※前回の鹿児島の記事はこちら(33節・栃木戦)
※前回の岐阜の記事はこちら(26節・長崎戦)
順延になっていたこのカード。(当初予定は7/20)
当初から残留争いを占う一戦として(一部から)注目されていましたが、この終盤に来て20位・22位の、しかも勝ち点差1勝分という直接対決という胸すく形で開催。
30節・琉球戦に勝利して以降、ちまちまというペースながら勝ち点を稼ぎ(2勝3敗4分)、前節でついに21位・栃木に勝ち点で並んだ岐阜。
29節・柏戦の大敗(0-4)を機に完全に守備重視の戦いにシフトしたようで、助っ人のライアン・デ・フリーズ、ジュニオール・バホスは以降サブ要員に。
松本から獲得した當間がディフェンスラインに加わった事で、守備は安定してきたようです。
しかし得点力の低さは変わらず、道中川西の故障欠場もあり(34~36節でスタメン落ち)、「点を獲れなければ引き分け狙い」という戦いをハッキリさせています。
川西欠場中はミシャエルが2戦連続得点の活躍をした事もあり、2引き分けで何とか凌ぎ。
前節(町田戦・0-0)から中2日という厳しい日程ですが、スタメンを変えずに挑みます。
一方の鹿児島、30節・金沢戦に勝利(2-1)して以降は未勝利。
5連敗も経験するなど落ち目の雰囲気が見られましたが、最近は3連続引き分けで降格圏の1個上で踏み止まり。
35節・新潟戦の大敗(0-6)が目をひくものの、それより深刻なのは31節以降わずか3得点という得点力の方だと思います。
ポゼッションスタイルを基調にした攻撃ながら、決定力不足、もっと言えば前年までJ3だったクラブ故の戦力不足は隠せず。
それでいて失点数がかさみ、攻守両面で苦しい戦いが続いている現状。
新潟戦以降守備陣は落ち着きを取り戻しており、その原動力はセンターバック・堤の復帰。
その他、藤澤の故障により酒本が右サイドバックに回っています。
31節・町田戦では、ルカオ・韓勇太(ハンヨンテ)のスタメン共存が見られましたが、1試合でお蔵入り、以降韓が1トップ。
前節からは、出場停止だった中原秀人が復帰(八反田と入れ替え)した以外はこちらも不動のスタメンです。
キックオフ。
ボールを繋ぐサッカーが基本線の鹿児島ですが、新潟戦以降はその意識をやや落としたようで、町田戦・山口戦(32節)と支配率で劣っていました。
前節・甲府戦は56対44と若干上回ったものの、相手が前半で退場者を出したという展開だったため判断できず。
そしてこの日、「相手にボールを持たせるタイプ」の典型である岐阜が相手。
しかし直接対決という冠が付いた(?)この試合、意外にも岐阜は前線からプレスを仕掛けてきました。
もちろん2トップが前田・馬場というベテランコンビのため体力面ではキツそうでしたが、それが逆に「行ける時だけ行く」、そして「ベテラン故の経験で行ける時が解っている」という良い塩梅になっていたようです。
反対に行けない時はすかさずブロック形成、しかもその切り替えが早いため、立ち上がりの鹿児島は遅攻も速攻も仕掛け辛いという展開を強いられます。
鹿児島はファーストシュートこそ放つものの(直接フリーキック、酒本が直接狙うもGKヤン・オレ・ジーバースにセーブされる・前半14分)、以降は岐阜側の決定機が目立った内容。
前半23分、エリアから若干離れた左サイドからのフリーキック、フレデリックのパスを受けた川西がそのままエリア内に進入してシュート。
虚を突かれた鹿児島ディフェンスでしたが、GKアンジュンスがセーブ。
27分、自陣からのロングパスを塚川が落とし、右サイドで受けた前田がクロス。
これを馬場がヘディングシュート、これもGKアンジュンスが横っ飛びで止めるという具合に、冷や汗ものの展開だった鹿児島。
しかし流れを変えるシーンは前半30分。
左サイドでの鹿児島の攻撃、牛之濱のスルーパスに砂森が走り込んでクロスを上げると、これがブロックに入った當間に当たってボールは岐阜ゴールへ向かいます。
辛うじてポストに当たり、今度は岐阜が冷や汗をかいた場面となりました。
以降は鹿児島がボールを握り、岐阜はブロックを形成して耐えるという前半の様相に。
