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DAZN観戦 2019年J1リーグ第13節 大分トリニータvs川崎フロンターレ

2019-05-29 19:55:08 | サッカー視聴記(2020年以前)

王者への挑戦。

といっても、スペインリーグのバルサ・レアルのような絶対的な存在は無いのがJリーグ。
「ビッグクラブの是非」はファンの間でも議論になりやすいですが、自分としては今のままで良いかなと。

そんな事はともかくとして。
最近年の2年連続リーグ優勝ですっかり「狙われる存在」となった川崎。
新助っ人のフィットの問題・ACLとの並行で出遅れた今季ですが、調子を取り戻し順位を上げてきています。

今節の相手は、J2からの昇格組である大分です。
昇格組といっても、前節終了時点で3位という好成績を収めておりJ2らしさを感じさせない今季の戦いぶり。
的確なスカウティングと明確なパスワークで、これまでJ1の猛者との闘いでも一歩も退かずに勝ち点を稼いできました。

メンバーを見ても、J1での主力級選手はほぼ居ない。
しかしそれが「這い上がり」のイメージを作り上げ、魅力を一層引き立てる要素となっている。
JFL出身ながら、目下リーグ得点数トップにまで成り上がった藤本はその代表格でしょう。
そしてチーム単位でも、3年前にはJ3での戦いを余儀なくされていたというクラブ。
かつてJ1での戦いの経験もありながら(2003~2009年・2013年)、昔とは一味違った確固たるクラブとなって帰ってきた。

ここまで12戦で僅か2敗。
そのうち1つが、前年までJ2で凌ぎを削ってきて手の内が見破られていた松本。
もう1つが、過去10年で優勝3回でとにかく守備の堅さで今季を戦っている広島。

特に自分たちのサッカーにかまけていて隙を見せるチーム相手には滅法強い。
それだけに、今回の王者・川崎戦にどれだけ通用するか。
パスサッカーの完成形に限りなく近づいている「自分たちのサッカー」の究極版というチームカラーながら、それでいて隙があるとは言い難い強さも備わりつつある王者
そんな存在との闘いは、今後のJ1での戦いにも影響していきそうです。

そんな大分のスタメン構成ですが、基本フォーメーションは3-4-2-1。
ドイスボランチはリーグ序盤ではティティパン・前田の2人でしたが、最近では島川・長谷川のコンビ。
前線の1トップ・2シャドーのうち藤本・小塚は固定ですが、3人目は流動的。
それでも最近はオナイウ阿道が6試合連続スタメンと定着しつつあり、形は完成に近づいている印象。
ウイングバックは、左右どちらもこなせる松本がフル出場。
どちらになるかはもう片方の人選で決まるようで、この日は高畑が左に入ったため松本は右。ちなみに高山や星が右に入る時は左になるようです。
右WBを強烈にサポートするのが3バックの一角・岩田で、攻撃時はほぼ上がりっぱなしになりWBのサポートをしたり自らクロスを上げたり、時には得点もしたり(今季は既に2得点)と働きます。
中央のDFがキャプテン・鈴木で、左が福森でしたが故障中なのかここ最近はずっとベンチ外、この日は庄司が入ります。
プレースキッカーは長谷川が担当。

試合が始まると、王者・川崎のパスワークはこの日もさえ渡ります。
大分の守備がリトリート基調なのも相成って、労する事無く中盤でパスを回します。
左右どちらのサイドでボールを持っていても、きちんとトライアングルを作ってパスコースを複数生み出す。
こうなると相手の守備も中々インターセプトにいけず。

縦パス・スルーパスを入れた後も、相手の守りを崩せないと判断するとバックパスして仕切り直し。
その繰り返しでボールキープし続ける、消極的とも取られかねない攻撃ですが、攻めたい相手にとってはたまったものではありません。

大分も攻撃の基本となるのはポゼッションサッカーですが、パス回しよりも「相手の隙を突く」という事を重視しているため、藤本を前残りさせて縦に速く攻めたい。
どうしても選手の質の面で他クラブより劣ってしまう以上、基本を貫くだけでは点は奪えず、絡め手ともいえる方法を探らなければならないのが苦しい所です。
戦術の一つである「キーパーからの疑似カウンター」を多用する狙いもその辺にあるのでしょう。

そのため大分にとってはカットできないこのパス回し程嫌らしいものは無く、中々藤本にチャンスを与える事が出来ない。
前半9分、藤本自身が敵陣でパスカット。小塚に戻した後リターンパスを受けてエリア外からシュートを放ちますがGK・チョンソンリョンの正面。
34分にはパスカットした後、後方の長谷川からのロングパスを収めてエリア内に進入しますがシュートは撃てず。
この日は川崎のパス回しに対抗すべく、藤本自らカットにいく場面が目立ちました。

川崎のシュートは前半28分まで皆無。
いや正しくは我慢というべきか、はたまたこれが王者の貫禄なのか。
その初めてのシュートが得点に結び付きます。
守田の縦パスを受けたトップ下の脇坂が左サイドに供給し、これを受けた長谷川がクロス。
その行先のファーサイドに、右サイドバックのマギーニョが走り込んで合わせる。
これが見事にゴールイン、大分は与えたくない先制点を与えてしまった格好となります。

