※前回の磐田の記事はこちら(39節・水戸戦、3-1)
※前回の秋田の記事はこちら(41節・ヴェルディ戦、1-4)
中断明けは無敗と、破竹の勢いのままJ1昇格並びにJ2優勝を決めてしまった磐田。
まさに「最後まで突っ走った」という表現が当てはまるものであり、途中で鈴木政一監督の体調不良・入院という不測の事態が起こっても、ブレる事無く自分達のサッカーを貫き続けました。
その鈴木氏がベンチに復帰し、ホーム最終戦という場で大団円を迎える今季。
一方、「最後まで突っ走った」のならば、この日の対戦相手の秋田もそういったクラブ。
初のJ2を戦い、自分達のサッカーを貫き通した末の残留を確定させ、最終節を迎える事となりました。
磐田は昇格を決めてから2戦未勝利(2分)、秋田は目下3連敗中と、ホッとした訳ではないものの奮わない成績である最終盤。
前回対戦時(13節)は、秋田の特異なサッカーの前に危うく敗戦の危機に苛まれた磐田。(後半アディショナルタイムに追い付いて引き分け)
こうして優勝を果たしたチームですが、立ち上がりは最悪ともいえる成績(開幕5戦で3敗)であり、当時よりもチームの成熟度を増した事をアピールすべき試合となり。
試合開始直後(前半1分)、中盤で藤山が磐田・ルキアンに反則を受けると、早速遠目の位置からフリーキックを放り込みに掛かる秋田。
さらに右コーナーキックを得て、キッカー武のクロスをニアサイドで才藤が合わせ、ディフェンスに当たりつつもファーに流れたボールを飯尾がボレーシュート。(ブロック)
そのブレない姿勢から、まず好機を一つ作りました。
しかし王者らしく、多少の事では動じない磐田。
上記の秋田の好機では、ブロックののちのこぼれ球で、シュートにいった千田の脚が大井に入ってしまう(反則)というシーンが発生。
大井は痛みを堪えつつ、1分程倒れ込んだのちにプレーを続けます。
そして6分、秋田のプレッシングを受けつつ山本康裕・遠藤・松本・大森が流動的にパスを繋いだ末、山本康のロングパスで一気に裏を取ってエリア内右へと走り込む小川大貴の下へ。
そして小川大から放たれたシュートがゴールネットを揺らし、見事ファーストチャンスで先制点を挙げる事に成功します。
秋田は上記の失点シーンでは、プレッシングでボールホルダーを取り囲みに掛かりましたが、その結果かわされたのちに山本康がフリーでロングパスを出す体勢を作られてしまい。
個の力に差がある以上、なるべく数的優位を作ってボール奪取したいという思惑が感じ取れましたが、ボールも人も動かし続ける磐田のパスワークには分が悪いといった印象を受けました。
ともかくその後もブレる事無く、FK・CKを得ては好機に持っていく秋田。
7分には右サイドからのFK、キッカー武のクロスを中央で千田がヘディングシュート。(ゴール左へ外れる)
9分には自陣からのFKでGK田中が放り込み、バウンドしたボールを拾った三上から、右サイドでクロスを上げる体勢を作り。
藤山のクロスの跳ね返りをシュートしにいった千田でしたが、足を滑らせてしまい撃てず。
こうした秋田の攻撃を凌いだのち、磐田のパスワークが彩られる、という流れで試合が進んでいきます。
主に最終ラインでの繋ぎの最中に、ドイスボランチ(遠藤・山本康)を中心にポジションを変え、相手のプレッシングをいなす体勢を作る磐田のパスワーク。
特に3バックとウイングバックの間に選手を立たせ、サイドに人数を増やす手法を基本線とし、秋田にボールを奪わせずにパスを繋いでいきます。
そして先制点のシーンの如く、プレスが止んだ隙に、一気にロングパスを送っての好機を作っていき。
