ぶらりドリブルの旅

ひたすらサッカー観戦がメイン

DAZN観戦 2024年J2リーグ第38節 清水エスパルスvsロアッソ熊本

2024-11-28 16:00:51 | サッカー視聴記(J2)

※前回の清水の記事はこちら(35節・山形戦、1-2)
※前回の熊本の記事はこちら(35節・山口戦、1-1)

<清水スタメン> ※()内は前節のスタメン

  • 36節(栃木戦、1-0)で勝利した事で自動昇格が決定し、前節(いわき戦、1-0)の勝利でJ2優勝も確定。
  • その36節からスタメンを3バック(3-4-2-1)へと切り替えたが、今節再び基本の4-2-3-1へと戻して挑む。
  • 36節で退場になった北川は2試合出場停止の2試合目。

<熊本スタメン>

何度か躓きの傾向も見られたものの、無事前評判通りに自動昇格に辿り着いた清水。
前節に優勝も決定したものの、その後GK権田の今季限りでの退団が発表されるという具合に、既に始まっている来季構想。
現場も現実に戻されたかのように、若手を大量起用する運びとなった最終戦。

そんな「王者」に対し、今季は開幕戦と最終戦で立ちふさがる格好となった熊本。
前年は清水に対し内容で圧倒し(成績は1勝1敗)、まさに天敵と呼ぶに相応しい相手となり得ただけに、道中で相対しなかったのは清水にとって逆に運が良かった感があり。
攻撃面を中心に組織力は圧巻の一言で、それを構成する選手の殆どが新人・若手と、清水とは真逆のアプローチである編成面。
言わば大木武監督の手腕一本で成り立たせている風であり、その大木氏も既に来シーズンの続投が決定と、その進撃に一寸の狂いも見られない……といった所でしょうか。
しかし逆に藤本主税コーチの退任が決定、この試合後には伊東の引退が発表されるなど、功労者がその役目を終える事に。
マンネリ化の防止、と前向きに捉えるのは簡単ですが、果たして来季の戦いは如何に……と言う前にまずは眼前に迫った王者との戦い。

GK猪越・川谷・加藤と、これまで(リーグ戦)未出場の選手をメンバー入りさせた清水。
しかしその浮つきぶりは早速現れ、前半2分にGK猪越のフィードが前に出た岩下にカットされ、そこからの速攻でコーナーキックに持ち込む熊本。
この左CKから、ショートコーナーからのパスワークを経て上げられた小長谷のクロスを、ファーでキャッチしたGK猪越でしたが着地と同時にファンブルしてしまい。
慌ててクリアしたボールを石川がブロック(その後繋がらず)と、不安ぶりを見せた事で、その後チーム全体にも波及してしまったでしょうか。

もう一人の若手である最前線の郡司、こちらは攻撃の選手らしく前向きな姿勢が良い方に発揮され。
8分に左サイドで矢島のボール奪取から、パスを受けた郡司は釣り出した江﨑をボールキープでかわしたのちそのままドリブルで左奥へ。
そして入れたグラウンダーのクロスは中央で、ブラガポストプレイ→乾シュートとフィニッシュに繋がったのみならず、ブロックされたこぼれ球を郡司自ら反応してシュートを放って(ブロック)終えました。

ここからCKを3本続けた清水、熊本の多彩な攻撃に対し受け身にならない姿勢を見せ。(その流れで、ここからサイドハーフの位置が暫く左右逆になる)
しかしそれも直ぐに終了する事となり。

10分が経過すると、熊本は最終ラインからの繋ぎで、豊田が中に絞り上村周とのドイスボランチへと可変する形へと固定化。
これが実にハマり、上村周の右に位置取ったうえで、時には「偽サイドバック」のようにハーフレーンを前線まで駆け上がっていく豊田。
14分には間を通すパスを受けた豊田が持ち運び、小長谷→大本と経由して上げられたクロスを、ニアで石川がフリックのように合わせるも枠を捉えられずとフィニッシュにも繋がります。

対する清水は18分頃からSHを再度入れ替え、ブラガ・矢島ともにスタートの位置に。
その後から暫く保持のターンが続いたものの、熊本のハイプレスと、奪えなかった時の素早い戻りで形になる事は無く。

すると24分、前に出た岩下のパスカットが、文字通り清水からペース自体を奪うものとなり。
ここからの熊本の攻撃は苛烈さを極め、一度途切れてもすかさず積極的に前に出てボール奪取と、全く隙を与えない姿勢を貫き。
そして次々と襲うミドルシュート、24~27分に立て続けに豊田×2・小長谷のシュートと3本続け、いずれもGK猪越がセーブ。
以前ほど目立たなくなったものの、ショートパスでの前後移動に対し前に釣られてスペースを開けてしまうという、清水ディフェンスの弱点は残ったままであり。
それはトライアングルでのショートパスを多用する熊本にとっては格好の餌食という他無く、前年からの相性の悪さも納得するしかなく。
一方後方でも、岩下が相手のプレスの方向を見て、生まれるスペースへ持ち運んでかわすという具合に前進の多彩ぶりが行き渡っている熊本。

かくして前にいくプレスも、退いての守備も出来ないという状況に陥ってしまう清水。
何とか攻撃で巻き返しを図りにいくも、31分に熊本のゲーゲンプレスを浴びながらの前進で、郡司が縦パスを収められず奪われた所から熊本の決定機に繋がり。
パスワークを経て送られた上村周の左ポケットへのスルーパスに、走り込んできた大本(ゲーゲンプレスにより逆サイドに張り出していた)がシュート。
前に出てきたGK猪越の上を抜くループシュートがゴールを襲いましたが、その後ろで蓮川がブロックで防いだ(跳ね返りを猪越が抑える)事で何とか失点は免れました。
しかし守備での不安を隠すべくの攻撃も繋がらないという、三方駄目な状態では苦境はその後も続くのも当然であり。
35分に大西の右からのアーリークロスを東山が脚で合わせシュート(GK猪越キャッチ)、36分に東山→小長谷のパスが遮断されるもエリア内へこぼれた所を石川が拾ってシュート(住吉がブロック)と、熊本のフィニッシュは止まる事無く。

それでも40分にCKからの攻めで、清水のクリアしたボールが岩下の急所に当たるというアクシデントで途切れた事で熊本の勢いも切られ。
43分、三島のトラップが乱れた所をブラガが奪うという逆パターンで好機が訪れる清水、ドリブルからラストパスを受けたのは郡司。
ペナルティアークからシュートを放つも豊田のブロックに阻まれ、評価を変えるべくの得点は挙げられずに終わり。
結局前半のみでお役御免となってしまいました。

アディショナルタイムが取られないという珍しい前半となった末に、ハーフタイムへ突入。
前述の通り郡司に加え、矢島も交代させる手段を取った秋葉忠弘監督。
西澤とタンキを投入し、ブラガが左SHへシフトと前目の2選手を弄って後半開始を迎えました。

入りの後半1分、いきなりロングパスを収めたタンキを江﨑が反則で止めざるを得ないという、そのポストワークで郡司とは段違いの存在感を見せ付け。
その後も4分、乾のドリブルが阻まれたこぼれ球を拾ったタンキ、フィジカルを活かした豪快な持ち運びを見せた末に上村周に反則を受け。
あれだけ熊本優勢だった流れを、そのパワー一本であっさり塗り変えるに至ります。

一方再三振り回された後方、つまり守備でも微調整。
オリジナルフォーメーションは変えずも、守備の際は西澤が最終ラインに降り、ウイングバック化する事で5バックで守る体制へと切り替え。
これによりスペースを消しつつ、相手の中盤でのパスワークに対し原が果敢に前に出てプレッシャーを与える事で乱しに掛かります。

7分にゴールキックでのロングフィードから、またもボールを持ったタンキがマークを振り解きながら前進、そしてミドルシュート(ゴール上へ外れる)と相変わらずパワーを発揮。
しかもそのプレッシャーのおかげで、保持による攻めも巧くいくようになる好循環。
特に守備時での可変が生み出す、西澤・原による2段階というべき右サイドでの攻めが嵌り、次々と押し込んでいきます。
西澤がワイドに張る際はその内側で原が上がるという具合に、熊本のような組織立った攻めで主導権を奪い。

そして16分、その基本形から先制点が生まれます。
原がワイド・西澤がハーフレーンに位置してパスワークでの前進で、ポケットに入ったラストパスから乾が(シュート気味に)クロス。
これがブロックされるも、拾った原がカットインを経て中央寄りから果敢にシュートを放ち、ゴール左へと突き刺さります。
狙い通りの崩しによるリードに、ホーム(IAIスタジアム日本平)の雰囲気も最高潮となり。