先制された以上、攻めなければならない大分。
しかし守備で川崎のパスワークに神経を費やし、川崎センターフォワード・ダミアンのポストプレイも交えられ、やっとマイボールになっても自陣深くからの攻めになるので決定機が作れません。
こうなると、頼みは右センターバック・岩田のオーバーラップを交えた右サイドからの攻撃。
右WB・松本とのパスワークで敵陣に切り込みますが、それでもシュートまでは中々いけず。

後半頭から高畑に代えて高山を投入、松本を左WBに移し、空いた右WBに高山が入ります。
岩田と松本が離れる事で厚みのあるサイド攻撃は出来なくなり、代わってボランチの長谷川よるサイドチェンジの揺さぶりが後半度々見られます。

具体的には後半15分、敵陣浅めで松本のパスを受けた長谷川が右サイドにフィードを出し、高山→岩田と繋ぎます。
その後岩田は浮き球でエリア内に入れて高山を走り込ませますが高山は収めきれずクリア、そのボールを拾った島川から再びパスを貰い、今度はクロスを選択しますがブロックされて上がらず。
20分、今度は左の松本を使いパスを出す長谷川。
松本のクロスがクリアされたボールを小塚が拾い、エリア外からシュートするもブロック。

22分には再び左を使い、松本からリターンパスを受けた長谷川はエリア内にスルーパス。
小塚に渡るも中は崩せず、バックパスを受けた長谷川は自らシュートするも大きく枠を外します。
ゲームメイカーに近い役割を担った長谷川ですが、やはり川崎を崩す有効打とはならず。

これ以降大分は攻めてもシュートまでいけず、後半35分には藤本が交代(後藤が交代出場)。
得点の匂いが最後まで漂わないまま、王者の前に膝を屈する事となりました。

貫禄の勝利を挙げた川崎。
最晩年に差し掛かっている中村憲剛がこの日ベンチ外だったのをはじめ、メンバーを入れ替えながらの戦いを強いられている今季。(全試合出場はGKチョンソンリョンのみ)

この日中盤で出場した2年目の脇坂(前年はリーグ戦未出場)も、この日はチームの一員としてしっかり機能していた印象を受けました。
選手層は着実に厚みを見せており、リーグ3連覇も現実味を帯びてきたでしょう。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第15節 東京ヴェルディvsジェフユナイテッド千葉

2019-05-28 19:09:21 | サッカー視聴記(2020年以前)

オリジナル10同士の戦い。
ただしそれをJ2という場で公言するのは失礼に値しないかと不安になってしまう自分がここにいますが。(どうでもいい)

ヴェルディは2008年の降格以降、11年連続でJ2での戦いを余儀なくされています。
媒体であった日本テレビが撤退して以降は経営面でも苦しい戦いを余儀なくされいているかつての名門。
ここ2年はロティーナ監督の下昇格プレーオフに進出し、前年は入れ替え戦にまで勝ち上がるなど一定の成果を見せましたが、あと一歩で昇格は果たせず。

ヴェルディ自身は昇格出来ませんでしたが、この実績が目に留められてかロティーナ氏は退任→J1のセレッソ大阪監督に就任。まあ事実上の引き抜きでしょう。
この年はDFのレギュラー選手である畠中が、夏の移籍でJ1のマリノスに移ってしまうなど選手レベルでも引き抜きに遭いました。
こうしてJ2クラブの険しさを身をもって示す格好となったヴェルディ。
今季は新監督にギャリー・ジョン・ホワイト氏を迎え仕切り直すも、スタートで出遅れて14試合で勝ち点は20。

一方の千葉も、2009年に降格してから10年間J2で戦う破目となります。
プレーオフ制度が出来てから、4度もプレーオフ進出を果たしながら昇格には辿り着けず現在に至ります。

昇格チャンスを逸するシーズンが度重なったのが災いしたか、息切れするかのように前年は大きく低迷。(2018年・14位)
今季は4節終了時で監督交代(フアン・エスナイデル氏→江尻篤彦氏)と迷走しつつ、何とか戦いの土俵に復帰しているという現状。
14試合で勝ち点17と、上位争いからは大きく離されてしまいました。

それでも両クラブJ2定着を良しとせず、必死に抗う姿には心を揺さぶられるものがあります。
千葉は2017年、最終盤で調子を上げて7連勝でギリギリプレーオフ圏内(6位)に滑り込み。
特にリーグ最終戦の後半ロスタイムの勝ち越しゴールで進出を決めた姿は感涙ものでした。

その2017年、ヴェルディは5位進出もプレーオフは一回戦敗戦。(千葉も一回戦敗戦)
2018年もプレーオフ圏内のシビアな戦いで、6位で何とか進出を果たします。
最下位でのプレーオフながら、5位・大宮に勝利して3位・横浜FCとの一戦に進出。
引き分けならリーグ下位の方が敗退してしまうレギュレーションの中、奇跡ともいえるワンシーンが舞い降ります。

これ以上ないドラマで入れ替え戦に進出を決めたヴェルディ。
しかしその入れ替え戦、J1側の出場クラブ・ジュビロ磐田に対し全く歯が立たず敗退し、今年もJ2での戦いを余儀なくされています。

再びJ1の土を踏む事を夢見て……という両チームの戦い。
この日ヴェルディのセンターフォワード(以下CF)を務めるのはネマニャ・コイッチ。
一方の千葉のCFはクレーべと、双方新加入の助っ人と共通点が出来たスタメン。
両者ともシーズン当初は振るわずも、ここ3試合でコイッチは2得点、クレーべは3得点。
ようやくフィットしてきたという印象が成績から伺えます。

