<両軍スタメン>
- 鳥取は、牛之濱が鹿児島からのレンタル選手なため出場不可。
- 鹿児島の昇格条件は、勝利で無条件で確定。引き分けの場合は3位・富山が勝利で勝ち点で並ぶが、得失点差により富山が7点差以上付けなければ上に立つ。敗戦の場合は富山が引き分け以下。
前年同様に、昇格の可能性を持って最終節を迎えた鹿児島。
しかし追い掛ける立場で、かつ15点差以上での勝利という絶望的な最低条件だった前年とは違い、今季は2位を維持して臨む事が出来ました。
よって、仮に引き分けないしは敗戦で終わっても可能性が高いという状況であり。
それでも何が起こるか判らないのがスポーツの常であり、昇格を願うサポーターが大挙して鳥取のホーム・Axisバードスタジアムへ訪れ。
その中には鹿児島市長・下鶴隆央氏の姿も見られたとの事であり、まさにホームタウン一丸での総力戦。
周知の通り、鹿児島は2019年の1年のみJ2在籍の経験があるクラブ。
その時も最終節を残留争いの渦中で迎え、アウェイの地・福岡に大挙して訪れたサポーター。(当時の記事)
21位・栃木とは勝ち点3差で有利な条件ながらも、敗戦を喫した事で願い叶わず。
逆転で奇跡的な残留を果たした栃木を尻目に、1年で降格する事となりました。
その当時に在籍しており、現在も残っている中原・五領・米澤・野嶽の4人全てがこの日のスタメンとは運命の悪戯か。
そして相手の鳥取も、春先は当時の監督である金鍾成(キンジョンソン)氏(現琉球監督)が指揮を執っていたクラブ。
さらに当時レギュラーの牛之濱が在籍(ただしレンタルなため出場出来ず)と、様々な因縁が交わる事となって迎えた運命の一戦。
有利ながら、それ故に受けに回ってはいけないという思いが先に立つ状況。
それに従い立ち上がりから積極的に仕掛ける鹿児島、前半2分にGK泉森のロングフィードから攻め上がり、パスワークの途中で遮断されてもすかさず奪い返す分厚い攻め。
鳥取のクリアもブロックで防いだ末に、五領が右からカットインシュート、ブロックされた跳ね返りをさらに野嶽がミドルシュートと連撃。
これもブロックされるも、引き続き右スローインから細かく繋いで渡邉が右ポケットからグラウンダーでのクロス。
中央で藤本が合わせたシュートがゴールネットを揺らし、早々の先制点かと思われたものの、シュートコースを変えにいった米澤がGKを遮ったとしてオフサイドに。
いきなりのぬか喜びで幕を開けました。
その後5分にラフなロングボールを増谷がクリアミス、藤本が抜け出したもののGK糸原が前に出てクリア。
そして勢い余った藤本と交錯して倒れ込んでしまい。
しかしこれが受難の始まりと言わんばかりに、9分にも裏へのミドルパスに走り込んだ藤本の前で、同じように飛び出してクリアした糸原。
そしてまたもや藤本と交錯してしまうと、今度はこぼれ球を鹿児島が確保して野嶽のロングシュートが襲ったため素早く戻った糸原。
ゴール上へ際どく外れと、肝を冷やしましたが幸い糸原に怪我は無く。
そんなGK糸原が大忙しという鳥取、そのビルドアップは一言で言えば右肩上がり。
鈴木順が上がる分、サイドハーフの田村が引き気味の位置に留まり。
それでも状況によっては、ノーマルな体勢から左の文が上がるという具合に柔軟性はあり。
16分にGK糸原からの組み立て、左での前進の姿勢から普光院がサイドチェンジ。
受けた鈴木順が前進して奥を突く姿勢ののち、中央への戻しを経て普光院がダイレクトでミドルシュート(戸根がブロック)と、長いパスで左右を揺さぶる攻撃で主導権を握らんとします。
それでも前述のクリアミス然り、後方の乱れが目立つ事で安定せず。
19分の鹿児島の攻撃、右サイドでの細かい繋ぎから中央へ展開、藤本がダイレクトで高いボールを右ポケットへ送り。
走り込んだ端戸がこれもダイレクトでラフに蹴ってのクロスを送ると、またも鈴木順のクリアが乱れた所を米澤が拾い、左ポケットからシュートを放つもゴール右へと外れ。
直後のゴールキックも、GK糸原のフィードが直接五領にカットされ、山口のスルーパスで素早く裏を突かれた事で再度前に出てクリアする糸原。
昇格を目指すクラブとの戦い故に、中々厳しい展開の鳥取。
救いとなったのがトップ下の常安で、特別指定として秋から加わった選手。
それ故に鹿児島にとっては未知の存在で、広範囲に動き回ってパスを引き出しつつ自ら突破を仕掛け、サイド攻撃を重厚なものに仕上げ。
そんな彼のエリア内を抉るカットイン(23分)や、中央からのミドルシュート(29分・岡本がブロック)というフレッシュなプレーにより、ペースを掴まんとします。
それでも、昇格に向けての先制点を欲する鹿児島は流れを渡さず。