放送席では「ボランチの遠藤・山本康にプレスを掛け、出所を潰すべき」という解説がされていたものの、そのボランチ2人が様々な所に顔を出す(中盤で持っている間に最前線に上がる事もしばしば)中では、それを果たすのは至難の業といえました。
前半、秋田がボールを奪って好機に繋げられたのは、13分と39分の2度ぐらい。(自分の推計です)
その間に、追加点を奪って優位に立つべく決定機を作る磐田。
22分には右サイドで受けた小川大が細かいタッチで切り込み、カットインを経てエリア手前右からシュートを放つもGK田中がセーブ、秋田DFのクリアボールをルキアンがシュートするも枠を捉えられず。
36分、ここも秋田のプレッシングをショートパスで剥がしたのちに右サイドでスルーパス攻勢、大森スルーパス→小川大スルーパスでエリア内右を突き。
走り込んだ大津がシュートを放つも、右サイドネット外側。
ここまでは磐田ペースといえましたが、その道中は決して楽では無く。
27分には空中戦で伊藤槙人と秋田・藤山が、頭部同士で激突してしまい倒れ込む事態が発生(藤山の反則・警告)し、伊藤槙は脳震盪の疑いと共に止血の措置も取られる事となり。
一度足を踏み外せば、前回対戦時同様に秋田のパワーサッカーに呑まれかねない状況ともいえました。
そして37分の秋田のゴールキックからの攻撃、ロングフィードから中村のフリックを経て武が落とし、拾った茂が左サイド奥へ切り込んでクロス。
このグラウンダーのボールを三上がポストプレイで後方へ送り、走り込んだ中村のシュートが左ゴールポスト内側を叩いてゴールへと突き刺さり。
少ないパス数で正確に繋ぎ、同点に追い付いた秋田。
その後は秋田の流れの中からの攻撃も増え、スコア通りに互角の様相へ。
AT(5分)も最終盤、再び山本康のロングパスがエリア内へと通り、収めたルキアンから右サイドへ展開。
小川大の低いクロスが鋭く中央を突き、逆サイドである松本が足で跳び込みましたが、僅かに合わず。
最後は大外から大外という好機のシーンとなり、前半を終えました。
負傷以降も気合(?)でプレーを続けた伊藤槙でしたが、ハーフタイムを経て交代の措置が取られ。
同時に大井も開始直後の負傷の影響か退き、森岡・今野を投入して後半に臨む磐田。(伊藤槙は脳震盪による交代)
どちらも攻撃機会を得られない流れが長く続いた入りを経て、後半4分に磐田が最終ラインでパスミスを犯し、エリア内で武が拾う絶好機を迎えた秋田。
しかしGK三浦のブロックに阻まれ、武が倒されるも反則は無し。
前節スタメンだったベテラン・今野はともかく、森岡は21試合ぶりの出場であったため、急造的になったのが拙かったでしょうか。
このシーンが幕開けとなり、後半は一転して秋田のプレッシングが冴え渡る展開となり。
磐田は機能不全とは言わないまでも、前半のようなパスワークは陰りを見せ、フリーでロングパスを供給するという余裕も無くなります。
11分には再び敵陣深め右サイドで武がカットした秋田、今度はカットインからミドルシュート(ゴール左へ外れる)とフィニッシュに繋げ。
12分は左からのスローイン、左ハーフレーンで受けた武がすかさずシュート(ブロック)と、少ない手数でゴールを狙うという意識も色濃くなります。
思うようにいかなくなってきた磐田サイドが先に動き、16分に大津・小川大→小川航基・金子へと2枚替え。
それを受けてか秋田もすかさず動き、18分に三上・中村・武→沖野・齋藤・吉田と3枚替え。
この日は前半から流れの中から繋いでの攻撃も目立っていた秋田ですが、主に左サイド重視での展開が目立ち。
右サイドハーフの三上までもが、中央~左でパスワークに絡むほどでありましたが、その三上が退き代わって右SHに入った沖野。
21分にはGK田中のロングフィードからの攻撃で、その沖野が右からクロスを入れるシーンが作られるなど、左重視の形が改められた風でした。