オープニングシュートは前半3分、クレーべでした。
エリア内から熊谷アンドリューが浮き球でパス、そのボールがクレーべの足元に渡ると右サイドの茶島にパス、その茶島から折り返しのパスを貰って右足でシュート。
これはGK上福元にキャッチされましたが、これが号砲となり以降千葉が試合のペースを掴みます。

そして前半11分、矢田のサイドチェンジのパスから左ウイングバック・為田が駆け上がります。
絶好のクロスが上がると、クレーべが頭で合わせてシュート。
ポストを直撃し跳ね返った所をシャドーの船山が詰め、ネットを揺らします。

13分にもクレーべが相手のクリアの跳ね返りをヘディングシュートするなど、先制した後も攻勢を強める千葉。
14分にはクレーべのポストプレイからボランチ・矢田がミドルシュート。
DFのブロック後もボールキープし、熊谷→為田と渡って左サイドからクロス、逆サイドに流れたボールを茶島がシュート。(GK上福元がセーブ)
その後はシュートこそ放たないものの、千葉が中盤を圧倒的に支配し、ヴェルディは好機さえ作れない時間帯に。

ヴェルディは前半8分にコイッチとのパス交換から小池がシュートを放った(DF増嶋がブロック)のを最後に、全くペースを掴めず。
そのためコイッチが試合から消え気味で、やっと前半31分にめぐってきた右サイドからの渡辺晧太の低いクロスには合わせられず仕舞。
その後は終了直前まで再び千葉ペースになり、33分には為田がファール気味の競り合いで渡辺からボールを奪い、そのまま上がりクレーべのパスを貰ってシュート。(枠外)
38分は再び為田が左サイドでボールを受け、カットインしてからシュートもGKの正面。

ようやくヴェルディに一矢報いるチャンスが訪れたのはアディショナルタイム。
スローインから井上→佐藤優平とボールが回り、佐藤優平が思い切ってミドルシュートもゴール左に外れます。
結局そのまま前半終了。

そして後半開始直後の1分、ヴェルディ陣内でコイッチがボールを拾おうとした所に矢田のスライディングを受けます。
これが反則となり、コイッチは足を痛めてしばらく動けず。
その後は後半3分にポストプレイでチャンスメイクに絡んだだけで、この日は最後まで踏んだり蹴ったりだったコイッチ。
後半10分にはレアンドロと交代でベンチに下がりました。

同じ位置(CF)に入ったレアンドロ。
こちらは2016年にJ1で得点王に輝く(当時神戸)など実績十分で、2017年の1年を棒に振る怪我と加齢が無ければ……という名選手。
今季も3節以降スタメンは皆無と稼働率は限られていますが、この日は存在感を発揮します。

後半15分、若狭のパスを落として井上にパス、ここからチャンスを作り河野がクロスを上げた所に飛び込んでヘディングシュート。(GK佐藤優也がキャッチ)
続く16分にも、近藤のパスを落としてから前線に走りリターンパスを受けます。(ここはキープできず)
ポジショニングが格段に良いのか、ポストプレイでのチャンスメイク率がコイッチの比ではなかったレアンドロ。
この実績十分のCFの存在でチームメイトも迷いが無くなったのか、積極的にボールを送るようになりました。

そして17分、敵陣で奈良輪がボールを奪ってそのまま左サイドからクロスを上げると、落下地点に入ったレアンドロが後方に落とします。
これを受けた河野がエリア内でシュート、左隅に見事に突き刺してヴェルディが同点に。

一方の千葉は後半22分、為田が船山と協力して左サイドを突破。
グラウンダーでクロスを上げると、中の矢田が合わせてシュート。
これは惜しくもゴールポストに直撃して得点はならず。

しかし好事魔多し、その1分後に矢田は足を攣らせてしまい途中交代。(山本が出場)
以降千葉がシュートを放つ事はアディショナルタイムまでありませんでした。
前半押し気味に展開していたのが影響したか、この後はヴェルディのペースで試合が展開。

千葉の高いラインを突こうと何度もスルーパスを送りますが、これは悉くオフサイドに。
31分には井上の裏へのロングフィードに渡辺が走り込みトラップ、あわや一対一という所で千葉・為田が追い付いて足を伸ばしてカット。

後半30分台は千葉が自陣でファールを与える場面が散発し、そのうち惜しかったのが37分。
佐藤優平が左サイドでのフリーキックでクロスを上げ、センターバックの近藤がヘディングシュート。
マークを上手く外して撃ったものの、シュートはゴール左に外れます。

その後は両チームとも攻めますが、クロスが防がれたり跳ね返されたりと決定機は作れず。
アディショナルタイムに突入し、千葉がやっとペースを握り返して山本・新井がミドルシュートを放つもいずれも大きく外れました。
結局1-1のまま試合は終わり引き分けに。