44分には、中原秀のミドルシュートが右ゴールポストを直撃するなど、枠に嫌われる場面が目立っていました。
他にも水本・ニウドがミドルを狙うなど、岐阜の堅い守りを遠目から崩そうとする姿勢が表れましたが、結局前半はスコアレス。
下位同士の戦い故、「ゴール前に迫る機会が少ない凡戦」「守備の穴が目立つもお互い決定力不足に泣く」といった内容になるかと思っていましたが、意外と言っては失礼ですが充実した内容に映ったこの試合。
両チームとも基調となるサッカーが根底にあったというのがその一因でしょう。
堅守のスタイルである岐阜ですが、前への推進力は結構高かったと思います。
中盤の柱となっている川西を中心に何度も決定機を作っていましたし、後方からのロングボールも右サイドハーフ・塚川の頭狙いというのが解り易く、良い意思統一になっていた印象です。
逆に守備では、エリアのすぐ外で鹿児島のパス回しに喰い付きすぎて翻弄される場面が目立っていました。
そのため前半最後の鹿児島のシュートの連発も、ブロックした位置がエリア内と低く、一歩間違えれば危ないと思わされました。
後半が始まると、鹿児島はボールキープ率を高め攻勢に出ます。
後半4分、酒本のクロスが流れた後左サイドで韓が拾い、枝本・牛之濱とともに左→中央→右というボールの流れを作り酒本がミドルシュート。(DFがブロック)
岐阜も6分に反撃。
馬場が右サイドからエリアにに進入する動きを見せ、DFに阻まれたものの、こぼれ球を塚川がシュート。
しかしGKアンジュンスがセーブと、この日当たっている所を魅せます。
その直後の7分、鹿児島は酒本のロングパスが牛之濱に渡り、エリア手前中央からシュートを放った牛之濱。
しかしゴール左に外れてしまい得点ならず。
18分、岐阜はフレデリック→村田に交代し、村田がFWに回って馬場が左SHに。
以降はフレッシュな村田のプレスが効いたか、岐阜がペースを掴みます。
(28分に馬場も北谷と交代)
24分、右からのスローインでの攻め、塚川のパスを受けた川西が絶好のミドルレンジからシュート。
しかし当たりが悪かったか枠外に。
31分には藤谷の縦パスを受け取った前田、そのままドリブルでエリア内に入りシュート。
これもGKアンジュンスがセーブし、牙城を崩せず。
岐阜の時間が続いていたものの、32分に鹿児島は一瞬の隙を突いて決定機。(30分に韓→ルカオに交代)
ニウドが中盤でパスを裁き、牛之濱左へ展開→枝本クロスに頭で合わせたのは、上がってきたニウド。
完全に入ったと思わされた場面でしたが、当たりが悪くシュートはゴール左へと逸れてしまいました。
その後もチャンスを作った岐阜ですが、立ちはだかったのは前半と同じゴールの側のバー(ポスト)。
34分、左コーナーキックから阿部がヘディングシュート、競り合った鹿児島・堤に当たってコースが変わりバーを直撃しノーゴール。
38分には、阿部が左サイド遠目からシュートを狙い、あわやという軌道を描いたもののこれもバーに当たってしまいます。
まさに(画面から見て)右のゴールの枠が大活躍という試合になりました。
終盤はオープンな展開になり激しく攻守が入れ替わり。
鹿児島は砂森のクロスが岐阜ゴールを襲い、辛うじてGKジーバースが弾くというシーンも(44分)。
そして運命のアディショナルタイムに突入。
勝ちを狙いにいった姿勢が見られた岐阜のラストプレー。
鹿児島の攻撃を断ち切りパスを繋ごうとしたもののその矢先に枝本にカットされ、こぼれ球を五領(萱沼と交代で出場)にスライディングで繋がれるとルカオに渡り、ラストチャンスを得たのは鹿児島。
ルカオは迫力あるドリブルでエリア内に入り、そのまま強烈なシュートを放つと、ブロックに入った當間に当たってゴールはニアのポストを叩きつつゴールイン。
そしてそのまま試合終了と、劇的すぎる幕切れで鹿児島が勝ち点3を得る結果となりました。
勝ち点的に、引き分けOKの思いが強いと思われたのは鹿児島。
しかし岐阜側も、残り4試合で勝ち点3差をキープしておくのも悪くない選択肢。
それが為されなかったのは、やはり好ゲームを演じていた故の熱があったからでしょう。
J2下位という立場同士ながら、こうした戦いを観れるならJリーグは安泰だ、なんて事を思わされました。