーフの相良が加わる、3人でのハイプレスで試合を動かしに掛かり。
これに長崎が素早く右へと展開する事による、サイドバックに対し相手SBが付くという、プレッシング側の分水点(ここで前進を阻めなければウイングがフリーor陣形が大きく崩される)という局面も何度か見られます。
即ち増山とギリェルメの2人で、右サイドで数的優位を作るのが肝といった長崎のビルドアップ。
しかしそれを強く意識したか、ギリェルメはリーグ戦で見られたフリーマン的な動きが抑制された事が、第二の「普段のサッカーとの違い」となった感があり。
おかげで何処と無く堅さが取れず、冴え渡った増山とギリェルメのコンビプレイも見られずと、右サイドから有効打が放たれる事はありませんでした。
時間の経過とともに、仙台はハイプレスを抑制して相良が増山を監視するという、弱点を覆う姿勢へと移り。
それを見た長崎はワイドで相良をピン止めしながら、(2トップの片割れを秋野が引き付けたうえで)ヴァウドが持ち運ぶ場面も作りましたが、残念ながらヴァウドは積極的に敵陣まで仕掛けるという選手では無いため効果的にはなりません。
次第に硬直感が露わになる長崎のビルドアップ、そしてその隙を突かんとする仙台。
24分、最後方からの秋野の縦パスを、菅田が前に出て逆に縦パスを送り返してショートカウンターに持ち込み。
受けた中島が溜めを作って遅攻に切り替わると、パスワークののち中島が右サイド手前からクロスを送り、ニアで受けにいったエロンがディフェンスに遭うもこぼれ球が右ポケットへ。
すかさず反応した真瀬が走り込み、抑えんと前に出たGK若原を抜くループシュートを放ちましたが、右サイドネット外に終わり惜しくも決められません。
この際に、ディフェンスに入ったヴァウドとGK若原が交錯し痛んだ事で、ブレイクが齎され。(ともに無事に起き上がる)
この期間で落ち着きを取り戻したい長崎でしたが、逆に上手くいっていない感が膨らんでしまったか。
直後の26分に最終ラインでパスがズレ、仙台の左深めからのスローインに。
すると相良のロングスローを使用と果敢に仕掛ける仙台、連続となったその2本目からでした。
その跳ね返りを真瀬がミドルシュートにいくも、ミートせずクリアされるとここから二次攻撃の嵐を仕掛ける仙台。
クリアボールに長崎サイドが落下点に入っても、その背後から強引に跳んで落とす事で拾い続ける仙台サイドと、守備側の集中力が試される場面と化し。
そして右から鎌田のクロスがブロックされるも、これをまたも中島が確保、浮かせてからヘッドで落としたボールを相良がペナルティアークからシュート。
これもヴァウドがブロックと防ぐ長崎でしたが、これが腕に当たってしまった事で、ハンドならびにエリア内故にPKを告げる笛が鳴り響きます。
確かに腕に当てたものの閉じていたように見えたヴァウド、そのため猛烈に意義を浴びせるも判定は覆らず。
そしてPKゲットとなった仙台、キッカーは攻撃の中心を担う中島。
この大一番でも冷静さを失わず、かつ大胆にゴール中央へとシュートを放ちネットを揺らします。
一方左に跳んだGK若原、足を延ばしたものの無情にも触れられず。
納得し難い失点となってしまった故に、尚もヴァウドが異議を浴びせた結果警告を貰う(あるいはエリア内へ入ったのが中島の蹴る前だったという意味合いか?)という余分な被害も受ける事となり。
リードを得た仙台は、自信を持って4-4-2ブロックの色を強める守備体勢に。
懸念された左サイド(長崎から見て右サイド)もしっかり守備を固め、かつハーフレーンの(ヴァウドの)持ち運びには鎌田がその前方を埋める姿勢を取って対策し。
結局長崎は逆サイドに活路を見出し、笠柳に仕掛けさせる事ぐらいしか出来なくなり。
36分にはその笠柳がカットインからミドルシュートを放つも、これはやや強引に映るものであえなくGK林にキャッチされ。
それでも、最終ラインでの繋ぎにGK若原も加わり。
