※前回の磐田の記事はこちら(36節・岡山戦、1-2)
※前回のヴェルディの記事はこちら(38節・大分戦、1-0)
<磐田スタメン> ※()内は前節のスタメン
<ヴェルディスタメン>
- 長期離脱していた梶川が8節以来の復帰、ベンチ入り。同じく深澤も11試合ぶりに復帰、ベンチ入り。
自動昇格枠を巡る3つ巴の対決。
清水・磐田・ヴェルディという3クラブの顔ぶれを見て、「ああ、昔の名門の揃い踏みなんだな」と「クラブ規模で劣るヴェルディが頑張ってるな」とどちらの思いが先に立つか。
そんな訳で、清水と磐田が一年でのJ1復帰を目指している中、割って入って異彩を放っているヴェルディ。磐田の一年間新規登録禁止も別の意味で異彩ですが
2008年以来16年ぶりのJ1を目指す、過去の栄光は何処かに置いて来たという状態であり。
その15年間で様々な事があり、クラブ維持すら覚束なくなる状況もありましたが、ノスタルジックに浸るのはシーズン終了後で良いでしょう。
前節(千葉戦、3-2)は終盤奇跡的な逆転勝利を演じたものの、その得点は決して綺麗なものでは無く。
サイドからのクロス攻勢を執拗に貫き続ける、まさに執念の一言で勝ち点3を奪いました。
それでも追い掛ける立場は変わらず、尚も奇跡が必要ならば起こし続けるしかない中で、アウェイ・ヤマハスタジアムに乗り込み。
試合が始まると、共に目標の2位しか視野に無いというような入りとなり。
つまりはボールに対する激しい寄せと、それをとにかくかわすべくのラフなボールの蹴り合いという絵図が描かれます。
その副作用というべきスローインの量産から、磐田は前半5分に好機。
右サイド奥での執拗な繋ぎを経て、スルーパスで右ポケットへ走り込んだ松本がクロス、逆サイドへ流れた所をドゥドゥが再度クロス。
これをジャーメインが合わせたものの、放たれたヘディングシュートは左へ逸れて先制はなりません。
原始的なぶつかり合いを経て、抜け出すのは個人の力に勝る磐田か、ないしは前節同様の乱戦に持ち込まんとするヴェルディか。
そんな展開を想像していた刹那、ファーストシュートを放ったジャーメインをアクシデントが襲います。
こぼれ球を追い掛けていったジャーメイン、林との交錯で倒れ込むと、その際に足を変に捻ってしまった影響で動けなくなり。
これから試合を動かす(放送席でもこの日の注目選手として扱っていた)どころか、早々に途中交代を余儀なくされる無念の一日となってしまいました。
代役の1トップには後藤が起用され。
そんなトラブルもあり、白兵戦のなかペースを握らんとするヴェルディ。
度々起こるデュエルにより、例によって磐田は松原が苛立ちを隠せないという様相を見せるのを尻目に先制を狙い。
15分に染野の前進が鈴木雄に反則で止められ、中央からの直接フリーキック。
距離は結構あったため、キッカー中原は放り込みを選択すると、その染野がヘディングシュートを放ちましたがGK三浦がセーブ。
以降も攻め上がるヴェルディ、敵陣で攻撃が途切れてもすかさずのゲーゲンプレスで磐田に主導権を渡さず。
19分には左サイド深めで磐田がボールを確保し、凄まじいプレッシャーを受けるなかドゥドゥがヒールパスでそれを脱出させるという苦しそうなシーンも見られ。
それ故に先に試合を落ち着けようとしたのは、当然ながら磐田。
中々ボールを繋げられれない中で、23分頃から鹿沼・上原のドイスボランチが縦関係の位置取りを見せる等、ビルドアップでの修正を図り。
25分での繋ぎは、最終ラインで中央→右→中央と渡し、左を窺う姿勢からグラッサが中央へ斜めの縦パス。
山田大フリック→後藤ポストプレイ→松本と渡って左へ展開し松原が前進に入るというもので、ヴェルディの最前線に中央への意識を高めさせたうえでサイドを激しく振りにいったでしょうか。
結局ここでの攻撃は、左サイド奥まで進んだもののそこからの繋ぎを遮断されて実らず。
ビルドアップの下地を作らんとした磐田ですが、28分にはドゥドゥが敵陣で反則気味にボール奪取してショートカウンター。
拾った上原がドリブルでそのままエリア内を突いてシュート(ブロック)と、やはり最短距離での攻撃の方が効率は良く。
しかし防がれた結果ヴェルディがカウンターに持ち込む(河村が右サイドでドリブルからカットインを経て、こぼれた所を稲見がミドルシュート・枠外)という具合に、反動の怖さが常に付きまといます。
