理想国家日本の条件 さんより転載です。
幸福実現党
2020/10/22
「言論チャンネル」では、政治や経済、社会保障、国際関係などの時事問題の中から
気になるテーマを取り上げながら、本音の議論を進めます。2020年10月21日収録
【過去の「半導体・米中ハイテク戦争」関連動画】
〇産業界の「米中戦争」はどうなる?カギを握るのは日本と韓国(2020年6月16日)
https://youtu.be/XXe6Moz8R9c
〇米国VS中国 ハイテク分野の攻防戦。中国が技術を奪う「6つの手法」とは?(2019年11月9日) https://youtu.be/gCmyAQdliwQ
〇中国が3兆円の半導体ファンド新設。米中ハイテク覇権争いは新局面へ!(2019年11月1日) https://youtu.be/mtHwAFRBPAM チャンネル登録をお願いします!
https://www.youtube.com/channel/UCQct...
半導体「中国包囲網」強固に、日本企業「脱中国」への大転換!対中制裁による日本への影響。ソニー。トヨタ。(釈量子)【言論チャンネル】
hrp-newsfile.jp/2020/3977/
幸福実現党党首 釈量子
◆現代文明に不可欠な「半導体」
去年からずっと話題になっておりますが、現代人の生活に欠かせない「半導体」を巡って、トランプ政権が対中包囲網をさらに強化しています。
電化通信や銀行のATM、自動車や交通などの生活インフラ、またAI(人工知能)、軍事や宇宙領域に至るまで、競争優位性の決定的要因となるのがこの半導体という領域です。
そして今、まさにこの領域で米中によるテクノロジーの覇権戦争が繰り広げられており、それに伴い日本企業や日本経済への影響が大変大きくなっています。
◆米国によるファーウェイ制裁
9月15日、トランプ政権によるファーウェイへの制裁が発動され、米国製の半導体などの中国への輸出が止まりました。
それに伴い、iPhoneのカメラに使用されるソニー製のイメージセンサーや、旧東芝メモリのキオクシアの半導体も、ファーウェイへの出荷を停止しました。
米国の制裁措置に抵触すると、取引を禁止する顧客リストに掲載されたり、取引先や銀行等から取引停止を宣告される可能性があります。
また、多額の賠償金を負わされるリスクもあります。
◆ファーウェイ製品に不可欠な日本製の品質
ソニーのイメージセンサーは世界シェア48%でトップ、2位はサムスン電子で18%です。
ファーウェイは最新のカメラ機能を搭載し、画像が美しいのが強みなので、もしソニーのイメージセンサーが手に入らなくなれば、スマホの販売に影響を与えることが確実です。
更に10月には、トランプ政権は半導体の受託生産を行っている中国最大手SMIC(中芯国際集成電路製造)を対象に、新たな制裁を課しました。
米国の半導体製造装置や原材料をSMICに輸出する際に、事前に商務省の許可が必要になりました。
SMICは台湾のTSMCに技術レベルでは4~5年遅れていますが、中国の「製造2025」を実現するために、半導体の自給率を高めるための中核企業です。
◆トランプ政権が推進する半導体生産の国内回帰
しかし、今回の米国の規制によってSMICの株価は急落しました。
トランプ政権は、このように対中制裁を強化しながら、米国内での半導体生産の強化にも着手しました。
今年6月、超党派で「CHIPS for American Act」「American Foundries Act of 2020」という2つの法案を提出しています。
最先端の半導体製造能力の78%がアジアで占められていることから、米国内で半導体生産のサプライチェーンを構築しようとしているわけです。
◆減税政策こそ国内回帰の最大の武器
この法案の最大の目玉は「投資税額控除(ITC)」という減税政策です。
これにより、半導体製造装置や設備への投資額の40%を税金の支払いから控除できるようになります。
これにより、過去20年間で約半分に減ってしまったとされる米国の半導体製造力を向上させるとともに、数千人の雇用を生み出すことを狙っています。
台湾の半導体受託生産大手のTSMCの工場をアリゾナ州に誘致することが決まっていますが、米国内に半導体の一大集積拠点を設けるつもりで、予算規模は2.2兆円~2.6兆円と莫大な金額です。
米国にとって中国とのハイテク戦争は、単なる経済戦争ではなく、米国の安全保障に関わる問題であり、要するに最新鋭戦闘機に欠かせない部品を、いつでも調達できる体制を作りたいわけです。
このように、米国は半導体「中国包囲網」をどんどん強化しています。
◆対中制裁による日本企業への影響
こうした状況の中、日本企業も大きな影響を受け始めています。
前述の通り、ソニーはファーウェイへのイメージセンサーの輸出を停止しましたが、ソニーの2021年3月期のイメージセンサー売上計画は8,700億円となっており、そのうち、ファーウェイ向けは約2,500億円と言われています。
ファーウェイのスマホ販売が落ち込むと、ファーウェイ向けの電子部品等を供給してきた村田製作所などの電子部品メーカーにも影響が出てきます。
これらを合算した日本企業とファーウェイの取引総額は約1.1兆円にもなると言われ、日本企業にとってもかなりの影響が出るものと思います。
◆中国による報復制裁「輸出管理法」とは?
また、新たな制裁対象になった中国のSMICは日本企業との取引が多く、半導体製造装置をSMICに輸出している日本企業が今後、出荷できなくなる可能性があります。
こうした米国による制裁だけではなく、10月18日、中国の全人代で、米国への対抗措置として「輸出管理法」が成立し、今年12月から施行されます。
これは、安全保障などを理由に「禁輸企業リスト」をつくり、特定の企業への輸出を禁止するものです。
この法案の対象は、中国から材料を輸入して、完成品を海外へ輸出する「第三国」も含んでいるので、日本企業も対象になります。
例えば、日本企業はレアアースを中国から輸入し、ハイテク製品の部品を製造し、米国企業に輸出していますが、こうした企業が、中国の「輸出管理法」に抵触する可能性が出てきました。
このように、日本企業は、米国と中国の二者択一を迫られる状況にあります。
しかし、台湾のTSMCがいち早く、ファーウェイとの取引を止め、米国との取引を優先しましたが、日本企業の進むべき方向も、まさにそこにあると思います。
米国や台湾、日本で、最先端の半導体供給網を構築すべきだと思います。
◆止まらない日本企業の中国依存
ところが、日本企業の中国依存はまだ続いています。
日本が誇る輸出企業のトヨタは中国投資を強化していますが、その背景には中国市場の将来性があります。
今年6月には、中国の自動車メーカー5社とトヨタが出資し、水素燃料電池車(FCV)技術の開発合弁会社を設立し、燃料電池車の新規市場開拓も計画しています。
FCVに関しては、世界で最初の商用車「ミライ」を出したトヨタが大きく先行していますが、中国に技術を奪われる可能性があります。
◆日本の「いいとこ取り」の手法が限界に?
というのも、FCVは、無人攻撃機、電動高速戦車などへ「軍事転用」が可能となるからです。
FCVが持つ静粛性と、走行距離の長さ、燃料電池システムの発熱の少なさなどが、軍事用途として、相手に発見されるリスクを低減するという利点があるとされます。
しかし、中国には鉄鋼や造船、建機、鉄道、家電、自動車まで、中国国内に生産拠点を構えた外資から技術を貪欲に吸収し、自国産業のレベルを上げてきました。
気が付くと、様々な分野でシェアを拡大してきたのですが、トヨタの虎の子のFCVを中国に奪われ、トヨタの技術的優位が脅かされないか非常に心配です。
このように、米中ハイテク戦争が進むなか、日本は米中双方から利益を得ることを目指してきましたが、「いいとこ取り」の手法に限界が来たのではないでしょうか。
◆中国の「軍民融合」が日本企業に及ぼすリスク
習近平国家主席は、国家の安全保障と経済発展にとって極めて重大な戦略として「軍民融合」を提唱し、2015年には「軍民融合政策」を「国家戦略」に昇格させています。
具体的には、資金や技術、情報、また「千人計画」に象徴される人材、つまり頭脳を介し、軍事企業と民間企業の円滑で切れ目のない融合を目指しています。
そのため軍と民の境界線が極めてあいまいとなっていて、日本企業が関係するリスクは極めて高くなっています。
米国では、企業スパイの逮捕や、研究者が「千人計画」に入っていることを隠していたために、FBIに逮捕されるケースなどが続出しています。
◆腰が入らない日本政府の「脱中国」の後押し
日本においても10月13日、大阪に本社がある積水化学の日本人の元研究員がその研究内容を中国企業に漏らしたとして書類送検されたばかりです。
警察によると、一昨年から去年にかけて、企業秘密にあたるスマホのタッチパネル画面に関する研究内容について、中国の通信機器関連会社「潮州三環グループ」にメールで伝えたとして、「不正競争防止法」違反の疑いが持たれています。
こうした状況を見ると、政府が日本企業の「脱中国」を後押ししなくてはならない状況です。
日本政府は企業の国内回帰に向けて、中国の撤退補助金として2,200億円、補正予算として860億円を上乗せしています。
その他にも、東南アジア諸国への供給網分散補助金235億円を用意する予定でいます。
しかし、メディア報道(10月21日現在)によると「日本企業が全面的に撤退して別の国に工場を新設する場合は適用しない公算が大きい」とあり、要するに中国に拠点を残したままで、東南アジアに拠点を新設することを条件としているということです。
これでは、企業の負担が重くなるばかりで、まさに中国政府の顔色をうかがった政策といえます。こうした余計な条件は取り除くべきです。
◆今必要なのは「Go back to Japan!」
政府はコロナ禍で個人消費や企業の設備投資が冷え込むなか、「Go Toキャンペーン」などで景気対策を行っていますが、これは一時しのぎに過ぎません。
コロナ禍でサービス産業中心に失業も急増しており、これが雇用に跳ね返ってくるのはこれからです。
インバウンドが見込めなくなった地方自治体も、雇用を生む方法を考えなくてはなりませんし、日本の経済成長や地方活性化のために「国内回帰」は強力な切り札です。
日本政府も帰ってきやすい環境づくりとして「投資税額控除」などの大胆な減税政策や、規制緩和、脱中国支援の資金拡充などの政策を打ち出し、日本企業の国内回帰を早期に促す必要があると思います。
日本は中国の不正を許さず、国益を守るために行動すべきです。
いま「Go Toキャンペーン」をやっていますが、大事なのは「日本に帰ってきましょう」という「Go back to Japan!」ではないでしょうか。
執筆者:釈 量子
幸福実現党党首