それもボックス内のまま若原がパスを出し入れする事で、仙台のハイプレスを誘発しに掛かり。
迎えたアディショナルタイム、その若原がパス交換ののち右ワイドの増山へフィードを通して前進開始。
中央へ渡ったのち、秋野が縦パスを送った先は左ワイドから絞っていた笠柳と、目線を変えて中央から突破が図られ。
そして笠柳→ジェズスフリック→エジガルと経由してエリア内を突き、エジガルのシュートが放たれましたが、ゴール右へ僅かに外れ。
非常に痛い決定機逸で、暗雲を振り払う事に失敗した長崎。
結局0-1のまま前半終了。
ピースタがビハインドとなったのは今季初で、こうなると縋りたい無敗神話も重圧と化するのみになり。
負の要素を振り払うべく、このハーフタイムで動く下平隆宏監督。
安部・笠柳→山田・松澤海へ2枚替えと、リーグ戦でも見られた交代策を早めに敢行する事となりました。
今一つ強引さが目立ったこの日の笠柳。
それに対し同ポジションで投入された松澤海は、積極的に仕掛けるのは変わらずも、サイド奥を取ったうえでの展開の色を強め。
これでポケットを使っての好機も膨らむ、そんな予感を孕ませる入りとなり。
しかしその中で、ビハインドとなったが故の焦りも感じられ。
後半3分にその松澤海がキープの最中真瀬のアタックを受けた事で反則となると、中盤近くの位置にも拘わらず(キッカー秋野が)放り込み。
そしてエリア内ながら遠目の位置でエジガルがヘディングシュートに持っていくも、威力に欠けてGK林がキャッチ。
とにかくフィニッシュに繋げたいという思惑に、折角の強力な駒も空回り気味となり。
そしてビルドアップも遮断される事で徐々に仙台ペースに。
迎えた8分、仙台が敵陣でボール保持の局面に入ると、中島から最終ラインへ戻したのち右サイドへ展開。
突入したパスワークを経て、戻し→(工藤蒼の)裏へミドルパス→郷家という定型の崩しでサイド奥を突くと、蓋をする米田に対し足を延ばして強引に繋ぐ郷家。
球際を制するというこの絵図が奏功し、拾った真瀬のグラウンダーでのクロスから、ニアで合わせたエロンのシュートがゴール右へと突き刺さります。
長崎が反撃の機運を高めたいという時間帯で、それを折るべくの貴重な追加点が齎され。
これで2点が必要と、苦しくなった長崎。
猛威を振るったジェズスの個の力も、それに負けないかつ組織力に長けた仙台ディフェンスを前にしては、稼働範囲は非常に狭く。
やはり彼を止められるだけのディフェンス力が無いクラブ(愛媛や鹿児島とか)が終盤の相手であったため、その評価は割り引かなければならなかったでしょうか。
ともかく苦境の長崎は、降りてくるエジガルへミドルパスを届けるという手法を多用するようになり。
そして15分にヴァウド→櫛引へ交代と、硬直感がありありなビルドアップの改善も図った(と思われる)最終ライン同士の交代。
直後の16分、秋野ミドルパス→エジガルポストプレイというその立ち回りから、受けた松澤が中央からエリア内を突いてシュート。
しかしこの決定機も、GK林が脚でセーブというビッグプレイに阻まれます。
一方の仙台、18分にギリェルメの前進を阻んでのカウンターで、中島の中央突破からエロンに再び好機が訪れ。
中島のラストパスをダイレクトでエリア外からシュートしたエロンでしたが、枠外に終わったのみならずそのまま足を痛めてしまい。
攣ったかどうかは不明(放送席では攣ったとの事だが時間が早い気が)で、今後に不安を残しながら担架で運ばれて交代となってしまいます。
オナイウを投入(郷家がFWに回る)し、同時に鎌田→松井へ交代と、2枚替えで勝利へと向けた進軍を崩さない体制維持を図る森山佳郎監督。
櫛引の投入で、CBも長い距離間を保って繋ぐ色が強まる長崎最終ライン。
それでも山田ないしは秋野が降りる3枚での繋ぎという基本形は変わらず、交代以降果敢に寄せてくる仙台ディフェンスに難色が高まります。
そして23分、左サイドで詰まらされてのフィードが工藤蒼にブロックされ、敵陣右サイドでの保持に持ち込んだ仙台がポケットを突いて(真瀬が)スルーパス。
カットに当たるもそのままスペースへこぼれたボールを、走り込んだオナイウがシュート。
GK若原がセーブするも、跳ね返りを眼前で拾った郷家の追撃のシュートには成す術無く、ゴール上部へと突き刺さります。
決定的な3点目に、歓声と悲鳴が鳴り響くピースタ。
それでも失意の姿を見せる訳にはいかない長崎、25分に再度ベンチが動き。
ギリェルメ・エジガル→中村・名倉へと2枚替え、ジェズスがセンターフォワードへと回ります。
(この日の)ギリェルメに足りなかった、フリーマン的な動きが中村によって齎されるという具合に、ベンチの狙いが明白であったこの交代策。
そして31分、降りて受けた中村を経由し左サイドへ展開されると、松澤海が奥へ切り込んでカットイン。
ポケットから仕掛けるという姿勢で戻しを選択すると、山田の横パスがエリア内中央でフリーとなっていたジェズスの下へと、意表を突くに十分なプレーに。
満を持して、といったジェズスのダイレクトでのシュートがゴール左へと突き刺さりました。
ようやく1点を返し、僅かな望みを繋ぐ長崎。
それもつかの間、仙台のキックオフから右サイド深めへと運ばれた事で、再度追加点の危惧が高まり。
ここから仙台のゲーゲンプレスで押し込まれた末に、(名倉が郷家に対し)反則を与えた事で仙台の右ワイドからのフリーキック。
キッカー中島のクロスが中央を抜けてファーの松井の足下に合いシュートが放たれ、GK若原が至近距離でこれをセーブと、際どい凌ぎを強いられる事で反撃の機運は萎んでいき。
その後真瀬が足を攣らせた事を受け、仙台は同ポジションで石尾を投入します。(39分)
それでも前掛かりになるしかない長崎。
しかしそれによりロングボールにおける脆弱ぶりは深刻となり、45分にはこぼれ球をラフにダイレクトで蹴った石尾のロビングがそのままエリア内右へ。
これをバウンドさせながら収めた相良がディフェンスを背負いながらシュート(枠外)と、築かれたレールは仙台の更なる得点に向けてとなったでしょうか。
その通りに、突入したATは目安+8分と2点奪うには十分?でしたが、仙台が決定機を量産する流れに。
中島のパスカットからのショートカウンターで、左ポケットに進入した郷家のシュートをGK若原がセーブ、その跳ね返りを追撃にいく相良。
このシュートも米田が何とかスライディングでブロックと、既に2点差を追い掛けるチームの絵図では無く。
そして最後は、石尾の自陣からのドリブルを止められないという、総員前掛かりの裏を突かれ。
中央へのラストパスが中島に渡ると、戻ってきた増山を冷静にいなして放たれたシュートがゴール左へと突き刺さります。
文字通りの止め、という表現が良く似合う4点目となりました。
その後は残っていた交代カードを使う(中島・相良→松下・中山)も、5バックの体勢は取らずに3ボランチの4-5-1というような布陣で守りきりを図る仙台。
長崎は櫛引を前線に上げてのパワープレイで打開せんとしますが、そんな最後の意地も形になる事は無く。
結局1-4で試合終了の時を迎え、仙台が決勝戦に進出。
相性の良さは、長いブレイクがあっても邪魔されないという格好で勝利に辿り着きました。
屈辱の一戦となってしまった長崎。
個人的に敗因を挙げるとすれば、エジガルの起用が拙かった感があり。
これで守備時はジェズスとの2トップとなりましたが、彼らが最終ラインにプレスを掛ける事で、出来た2列目のスペースで難なく仙台ボランチがボールを受ける場面が頻発してしまい。
つまりは連動性の欠如であり、彼を終盤戦の通りスーパーサブに留めておけば避けられたような弱点に映りました。
これも「普段のサッカー」からのズレを生み出す一因でしたが、敗戦という事実は変えられず。
天国も地獄も味わったピースタの下、来季一年間を戦う覚悟を作り出す事が出来るでしょうか。