leka

この世界のどこかに居る似た者達へ。

GONE AGAIN。

2018-01-12 19:06:05 | music
彼女はただ、ふらぁ~っと出て来た。

セットなど何もないステージに登場のSEも何もかけず、他のメンバー達と一緒にただただふらぁ~っと出て来た。

何だか学校の体育館みたいな会場に居た観客達はどよめきと歓声を上げて、少しでも近くで彼女を見たくて前へと押し寄せた。

何も仰々しい事もなく、ただ、そこに居るだけなのに、そこに居る全ての者たちをひれ伏させるオーラを持っていた。

アタシもそこに居た。

20代のアタシは、アタシなんかよりもずっと年上の観客達にまみれて、肉眼で見るPATTI SMITHにシビレまくっていた。

伝説の人。パティ・スミス。

それが初来日だった。22年前。パティはもう50代だったが、凄く綺麗で凄くカッコよかった。

「GONE AGAIN」と言うアルバムが出て、そのライブをやるために来日した。

パティ・スミスグループと言うバンドで「ニューヨークパンクの女王」と言われた彼女だったけれど、結婚して音楽シーンからは遠ざかり、アルバムが出たとしても8年ぶりとか、そんな感じのスタンスだった。

このアルバムで初来日した理由。

それは、このアルバムがパティの人生にとって大きな意味を持っていたから。

この時期、彼女に関わりの深かった愛する人達が立て続けに亡くなっていた。

パティの創作や表現に大きな影響を与えた若い頃の恋人である芸術家のロバート・メイプルソープや、昔のバンドの元メンバー、実の弟、そして最愛の夫である元MC5のフレッド・スミスまでもが彼女の元を旅立った。

何故こんなにも一度に失うんだと彼女は悲しみ、苦しみ悩んだはずで、しかしながら幼い子供を抱える母親だったパティは彼らを育てるために働かなければならなかった。

悲しみと悔しさに打ちのめされながらも立ち上がり、パティは遺された子供たちのため、自分のため、旅立った人達のためにもう一度マイクの前に立った。


その時のアルバムとライブだった。タイトルは「GONE AGAIN」。「再び行った」と言う意味。

歌の中に”He`s gone again(彼は再び去った)”と言う歌詞が出て来る。


愛する人達を失い傷だらけで、決して若くはない復活だった。

でもパティは震えるぐらいカッコよくて、涙が出そうになった。

彼女は彼女の言葉で旅立った人達に愛していると伝えていた。

それが彼女の追悼の意だった。



藤岡幹大さんが亡くなったと聞いて今日で4日目。

世界中の有名なミュージシャンやメディアが藤岡さんの訃報を受けて追悼のコメントを出している。

それは彼が世界中の人に愛されていた証拠。

アタシも敬愛を示そう。


Patti Smith - Gone Again