朗読劇と言われる物を拝見するのは生まれて初めてでしたが、まぁ、想像するに”本”を読むんだと思っていたわけです。
このお芝居は後半に行くにつれ、感情が噴き出すお話ですので、それを”本”を持ち”読む”事でどう表現するのか気になっていました。
まぁ、”読む”んだろう、と思っていたわけですが・・・。
しかし、この朗読劇が始まった途端、”クロードと一緒に”はアタシの想像を簡単に超えてゆきました。
誰かが”本”を”読む”のを聞いている、なんて生易しい物ではありませんでした。
やっぱりこのお芝居は只者では無いのです。
イーブが事件直後の自供をしている時に「ジャリ駅」と「ボナバンチュール駅」と言う駅名が出て来ます。すると、後方のスクリーンに本当にその駅の画像が映し出される訳です。
モントリオールに実在する地下鉄の駅が。
イーブの記憶の中の様な、色彩を抑えた感じで。
観客はまず、イーブの”目線”でこの物語の中に引きずり込まれてしまいます。
”本を読む”んだと思っていたアタシは、少し慌てました。
思わぬ力に引っ張られて、「おっと、」と足元がフラつく感じ。
そして瞬時に以前友人から聞いた話を思い出しました。
友人には二人の小さな姪っ子が居ます。
家に泊まりに来た時など寝る前に友人が作った話を聞かせてあげるそうなんです。
その話には沢山の動物が出て来ます。
そして仲良く楽しいおしゃべりや楽しい遊びをして過ごしますが、皆、帰る場所があって時間が来るとお別れしなければならないのです。
「”さようなら”と言ってみんな、帰ってゆきました。」
友人がそう言うと、姪っ子は泣き出してしまったんだそうです。
「嫌だ!!まだ帰らないで!!!」と。
あまりに友人の話に入り込み、眠るどころか自分も一緒に動物達と遊んでいる気持ちになってしまったんですね。
友人の話し方も上手だったのだと思います。
「大丈夫だよ。また明日皆来るから、遊べるよ。」
と言って落ち着かせたそうです。
アタシはまるでその時の友人の姪っ子みたいな状態になるんじゃないかと、今回のこの朗読劇の冒頭でちょっとたじろぎました。
伊達さん演ずる刑事は、初演時の刑事とは雰囲気が違って随分、粗野と言うか言葉も乱暴だし、”現場たたき上げ”そのまんまの刑事な気がしました。
どちらかと言うと、再演時の唐橋さんっぽいのかも。人間臭い。
初演の時の刑事は、もう少し冷静だったかもしれません。
今回は脚本の変更があり、演出も今までの方と違うのでキャラクターの雰囲気が違うのは当然なのですが、イーブ役の松田さんと刑事役の伊達さんがあんまりにもしっくり来ているので驚きました。
初顔合わせなのに、もう何度か組んでる感じがしました。
このお二人の科学反応は凄いかもしれませんね。
この舞台でずっと警備官”ラトレイユ”を演じて来た鈴木ハル二さんは今回、速記係”ギィ”役です。
もう、ラトレイユとしてのハル二さんしか知らないので、最初はどうなるのかと思っていました(笑)。
今までラトレイユはこの舞台の”救済”とも言えるべき存在で、呼吸をするのさえままならなくなってゆく物語の後半に備えて、存分に観客の力を抜いてくれる役柄だったのです。
しかし今回は速記係。歴代の”ギィ”達は寡黙で笑いの要素など皆無です。
・・・・・・。
いやいやいや。
いやいやいやいやいや。
ハル二さんの担当は変わりません。まごう事なき笑いでした(笑)。
イーブと刑事がマイクに向かっている間、ギィと警備官は後ろで椅子に座っています。
テーブルがありますが、ギィは速記を行いません。
あくまで朗読劇だからでしょうか。
しかし、警備官と共に表情の演技はしていました。
イーブがイラつき、ギィの事を「あのおっさんを追い出してよ!」と言うと「えっ!?」と言う表情を浮かべ、刑事の隣のマイクの前に立ちます。
「あの、わたくし今”おっさん”て言われたんですけども・・・。」
などとおとぼけフェイスで言うハル二”ギィ”。
コーヒーを買って来てくれと刑事に頼まれ、お金を・・・とせがみます。
刑事が客席の方ではなく、ハル二”ギィ”の方をチラリと見、”本”をポンポンと叩いて「この状況だ、分かるだろう!」と。
今回はこんな風にお芝居の世界から一瞬、現実に戻る様な場面がありました。
ロバートとギィに限ってですが。
このハル二”ギィ”と伊達”ロバート”は後にもやらかします(笑)。
「じゃぁ、コーヒー買って来ます!あ!急に扉が出現!!ぎぃ~(これ、役名とかけたシャレだったのかな!?)、バタン!!」などと言って退室してゆくギィ。
もはや、井上裕明さん、唐橋充さん、山口大地さんの創り上げて来た今までの”ギィ”像が跡形もなく崩れ落ちた瞬間でございました(爆笑)。
今回の”ギィ”と”ロバート”のやり取りには賛否両論あるみたいですが、アタシは好きでした。
だってそれだけ、それ位やってもらわらないと、今回の”彼”の独白は聞けなかった。
それ程、凄かった。
今までで一番、凄まじかったのだから。
松田さん演ずるイーブは1年前よりも落ち着いて見えました。
”本”を持つ長く骨ばった指も美しく、洗練されていました。
優しい穏やかな声質で、神経質になる台詞でも、そんなに嫌な感じがしませんでした。
しかし、彼は落ち着てなんかいなかったんですね。
1年前よりも、より多くの物を抱え込み、より脆い状態で立っていました。