この場面は沖野の速いクロスがエリア内を突くも、GK三浦が判断良くパンチングで掻き出し撃てず。
しかし磐田はこのタイミングで大森が足を痛めて倒れ込んでしまい、続行不可能となり。
同時に飲水タイムが挟まれ、明ける際に大森→鹿沼へと交代する磐田でしたが、今度は秋田にアクシデントが発生。
試合再開というタイミングで稲葉が倒れ込んでしまい、担架で運ばれて交代となってしまいました。(江口と交代)
26分には秋田の中盤でのFKから、再度沖野が右サイド奥からクロスを入れるも、GK三浦にパンチングされ。
この日の勝負手ともいえた右からのクロス攻勢も、中々フィニッシュに繋がらず。
磐田も決定打を欠くといった流れの中、29分に再度空中戦で、磐田・森岡と秋田・吉田が頭部同士で激突。
これが原因で交代となった伊藤槙に続き、代わって入った森岡まで同じ目に……という危惧が生まれたシーンでしたが、ここは1分程で両者起き上がり軽微で済みました。
磐田は鹿沼投入により、3ボランチといった感じのポジションとなったでしょうか。
山本康がアンカー的に振る舞い、遠藤・鹿沼が3列目から前に出て攻撃を展開する役目で、前線はルキアン・小川航のハッキリとした2トップへと移り。
そしてその形から磐田に勝ち越し点が齎されます。
34分、森岡がドリブルで1枚剥がし、鹿沼を経由して受けたルキアンが左サイドから中央へ向かいドリブル。
エリア内を突いたのちバックパスを出すと、受けた鹿沼がエリア手前から果敢にシュート。
これが右サイドネットに鮮やかに突き刺さり、鹿沼にとっては嬉しい初ゴールともなりました。
再度ビハインドとなった秋田、直後の35分に敵陣深め左サイドでボール奪取し好機に繋げる(シュートまではいけず)など、決して諦めない姿勢を見せ。(36分に茂→井上に交代)
40分には中盤からのFK、キッカー江口のロビングがこぼれた所を、中央で沖野がシュートにいきましたがミート出来ず。
続く41分も、磐田のロングパスを跳ね返しての好機、中央から吉田がミドルシュートにいくもこれもジャストミート出来ず。(GK三浦キャッチ)
フィニッシュでのミスが目立ってしまったこの時間帯。
一方の磐田、40分にルキアン→ファビアン・ゴンザレスへと交代。
得点王がこの日もう一つの目標となっていたルキアンが退いた事で、来季のJ1での戦いに向けて彼に次ぐ得点源の発掘へと方針転換したでしょうか。
小川航・ゴンザレスの2トップとなった事で、当然期待が掛かるのはその2人。
ゴンザレスはパスワークを経てエリア内で受けるも、何故かパスを選択してシュートは撃たないなど、助っ人らしくないシーンが散見。
フィニッシュシーンはもう一方の小川航が務め、45分には金子の右からのクロスをニアサイドでヘディングシュート。(GK田中キャッチ)
ATには果敢にミドルシュートを放つも枠を捉えられずと、積極性は見られたものの得点は奪えずに終わりました。
そのATで、磐田が敵陣でパスワークを展開し続け時間を使うという流れも生まれた末に、2-1のままスコアは動かず試合終了の笛が鳴り響き。
この試合での磐田の勝利と同時に、2021年のシーズン終了が告げられ(J3はこの時点で続いていましたが)る事となりました。
その1時間後に試合終了となったJ3では、熊本・岩手の昇格が決定。
今季は宮崎の存在で最後まで危ぶまれたものの、2018年以降は昇格2枠でキッチリと2クラブが上がってくるシーズンが続いており。
2018・2020年は新規組が、2019年は復帰組が2クラブ揃っての昇格でしたが、今季は熊本が復帰・岩手が新規と半々に分かれたのが趣深くもあります。
「今から来季のスタート」という声もある程待ち遠しい来シーズン、どんな形で迎えられるでしょうか。