前半とは一転した展開の末に、ビハインドなってしまった熊本。
キックオフの前に小長谷→唐山へと交代し、巻き返しを図ります。

19分にカウンター阻止で(唐山を倒した)西澤が反則・警告と、流れを変える機会はあったもののそれは中々果たせず。
すると20分、乾のスルーパスが遮断されたこぼれ球を宮本が拾った事で、「良い守備も奪いきれずに剥がされる」状況を強いられる熊本。
持ち運びからエリア内へ送られたスルーパスを受けたのはタンキで、やはりそのボールキープ力を活かし溜めを作るという手法が選ばれた末に、戻しを経て放たれた乾のミドルシュート。
これがゴールバーを掠めるフィニッシュとなり、スタンドの熱量も手伝い尚も追加点というムードとなる清水。

何とかそれを断ち切り、本腰を入れて攻め直しに掛かった熊本。
しかし5-4-1の守備は、いかに守りに入ると脆い清水といえど崩す難易度は跳ね上がり。
GK以外全員敵陣に入り込み、パスを繋いで前進を図りますが前半のような決定機は作れません。
24分に持ち込んだCKで、クロスの跳ね返りから放たれた三島のシュートもGK猪越にセーブされ、どうしてもゴールを奪えない流れに。

尚もCKから攻めるも、(江﨑の)原への反則で途切れた(原は治療を受けたのちピッチ外→復帰)所で再度カードを使う熊本ベンチ。
三島・東山→黒木・大崎へと2枚替えを敢行します。
黒木は最終ラインでは無くそのまま左WB……と見せかけ、豊田と同様に中央寄りでのプレーが中心となり。
イメージとしては、黒木・豊田をシャドーと見立てた3-3-2-2(3-1-4-2)という布陣がしっくり来るようなシステムとなりました。(ないしは2021年に採っていた3-1-4-1-1か)

そうした特異な布陣により、再度攻勢に入る熊本。
32分には左サイド深めで大崎がボール奪取に成功と前からの圧力も発揮、そこからの繋ぎを経てクロスが上がり、跳ね返りを清水サイドが拾った所をさらに上村周がボール奪取し継続。
こぼれ球を繋ぎ、大本が石川とのワンツーで右ポケットを取りにいき、そのままダイレクトでシュートを放ちましたがGK猪越がキャッチ。

試合の入りから不安視されたGK猪越ですが、シュートストップという面では実力を発揮し、度重なるフィニッシュでもゴールを割らせず。
若手が頼もしく映った所で、34分さらに川谷の投入に踏み切ります。(ブラガと交代、同時に宮本→中村へと交代)
川谷は特にフィニッシュには絡めずも、スルーパスに追い付く(43分)などスピード自慢ぶりを発揮して無事デビューを飾り。

得点できないまま終盤を迎えた熊本、42分に最後の交代を敢行し大本→松岡。(大崎が右へ回る)
44分に持ち前の細かいパスワークを経て、唐山が持ち運びを経て右ポケットへスルーパス、奥で受けた大崎がディフェンスに遭うも右CKに。
するとまだ早い段階ながらGK田代も上がってターゲットに加わり、何としても同点に追い付く体制を取り。
攻撃サッカーを貫く姿勢は一貫しているという熊本ですが、ここから齎されたのは清水のカウンター。
二次攻撃で松岡が切り込まんとした所を蓮川が阻み、こぼれ球を西澤がリターンしてドリブルに持ち込む蓮川。
当然GK不在な状況で、必死に戻り蓮川の前に立ちはだかる田代を嘲笑うかのようにタンキへとパス、そのタンキはエリア内へ持ち込んでからのシュートを選択。
しかし田代は戻りきれなかったものの、黒木のスライディングが間に合う形となり、ブロックで何とか凌ぎました。

そんな慌ただしい流れのままATへ突入し、清水も最後の交代を敢行。(成岡→高木、西澤がボランチに回る)
熊本は左スローインからの繋ぎで、入れられたアーリークロスの跳ね返りを確保した末に石川がミドルシュート。
これがブロックを掠めてゴール左に外れると、左CKの際にまたも上がりエリア内に加わったGK田代。
意地を貫く格好となりましたが、然したる成果は挙げられませんでした。

結局1-0のまま試合が終わり。
ハッピーエンドで締めくくった清水が、J2最後の試合(となるかは今後次第……)も勝利で飾りました。

かくしてJ2という地を後にする事が決まった清水。
この2年間を糧として……とは定型文が過ぎますが、それでも一度目の2016年とはJ2の顔ぶれはガラリと変わり、特に目立つのは何かに全振りしたクラブの増加。
パワーに特化した秋田や、この日の相手である組織力一辺倒の熊本など、個性溢れるクラブと相対した事。
そしてその中で苦闘に塗れながら、掴んだ昇格の切符の味。
決してそれらに足で砂をかけるような真似をせず、今度こそ生まれ変わる事が出来るでしょうか。

Jリーグランキング にほんブログ村 サッカーブログ J2へ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DAZN観戦 2024年J2リーグ第38節 ヴァンフォーレ甲府vs水戸ホーリーホック

2024-11-27 18:04:52 | サッカー視聴記(J2)

※前回の甲府の記事はこちら(33節・山形戦、1-2)
※前回の水戸の記事はこちら(36節・いわき戦、2-1)

<甲府スタメン> ※()内は前節のスタメン

  • 前節(秋田戦、1-2)出場停止だった林田・佐藤・マンシャの3名がスタメンに復帰。
  • 関口が累積警告により出場停止。
  • 負傷離脱していたGK河田が36節(山口戦、0-2)で復帰し、前節からスタメン出場。
  • 35節(千葉戦、1-2)で負傷交代したヘナト・アウグストは以降ベンチ外。

<水戸スタメン>

  • GK本間が前節(山形戦、1-3)スタメン、ならびに引退セレモニーが開かれる。そして今節もベンチ入りを続ける。
  • 36節で負傷交代した久保、ならびに前節負傷交代した前田はともに以降ベンチ外。

前節のホーム最終戦で、偉大なる存在のGK本間の引退試合を敢行した水戸。
今季は森直樹氏が新監督の座に就いた14節(熊本戦、2-0)以降、精神的支柱(というよりは、監督の気心知れた存在としてか?)のように殆どの試合でベンチ入り。
外野からすればまだ出来る・必要だという思いが錯誤する状況に映るものの、本間本人が会見の場で話していた「シュートストップ能力の衰え」と、現場並びに本人にしか解らない要因とあれば納得する他無く。
かくしてセレモニーが行われたのちの今節も、アウェイである甲府の地に帯同しベンチ入りと、最後まで選手としての役目を全うする運びとなりました。

その甲府は、劇的な天皇杯優勝(2022年)・J2クラブとしてACLグループリーグ突破(2023年)と、華々しい戦績から一転した今シーズンの歩み。
背筋が凍るような低迷に今後が不安視されるものの、ホーム最終戦とあっては、それを吹き飛ばすような試合を演じるのは不可欠であり。
水戸に本間が居るように、甲府にも山本英臣が居る(この日はベンチ外ですが)……と無理矢理結び付けるのはナンセンスですが、苦しい時に精神面で頼りにしたい大ベテランの存在。

ロングボールの応酬というのが試合の入りの定番で、水戸がその手法により押し込みに成功する、この試合も例に漏れずとなり。
しかし前半3分に左から大崎のロングスロー、このセカンドボールを甲府が拾った事で展開されるカウンター。
三平がボールキープでゲーゲンプレスをいなして縦パスを送ると、上がっていた村上を中継役とし、スルーパスでさらに前線のアダイウトンに。
これにて一気にGKと一対一というビッグチャンスが訪れますが、エリア内へ切り込み放たれたアダイウトンのシュート、股抜きを狙ったもののGK松原が脚を閉めてこれをセーブ。
前節を経て、本間の精神と能力が乗り移ったかのようにいきなりビッグセーブを見せます。

しかしその松原のセーブも報われるとは限らないのがサッカーの常で、尚も右コーナーキックから攻める甲府。
キッカー佐藤のクロスをマンシャが合わせにいくという絵図で、手前でクリアに入った牛澤がボールを右腕に当ててしまい。
肘を振っていた事でハンド(ないしはその肘によるマンシャの頭部へのチャージ?)ならびにPKを取られ、フイにする格好となってしまいます。
このPK、キッカーを務めたのはアダイウトンで、緩急をつけた助走を経てゴール右へ強く蹴り込み。
これにもGK松原は反応して触れるも、勢いが勝りゴールネットを揺らすボール。
いきなりの決定機逸も何のその、という先制点を挙げました。