ほんの少し押しただけでも全てが壊れてしまうかの様に。
つづく。
このお芝居は後半に行くにつれ、感情が噴き出すお話ですので、それを”本”を持ち”読む”事でどう表現するのか気になっていました。
まぁ、”読む”んだろう、と思っていたわけですが・・・。
しかし、この朗読劇が始まった途端、”クロードと一緒に”はアタシの想像を簡単に超えてゆきました。
誰かが”本”を”読む”のを聞いている、なんて生易しい物ではありませんでした。
やっぱりこのお芝居は只者では無いのです。
イーブが事件直後の自供をしている時に「ジャリ駅」と「ボナバンチュール駅」と言う駅名が出て来ます。すると、後方のスクリーンに本当にその駅の画像が映し出される訳です。
モントリオールに実在する地下鉄の駅が。
イーブの記憶の中の様な、色彩を抑えた感じで。
観客はまず、イーブの”目線”でこの物語の中に引きずり込まれてしまいます。
”本を読む”んだと思っていたアタシは、少し慌てました。
思わぬ力に引っ張られて、「おっと、」と足元がフラつく感じ。
そして瞬時に以前友人から聞いた話を思い出しました。
友人には二人の小さな姪っ子が居ます。
家に泊まりに来た時など寝る前に友人が作った話を聞かせてあげるそうなんです。
その話には沢山の動物が出て来ます。
そして仲良く楽しいおしゃべりや楽しい遊びをして過ごしますが、皆、帰る場所があって時間が来るとお別れしなければならないのです。
「”さようなら”と言ってみんな、帰ってゆきました。」
友人がそう言うと、姪っ子は泣き出してしまったんだそうです。
「嫌だ!!まだ帰らないで!!!」と。
あまりに友人の話に入り込み、眠るどころか自分も一緒に動物達と遊んでいる気持ちになってしまったんですね。
友人の話し方も上手だったのだと思います。
「大丈夫だよ。また明日皆来るから、遊べるよ。」
と言って落ち着かせたそうです。
アタシはまるでその時の友人の姪っ子みたいな状態になるんじゃないかと、今回のこの朗読劇の冒頭でちょっとたじろぎました。
伊達さん演ずる刑事は、初演時の刑事とは雰囲気が違って随分、粗野と言うか言葉も乱暴だし、”現場たたき上げ”そのまんまの刑事な気がしました。
どちらかと言うと、再演時の唐橋さんっぽいのかも。人間臭い。
初演の時の刑事は、もう少し冷静だったかもしれません。
今回は脚本の変更があり、演出も今までの方と違うのでキャラクターの雰囲気が違うのは当然なのですが、イーブ役の松田さんと刑事役の伊達さんがあんまりにもしっくり来ているので驚きました。
初顔合わせなのに、もう何度か組んでる感じがしました。
このお二人の科学反応は凄いかもしれませんね。
この舞台でずっと警備官”ラトレイユ”を演じて来た鈴木ハル二さんは今回、速記係”ギィ”役です。
もう、ラトレイユとしてのハル二さんしか知らないので、最初はどうなるのかと思っていました(笑)。
今までラトレイユはこの舞台の”救済”とも言えるべき存在で、呼吸をするのさえままならなくなってゆく物語の後半に備えて、存分に観客の力を抜いてくれる役柄だったのです。
しかし今回は速記係。歴代の”ギィ”達は寡黙で笑いの要素など皆無です。
・・・・・・。
いやいやいや。
いやいやいやいやいや。
ハル二さんの担当は変わりません。まごう事なき笑いでした(笑)。
イーブと刑事がマイクに向かっている間、ギィと警備官は後ろで椅子に座っています。
テーブルがありますが、ギィは速記を行いません。
あくまで朗読劇だからでしょうか。
しかし、警備官と共に表情の演技はしていました。
イーブがイラつき、ギィの事を「あのおっさんを追い出してよ!」と言うと「えっ!?」と言う表情を浮かべ、刑事の隣のマイクの前に立ちます。
「あの、わたくし今”おっさん”て言われたんですけども・・・。」
などとおとぼけフェイスで言うハル二”ギィ”。
コーヒーを買って来てくれと刑事に頼まれ、お金を・・・とせがみます。
刑事が客席の方ではなく、ハル二”ギィ”の方をチラリと見、”本”をポンポンと叩いて「この状況だ、分かるだろう!」と。
今回はこんな風にお芝居の世界から一瞬、現実に戻る様な場面がありました。
ロバートとギィに限ってですが。
このハル二”ギィ”と伊達”ロバート”は後にもやらかします(笑)。
「じゃぁ、コーヒー買って来ます!あ!急に扉が出現!!ぎぃ~(これ、役名とかけたシャレだったのかな!?)、バタン!!」などと言って退室してゆくギィ。
もはや、井上裕明さん、唐橋充さん、山口大地さんの創り上げて来た今までの”ギィ”像が跡形もなく崩れ落ちた瞬間でございました(爆笑)。
今回の”ギィ”と”ロバート”のやり取りには賛否両論あるみたいですが、アタシは好きでした。
だってそれだけ、それ位やってもらわらないと、今回の”彼”の独白は聞けなかった。
それ程、凄かった。
今までで一番、凄まじかったのだから。
松田さん演ずるイーブは1年前よりも落ち着いて見えました。
”本”を持つ長く骨ばった指も美しく、洗練されていました。
優しい穏やかな声質で、神経質になる台詞でも、そんなに嫌な感じがしませんでした。
しかし、彼は落ち着てなんかいなかったんですね。
1年前よりも、より多くの物を抱え込み、より脆い状態で立っていました。
ほんの少し押しただけでも全てが壊れてしまうかの様に。
つづく。