千葉の戦いは、監督が代わったとはいえハイライン・ハイプレスという基本形はあまり変わっていませんでした。
前節・岐阜戦で5-1で大勝したように爆発力も秘めますが、脆さも存在する諸刃の剣の戦い。
しかし監督が江尻氏に代わった事で守備力自体は安定し、チームとして引き締まった印象です。
ただしこの「引き締まり」が消耗を早めているのか、試合後半に失速するという新たな諸刃の剣を生み出してしまっている感は否めません。
13節・山形戦では後半に3失点で逆転負けと手痛い試合を演じており、これから夏場に入っていく中スタミナ面での不安はますます大きくなるでしょう。
シーズン途中からの指揮で中断期間も無い以上、選手の適切な入れ替えで乗り切っていく事が求められるであろう今後の江尻氏。
自身2度目の監督である今回、果たしてチームを浮上させる事は出来るでしょうか。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第14節 ツエーゲン金沢vsV・ファーレン長崎

2019-05-22 21:09:18 | サッカー視聴記(2020年以前)

2002年以降毎年、昇格という形で初めてJ1経験するクラブを輩出してきたJ2リーグ。
順に仙台・大分・新潟・大宮・甲府・横浜FCと、1年に1クラブずつ出現しているのが綺麗です。

それが途絶えたのが2008年ですが、同時にもう一つ暗い影が。
この年に岐阜・熊本が加入したのを皮切りに、一気に新規参入の流れが加速します。
2012年までの5年間で、それまで13クラブだったのが22クラブに増大。
それに伴いJFLとの入れ替え制度が始まった訳ですが、この間に参入したクラブで無事にJ2定着出来ているのは松本・岡山・岐阜ぐらい。
J1経験に至っては松本のみで、残りはいずれも降格を経験します。
そしてその6クラブのうち、再びJ2に這い上がれたのは栃木・町田だけ。
後の富山・鳥取・北九州・熊本は現在もJ3に籍を置いているのが現状(熊本は前年まではずっとJ2でしたが)で、拡張路線の弊害を如実に表しているのが趣深くあります。

そしてJFLとの入れ替え制度が出来てから、それ以降に参入・昇格したクラブは讃岐以外とりあえずはJ2に定着出来ている。(今季J3から昇格した鹿児島・琉球を含めても6クラブしか無いけど)
プロサッカーリーグを語る際に出て来る「昇格・降格があるからこそレベルが上がる」という文句は、たとえJ2とJ3(JFL)でもそう変わるものでは無いのでしょう。

前置きは長くなりましたが、この時期にJ2参入・昇格を果たしたクラブ同士の対決であるこの試合。
長崎は前年J1昇格も果たし、スポンサーであるジャパネットの存在もあって一躍表舞台に躍り出た感が強かったですがそれでも1年で降格。
J2参入時から一貫して指揮を執っていた高木琢也監督がチームを去り(現大宮監督)、選手も入れ替わり今季から新たなチーム作りが求められる立ち位置。
レンタルバックしてきた選手を含めて14人がチームに加わり、その陣容を纏める新監督は手倉森誠氏。

一方の金沢は2015年に遅まきながらJ2入りを果たすも、翌2016年には入れ替え戦まで経験するほど降格の危機に苛まれながらも何とか残留。
その後は柳下正明氏を監督に招き入れ、かつて札幌の監督を務めていた時と同様に3年かけて上位を伺わんとしています。

試合序盤は長崎が優勢。
J1を経験してチームは内面的に逞しくなったと言えば聞こえは良いですが、選手達の構成は激しく入れ替わっており、前年の主力であるメンバーはこの日のスタメンの中では徳重・高杉ぐらい。
翁長・島田・徳永がサブ組に回っている辺り、「監督が代わればチームも変わる」という事を痛感させられます。
名古屋から移籍してきた大ベテラン・玉田の名はこの日は無かったものの、角田(前清水)・亀川(前柏)・大竹(前岡山)・呉屋(前G大阪)と今年新加入の選手ばかりがスタメンに名を連ねます。
それでもJ1クラブからの選手がそこそこおり、J2降格したチームながら選手のレベルは維持出来ているのでしょう。

前半7分、ビルドアップで金沢の猛プレスをいなすとボランチ・角田がドリブルで中央突破。
敵陣で右サイド奥に出すと右サイドバックの亀川が走り込み、上がったクロスをエリア内に入っていた角田がヘディングシュート。
これはゴール左に外れましたが、J1レベルの攻撃の組み立てを早速見せつけます。

そんな相手の攻勢に金沢側は萎縮したのか、前半10分にミスから決定機を作られます。
大竹のロングフィードに対し、左サイドバックの沼田が追いつくがクリアを長崎・呉屋に当ててしまい、そのまま呉屋がGK白井と一対一に。
最初のシュートは必死にブロックしますが、こぼれ球を再度呉屋がシュート、ボールは無人のゴールに突き刺さりました。

この序盤の失点で目が覚めたか、以降は金沢が自身の特徴である攻撃力を見せます(目下J2の総得点1位)。
13分、長崎・亀川がオーバーラップして出来た左サイドのスペースを突き、大石がドリブルでエリア内左側まで持ち込んでからフォワード・小松にパス。
小松はダイレクトでシュートを放ちますが、ゴール左上に外してしまいました。
ここで決められなかったのは最後まで響いたと思います。

というのも、この場面が堪えたのか以降長崎はスペースは殆ど作らず。
守備重視の試合運びで、金沢はクロス・シュートこそ放ちますが何だかんだで決定機らしい決定機はなかなか作れずに時間が進む事となります。
さらに前半26分に長崎GK徳重が負傷、33分に富澤と交代になったのも影響したでしょう。
富澤はこの日がリーグ戦初出場で、このアクシデントがチーム全体として守りを固める意識を強める結果にもなりました。