再度のキックオフとなった水戸、大崎のロングパスで右奥へと運んで好機に繋げ、CKへ持ち込んで気を取り直し。
早期の失点であり、引き摺らないのが何より重要となり。

そして追う者に相応しく、ボール保持による攻撃の色を強めていく立ち回り。
3バックの左右が大きく開き、ボランチの片割れ(主に山﨑)がその間に降りるという最終ラインの可変、即ち「ミシャ式」によるビルドアップ。
対する甲府の前線はリードした事もあり、三平がアンカー(主に櫻井)を切る立ち位置を取っての様子見。
無理なハイプレスにはいかず、櫻井を経由させない事でサイドでの前進を強要させるのが主たる姿勢となりました。
しかしそれを見た水戸は、ドイスボランチが横並びとなるオーソドックスな体勢での繋ぎを混ぜ合わせ、三平の監視を無効化させつつ中央経由で運び。
14分に大崎から左で前進する姿勢と見せかけ、櫻井へ通したのち逆の右へ展開しての前進、山本隼が持ち運んで右ハーフレーンからミドルシュート。(GK河田キャッチ)

一方甲府の攻撃も保持の姿勢を見せ、こちらはボランチが降りる事の無いほぼオーソドックスな形での繋ぎ。
一応、アダイウトンが左ワイドに張るという可変はあれど、追い掛けるためある程度ハイプレスに出る必要のある水戸にとっては対処し易く映ったでしょうか。
佐藤に対して同じボランチがプレッシャーを掛ける事で、容易なボランチ経由での前進を許さず。

こうして水戸優勢の流れが出来上がると、23分に再び横並びとなるドイスボランチを根底としての攻めで、しかし今度は新井を活かした左ワイドでの前進。
カットインから山本隼への縦パスは遮断されるも、こぼれ球を拾った甲府に対しゲーゲンプレスを掛け、三平から奪取した櫻井がその勢いのまま倒されて反則。
これで左ワイドからのフリーキックを得た水戸は、キッカー櫻井はエリア内中央へインスイングのクロス。
クリアするにしても後ろを向いてのそれは難度が高く、GKに任せればその前で触られる可能性が出てしまい、誰も触れなければそのままゴールという絶妙なキックになり。
そして甲府ディフェンスは最初の選択肢を選んだ結果、井上のクリアがゴールに向かうものとなり、これをGK河田が弾くも尚もゴール方向へ転がるボール。
そこに選手が殺到し、いち早く詰めた山田が押し込みに成功してゴールに突き刺さります。
自身のペースをしっかり得点に繋げた水戸により、試合は振り出しに。

一方の甲府、この乱戦で井上が足を痛めてしまう事態が発生するも、何とか継続の運びに。
ここから前線は微調整したようで、水戸のドイスボランチの横並びに対しては、鳥海が付く事で三平との2人で対応する姿勢へと移行します。
しかし得点により勢いづく水戸の攻勢を止めるのは難しく、さらに対策への対策として、純粋なサイドでの運びの色を強めて好機を作り続ける水戸。

結局浅い位置での遮断は諦める甲府、リトリートからアダイウトンを活かしたカウンターの姿勢を取る事でプレッシャーを与えに掛かり。
29分には草野のミドルシュートをキャッチしたGK河田、そのまま素早くスローし、中山を経由してアダイウトンに繋げ。
そのアダイウトンは期待通りにドリブル突破で水戸の最終ラインを壊しに掛かるも、ここは牛澤が何とかボール奪取して防がれます。

その後も水戸がボール保持による攻めでひたすら押し込み、敵陣ではロングスローを駆使しつつボックス内を突き。
しかしカウンターの恐怖を植え付けた事で、42分に甲府がロングボールで左スローインに持ち込むと、ラインアウトしたボールを山﨑がさらに外へ蹴り出した事で遅延行為で警告を受け。
ボールサイドに居たアダイウトンを気にしての蛮行となり、一見守勢に映る甲府の姿勢の効果は出ていたようでした。

結局1-1のまま前半終了。
ボールを握り、好機の面でも大きく上回っていた水戸。
その一方で、リアルストライカーの色が強い中島はパスワークの輪に加わらず、中央に張る事を貫いていたため殆どボールに触れられず。
相手にプレッシャーを与えるのに不可欠なその姿勢も、ボールに関与しない事によるフラストレーションとの戦いを強いられるという具合に、ストライカーは孤独である……なんて事を考えてしまい。

一方の甲府、足を痛めていた井上を大事を取って退かせ、宮崎を投入。
彼を右ウイングバックに入れ、村上を最終ラインに下げるという弥縫策を採り後半に臨みました。
しかしその村上も元はFWの選手であり、どれだけやれるかは未知数。
確実に弱点を隠すには攻める他無いという、判り易い姿勢を取ったでしょうか。

そしてそれが功を奏し、後半2分に最終ラインから組み立てを図り、マンシャがアダイウトンへ縦パスを通して前進開始。
アダイウトンの脅威で水戸の意識を左ワイドへ偏らせると、一転して中央へ展開しての崩しを図り、鳥海が持ち運んでエリア内へラストパス。
すると既に中央ボックス内へ先回りしていたアダイウトンがポストプレイ、水戸ディフェンスを引き付けた末に鳥海がダイレクトでシュート。
流れるように放たれたこのフィニッシュがゴール左へと突き刺さり、前半の劣勢を振り払うような勝ち越し点が齎されました。

これで前半と同じく、後半もビハインドからのスタートとなってしまった水戸。
これも前半同様に直ぐさま気を取り直し、ボール保持による攻勢に入り。
5分、純粋な左サイドでの前進で、縦パスに入れ替わった新井が奥へ切り込んでのカットイン。
ポケットでディフェンスを引き付けて入れられたクロスが、ファーで完全フリーの長澤へと送られましたが、若干マイナス方向へ流れたため長澤は(ボレーで)合わせるのが精一杯となってしまい枠外に。

非常に痛い逃し方をした水戸、やはりその後に待ち受けていたのは被決定機。
水戸の攻勢を切った甲府は、8分に左スローインから左奥~ポケットでの繋ぎで、一度はカットされるも荒木が奪い返し。
そしてラインを上げたディフェンスの裏を取った鳥海が、中山のミドルパスをボックス内で1トラップからボレーシュート。
GK松原が身体でこれをセーブと、またも守護神に救われた格好となりましたが、この後の左CKでやられてしまうのも前半の再現になってしまい。
クロスの跳ね返りを繋ぐ甲府、再度キッカー佐藤の下に戻ってくると、上げられたクロスは中央のマンシャへピンポイントに合うボールに。
完璧なヘディングシュートでゴールネットを揺らしたマンシャにより、リードを広げた甲府。
ホーム最終戦で高まる勝利の機運に、すっかり劣勢ぶりは消え失せる事となりました。

こうなると、尚も続く水戸のポゼッションに対しても、余裕が生まれたかのように振舞い。
12分には最終ラインでの長いパスに対し、出足良く前に出てカットした荒木がそのまま持ち運んでミドルシュート(GK松原キャッチ)とショートカウンターも出来るようになり。
それでも2点差を得た事で基本はリトリートという意識を貫き、水戸にボールを持たせて自陣を固めます。

これにより苦しくなった水戸、前半のようなボランチ経由のために頭を使う必要は無くなりましたが、フィニッシュに繋げる難度は爆上がりとなり。
17分にベンチも動き、山﨑・草野→長尾・落合へ2枚替えを敢行するも流れは変えられず。
逆に18分、甲府のGKへのバックパスに対しラインを上げた所、GK河田のその裏を取るロングフィードで一気に危機を招き。
抜け出した鳥海がGKと一対一を迎える、これも前半にあったワンシーンの再現となり。
エリア内へ切り込み、満を持して放たれた鳥海のシュートを、GK松原が左足を伸ばしてセーブとまたも防ぎます。

冷や汗を掻いた水戸、20分に甲府のハイプレスを呼び込み、GK松原の小さいフィードを落合がレイオフで繋ぎ脱出。
長尾の1タッチでのロングパスを左ワイドで受けた新井、そのままドリブルで左ポケットへ切り込んでカットイン、中央からシュートを放つもマンシャがブロック。
このシーンのように相手が出てきてくれるのならまだしも、それ以降はやはりボールを持たされる状況が長く続く事に。
一応、投入された落合が降りる事で、「1アンカー+2インサイドハーフ」の色を強めて繋ぐ体勢へと変節を見せるも効果は薄く。
中央に張る中島も、依然としてボールに拘われない状態が続きます。

