<両軍スタメン>
- 大宮は、杉本が累積警告により出場停止。
快調に首位を走っている大宮ですが、夏の移籍期間でシュヴィルツォクが移籍となるなどで、再編成の時期を強いられ。(その他中野・高柳も移籍)
その穴埋めに、同じカテゴリからサンデーを引き抜く(レンタル元はJ2・徳島)という強者ぶりを発揮する(その他、和田とファビアン・ゴンザレスも加入)など、1年でのJ2復帰のためには僅かな緩みも許されないという現場・フロント一体となっての補強策を敢行するに至りました。
しかしそんな一体感を装っている風でも、その上部ではチーム全体を揺るがしかねない大改革が進んでおり。
かねてより噂になっていた、レッドブルのクラブ買収が決定的との報が今節の直前になって流れ。
実質的な親会社のNTT東日本にとっても願ったり叶ったりという外資の登場で、これまでの伝統が覆されやしないかと周囲が不安を覚える状況に。
それでも近年の緊縮予算もあって、今後クラブが立ち直るためには良い事だという意見も少なくなく。
そんな騒がしい近況となりましたが、まずはJ2昇格を決める事が何よりの課題でしょう。
この日の相手は、大宮と同じく夏の移籍市場で激しく動いて来た宮崎。
こちらは残留のための補強で、松本・江川といった最終ラインを固める戦力を加えて早速起用しているものの、連敗が続いている状況を変えられず。(目下4連敗中)
そして今節は、レンタル先変更(群馬から、レンタル元はJ1・川崎)という手段で獲得した永長を早速ベンチ入りさせるなど、急ピッチで陣容を整え。
このカードは前回対戦時(6節・大宮 3-1 宮崎)も視聴し、その際は宮崎はチームとしての形がなっていないとは言い過ぎですが、大きなチーム力の差を実感する試合となり。
長い月日(といっても半年も経っていないですが)を経て、どう変わったかを示したい宮崎。
前半2分、大宮はGK笠原がサンデーをターゲットとしたロングフィードを送ると、その頭を越えて右奥で大澤が収める状況に。
コーナー付近でのキープから、前を向いた所を江川に倒されると反則の笛が鳴り、ほぼコーナーというフリーキックを得ます。
キッカー泉のクロスの跳ね返りを、小島がダイレクトで撃ちにいくもジャストミートせず(ゴール右へ逸れる)と、不用意な反則による失点は何とか避けられた宮崎。
オーソドックスな4-4-2(といっても、阿野が降りて出口役となる殆どトップ下な立ち位置)という布陣からの、縦に速い意識がやや強めという宮崎の地上でのビルドアップ。
かつてのポゼッションスタイルは相変わらず雲散霧消気味なものの、頼るべき軸が無かった前半戦に比べると遥かにマシ、といった状態が伺えました。
それでも立ち上がりは、とにかく裏抜け・ターゲットどちらでも橋本へとボールを届けるのみという意識に映る攻撃。
10分、ここも辻岡が橋本へロングパスを送る単調な攻めながら、市原のクリアミスで繋がり好機。
そのまま左ハーフレーンを持ち運び薄い大宮ディフェンスを突く橋本、エリア手前から果敢にミドルシュート。
グラウンダーの軌道でゴール右を襲ったものの、僅かに外れてしまい先制はなりません。
とはいえこれで勢いに乗り、続く11分は右から攻め上がるも、松本の裏へのミドルパスが跳ね返され。
一転して大宮が攻め上がるも、パスミスで繋がらずに松本が回収して再度宮崎の攻撃となり、右サイドを持ち運んだ楠がクロス(ブロック)と慌ただしい流れに。
右スローインで継続し尚も攻める宮崎、12分にクリアボールを回収して中央→左へとサイドを変え、井上が奥を突く姿勢からカットインでポケットでキープ。
そしてヒールパスで目線を変え、走り込んだ辻岡のクロスが上がるもフィニッシュには繋がらず。
両サイドハーフに突破力ある選手が居るため、彼らを矛としてSBはそれをサポートする役に徹しているという宮崎のサイドアタック。
首位相手に優勢の流れを築いたものの、20分に敵陣浅めでパスミス、それも力安のパスに対して辻岡と井上がお見合いして受けられずという消極的な姿勢。
これを見せてしまった事で流れが切り替わり、21分に大宮の左サイドからの攻めを切るも、深めに追い込まれた安田が縦パスをカットされて押し込まれた状態でのショートカウンターに。
ここは何とか撃たれる前に防ぐも、続く22分にはシルバのミドルパスをサンデーが収めてキープという、パワーで押し込まれる絵図となり。