その後はヴェルディもボール保持の時間を増やす等、常時ハイテンションな姿勢を貫く事は不可能であり。
お互い落ち着きを見せた事で、30分台はフィニッシュが放たれる事は無く、前半も終盤戦へ。
43分の磐田、右サイドで鈴木雄のミドルパスを山田大が収め、その後戻しを経て鹿沼縦パス→松本ポストプレイと同サイドで上下に激しく振り。
そして中央への展開を経て、ドゥドゥがペナルティアークからシュートを放ちましたがGKマテウスのセーブに阻まれ。
しっかりとした組み立てで好機を作り、その後のコーナーキックではクリアボールを拾った齋藤のハンドをアピールするもPKとはならず。
ヴェルディもアディショナルタイムに、GKマテウスからショートパスの連続で左サイドを前進。
加藤の縦パスはカットに入られるもそれを拾って継続と、繋ぎの分野でも泥臭さを見せていき。
そして入れ替わりで左奥を取った稲見がマイナスのクロス、クリアボールを拾ったのち再度の齋藤功のクロスもクリアされてCKに。
ここからの二次攻撃でも長らく繋いだ末に再度左サイド奥を取った齋藤功がクロス、ブロックで方向が変わるも加藤→稲見と経由し、河村がシュートに辿り着き。(ブロック)
終盤にはお互いパスワークから好機を作る流れとなるも、得点は入らず前半を終えました。
共にハーフタイムでは交代無しを選択する中、1時間前のキックオフとなった2位・清水は(熊本に)敗戦という結果に。
これにより文字通り2位浮上がかかる試合と化した中で、迎えた後半。
磐田はキックオフからの攻撃でGK三浦が左へロングフィード、これを後藤が足を伸ばして繋ぎ、拾ったドゥドゥがクロス(クリア)と形にします。
ここから磐田がペースを握り、最終ラインが受けるヴェルディのハイプレスもいなして好機を作り。
次々とアタッキングサードまで進入していき、ヴェルディを守勢に追い込みます。
後半4分には一旦攻撃が途切れるも、伊藤槙が前に出てボール奪取し継続、CKを得るなど得点まであと一息という状況に。
しかしこの右CKから齎されたのは、ヴェルディの得点でした。
キッカー上原はニアに低いクロスを入れ、中央へ流れた所をグラッサが拾い。
2タッチ目でポストプレイしたものの、ダイレクトでの叩きをシュートにいくつもりで足を振ったドゥドゥは空振りしてしまい。
すると拾った中原がドリブルした事でヴェルディがカウンターに突入し、中央を一気に切り裂いた末に左ポケットにスルーパスしたのちも走りを止めない中原。
走り込んだ齋藤功の折り返しをそのまま合わせシュート、GK三浦がセーブした跳ね返りをすかさず詰めたのは、同じく止まるのを止めなかった林。
強烈なスピードで完遂させ、とうとう試合を動かしました。
磐田はゲーム支配に成功しつつあっただけに、助っ人2人の意思疎通の乱れが悔やまれる事となり。
反撃に掛かる磐田ですが、ビハインドとなった影響は大きく。
10分には右サイドで鈴木雄→松本のパスが遮断されると再度ヴェルディのカウンターとなり、カットした加藤がそのまま一気にドリブル。
そして左ポケットへのスルーパスに染野が走り込みましたが、ここはGK三浦が抑えて何とか防ぎ。
後半開始からここまで磐田の攻撃機会9度に対し、ヴェルディはカウンターの2度以外は全く無しと、「ゲームを支配するも、相手のカウンターに沈む」展開が現実のものとなりかけていたでしょうか。
しかしヴェルディベンチの方が先に動き、12分に齋藤功・河村→平・山田剛へと2枚替え。(加藤が左サイドハーフに上がる)
激しいサッカーを貫くのは、やはり消耗激しいものであり。
それを見る形となった磐田も、15分にベンチが動き松本・山田大→藤川・古川へと2枚替え。
2列目の立ち位置が一新され、右=ドゥドゥ・トップ下=藤川・左=古川となりました。
早速威力を発揮したのが古川の突破力で、17分に左サイドをドリブルで突き進み奥でカットイン、ポケットからマイナスのクロスを入れた事で好機を演出。(クリアされた後も繋ぎ、右からのクロスのクリアボールを松原が拾いシュート・ブロック)
19分にも左ポケットを突いてカットイン、今度は自らシュートを放った古川。(ブロックされたこぼれ球を上原がシュート・枠外)
その威力に掻き回される格好となったヴェルディ、すかさず加藤→綱島へと交代(森田が左SHへシフト)して守備を固めんとします。
その後23分に、再び磐田の攻撃をエリア内で切ったのち中原のドリブルでカウンターに持ち込むヴェルディ。