25分攻撃が途切れて甲府ボールになった所を大崎が奪うという形で、ショートカウンターに入った所に山本隼が(マンシャに)反則を受け。
これにより中央からの直接FKを得ましたが、まずはベンチが動き山本隼→齋藤へと交代。
そしてその齋藤が(大崎のフェイクを交えて)直接シュートを放ち、ゴール右を襲ったこのフィニッシュをGK河田がセーブ。

しかしその後、最終ラインから作り直しを迎えた所で、バックパスに誰も反応出来ないというミスを起こしてしまい。
アダイウトンに掻っ攫われるという泣きっ面に蜂の状況が生まれ、そのまま左ポケットまで持ち運びシュートが放たれるも、枠を大きく外して何とか命拾い。
直後にそのアダイウトンが交代の運びとなり、木村を投入した甲府ベンチ。

有り得ないようなミスの絵面も招き、必然的に反撃の機運が高まらない水戸。
38分に最後の交代を敢行、牛澤→野瀬へと交代したうえで、4-4-2へ布陣も変更。
最終ラインは右から野瀬・長尾・山田・大崎となり、ドイスボランチが櫻井・落合、サイドハーフは右に齋藤・左に新井。
そして長澤がFWに回り、中島と2トップを組む体制に。
一方の甲府も40分に三平→内藤へ交代、これが最後の采配となった結果カードを残したままとなります。

41分にその内藤が長尾のロングパスをブロックし、ショートカウンターを迎えるかという所で、中山が奪われてしまい逆に水戸のカウンター。
すかさず斎藤から送られた裏へのロングパスに中島が走り込むという、滅多に来なかったフィニッシュのチャンスが訪れる事となった中島。
マンシャと縺れ合いながらもボール確保し、そのまま右奥へと切り込みましたが林田の反則気味のアタックでロストしてしまい終了に。
たまらず、納得いかないという態度で(長澤とともに)主審に抗議した中島でしたが、悪態をついた事で意義による警告を得るのみとなり。
その姿に、やはり貯め込んでいたフラストレーションは相当なものだという事は伺えました。
その後43分に野瀬のクロスを合わせてヘディングシュートを放った(GK河田キャッチ)中島でしたが、結局これが最後の見せ場となり。

突入したアディショナルタイムも、冷静に水戸の攻勢を凌ぎ続ける甲府。
そして2点差を保ったまま、試合終了の時を迎えます。
これにより得た勝ち点3で、対戦相手の水戸を上回ったもののそれでも14位。
年を重ねる毎にJ1昇格がどんどん遠のくという感覚は避けられませんが、天皇杯・ACLというフィーバーも終わったとあれば、捲土重来をじっくり待つのが最善な気がしますが果たして。

Jリーグランキング にほんブログ村 サッカーブログ J2へ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DAZN観戦 2024年J2リーグ第38節 ブラウブリッツ秋田vs藤枝MYFC

2024-11-26 16:06:13 | サッカー視聴記(J2)

※前回の秋田の記事はこちら(36節・大分戦、0-2)
※前回の藤枝の記事はこちら(37節・岡山戦、0-2)
※前回の両クラブの対戦はこちら(藤枝 1-0 秋田)

<秋田スタメン> ※()内は前節のスタメン

  • 蜂須賀が今季限りでの引退を発表。そして今節スタメン出場と、引退試合の様相に。
  • 吉田の負傷が発表されるも、発生日・治癒期間ともに未発表。
  • 大ベテランの加賀が10節(岡山戦、0-0)以来のベンチ入り。

<藤枝スタメン>

  • DAZNの予想では、世瀬がアンカーの3-3-2-2(3-1-4-2)。しかし前線5人は流動的なため、どれが正解かは一概には言えず。(試合開始後の布陣を見た放送席では、3-4-2-1と言っていた)

お互いチームカラーがハッキリとした、かつそれが真逆のものというクラブのぶつかり合い。
しかも2クラブとも、2020年以降にJ2昇格を果たした者同士という、シーズン最終戦に相応しい一戦となったでしょうか。
藤枝・須藤大輔監督も、試合前のインタビューで「信念」というワードを口に出す程、そんな対決の色は強く。

しかし「信念を貫く」という事は、悪く言えば「それに基づいたプレーをしていれば、例え負けても良い」と捉えられる事でもあり。
前年の藤枝は終盤の残留争いの際、引き気味に守備ブロックを作るという、その信念を曲げるようなスタイルへと舵を振ったのは記憶に新しく。
これが信念よりも、結果に拘るという勝ち点への「執念」と言っても良く、そのおかげで残留を果たしたのは周知の通り。
今季は中位の上の方に居たため、表立ってその選択を迫られる事は無かったでしょうが、今後それだけで良いのかどうか。
信念と執念を天秤に掛けながら、進化と微調整を続けていくのが生き残る道……というのは言うは易しですが、秋田のような振りきったチームまでとはいかない(単に守備的か攻撃的かの違いともいう)だけにやるしかない。

「超攻撃」と謳ったものの、J2・2年目の今季そのスタイルはかなり警戒された節のある藤枝、得点力は大きく落ち込み。
38得点と前年(61得点)から大きくダウン、しかもそのうちの大部分は矢村が挙げたもの。(16点)
矢村が徹底マークされた時にどうするかという答えを、レンタル終了に備えて出したい所ですが果たして。

しかし相手は周知とはいえ、パワーサッカーの秋田であるが故にそんな流暢な事は言っておられず。
圧力をかわすべく、ラフなボールの蹴り合いの入りを強いられた事で、早くも信念を貫く事は厳しいという雰囲気が立ち込めます。
それでも反則を受け、遠目からのフリーキックでの放り込みや、モヨマルコムのロングスローなどセットプレーを駆使して攻撃機会を多く取り。

それ故に「何かが違う……」という思いは拭えず、前半6分には最終ラインでの保持が乱れてプレスを浴び、GKへバックパスするもその北村のフィードも乱れてタッチラインを割り。
そして今度は秋田が(蜂須賀が)ロングスローと攻撃権が移るも、これを防いだのちカウンターに持ち込む藤枝。(世瀬の裏へのミドルパスがオフサイドとなり終了)
しかしその思いは依然として晴れないまま、9分に本来の姿であるGKからの繋ぎを敢行するも、違和感を抱えながらのそれは巧くいかないものであり。
2トップの間を通すボランチへのパスを、あろう事か新井・世瀬の2人の間に送ってしまい、2人とも被り気味に受けにいった結果乱れて秋田ボールに。
ここからのショートカウンターはクロス連発に終わったものの、とてもじゃないが「信念」を貫く土壌は安定しない状態であり。

逆に秋田が「信念」を貫き、いつものように縦に速い攻めを繰り広げ。
シンプルな攻撃故にそれを貫くのは容易いという差異はあれど、早くも優劣が表れたような立ち上がりに。

それでも秋田は守備の面で、その信念を曲げるかのように立ち回り。
即ちハイプレスの抑制であり、最終ラインに詰める絵面は、藤枝の敵陣→自陣へバックパスした場面以外は殆ど見せずに我慢する体勢を取っていたこの日。
これはGKを含めた藤枝の繋ぎで、全体前に出た所の裏を突かれる所謂「疑似カウンター」を警戒していた感があり。
序盤に何度もそれでやられていた戦いを経て、その弱点を放置する事無く向き合うという、勝利への「執念」が形になっていたでしょうか。

藤枝は24分に左サイドで鈴木が戻りながらボールキープを経て、GKへの戻しで秋田のプレッシングを呼び込み。
そしてすかさず右へ展開ののち縦パスを通すという、「疑似カウンター」といえる好機の作り方。(それでもパスは全部地上で完結したものでしたが)
梶川を中継して逆の左へ展開、シマブクがバイタルまで持ち運ぶ状況を作ったものの、シュートでは無く矢村へのラストパスを選択した結果遮断されて実らず。
しかしここ以外に際立ったチャンスは生まれず、遊びのパスを入れても戻しに反応しないという、秋田の我慢に対し困惑が隠せないビルドアップを強いられます。