攻撃では、サイドアタックで奥に進入してもクロスを上げる場面はめっきり減りました(特に後半)。
ボールキープを重視しつつ、カットインやショートパスで一旦エリア内に進入してもシュートを撃てそうになければバックパスで仕切り直し。
例を挙げると前半36分の場面。スローインが左サイド敵陣奥の呉屋に渡ると、呉屋はボールキープしつつタッチライン際に出てから角田にバックパス。
角田もクロスを上げるという事はせず、再び同サイドの呉屋にショートパス、呉屋から香川へと渡り最後は金沢選手に当ててタッチに出し再びスローインに。
これがJ1を経験してきたチームと、J2でも中々上位に食い込めないチームの差と言わんばかりにペースを保つ長崎。

それでも「隙を見せれば点を取るよ」というメッセージのように、縦パスやカットインで好機を作ったり。
後半11分、大本が左サイドをドリブルしてエリア内の畑へパスすると、畑は左サイドに出てしばらくボールキープしてからカットインで再びエリア内へ。
そしてクロス・シュートの二択かと思いきやバックパスし、新里がミドルシュート。(枠外)
19分には香川・畑が連続して速い縦パス、これに大本が抜け出しエリア内に進入しますが一旦戻し、呉屋がシュート。
DFにブロックされたボールを大本がキープし呉屋にパス、呉屋は新里とワンツーで抜け出して再びシュート。(GK白井がセーブ)
リードしているチームにありがちな「しっかり守ってカウンター」という攻撃ではなく、遅攻でじっくりボールキープする事で、金沢側も守備に時間と人数を掛けざるを得なくなる。
シュート数を見ると金沢が攻勢に出ているという展開ながら、長崎側はしっかりと攻撃・守備双方で組み立てを見せているため勢力図的には変わらない印象を受けました。

さて、後半そのシュートを重ねていった金沢。
最も可能性があったのは後半2分、藤村がエリア内に送った浮き球を長崎GK富澤がパンチング、そのこぼれ球に長谷川が反応して強烈なシュートを放ちますがわずかに枠外。
その後後半15分、センターバックの山本がグラウンダーで中央に縦パス、これを受けた清原がドリブルで持ち込んでミドルシュート。これもGK富澤がパンチングで防ぎます。
28分には右サイドで受けた長谷川が中央の藤村に戻すと、藤村は浮き球でエリア内にボールを入れ、これを小松がヘディングシュートを放ちますがGK富澤が右に飛んでキャッチ。
不安視された長崎・富澤の好守に度々阻まれます。

後半40分、左サイドの崩しから大石がクロス、小松のポストプレイによってこぼれたボールを梅鉢がエリア内でシュートを放つも長崎DFのブロックでゴールはなりません。
ここから金沢のセットプレー祭りが始まります。
試合終了までコーナーキックが3本、敵陣でのフリーキックが2本と、まさに最後のチャンスを作った格好となりましたがいずれも得点を奪う事は出来ず。
特に最後のコーナーキック(後半45+2分)の廣井のヘディングが惜しかったですかね。
その後は長崎にきっちり時間を使われ、最後は金沢陣内右サイドでボールキープされて試合終了。

長崎はリーグ序盤戦こそ出遅れましたが、この日の勝利で勝ち点20台に乗せて上位を伺う位置にまで上がって来ました。
何より地力と経験で、勢いのあった金沢を封じ込めたのは内容的に非常に大きかった。
そんな印象が残った試合でした。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第14節 アルビレックス新潟vs愛媛FC

2019-05-21 16:39:25 | サッカー視聴記(2020年以前)

右攻め有利、そんな一言の雑感が思い浮かんだ試合後でありました。

ホームゲームでの弱さが、16年ぶりのJ2での戦いとなった前年から続いている新潟。
前年は15勝のうち5勝。しかも第32節に勝利するまでは僅か1勝という体たらくで、危うくJ3降格もチラついたシーズンになってしまった。

その反省を踏まえたかどうかは解りませんが、今季からの外国人枠拡大を生かし一気に6人も加入させてシーズンに挑んでいます。
伝統的に優良助っ人が現れてはJ1残留の助けになっているのが新潟というチームで、その流れが途切れた一昨年・2017年についにJ2降格。
前年も切り札となる人材は現れず、ボランチのカウエのみが今季も引き続きチームに在籍。

迎えた今季も目に見えてチーム状態は上向かず、13試合で4勝4敗5分。
肝心のホームでは2勝と、前年程悪くはないが克服も出来ていません。
2年目のカウエこそ全試合にフル出場しチームの柱になっていますが、他は前年鳥取でプレイしていたレオナルドが4得点という活躍ぐらい。
シルビーニョはスタメンには定着できず(この日はベンチ)、パウロンはようやく前節初出場。
サントス・チョヨンチョルの2人は合わせて3試合のみ(スタメンはゼロ)と推して知るべしな状態で、伝統復活には未だ遠そうです。
序盤で片渕浩一郎氏→吉永一明氏への監督交代も敢行するなど、カンフル剤の投入に躍起になっている前半戦。
そんな状況の中、この日はクラブカラーが酷似している愛媛を迎えてのホームゲーム。