30分台から、対角線を突くロングパスを巧みに使い深さを取る事で、守勢に追い込まれる鳥取。
そんな展開の中で36分、右サイドから攻める鹿児島、裏へのミドルパスに走り込んだ五領が奥からマイナスのクロス。
これをニアサイドで山口が合わせシュートし、GK糸原がキャッチ。
すると起き上がってスローを送らんとする糸原が、またも藤本と交錯した事でボールをこぼしてしまい、それを糸原が拾った事で鹿児島がハンドをアピールする事態となります。
流石に藤本に落ち度がある絵図故に、反則という形で再開する事となり。(つまりすぐに笛を鳴らさなかった主審が悪いという事で)
1試合で3度も同じ選手と交錯したGK糸原、その所為でやや珍妙な流れを迎える事となったでしょうか。
終盤の43分、鳥取が自陣で反則を受けると素早くリスタートを行い、世瀬が裏へロングパスを送ったものの走り込んだ田村はオフサイド。
直後の44分、今度は鹿児島が反則を受けたののち素早くリスタートし、野嶽の裏へのロングパスは左奥で米澤に繋がりオフサイドも無く。
そして戻しを経ての端戸のクロス、精度を欠いてファーへ流れるも、GK糸原も目測を誤り跳ぶも届かずという可笑しな絵図に。
その後クリアボールを収めにいった重松が反則を受けると、鳥取はまたも素早いリスタートを選択と、慌ただしい流れが珍妙さに拍車を掛けていた感がありました。
結局前半はスコアレスで終了となり。
鹿児島にとって気になる富山の状況(vsYS横浜)は、1-1という事で恐れていた大量得点は無さそうな雰囲気。
迎えた後半の入りも、前半同様鹿児島のハイテンションぶりが目を惹く流れに。
後半1分に左スローインから細かい繋ぎを経て、中原ポケットへ縦パス→山口受けて短いスルーパス→米澤受けて角度の無い所からシュート。
GK糸原にセーブされるもこぼれ球が中央バイタルという絶好の位置に転がり、すかさず渡邉がダイレクトでシュートしましたがゴール上に外してしまい。
前半と同じく、連撃で幕を開ける事となり。
その後の3分、再び戸根ロングパス→鳥取のクリアミスで拾った藤本が右ポケットからシュート(GK糸原キャッチ)と、前半のトレースのように好機を作る鹿児島。
直後にはパスミスを米澤が拾ってショートカウンター、端戸とのワンツーで左ポケットへ切り込んでシュート(ゴール右へ外れる)と、腰が定まっていない鳥取の後方を突かんとするも決めきれず。
しかし入りの攻勢が終わると、その後はこちらも前半同様、常安を掴まえきれない鳥取の攻撃に手を焼く流れとなります。
そして10分の鳥取の攻撃、敵陣右サイドでボール奪取した常安がスルーパス、受けた田村がポケットへさらに常安を走らせる浮き球パス。
ディフェンスに遭うも右CKとなり、キッカー普光院ファーにクロス→飯泉中央へ落としを経て、乱戦のなかボールを持った常安。
奥へ切り込んだ末に、スイッチ気味に増谷がシュートしましたがこれは常安に当たってしまい決められず。
しかし左へこぼれたボールを常安が拾い、カットインで再びエリア内を突いてシュートと継続、端戸のブロックで右へ流れたボールを普光院が拾う波状攻撃。
押し込まれ続ける事でさしもの鹿児島も焦ってしまったか、この普光院の切り込みに対し中原がスライディングを敢行した結果、普光院が倒れて反則の笛が鳴り響き。
よってPK献上という事態を招いてしまいます。
キッカーはゲットした普光院がそのまま務め、GKが絶対に届かないであろうゴール上部に見事に突きさしました。
鳥取が先制点を挙げ、追い掛ける立場となった鹿児島。
流石に負けてしまっては、4年前と同じく逆転されてしまう可能性が高くなり。
反撃に出たいものの、以降も鳥取の攻勢は続き、動き回る常安に対し四苦八苦。
16分には浮き球をコントロールしながらキープする常安に対し、バックパスした所を戸根がアフターチャージを犯してしまい反則・警告と、それによる被害も広がりを見せ。
その直後、GK糸原のロングフィードを中原が直接カットして攻め上がり。
左からのクロスと見せかけて中央へ戻し、渡邉が左ポケットを突くロビングを送ると、米澤がハーフボレーでダイレクトのクロス。
そしてファーサイド奥で藤本が中央へ落としと、右往左往するボールを最後に詰めたのは中原でしたが、GK糸原のブロックに遭い撃てず。
これにより前半同様に糸原が痛む事態となったものの、その後も無事にプレーを続けます。
一方千載一遇という好機を逃した鹿児島、その後は裏へのロングパスを多用する結果オフサイドを量産したり、無理に打ち込んだ縦パスをカットされたりと焦りが顔を出し。