一向に出て来ない秋田ディフェンスを受け、サイドからの前進一辺倒を強いられる藤枝。
何とかリズムを変えるべく、29分には自陣でのFKの際に素早くリスタートするなど変化を付けるものの然したる効果は出ず。
強力なウイングバックを押し出すという定番の手法ばかりななか、45分には新井が右へと張り出し持ち運び、モヨマルコムがハーフレーンに降りて出来たスペースへとスルーパス。
そして走り込んだ久富が奥からマイナスのクロス、ニアで受けた千葉がシュートするも喜岡のブロックに阻まれ。
この場面のような純粋に敵陣での崩しを図りたい展開ですが、秋田の中央の硬さ故にその機会も少なく推移します。

一方秋田は守備面が冴え渡るなか、相変わらず泰然自若として自身の攻めを貫く立ち回り。
そんな中、中盤の底でボールキープして溜めを作る小野原の存在が貴重に映るという具合に、攻撃面でも若干の変化が表れていたようであり。
31分には藤枝のクリアボールを拾った小野原、キープを経て左サイド奥へミドルパスを送ってクロス攻勢に繋げ。
2本目の(村松の)右からのクロスを梶谷が合わせヘディングシュート。(枠外)
全体として藤枝のボール保持(しかし有効打は少ない)の場面が多く、機会は少ないながらもしっかりとゴールを目指す姿勢は変わらず。

そんな展開を経て、スコアレスで前半が終了。
藤枝はハーフタイムで動き、梶川→浅倉へと交代します。
流れを変えるよりは、同ポジションながら年齢差が12という事実から、将来を見据えての采配だったでしょうか。

後半、秋田はキックオフでの攻めでいきなり好機を作る(小松狙いのロングパスが流れて右奥を突き、村松のクロスでCKに)と、前半の藤枝同様セットプレー攻勢に入り。
村松が何度もロングスローの体勢を取り、時には短く入れる変化も交えるという具合に揺さぶり、フィニッシュを膨らませ。
後半3分にはそのロングスローのこぼれを、諸岡がミドルシュートに持ち込むも枠を捉えられず。
7分にもロングスローからニアで梶谷がフリック、繋がらず藤枝が拾って前進を図った所、村松自身が奪い返してすかさずミドルシュート。(枠外)
撃てなかった藤枝とは違い、遠目からながらシュートで終わるシーンを連発する辺りが、ロングスローの「本家」の面目躍如といった所でしょうか。

一方押し込まれ続けた藤枝、最初の好機は9分でしたが、こちらもモヨマルコムのロングスローと対抗姿勢。
秋田ディフェンスが釣られない以上、純粋にサイドから前進を図るしかないと割り切り。
13分にGK北村から右へ展開して縦に速く運び、久富のスルーパスからモヨマルコムが奥からクロス。
これがブロックを掠め、左ハーフレーン・エリアすぐ手前へ流れるボールになると、走り込んだシマブクのミドルシュートが炸裂。
GK山田がセーブし、右へこぼれたボールをモヨマルコムが追撃しますが大きくふかしてしまい決められず。
何とかフィニッシュに持ち込めるようにはなったものの、同時に両WB頼みかつ、繊細さに欠けるようにも映りました。

そして狙い通りの攻めで無い以上ペースを失うのも早く、以降秋田の独壇場という展開に。
14分にベンチが動き梶谷→水谷へと交代した秋田、畑がFWへ・佐藤が右サイドハーフへ回るというポジションチェンジも交えたうえで攻め上がります。
藤枝の前進を敵陣で阻み攻撃権を確保し、時にはボールキープやバックパスを交えて隙を伺うという、やはり以前の秋田のスタイルから幾ばくか進化が図られたようであり。(といっても、前回のこのカードでもその傾向が強かったですが)

15分に右サイドで溜めを作った佐藤から村松→畑と経由して右ポケットを取り、グラウンダーのクロスがファーに流れた所を水谷がシュート。
これがブロックを掠め、パス&ゴーを止めなかった村松がゴール前右で跳び込む絵図となりますが、僅かに合わせきれず右へと外れ。
その後も急所を突くボールが何度もエリア内へ送られ、ひたすら脅かされる事ですっかり専守の体勢へと押し込まれる藤枝。

そして19分、ここも敵陣左サイドでボール確保した秋田は、蜂須賀や小野原のボールキープを交え藤枝をリトリートに追い込んだのが最初に採った手法。
最終ラインへの戻しを経て逆サイドへ展開と、一見保持の姿勢からの攻めという秋田らしくない絵図から上げられた小野原のクロス、跳ね返りを同サイドで拾って尚も繋いだ末に今度は村松のクロスと分厚い攻撃。
中央でボレーシュートにいった小松は合わせきれずも、右へ小さくこぼれた所に佐藤が走り込んでシュート。
この決定的なフィニッシュを、至近距離ながらGK北村がセーブしましたが、跳ね返りをすかさず小松が詰めて勝負あり。
怒涛の攻勢を最後は連撃で締める形で、先制点に辿り着きました。
そしてキックオフの前に、佐藤・畑→大石・河村慶へと2枚替え。

悪い流れを跳ね返せず、とうとうビハインドとなってしまった藤枝。
何とか反撃を試みるも、その後もそれを振り払う事は出来ず。
25分にベンチが動くものの、芹生・河上を投入(千葉・世瀬と交代)と、今季出場機会の少ない者に託すという格好に。
やはり疑似カウンターが出来ずに、ポイントゲッターの矢村に好機をお膳立て出来ないのが致命傷といったこの日の展開。
ボールを受けても秋田ディフェンスに直ぐさま対応される位置であり、何度も潰されてしまい、それ故にフラストレーションも露わにする場面も見られます。

そんな矢村の状態が試合絵図にも波及。
30分に自身の下で攻撃が途切れ、秋田が左サイドを前進するなかプレスバックして責任を取りにいく矢村。
しかしキープする諸岡を足払いのように倒してしまう格好となり、これに諸岡の方が激昂して主審(田中玲匡氏)に止められるという一幕が生まれてしまい。
その後33分、裏へ送られたロングボールに対し、小野原と競り合いながら追いかけて確保した矢村。
その勢いのまま小野原に倒される格好になると、反則の笛が鳴って両軍ともにヒートアップとまたもや起きる一悶着。(小野原に警告)
秋田サイドも、矢村に自由にやらせればどうなるかは十分熟知しているような、タイトな寄せで凌いでいた感は隠せません。
(31分に藤枝は久富→前田へと交代、右WBに入りモヨマルコムが右センターバックに)

これで得た左ワイドからの藤枝のFK、クロスを入れると見せかけて新井は笛が鳴ったその刹那、左奥へとショートパスを蹴り出し。
同サイドで細かく繋いだ末に、前田の角度を付けたクロスがゴールに向かったものの、GK山田が抑えて実らず。

その後も、秋田が攻守に冴え渡り。
得点ならびに決定機を許さず、その合間に前進を図って相手を自陣に押し込む立ち回りを貫きます。
ゴールキックでロングフィード→小松フリックという、本来の秋田らしい定型の手法もそれに一役買い、守勢一辺倒を避ける事に成功。

しかしその小松が足を攣らせてしまったのが42分で、それに合わせて最後の交代。
小松→青木へ交代するとともに、村松に代えて今季初出場となる大ベテラン・加賀を投入。
蜂須賀(結局フル出場し、花を添える)のような、最後の花道なのかはまだ不明ですが、ともかく試合を締めるためのピッチに立つ事となりました。
(藤枝も同時にシマブク→榎本へと交代)

突入したアディショナルタイム、秋田はそんな采配とは反して、尚も果敢にゴールへ向かうという立ち回り。
道中はボール保持の姿勢も見せる変節が垣間見えたものの、抑えていたが故の反動が最後の最後に露わになった感があり。
青木の左ポケットへのスルーパスに、走り込んでグラウンダーのクロスを入れたのはボランチの小野原と、総員前掛かりの精神を発揮した末にクリアボールを拾って水谷がシュート。(ブロックされてGK北村が抑える)
この辺り、今後更なる上で昇格争いに加わるという状況でもこれを貫くのかどうか、議論の対象となるシーンとなるでしょう。

結局1-0のまま試合終了の時を迎え。
得られた勝ち点3により10位浮上と、トップハーフに滑り込んでシーズンを終えた秋田。
思えば今季初めて観た試合(2節・山口戦、0-2)で、何度も疑似カウンターから決定機を作られるシーンを見て、正直「J2も今季限りか……」と思ってしまったものであり。
しかし弱点を修正し、縦一辺倒という立ち回りも微調整が図られるなど、着実に成長を果たした末のこの順位は見事という他ありません。
シーズン後には吉田謙監督の続投も発表され、「秋田一体」の進化はまだ止まらないという来季以降となるでしょうか。

