ここでは、社長 (寺川 勲雄) の介護日記を掲載しております。
現在進行中の介護です。はじまりは2007年ですが、近年のものより順次載せております。この介護日記は、みのりホームの 「ティータイム通信」 にて掲載し続けているものですが、ぜひこちらでも紹介したく、掲載の運びとなりました。
※今回は、2009年、7月号に掲載の内容です。
ある朝ポータブルトイレの始末をして部屋に入った私の顔をシゲシゲと見ながら
「あんた誰かいねェ」
と聞く。オッ、ついに息子の顔も分からんようになったか、と一瞬うろたえたが
「おばぁちゃん、おばぁちゃんの息子よ」
「・・・・・いさおちゃんかいねェ」
「そおよ」
「あんたには世話になっとるけん、覚えとかなイカンと思うのにサッパリこの頃馬鹿になってしもうて・・・。」
と手の甲で額をトントンと叩きながら辛そうに云う。
私を誰と聞くのは、以前入院している彼女をしばらくぶりに訪れた時に一度あったが、それ以降今回がはじめてである。恐らく、彼女は今朝失禁をして一寸した精神的パニック状態だったのだろう。
認知症になっても失禁と云う事実は本人にとって到底受け入れることの出来ぬもののようである。
そして壊れて行く自分、どうする事も出来ないもどかしさ・・・悲しさ、不安。
萎えていく精神でこれ等を受けとめるにはあまりにも荷が重い。・・・その結果の忘却・・・。
そう考えると人の精神のメカニズムも精妙とでも云うべき不思議なものである。
川端康成の自殺の原因が、老醜への絶望感だと云う説を聞いた事がある様に思うが、これもうなずける気がする。
認知症は天が与えてくれる、絶妙な特効薬かもしれない。
現在進行中の介護です。はじまりは2007年ですが、近年のものより順次載せております。この介護日記は、みのりホームの 「ティータイム通信」 にて掲載し続けているものですが、ぜひこちらでも紹介したく、掲載の運びとなりました。
※今回は、2009年、7月号に掲載の内容です。
ある朝ポータブルトイレの始末をして部屋に入った私の顔をシゲシゲと見ながら
「あんた誰かいねェ」
と聞く。オッ、ついに息子の顔も分からんようになったか、と一瞬うろたえたが
「おばぁちゃん、おばぁちゃんの息子よ」
「・・・・・いさおちゃんかいねェ」
「そおよ」
「あんたには世話になっとるけん、覚えとかなイカンと思うのにサッパリこの頃馬鹿になってしもうて・・・。」
と手の甲で額をトントンと叩きながら辛そうに云う。
私を誰と聞くのは、以前入院している彼女をしばらくぶりに訪れた時に一度あったが、それ以降今回がはじめてである。恐らく、彼女は今朝失禁をして一寸した精神的パニック状態だったのだろう。
認知症になっても失禁と云う事実は本人にとって到底受け入れることの出来ぬもののようである。
そして壊れて行く自分、どうする事も出来ないもどかしさ・・・悲しさ、不安。
萎えていく精神でこれ等を受けとめるにはあまりにも荷が重い。・・・その結果の忘却・・・。
そう考えると人の精神のメカニズムも精妙とでも云うべき不思議なものである。
川端康成の自殺の原因が、老醜への絶望感だと云う説を聞いた事がある様に思うが、これもうなずける気がする。
認知症は天が与えてくれる、絶妙な特効薬かもしれない。