優位といえる状況の鳥取ですが、この日は牛之濱が出場不可、富樫が離脱中という具合に前線の駒が不足気味。
スタメン1トップは既に今季限りでの退団が決まっている重松で、21分にお役御免となり。
すると代わって投入されたのも退団が決定している大久保と、最終戦らしい送別的起用となりました。
同時に鹿児島も、五領・藤本→武・鈴木翔大へと2枚替え。
何とか1点取りたい鹿児島ですが、25分には文が中盤でボール奪取して鳥取のカウンター。(その際武に倒されるもアドバンテージ、のちに武に警告)
大久保の右への展開を経て田村がクロス(合わず)と、その焦りを突かれる危惧は相変わらずであり。
その後セットプレーから、28分に(遠目のFKから)鈴木翔がヘディングシュート(GK糸原セーブ)、29分に(CKから)低いクロスをニアで中原が合わせシュート(枠外)と攻め立てるも決められない鹿児島。
直後の30分に2度目の交代を敢行し、中原・端戸→木村・山本へと2枚替え。
すると、投入された山本が直後に大仕事。
31分左サイドからの前進は山本がディフェンスに遭い阻まれるも、こぼれ球を山口→米澤と繋ぎ、受け直した米澤が中央へ向かいドリブル。
そして鈴木翔とのワンツーで前に出て来た増谷を剥がし、そのままエリアライン際からシュートを放つ山本。
これがゴール左へと突き刺さり、まさかのファーストプレイでの同点弾を齎しました。
息を吹き返すゴールに、沸き上がるアウェイゴール裏席と市長。
キックオフの再開前に鳥取は2枚替え、田村・常安→吉井・小澤。
散々鹿児島ディフェンスを苦しめた常安がここで退き、以降東條がトップ下を務めます。
思えば鳥取ディフェンスもいきなりの山本の動きに対応できずと、どちらもトップ下の神出鬼没さがカギとなったかのような試合展開。
それでも攻撃権は鳥取が握り、鹿児島は以降失速気味。
武を裏へ走らせる事ぐらいしか出来なくなり、一言で言えば雑になってしまったでしょうか。
左サイドハーフに入った小澤の突破力を活かすという、シンプルな意識がこの押し迫った時間帯で逆に最大の武器となり。
35分にロングボールの跳ね返りを拾った小澤、ボールキープする所に武のチャージを受けるも、倒れながらもキープを続けて攻撃継続させ。
その後文のクロス→クリアを経て、受け直した小澤が左ポケットへ切り込む(ディフェンスに遭いCKに)という具合に、その存在が昇格目前のチームに脅威を与えます。
鳥取のチーム戦術も、サイドチェンジを駆使しながら如何に小澤に良い形でボールを持たせるかというものへと変貌。
39分にはその鈴木のサイドチェンジを受けた小澤、左ポケットでのキープを経てマイナスのカットイン。
そして戻しで東條のミドルシュートに繋げる(岡本がブロック)など、ゴール前で多彩な選択肢も齎し。
(41分に東條→知久へと交代、普光院がトップ下に)
敗戦を避けるべく、防戦を強いられる鹿児島。
42分に米澤が自陣からロングシュートを狙う(GK糸原キャッチ)など、その攻撃は最早組み立ての余裕が無く。
それでも鳥取の攻めを凌ぎ続け、この段階で富山も1-1のままと、仮に勝利でも大量点は不可能な状況なので昇格まで後一歩。
45分に再びサイドチェンジを受けた小澤に対し、武が対応して奪いきり。(その後小澤が武に反則)
ディフェンスがついに小澤の威力を上回った絵図を描いた事で、以降鳥取も失速してアディショナルタイムを迎え。
我慢を重ねた末に、GK泉森の鈴木翔を狙ったロングフィード、対する鳥取のクリアがフリックとなってしまい奥へとこぼれ。
拾った武がカットインでGKの眼前に迫る絶好機を迎えた鹿児島、糸原を左へとかわしにいくも、後ろ向きとなった武はバックパスを選択。
そして鈴木翔がダイレクトでシュートしましたが知久のブロックに阻まれ、昇格を彩る勝ち越し点は残念ながら挙げられず。
(その後米澤→広瀬へと交代、5バックシステムへシフト)
そして約5分間のATを凌ぎきり、ついに試合終了を告げる笛が。
引き分けで勝ち点1を得た鹿児島。
他方の富山は試合終了直前に勝ち越したものの、1点差勝利に終わったため得失点差では6差。
これが最後に響き、勝ち点62で同数ながらも2位に立った鹿児島の昇格が決定しました。
その道中は決して楽なものでは無く、勝てない時期もあり監督交代も敢行。
それでも28節以降2位をキープし続け、突き放せないながらも逃げきっての悲願達成となり。
かくして5年ぶりのJ2に挑む鹿児島、その「ボールを握る」スタイルも当時と同じ。
時を経ての洗練により、今度こそ通用する所を見せたい所でしょう。
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