サンデーが左足アウトでのパスで繋ぐという技も見せ付けられ、長らくパスを回されるもここもシュートには持ち込ませず。
しかし尚も23分、空中戦を制した大宮がボール確保し、シルバ→サンデーへのスルーパスを遮断するもこぼれ球がエリア内へ。
そして走り込んだ大澤がシュートと、とうとう決定機を許しましたがGK青木が足でセーブ。
この後カウンターに持ち込んだ宮崎ですがシュートにはいけず終わると、続く24分にも大宮の攻撃が襲い掛かり、左サイドから泉→サンデー→村上と経由して中央に渡った末に村上がミドルシュート。
これがゴール左へ僅かに外れる際どいものとなった所で、前半の飲水タイムが挟まれて文字通り一息つく格好となりました。
宮崎は縦に速い攻撃で何度もアタッキングサードを突くも、そこからのクオリティに欠ける側面が拭えず。
前述のカウンターの場面では、右ハーフレーンを持ち運んだ阿野が、溜めを作ってポケットへスルーパスを送るという攻め。
しかし浦上の引き付けが甘く、走り込んだ楠はクロスを選択せざるを得ない状況となってしまい。(そのクロスも浦上にブロックされる)
ここは溜めた際に中央への切り込みを意識させるべきに映り、若いチームだけにこうした細部での拘りがもっと必要に思えました。
そして迎えた第2クォーター、宮崎はビルドアップの形を変更。
辻岡が残る3枚での最終ラインへと変え、左ワイドに常時井上が張るという前回対戦時を彷彿とさせるシステムに。
しかし現代ではこの形も見慣れたもので、結局最後のクオリティが発揮されなければ結果に繋げるのは難しく。
大宮にシルバのミドルシュートで脅かされた(27分、枠外)のち、再度ペースを握り主体的な攻撃を繰り広げる宮崎。
楠の突破力を軸にして右から仕掛けるシーンが目立つも、クロスはブロックされ、カットインは奪われる等そのプレーはやや単調さが浮き彫りとなり。
目を見張るフィニッシュは中々生まれず時間が進んでいきますが、36分例によって右サイドで黒木縦パス→楠ポストプレイを経て、受けた阿野が小島に反則気味に倒されるも安田が拾い継続。
そして左の井上に展開し、前進から強烈なミドルシュートを放った井上。
GK笠原のセーブで防がれるも、この一矢でそんな絵図を変える期待を膨らませます。
しかし無情にも、変わった結果先制点に辿り着いたのは大宮でした。
押され気味ながらも、自分達のターンになるとセンターバックの村上や市原が果敢に攻撃参加していましたが、39分ここも例に漏れず敵陣でのポゼッションのなか左で浦上が攻撃参加。
そして泉の切り込みと見せかけ、戻しを受けてのアーリークロスを入れる浦上、中央で合わせにいったのは石川。
しかし頭から跳び込んだ彼を越えてバウンドし、ファーサイド奥で下口が跳び込んでのヘディングシュートがゴールネットを揺らします。
幾人もの選手が絡んだ末の得点で、やはり大宮がチーム力の差を見せ付ける格好となりました。
これで血気盛んといった宮崎の攻勢も萎み、終盤は大宮の独壇場に。
それでも必死のディフェンスでフィニッシュは生ませず(42分には左ポケット奥へ切り込んだシルバが楠に倒されるも反則無し)、何とか1失点に留めて前半を終わらせます。
ハーフタイムで、石川に代えて補強選手である和田を投入した大宮。
前回の3失点から進歩、といった前半の宮崎。
それでもフィニッシュ数は攻勢が示すほど膨らまなかったため、この1点はスコア以上の重みがあるという感じに。
始まった後半。
宮崎はそんな状態を変えんと、後半2分に右奥でキープする楠から、受けた阿野がカットインからミドルシュート(枠外)と果敢に矢を放ち。
この好機を境に、阿野が積極的にワイドでの組み立てに加わって人数を掛けてのサイドアタックに活路を見出した感があり。
しかし分厚くしたものの、辿り着くのはワイドからのクロスと結局さして変わらず。
クロスを量産するも、肝心のフィニッシュという側面では成果を上げられません。
一方の大宮は、サンデーという前線の橋頭堡を盾としながら、前述のような後方の選手も攻撃参加しての敵陣でのポゼッションで押し込む重厚な攻め。
そして後半は泉の突破力を押し出し始め、それが脅威となり。
11分・12分と左サイド奥を抉るシーンを続けると、13分にも前に出た村上のボール奪取からの繋ぎで、ワイドでボールを持った泉。