Jリーグランキング にほんブログ村 サッカーブログ J2へ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TV観戦 天皇杯 第104回全日本サッカー選手権大会決勝 ガンバ大阪vsヴィッセル神戸

2024-11-25 16:00:55 | サッカー視聴記(その他)

<両軍スタメン>

  • コイントスでコートチェンジ。

前回の天皇杯の記事 -準決勝・神戸vs京都(2-1)

リーグ戦では、ともに上位に位置するクラブ同士の対決となった決勝戦。
最大の下克上といわれた2年前(甲府vs広島)、低迷期に入ったクラブ同士の前年(川崎vs柏)とは、一味も二味も違った内容になる。
そんな、タイトル以外の期待感を持っての視聴となりました。

それでも、自分たちの形に持っていくための、根底の部分で球際の争いが求められるのが真剣勝負の場であり。
前半2分、中盤でのボール争いから倉田が抜け出しドリブルに入った所、井出に倒されて反則。
この遠目からのフリーキックではや放り込みを選択するガンバ、早期に相手にプレッシャーを与える事を選択。
キッカー鈴木がエリア内へ送ったボールを、日差しを気にして帽子を着用するGK前川がパンチングで掻き出すも、尚も確保して再度山下が放り込み。
これを左ポケットで合わせて収めた福岡がそのままラフに高いクロスと、徹底してエリア内で浮き球勝負を挑み。(結局シュートは打てず)
対する神戸も、6分に左スローインで初瀬がロングスローと、たとえ上位同士でも原始的なぶつかり合いが目立つ運びとなった立ち上がり。

しかしこうした立ち回りも、オープンな展開を避け、かつスムーズに本来のスタイルへ移行するための布石の感があり。
9分のガンバ、敵陣でポゼッションに入ると右→中央→左と半円状にサイドを振る定型のパスワークを経て前進して左奥を取り。
神戸サイドも守備を固める中ここからのクロスにしても、奥からか戻して手前からかの選択肢がある場面で、後者を選択して上げられた山田康のクロス。
充分な溜めを経たため、これに合わせたのは後方からボックス内に上がったダワンと、神戸の裏を掻くフィニッシュとなります。
GK前川がこれを何とかセーブ、右にこぼれたボールを山下が折り返し、再度シュートに持っていきましたが(山下が)オフサイドで途切れ。

まず有効打を放ったガンバが、主導権を握るかのようにその後ボール保持の色を強め。
敵陣への進入から、先程と同様に後方に戻して半円状でのパスワークという流れでのサイドアタックを繰り広げ。
16分にその攻めで得た右コーナーキックから、クリアが小さくなった所を山田康のボレーシュートが襲い掛かるも、ゴール左へ際どく外れ。

一方神戸は後れを取った事で、そんなガンバの好循環を折る作業が求められ。
19分にGK前川からのボール保持で、前川がガンバ2トップの間を通すパスでいなす事に成功。
左サイドで溜めを作った大迫から、こちらも最後方で半円状に繋いでサイドを変えた末に、武藤のアーリークロス気味のスルーパスに足から跳び込む宮代。
GKの手前で掠るように合わせるという、際どいフィニッシュになりましたが一森が何とかセーブしてCKと、劣勢ななかで放った一撃。
これで勢いに乗った神戸は本来のハイプレスが冴え始め、21分にはガンバの最後方でのボール保持に詰め、GK一森のフィードを大迫がブロック。
こぼれ球を確保し、左ポケットへ切り込んだ宮代がクロス(シュートには繋がらず)と、チームの長所による好機も齎されました。

今度はガンバが我慢を強いられる時となりますが、ポゼッションが乱れ始めた事で落ち着く時間は無くなり。
神戸はロングボール主体の攻撃ながら、そのクリアボールを悉く確保されるため相手の攻撃機会の減少もままならずと、本来の姿から徐々にかけ離れた状態に。

狙い通りにペースを確保した神戸は、逆に1点が欲しい時間帯に。
32分にガンバの左スローインを酒井が跳ね返してからの繋ぎで好機を迎え、短い縦パス→レイオフの繰り返しでフィニッシュの隙を探し。
そして右ポケットから大迫が低いクロスを選択すると、中央の宮代の前でクリアされたボールをファーで武藤が拾いシュート。
半田がブロックするも尚も確保、左からクロス→クリアののち右サイド奥へと切り込んで酒井が今度は高いクロスを入れ、ヘッドで合わせたのはまたも武藤。(枠外)
リーグ戦で連覇を狙うクラブに相応しい、前線のクオリティが徐々に発揮されていき。
43分、ロングボールを回収したガンバに対するゲーゲンプレスで奪取に成功、右サイドで確保した武藤からのサイドチェンジで、左で受けた初瀬が奥へ切り込んでクロス。
ファーサイドで宮代が合わせる(ジャストミートせず枠外)という具合に、3トップの誰が絡んでもゴールの匂いが漂う状況に。

対するガンバは耐える時間帯ながら、45分に持ち込んだ(初瀬のクロスをブロックしたのちの)カウンターでは、山下の単騎突撃に賭けるという手段しか無く。
山下はその期待に応え自陣から一気に右ポケットまで切り込むも、結局トゥーレルのディフェンスで撃てずに終わるなど、やはり苦しさを拭い去れない攻めを余儀なくされます。

結局スコアレスのまま前半終了。
内容的には、ベストメンバーに近い神戸と、宇佐美を欠くガンバという差異が表れた感のある展開に。
駒落ちを余儀なくされたガンバが何処で仕掛けるか。
ないしはこのまま我慢を続けて延長戦を視野に入れた、粘り強い戦いを繰り広げるのかという点が注目される、後半戦の開始を迎え。

再び遠目からのFKで放り込みを選択(後半3分)と、前半のリプレイのような入りをするガンバ。
セーフティに努めていたものの、4分にそのロングボールを初瀬が跳ね返すと、これが最終ラインの裏ならびにボックス内を突くボールに。
そこに走り込む大迫の前で何とか中谷がヘッドでバックパスと、神戸の圧力の前に一手の間違いも許されないプレッシャーに苛まれます。

それ故にダニエル・ポヤトス監督も、流れを変えて仕掛ける選択を採ったでしょうか。
9分という早い段階で、アタッカーの色が強いウェルトンの投入に踏み切り。(倉田と交代)
つまりは我慢を続けるのは分が悪く、試合を動かして先制点に辿り着かんという采配。(個人の推測です)

11分に神戸のCKからカウンターに持ち込んだガンバ、そのウェルトンが左サイドを独力で突破。
それは酒井を猛スピードで追い抜き、さらにスライディングを振りきるほどであり、奥を突いたのちの中央への戻しを経てダワンのミドルシュート(GK前川セーブ)とやりきったガンバ。
この強烈な矛を軸とし、ベンチの思惑を果たさんとするピッチ上のイレブン。

13分、今度はGK一森のロングフィードに入れ替わる形で突破に入ったウェルトン。
しかし付いていった酒井が今度は防ぎ(こぼれてCKに)、二度はやらせないという名選手の面目を果たし。
これにより、新たな敵兵の存在に脅かされた格好の神戸もすぐさまファイティングポーズを取り直します。
直後の14分に井出→佐々木へと交代した神戸ベンチ。
宮代が井出の居たインサイドハーフにシフトと、采配でも手を打ち。

再び、ガンバの好循環を挫いて徐々にこちらのペースに持ち込む展開へ突入した神戸。
16分には敵陣深め右サイドでのボール争いで、ガンバが追い込まれるという形でゴールラインを割りCKを獲得。
その絵図はそんな流れ、並びに試合全体での優劣を決定付けるものでありました。

そして19分、後半は帽子を脱いだGK前川の佐々木を目掛けたロングフィードから、セカンドボールを確保するという定番の流れから好機。
跳ね返しに入った中谷の裏を素早く突き、大迫のスルーパスで左ポケットを取った末に入れられた武藤のクロス。
これが(GK一森が前に出たのもあり)シュートともとれる低く鋭い弾道で入ると、クリアに入った福岡は体に当てるのが精一杯となり、目の前にこぼれたボールをすかさず宮代が詰めてシュート。
最後は前線3人(佐々木も加えて4人か?)の連係という、神戸の象徴のようなフィニッシュでついに先制点に辿り着きました。