センターバックにパウロン、ボランチにカウエ、フォワードにレオナルドと助っ人選手を並べて試合に臨みました。
前半はポゼッション・パスサッカーが今季の信条である愛媛を圧倒。
相手のパス回しをほとんど機能させない前からのプレスに愛媛選手達はタジタジで、パスミスを誘発させては好機を作ります。
前半4分、敵陣でのパスカットから小川が左サイドに展開。渡邊凌磨が奥深くでキープした後新井がクロス。
19分は愛媛・下川のパスミスを渡邊新太がバイタルエリアで奪い、渡邊凌にパスを送るもカットされて決定機にはならず。
23分はアタッキングサードに4人でプレスを掛けたのが功を奏してカット、レオナルドから渡邊新に渡ってエリア手前右からシュートも愛媛GK・岡本がキャッチ。

激しく動き回る事で前半ペースを握った新潟。
しかしこうした戦術をとれば、当然懸念されるのが後半の失速です。
それを振り払わんとするかのように前半33分・44分とゴールを奪い、2点差という貯金をもって前半を終える事に成功します。
前々節・山口戦とほぼ同じ展開で、この時は後半山口にペースを握られながら守り抜いて2-0のままホームで勝利を挙げています。
その結果が新潟のこの日のゲームプランを決定づけていたのでしょう。
そしてこの時山口が後半頭から2枚替えをしてきたように、愛媛も後半頭から山瀬・吉田の2人を投入(小暮・野澤がOUT)と、全く同じ絵を描いているかに思えた試合。

このまま終わる事を予感させるに十分な経過でしたが、そうはさせなかったのが愛媛。
後半3分に山瀬のパスを吉田がダイレクトでパス、これを走りながら受けた神谷が新潟DF全員を置き去りにしてシュート。早い段階で1点を返すとその6分後(後半9分)。
敵陣左サイドの奥で左ウイングバック・下川がボールキープ、新潟DFをかわしてエリア手前でバックパス。
これを受けた山瀬、得意のミドルシュートが炸裂。
炸裂というほどの強さはありませんでしたが、グラウンダーのボールがゴール右隅に見事にコントロールされてネットに突き刺さりました。

あっという間の同点劇。
メインスタンド側から見て右側のゴールにしか得点が入っていないという、ものの見事に前半と後半で逆の絵を描く事となったこの試合。
その雰囲気にも押されてか、この後もしばらくは愛媛ペースに。

昨季途中から就任した川井健太監督の下、ポゼッションサッカーの特徴を色濃く出している愛媛。
しかし今の所成績は芳しくなく、この試合前の時点では21位。
同じスタイルを前面に押し出している福岡・岐阜も下位低迷に喘いでいる現状を見るや、この路線は勝つうえで有効なのかどうかという疑問が浮かび上がる事でしょう。(まあ京都は上位に居ますが)

数字上ポゼッションつまり支配率が上がっても、最終的にはスコアの優劣で試合が決まるのは当たり前。
逆にボールは支配出来ていても、ボールを失う事を恐れるあまり効果的なチャンスを作れない。
そして何より、リードを奪うと守りを固めてくるチームが多いのがサッカーの常であり、リードされると必然的にボールを持たされるので支配率が上がる事となり「見た目上の数字は良いサッカー」となりがちです。(そしてシュート数は相手に負ける事が多々……)
そんな閉塞感から抜け出すには、やはりそこから先のプラスアルファが求められる。

果たしてこの日同点に追いついた後、愛媛はペースこそ握りますがシュートを撃てずに終わるという事を繰り返します。
すると後半16分、新潟・カウエが中央からドリブルで持ち込んでミドルシュート。
これは愛媛GK岡本が抑えますが、これが合図になったのか一転してお互いシュートを撃ち合う展開になります。

直後の後半17分には愛媛が中盤のパス回しから下川が左サイドでキープし、クロスを上げて藤本がヘディングでシュート。(ゴール右に外れる)
その1分後には新潟がチャンス、左サイドで渡邊凌・新井がパス交換しつつ抜け出し、グラウンダーのクロスを上げるもレオナルドの足にはわずかに合わず。
また1分後には再び愛媛、神谷がエリア手前で吉田とのパス交換から右に切れ込みミドルシュート。(GKキャッチ)
またまた1分後逆に新潟、レオナルドがポストプレイで渡邊凌に落とすと、彼のリターンパスを貰ってエリア内に進入しシュート。(DF竹嶋がブロック)
目まぐるしいシュートの応酬。
26分には愛媛が決定的なチャンスを迎え、山瀬の右サイドからのロングパスで神谷が裏を取ると、新潟DFは並走していた藤本についていたのかノーマークでGKと一対一の状況に。
しかしワントラップからボレーでシュートした神谷、わずかに枠の右に外してしまいました。

シュートで終える場面が増えていく展開に、大切なのはポゼッションよりも局面局面における勇気という事を愛媛選手達は感じたのかもしれません。
そんな場面が後半29分、見せたのはGKの岡本でした。
新潟・渡邊凌のドリブルから縦にパスが出ると、待ち構えていたレオナルドが足先で触れてボールはエリア内へ。
ここに田中達也(渡邊新と交代で出場)が走り込む絶好機を迎えますが、いち早く岡本が前に出て間一髪足でクリア。
田中達と交錯ししばらく倒れ込む事態になりながらも、怪我を恐れない勇気によって危機を防ぐ事に成功しました。