ここでカットインと見せかけてクロスを選択すると、これが先制点のシーンを彷彿とさせるように、ファー奥の下口に合わせるボールとなり。
今度は足で合わせにいった下口ですが、辻岡のディフェンスによりジャストミート出来ず、GK青木が抑え何とか防いだ宮崎。
攻撃機会では後れを取る大宮ですが、その一つ一つの威力で勝るという絵図に。
17分に再びベンチが動き泉・大澤→茂木・藤井へ2枚替え(茂木が右ウイングバックに入り、下口が左に回る)と、早めの交代でそれを支えます。
度々ボールを握るも、クロス攻勢の一辺倒に陥る宮崎。
斜めの縦パス→フリック(14分)や、橋本の足下へのスルーパス(16分)で変化を付けんとしたものの、決定機を齎す事は出来ず。
結局シュートを放てないまま、時間を潰す事を余儀なくされました。
23分に飲水タイムが挟まれ、明ける際に宮崎ベンチも動き。
補強した永長の投入に踏み切り(楠と交代)ましたが、大宮も同時にサンデー→ゴンザレスに交代と、豊富な戦力を見せ付けられる格好に。
楠とは違うリズムで変化を齎したかった永長。
しかしカットインを意識するあまり、大宮ディフェンスが付いて来る事で球離れが悪くなるという具合に、マイナス方面に作用する結果となり。
28分サイドを変えながらのパスワークで前進し、右ワイドで持った永長はマイナスのカットインを選択するも、ディフェンスを剥がせずにこぼれ。
安田が繋いだ事で再度持った永長ですが、ここでゴンザレスに奪われて大宮のカウンターを招いてしまいます。
シルバの縦パスを受けた藤井が右ハーフレーンを縦突破した末に中央へラストパス、受けたのはゴンザレスでエリア内で左へ流れながらシュートに持っていき。
しかし宮崎も決死のディフェンス、黒木のスライディングでのブロックがかわされるも、GK青木が前に詰めてコースを限定した末にキャッチと防ぎきりました。
大宮にとっては、ゴンザレスが左に流れた事で中央で藤井がフリーとなれていただけに、悔いの残る決定機逸となり。
望みを繋いだはずの宮崎でしたが、期待の永長がゲームチェンジャーになれない(と同時に、J2の場で何故通用しなかったか)事が判明したとあり依然状況は苦しく。
30分に橋本→吉澤に交代すると、直後の31分に逆の左サイドから攻め、パスワークで奥を取った末に左ポケットへスルーパス。
これでコーナーキックに持ち込み、キッカー松本が上げたクロスを、ニアでの黒木の潰れを越えたその奥で辻岡がボレーシュートの体勢に。
しかしヘッドでクリアした村上をチャージしてしまい、反則で終わる事となりました。
毛色の違う好機が生まれても、それを活かせない宮崎。
36分に再びカウンターに持ち込まれ、ゴンザレスがドリブル突破で右ポケットまで運び、ラストパスを供給する役に。
そして走り込んだ下口がシュートし、黒木がブロックとまたも際どく凌いだ宮崎でしたが、既に反撃の手法は残っておらず。
そしてその直後、後方から作り直す大宮の攻撃も防げずとなり、左サイドで浦上が上がりつつのパスワークから下口が斜めの縦パス。
ここから和田→藤井→ゴンザレスと経由してエリア内を突き、今度はしっかりワントラップからの横パスを藤井に送ったゴンザレス。
走り込んだ藤井が放ったシュートがゴールネットを揺らし、ようやく追加点が齎されました。
万策尽きたという格好の宮崎。
残されていたカードを39分に全て使い、江川・力安・井上→大武・遠藤・坂井と一挙3枚替え。
最後の賭けの域を出ないものの、駒を多く投入する事で変化を齎しに掛かりました。
しかし前回対戦時の通り、大武のビルドアップ能力の低さが停滞感に拍車を掛け。
後方からの組み立ても難しくなり攻撃機会は激減と、最後まで交代がブレーキとなる格好を強いられます。
結局アディショナルタイムも目前となり、大武が最前線に上がるというパワープレイへ切り替える事となり。(辻岡がCBに、安田が左サイドバックに回る)
そんな最後の意地を見せんとする宮崎に対し、大宮は冷徹にその裏を突く事で陣地を回復し続け。
ATにはゴンザレスにインアウトを強いる(濱田を投入、市原が右WBに、茂木がシャドーに回る)という具合に、その冷徹ぶりは敵味方問わない姿勢を貫きます。
そして無事に逃げきり、0-2で勝利と同時にダブル達成を果たした大宮。
首位独走する現状をこのまま維持し、誇りをもって次なる存在(レッドブル)にバトンを渡したい所でしょう。