反撃に掛かりたいガンバですが、ウェルトンの能力も突破口とならない以上、手詰まり感が強くなり。
下手にボール保持の能力が高い故に、ボールを持たされる展開に陥り同点への機運は高まらず。
それを変えるべく、27分に再度ベンチが動き。
山下と山田康に代え、ファン・アラーノとイッサム・ジェバリを投入。
同時に助っ人2枚を入れ、神戸同様前線のクオリティでどうにかしたいとい布陣に。(坂本がトップ下に降り、ウェルトンが右に回る)

29分、左奥からのスローインで直接ポケットを取りにいくガンバ、こぼれ球を拾った坂本の切り込みでCKへ辿り着き。
ここから二次攻撃を仕掛け続け、クロス攻勢の末に右サイドから仕掛け、アラーノが右ポケットへ切り込んでのクロス。
これをニアでフリーになっていたダワンがヘディングシュートと、何度も仕掛けて出来た隙を綺麗に突けたものの、フィニッシュはゴール右へ僅かに外れ。
悔やまれる決定機逸に、ダワンもすぐさま頭を抱えてしまう程であり。

この直後に神戸も2枚替え、初瀬と宮代に代えて本多とジェアン・パトリッキを投入。
冷や汗を掻いたものの、以降は自身の流れを取り戻して冷静に時間を進めていけば良いという流れに。
すぐさまゴールキックでの再開からロングフィード→大迫フリックという定番の流れで好機を迎え、佐々木がパトリッキとの1タッチでのパス交換を経てシュートに持ち込み(半田がブロックしてCKに)、それが果たされます。
その後もガンバの攻撃を断ち切ったのち、GK前川ロングフィード→ターゲットがフリックorクリアボールを拾うという、準決勝でも存分に見られたロングボールの確保する力を見せ付け。
これだけ真価を発揮できれば、ガンバが掲げる「ポゼッションを攻撃・守備双方で有効利用」という基本方針も、何とも空虚に感じさせられてしまうものであり。

既に相手の手段ならびに心を折る事に成功と、勝利への条件は十中八九手にした感のある神戸。
しかし最後の交代を敢行するという所で、武藤が足を攣らせる仕草を見せ。
これにより大迫を退かせる選択をしていたベンチは一瞬迷い、武藤の続行可能というサインを受けて思い直し。
38分に大迫→山口へ交代と、若干の混乱もそれを最小限にせんとする立ち回り。
それでも諦めないガンバは隙を突きに掛かり、直後またも遠目でのFKによる放り込みから、中央で空中戦に持ち込んだ末にファールトラブルが。
アラーノとパトリッキが空中戦で交錯して両者倒れ込むと、パトリッキが腕を入れたという判定で反則並びに警告を受ける事態、さらに絶好の直接FKを与えてしまう状況に。
この中央からのキック、直接シュートを放ったのはジェバリで、空いた壁の間を通さんとするも掠めた末にGK前川がキャッチ。

折角貰った好機もモノに出来ずの格好に、落胆する暇も無いガンバ、最後は中谷を前線に上げるパワープレイ。
その姿勢を見せた直後の44分に最後の交代を敢行(黒川・鈴木→岸本・美藤、半田が左に回る)と、準決勝(マリノス戦、延長3-2)の再現を狙いにいきます。

パワープレイと言っても、例によって神戸のゴールキックの際は、センターバックとして跳ね返しに入り。
そしてマイボールになるや最前線に上がる、今季の中心である中谷の存在感を象徴するような攻守双方で中心として働くという姿勢。
突入したアディショナルタイム、FKとCKに1度ずつ持ち込み、中谷に向けてボールを放り込むガンバ。
しかし得点どころかフィニッシュにも辿り着けずと、やはり付け焼刃の感は拭えません。

そして最終盤、GK前川ロングフィード→武藤収めで右サイド深めでボール確保に成功した神戸。
佐々木が反則を受けて途切れた所で、決着を告げる試合終了の笛が鳴り響きました。

5年ぶりの天皇杯制覇を果たした神戸。
前回は低迷期の中で、今回はリーグ優勝を狙う道中でのタイトル獲得と、その様相はまさに黄金期に突入したと言っても良い流れ。
今後は一昔前の川崎のような、秩序を発揮する事が出来るでしょうか。

サッカーランキング にほんブログ村 サッカーブログへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DAZN観戦 2024年J2リーグ第38節 いわきFCvsザスパ群馬

2024-11-24 15:00:50 | サッカー視聴記(J2)

※前回のいわきの記事はこちら(36節・水戸戦、1-2)
※前回の群馬の記事はこちら(36節・徳島戦、0-2)

<いわきスタメン> ※()内は前節のスタメン

  • 引退表明しているGK田中が、今季初のスタメンに。

<群馬スタメン>

  • 前節(大分戦、1-2)出場停止だった中塩がスタメンに復帰。
  • 平松が累積警告により出場停止。

2年目ではや「はじめての……」という、昇格争いを体験したいわき。
しかし32節以降未勝利という失速ぶりでモノに出来ずと、その厳しさを味わうに至り。
それでもホーム最終戦を勝利で締める事で、記念すべきシーズンを上昇機運を持って終わりたい所でしょう。

対するぶっちぎりで最下位の群馬、今季のいわきと同様、初めて昇格争いに加わったのが前年。
しかしそれがJ2に参戦してから実に19年目という歴史の長さからか、今シーズン前にはクラブ総出で一気に前掛かりな姿勢を露わにし。
つまりは開幕前に行われたリブランディングであり、これまで再三我慢を強いられた時期からなる反動か、攻めにいくという思いに駆られたのは想像に難くなく。

それが浮上どころか……というのは意外でも無く、前年も開幕前派手に欧州路線をぶち上げた徳島が、そのスケールの大きさを一度も見せる事無く低迷期に入ってしまったのは周知の通りであり。
J2ならびに日本では日常茶飯事ともいえる、身の丈にあったクラブ運営が抜け落ちた者の末路をなぞってしまう、ある意味納得感のある今季の降格劇。
果たして来季を迎えるに辺り、残るのは一面の焼け野原か、ないしは完成した「ザスパーク」を軸に新たな秩序を築き上げるのか。

最後に意地を見せたい……という意味合いのみの試合となった群馬。
その思いが実るかのように、立ち上がりは攻勢に。
それでも好機自体はアバウトな裏への放り込みや、中塩のロングスロー攻勢が目立つのみでしたが、これまでの苦難を振り払わんとする姿勢で主導権を奪う道筋を作れたのは第一歩であり。

しかしその後、二歩目を踏み出す事は永遠になかった、というような結果になるとは思いもよらず。
こうしたスタイルはいわきのようなパワーサッカーの十八番であり、すぐに慣れを示すに至り。
前半7分にコーナーキックを得たいわき、キッカー山下のグラウンダーのクロスからスルー2連発を経て、放たれた谷村のシュートはブロックされて実らず。
しかしすぐさまプレッシャーを掛け、左サイド深めで奪い返して更なる好機(坂岸のクロスがファーに入るも、有馬の反則で終了)と、群馬を自陣に釘付けにし始めます。

11分、今度は逆にいわきのビルドアップに対しハイプレスと、果敢な姿勢は健在な群馬。
しかし柴田が冷静にパス交換からのロングパスでいなし、これを右サイドで受けた加瀬が奥へ切り込んでクロス。
そしてファーで山口が合わせヘディングシュート(GK櫛引キャッチ)と、例によって前線・後方ともに良い所無しという事態に陥り。

そして13分、空中戦から地上での奪い合いを経てボール確保したいわき、乱れた陣形を突くように右から加瀬がアーリークロス。
これを中央で山口が今度は足で合わせると、シュートはGK櫛引の裏を掻くような緩い軌道になり、ゴール右へと吸い込まれます。
あっさり先制点に辿り着いたいわきにより、この日も苦境に陥る群馬。

その後、地上からのパスワークで前進する色を強める群馬ですが、いわきも例外無くハイプレスで対抗。
降格決定後、和田が前年の長倉のような「何処にでも顔を出し、相手選手の間で受ける」役割を務める事に活路を見出すビルドアップですが、この日はその和田まで届けられる事すら稀となり。
いわきの圧力に屈するように、次第に佐川狙いのロングボールへの傾倒は避けられずと、立ち上がりの攻めの機運はすっかり雲散霧消に。