次第に泥仕合の様相になってきた後半32分。
愛媛は右からのコーナーキック、キッカー前野のニアへのボールを林堂がフリックし、そこに飛び込んだのは藤本。
ダイビングヘッドも新潟・渡邊凌にブロックされ、ボールはタッチを割ります。
ここまで来るとポゼッションだろうが何だろうが関係無い、そんなゴールシーンが生まれたのがこの直後。
竹嶋が放ったロングスローは綺麗な軌道を描いてエリア内中央へ、これを頭で合わせたのは田中裕人でした。
新潟GK大谷の手を弾きゴールイン、ついに愛媛は逆転に成功しました。

この後はリードされた新潟がDFパウロンを前線に上げるパワープレイで猛攻をかけるも、単調な攻撃の域を出ず同点ゴールはなりませんでした。
見事な逆転勝利の愛媛、前半の不出来が響いて支配率・パス数では新潟を下回りましたが、理想通りにいかない展開で勝利したのは大きいでしょう。

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DAZN観戦 2019年J2リーグ第13節 レノファ山口FCvs大宮アルディージャ

2019-05-14 16:50:26 | サッカー視聴記(2020年以前)

イケイケドンドン。
言葉は悪いですが、山口のイメージとしてはこんな言葉が真っ先に浮かびます。

2013年のJFL昇格から、1年毎にステップアップしていった山口。
2014年にはJFL4位で何とかJリーグ入りを果たすと、2015年にJ3で優勝し、あっという間にJ2での戦いに足を踏み入れました。

J3参入と同時に監督に就任した上野展裕氏の下、攻撃的なサッカーを展開してJ2初年度の2016年は12位。
上々の成績で終えたものの、シーズン終了で山口を待っていたのは主力選手の引き抜きでした。
中山(山形・現磐田)・小池(現柏)・島屋(徳島・現鳥栖)・庄司(岐阜・現京都)・福満(C大阪)・北谷(レンタル終了・現岐阜)・一森(岡山)・ユンシンヨン(韓国リーグに復帰)と一斉に移籍してしまい弱体化。
翌2017年はスタートから低迷し、上野監督は5月で途中解任。次期監督に選んだのは、元福岡選手であったカルロス・マジョール氏でした。

マジョール氏就任とともに、彼の出身国であるアルゼンチンの助っ人レオナルド・ラモスとマルセロ・ビタル、アベル・ルシアッティの3人を獲得し、なりふり構わずといった姿勢でチームの立て直しを図った山口。
それでも目に見えた効果は現れる事無く、低空飛行を続けながらも最終順位20位でギリギリのJ2残留を果たしました。
そしてシーズン後マジョール氏は解任、3人の助っ人もチームを去りました。

翌2018年、新監督には霜田正浩氏が就任。
日本代表の役員を務めた後、ベルギーでコーチの経験もしていた人物です。
彼が追求したのも、一言で言えば攻撃サッカー。
浦和からオナイウ阿道(レンタル・現大分)・東京ヴェルディから高木を獲得し、小野瀬(現G大阪)との3トップで開幕から破竹の勢いを見せ、前半戦を2位で折り返します。
しかし小野瀬が夏の移籍でチームを抜けると形が崩れ勢いは止まります。
それでも終盤に何とか持ち直し、最終順位は8位。

そして今季。
得点源のオナイウが移籍、再び編成からチームの形を作り直さなけらばならなくなりました。
岐阜から田中パウロ淳一、仙台から佐々木(前年はレンタルで讃岐)、広島から工藤を獲得しタレントには事欠かない状況は作れましたが、ここでも佐々木・工藤はレンタルでの獲得。
どうも他クラブからの引き抜きによって、自身の思想も短絡的に陥ってしまっている印象が拭えない山口の補強策。
救いは30歳超えの選手が坪井・佐藤だけと、ベテランだらけになってはいない点でしょうか。

この日の試合内容は意外なものとなりました。
上記のパウロ・佐々木・工藤いずれもスタメンから外す(工藤はベンチ外、故障か?)という策を採った山口。
そして実際にやったサッカーも、いつもの攻撃で前線が圧力をかけるものから一転。
前からのプレス+縦に速いサッカーというカウンタースタイルに近いものとなっていました。
生え抜きの池上・楠本がスタメンに入るなど、ついにニューモデルの山口が顔を見せたのか。

前半6分に岸田が大宮GK・笠原のフィードをブロックするなど、とにかく前線は激しくプレスを掛ける。
いつもとは違うサッカーながら、これも一種の「イケイケドンドン」ぶりには違いないでしょう。
というのも10分過ぎ頃からは大宮のペースで試合は展開。
1トップのファンマのポストプレイを中心に、中盤でのパスワーク・一発のスルーパス、そして大前のセットプレーという飛び道具と多彩な攻めを魅せます。
若さの山口vs老獪な大宮という図式が浮かび上がってくるや、若い山口は飛ばし過ぎて試合終盤に息切れを起こさないか、不安がよぎってきます。
実際速い攻めを繰り返すものの、前半30分までシュートはわずか1本。

そしてその不安をさらに進行させる出来事が32分。
センターバックのドストンが大宮のファンマと交錯、嫌な倒れ方をしてピッチ外に出されます。
続行不能のサインが出されますが、交代はせずピッチに戻るドストン。
しかしその直後、敵陣右サイドで得たフリーキックでした。
キッカーの池上はニアにクロスを上げると、これに誰も触れずワンバウンド。
そしてファーサイドに川井が走り込み、頭でゴールに押し込みました。

不安要素を忘れさせる先制点となり、その後は前半終了まで山口のペースに。
ゴールを挙げて勢いづいた左サイドバックの川井がどんどん攻撃参加し、大宮右サイドを抉ってガンガンクロスが上がります。
しかしそれでもシュートは放てず、逆に大宮は良い形は一度だけながら、ファンマのポストプレイ→大前のミドルシュートとインパクトの効いた攻撃を見せました(前半40分)。

大宮はというとJ2オリジナル10の一員であり、J1経験も豊富でスポンサーも安定しているクラブ。
それだけに前年プレーオフでの敗退が悔やまれる所です(東京ヴェルディに0-1で敗北)。

J1を経験する前の大宮(2004年以前)は、フロントトップに就いた清雲栄純氏の影響もあってか、ポゼッションサッカーの完成という理想を追い求めていたと聞きます。
それは渋谷洋樹氏(現熊本監督)が監督を務めていた近年(2014~2017年)もそれほど変わらず。
しかし前年は石井正忠氏、そして今季は高木琢也氏と、ポゼッションとは程遠いサッカーを展開する監督が指揮を執っている大宮。
とにかくJ1に戻る事を第一とした、理想から現実主義への転換が垣間見えます。
長らくJ1の舞台を戦ってきた事で、そうした理想を手放す事に躊躇が無くなった。
そんな意味でも、この日の大宮のサッカー=老獪というイメージを醸し出していたと思います。
少なくとも相手の山口よりは。

さて後半戦。
前半激しいプレスを受けた大宮は、前半以上にスルーパスを多用して山口ゴールに襲い掛かります。
開始早々大前からパスを受けたファンマが左サイドにスルーパス、河面が抜け出してクロスを上げた(誰にも合わず)のを皮切りに、後半2分にも大山がドリブルで持ち込んで右にスルーパス。
受けた奥井がグラウンダーでクロスを上げ、これも繋がりませんが大前が拾い、その後パスワークから大山が中央からミドルシュート(山口GK・山田がキャッチ)。

開始からチャンスを作ると、6分には山口DF・ドストンが限界を迎えてヘナンと交代します。
11分にはDFラインから石川が直接裏狙い、これが奥井に渡ってエリア内右からシュート。
GK山田に弾かれ、もう一度シュートしますがヘナンがカバーに入りゴールならず。
13分にもファンマのポストプレイから、茨田がダイレクトで右へスルーパスし奥井が抜け出してシュート。これもGK山田がセーブし、詰めた茨田が中央からループシュートを放つも、このシュートも山田の必死のセーブで得点はなりません。

一方の山口も7分に前貴之(水戸・前寛之の兄)がミドルシュート、GK笠原が弾いたボールを岸田が詰めにいきますがオフサイドと、久々のシュートを放ち抵抗。
15分には相手のパス回しにプレスで追い掛け、中盤で三幸がカットに成功するなど前線からの守備はここでも健在でした。

その後大前のフリーキックから大宮が惜しい場面を作った後(山越ヘッド→ポスト直撃・後半19分)、大宮ベンチはダヴィド・バブンスキーと小島が交代出場(畑尾・大山と交代・21分)。システムも3-4-2-1から4-4-2へとシフトします。
それが実ったのは26分。やはり茨田のスルーパスでチャンスを作り、奥井がエリア右側に入ってグラウンダーのクロス。
走り込んだファンマが蹴り込むだけのベストボールとなり、同点に追いつきました。

それと同時に山口は岸田→山下に交代。
35分には高木→パウロに交代と、フレッシュな選手を入れます。
一方大宮も、ポストプレイで文字通りチームの柱となっていたファンマに代えてもう一人の長身助っ人ロヴィン・シモヴィッチを投入。

勝負手を打った両者。先に点を取ったのは大宮で、ここでもスルーパスでした。
後半38分、大前のポストプレイからバブンスキーが左にスルーパス。今度は河面がエリア内左から低いクロス、シモヴィッチの後方を走る小島が合わせてシュートを決めました。

逆転を許した山口は何とか攻勢に出んとしますが、川井がパスの収めをミスしたり、山下が絶好のクロスに合わせられないという落胆を隠せない場面を作ってしまいます。
そして大宮は再び3-4-2-1のフォーメーションに戻したうえ、ウイングバックもDFラインに下がる所謂5バックシステムで逃げ切りを図ります。

しかし最後に若さが出てしまったか。
若年(22歳)の小島は後半44分、左サイドでボールを持つと速攻を選択し、まだ上がりきっていなかったシモヴィッチにクロス気味にボールを送りますがこれが雑で通らず、相手ボールに。
そしてGK山田のフィードから池上がスルーパスで一気に前線にボールを送ると、走りに走ったパウロがエリア内でボールを収めるという山口の絶好機に。
パウロが中央にカットインしようとした所を、河面がスライディングで倒してしまい審判の笛が。山口にPKが与えられました。

これをパウロが冷静にゴール左に決め、土壇場で同点に追いついた山口。
老獪な大宮のサッカーに苦しめられながらも、普段とは一味違ったサッカーで何とか勝ち点を取った事は意味があるでしょう。
逆に大宮は、あの場面小島が遅攻に徹してボールキープしていれば……というのは結果論でしょうが、逃げ切りに失敗してしまった事実が残ってしまいました。

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