今度は早めの仕掛けを選択し、スルーパスに走り込んだ染野がダイレクトでロングシュートを狙う(右サイドネット外側)も惜しくも決められず。
しかし古川の突破力を警戒させた磐田は、逆の右からの攻撃を続け。
それが結実したのが直後の24分で、ドゥドゥの前進から中央へ展開し、受けた松原がミドルシュート。
GKマテウスにセーブされるもクリアボールをドゥドゥが拾い、カットインを交えながのパス交換でフリーとなった上原がポケットで持つ決定機に。
そしてワンテンポ置いて放たれたシュートが豪快に左サイドネットを揺らし、同点に追い付いた磐田。
古川の逆サイドでの攻めのみならず、彼がワイドで張るのを受けて松原が中央で好機に絡むという具合に、効果が最大限に発揮されたゴールだったでしょうか。
同点となった事で、地力に勝る磐田が(追い付いた勢いも得て)有利となったのは明らかであり。
28分には再び右サイドからの攻めでドゥドゥが奥を突き、ディフェンスに遭いスローインとなったのちも素早くリスタート。
受けた藤川がカットインでポケットを突き、マイナスのクロスをニアで合わせたのは古川。
しかし放たれたシュートは右サイドネット外側と、惜しくもモノに出来ず。
ヴェルディは劣勢をカバーせんと、磐田のボール保持に対し一層圧力を掛けてプレッシャーにいき。
それでも32分にはGK三浦からの繋ぎで、磐田選手はそれを縦パス→ポストプレイなどのダイレクトプレイで紙一重でいなしていくなど、「各人の頑張りで戦力差を埋める」行為の限界も露わになり始めます。
最早守勢のなか凌いでカウンター、というのが唯一の勝ち筋に見えたヴェルディ。
32分にその通りにカウンターチャンスが訪れ、クリアボールを拾った鈴木雄のトラップ際を山田剛が奪って抜け出す絶好機。
そして脇を追い越す染野にスルーパスを送ったもののオフサイドを取られてしまい、染野はそのままエリア内でグラッサを剥がしシュートまで放ったために警告を貰い。
磐田もヴェルディのハイテンションぶりに応戦してきた結果か、ここから急激にペースを落とし。
パスが繋がらなくなり、中盤~自陣でカットされてショートカウンターを浴びるシーンも増え始めます。
ヴェルディサイドも、39分に森田が上原との激突で痛んで2分近くも倒れ込む事態が発生したためか完全には流れをモノに出来ず。
終盤には前述のカウンターチャンスも何度か見られましたが、スルーパスの精度も乱れがちで疲労度の高さを感じるのみに終わります。
その終盤のベンチワークは、磐田は42分に鹿沼・ドゥドゥ→藤原・ゴンザレス。(後藤・ゴンザレスの2トップによる4-4-2に)
ヴェルディは43分、森田・林→梶川・山越。
勝負のATも目前に迫った所で磐田が、縦パスに入れ替わったゴンザレスがエリア内を窺う好機を迎え。
しかしクリアに入った山越をチャージする結果となり、得点どころか警告を受ける事となったゴンザレス。
その山越も1分以上倒れ込むに至った事で、目安(6分)よりかなり長めになるのが予想されたAT。
古川のドリブルを反則チャージで阻止した谷口も警告を受ける等、劣勢ぶりは隠せないヴェルディ。
しかし磐田もパスの精度を欠き、強引な繋ぎに活路を見出す他無く。
ヴェルディのクリアを鈴木雄がヘッドで跳ね返すと、藤川が逆向きでのヒールでダイレクトで裏へ送り、それを後藤が受け。
ディフェンスに遭い倒れるも、こぼれたボールをゴンザレスが拾いシュートを放ったものの、これも後藤がオフサイドを取られた事で無効となります。
その後ヴェルディにもGKマテウスのロングフィードからエリア内へ運ぶ(中原が左ポケットからクロスも繋がらず)シーンが見られるなど、乱戦に相応しい様相に。
そして7分台が近付いた所で、試合終了を告げる笛長り響きます。
熱狂ぶりが冷めやらない状態故に、そのATが短いという異議が磐田・横内昭展監督、ヴェルディ・城福浩監督の双方から飛ばされる事態となり。(審判団の言い分(予想)は、山越が倒れたのはATに入る前だった事で既に加算済みだったという所でしょうか)
お互い2位浮上のチャンスを失ってしまった状況も手伝った、珍妙な絵図となりましたが、引き分けで終了という事実は変わらず。
勝ち点差が1となったものの順位は変わらなかった3クラブ。
残り2試合の相手は、3クラブとも水戸・栃木・大宮のいずれかという運命の悪戯に。
相手サイドにも3すくみが生まれるスリリングな日程となりましたが、運も味方にして2位となるのは何処か。