逆に守備面は、これも降格決定後は純正4-4-2の色を強めるという立ち回り。
しかし巧くいかない流れを受け、5バックで守るかという意識が顔を出した結果曖昧になる場面も多々見られ。
25分のいわきの攻撃、大森からのロングパスを加瀬が右ワイドで受けた場面、群馬はサイドバックの中塩が中を締めており。
しかしサイドハーフの川本は前線に加わるのか、5バックとして降りるのか実に中途半端な立ち位置で、結果フリーで受けられてここから決定機を作られる格好に。
加瀬は中塩に詰められる前に例によってアーリークロスを送ると、ファーに流れた所を山口が折り返し、クリアされるも天笠に当たって跳ね返る不運が絡んで有馬に収まり。
必死に掻き出さんとするディフェンスをかわして放たれた有馬のシュートが、GK櫛引のセーブを掠めてゴールバーに当たって跳ね返る際どいフィニッシュとなります。(尚も山下が拾って追撃もブロック)

その後も怒涛の攻勢を見せるいわきに対し、群馬は24~39分まで全く好機を作れない状況に。
37分には敵陣でのボール奪取から柴田が左からアーリークロス、これを谷村が合わせてのヘディングシュートをGK櫛引が脚でセーブと、今季幾度も陥った守護神頼みの様相の色が強くなり。

追加点は許さなかったもののズルズルと時間を浪費し、前半もアディショナルタイムに。
中塩ロングスロー→佐川フリックで好機になりかけ、再度入れたクロスの跳ね返りを確保してボール保持に入った群馬。
エドオジョンが左奥へと切り込んでクロスと、何度もチャンスボールを送るものの跳ね返され、結局は天笠の無理目のミドルシュートで終了。
火力不足のなか何とかファーストシュートを放ったという、前半最後の攻撃となりました。

1-0で折り返しとなり、共に交代無く迎えた後半戦。
現在の順位が示す通り群馬の劣勢ぶりは明らかで、ここから巻き返しのための駒・策が必要な所ですが、それが簡単に見つかればこの順位に居ないのは確か。

そんな状況でも、試合再開を止める事は出来ず。
それなりに微調整が図られたか、ボール保持の際に一工夫を見せる群馬。
仙波が右サイドで降りて最終ラインからパスを受け、出口兼エドオジョンを高目に上げる役を務め、突破口を図ります。
ある程度の成果は出、前半同様立ち上がりに攻勢に入る事に成功。
後半6分に持ち込んだ左CKから、川本がファーで放ったヘディングシュートはサイドネット外ともう一息というフィニッシュ。
8分には降りた佐川のポストワークから右へ展開、仙波スルーパス→エドオジョン右奥からクロス(グラウンダーでGKとDFの間を突くも、川本には惜しくも合わず)と、変形の通りの好機を生み出し。

しかし好循環もここまでで、9分に谷村に対し反則を犯した中塩が警告を受けたのを契機に、再びいわきのターンに。
1タッチパスをテンポ良く繋いでいく崩しでサイド奥を伺う攻撃で、フィニッシュには結び付かずも、群馬の狙いを折る事に成功。
それによる、僅かな希望に縋るといった相手の心も折られた感がありました。

そういった状況で、お互い選手交代を図る時間に。
いわきの方が先に動き、15分に加瀬・坂岸→五十嵐・大迫へと2枚替え。
すると群馬は17分に3枚替えを敢行、北川・川本・和田→樺山・山中・風間へと交代。
風間がボランチに入る事で仙波がトップ下、それもセカンドストライカー気味だった和田とは異なる、4-2-3-1のトップ下という感じに。

交代が交わった事で、群馬は攻撃時3バックの色を強めたビルドアップ。
仙波のポジションが変わったため、樺山が中に絞る事でエドオジョンを高目に上げるというシステムに。
20分に左サイドに人数を掛けて前進していき、クロスの跳ね返りを繋いだ末に仙波がミドルシュート(枠外)と、有効打に繋げる事で再度光明が見出されたような状況となったでしょうか。

しかしそれも一瞬で、ウイングバックを揃って代えたいわきの圧力が増大した事もあり、プレスに屈する状態へ逆戻り。
23分にあろう事か、果敢に前に出てきた大迫がエリア内でボールカットする絵図が生まれ。
こぼれ球をそのままシュートにいった山口が空振りに終わった事で命拾いしたものの、またも苦境に陥った群馬。
樺山が絞った位置を取る事で、彼に付く大迫も中央寄りとなった分、ハイプレスに加わり易くなる副産物が生まれてしまったという印象でした。

そして26分に再度カードを切る群馬、佐川→河田へと交代。
これは完全に「ターゲットを務めた佐川の燃料切れ」というような意味合いで、ロングボールを攻撃に繋げる事も出来なくなり手詰まり感は一層強くなり。

そんな相手を尻目に攻めるいわき、29分に右サイドからミドルパスをフリックした五十嵐が、素早く前を向いて有馬のスルーパスを受けにいく体勢に。
これは遮断されるも、右ポケットへこぼれたボールを拾った谷村が勢いのままカットインからシュート。(GK櫛引セーブ)
ペースを握っていた割には後半初めてと言ってもいい有効打でしたが、ここから劇的に様相が変わる試合展開。
群馬に一縷の望みも許さないという具合に、攻撃権を握り続けます。
(29分に柴田→大西へと交代)

加瀬より突破力の面では劣るというイメージの五十嵐ですが、途中投入されたこの日は周囲との連携もあり、度々サイド奥へ進入。
32分にもスルーパスに走り込んでクロスに辿り着き、ブロックされるも右CKに持ち込み。
そしてキッカー山下がニアに上げたクロスが綺麗にゾーン守備の合間を縫い、そこに入り込んだ山口が合わせヘディングシュート。
完全に棒立ちを余儀なくされた群馬ディフェンスを他所に、ゴールネットに突き刺して追加点を挙げました。

その後も勢いをもって攻め上がるいわき。
群馬はそれを凌ぐのに精一杯で、34分にはいわきのパスワークの中で樺山が大西を倒してしまい、アドバンテージののちに警告と守勢故の被害も膨らみ。

そして終盤を迎えるという40分、両ベンチとも最後の交代を敢行。
群馬が仙波→齋藤へ代えたのに対し、いわきは生駒・谷村→加藤悠・熊田へと2枚替え。
加藤悠が右WBへ入り、再三群馬を掻きまわしていた五十嵐が右センターバックへと降り。(下田が左に回る)

時間も押し迫り、何とか一矢報いたいという、今季そんな気分を味わったのも何度目かと考えさせられる状況になる群馬。
しかし迎えた結末は無慈悲であり、43分にまたも大迫が中央寄りでパスカットし、そのままミドルシュート(枠外)といわきの圧力は衰えを知らず。
そして直後の44分、いわきはクリアボールを山口・熊田の2人での1タッチによる繋ぎで、スルーパスに抜け出した熊田がエリア内でGKと一対一の状況を迎えます。
この場面で冷静に横パスを選択した熊田、走り込んだ有馬が合わせたシュートが無人のゴールに転がり込み。
文字通り止めとなる3点目で、この試合ならびにシーズンの終了が彩られました。

それでも攻める事を止めないいわき、直後の45分にも決定機。
ここも1タッチかつアバウトな浮き球の繋ぎを経て、右ワイドで受けた加藤悠がカットイン。
そしてポケットから放たれたシュートを瀬畠がブロックと辛うじて防ぐ群馬、クリアが小さくなった所を追撃される(山口がペナルティアークからシュート)も、GK櫛引がキャッチ。
結局この日も、最も目立っていたのは守護神という展開は避けられませんでした。

突入したアディショナルタイム、いわきは下田が足を痛めてしまい、代わりに大西が最終ラインに回るというアクシデントが。
これ以降好機は打ち止めとなりましたが、「今日はこれぐらいにしといたる」といった思惑も感じられ。
残された時間で何とか群馬は攻め上がりますが、パスミスもありフィニッシュは生まれませんでした。

結局3-0で試合終了。
いわきは文字通り景色が広がるようなJ2・2年目となりましたが、同時に群馬が今季味わった「昇格争いの翌年の低迷」を避けたいシーズンにもなる翌年。
この勝利が、その危惧を振り払うものとなるかどうか。

一方の群馬、終了後に引責?の人事が一気に発表される事となり。
その中で目を引いたのが、引退した細貝が社長兼GMに就任というもの。
OBがトップで舵取りを請け負うという前向きな思いと、「とうとうそういった手段しか残らなくなったのか……」という後ろ向きな思考が錯誤するものの、再度の昇格への切り札と出来るでしょうか。

Jリーグランキング にほんブログ村 サッカーブログ J2へ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする