理想国家日本の条件 さんより転載です。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01308/00009/
グーグルらの海底ケーブルが異例の計画変更、米中対立で大動脈分断
米グーグル(Google)や米フェイスブック(Facebook)らが建設していた米国ロサンゼルス−中国香港を結ぶ太平洋横断海底ケーブルが、米中対立の影響で異例の計画変更を余儀なくされた。米政府が中国と直結する海底ケーブルに対し安全保障上の懸念を示したからだ。グーグルらは海底ケーブルのルートをロサンゼルス−台湾、フィリピンへと変更。2020年4月に入り、ようやく運用開始のめどをつけた。海底ケーブルはインターネットの国際通信99%を担う大動脈。米中対立はそんな世界の基幹網に分断を迫る。
初の米中直結海底ケーブルに米政府が「待った」
計画変更を余儀なくされたのは、海底ケーブル「PLCN(Pacific Light Cable Network)」だ。グーグルとフェイスブック、香港の通信事業者であるPLDC(Pacific Light Data Communication)の共同プロジェクトとして2015年末に計画がスタートした。米国ロサンゼルスと中国香港を直結する全長約1万3000kmの海底ケーブルを敷設し、当初は19年の運用開始を目指していた。
PLCNが注目を集めた理由は、米国と中国を直結する実質的に初の海底ケーブルになるはずだったからだ。太平洋を横断する海底ケーブルは、インターネットの大動脈として数多く敷設されている。ただし日本や台湾、フィリピンを陸揚げポイントとすることが多く、米中を直接つなぐ海底ケーブルは「PLCNが実質初」(業界関係者)と言われてきた。
そんなPLCNの計画に待ったをかけたのが米政府だ。PLCNの建設がほぼ終了していた19年8月、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米政府が国家安全保障上の理由からPLCNの事業阻止を検討していると報じた。海底ケーブルは、各国の陸揚げポイントに通信装置や給電装置を設置する。有事の際にこれらの装置を停止すれば両国を結ぶ大動脈を切断できる。さらにこうした設備で通信内容を傍受されるといったリスクを米政府が警戒した可能性がある。
米政府の懸念を受けてグーグルとフェイスブックらは20年2月、米規制当局のFCC(連邦通信委員会)に対し、アジア側の陸揚げポイントを中国香港から台湾とフィリピンに変更すると申請した。FCCは20年4月、グーグルらの申請を承認し、PLCNはようやく事業開始のめどをつけた。
150年以上の歴史を持つ海底ケーブル、巨大ITの専用網に変貌
海底ケーブルの歴史は古く、1850年に英仏間のドーバー海峡に電信をやりとりするためのケーブルが敷設されたのが始まりだ。現在では海底ケーブルに、光ファイバーを束ねた光海底ケーブルを使うケースがほとんど。最新のシステムを利用した場合、「1本のケーブルで約1万500枚のDVDを1秒間に送信できる400T(テラ)ビット/秒の伝送が可能」(NEC海洋システム事業部長の桑原淳氏)という。
そんな海底ケーブルの役割が近年、大きく変わりつつある。かつては国際電話やインターネットの中継網として発展してきた海底ケーブルだが、この10年でグーグルやフェイスブックなど巨大IT企業が世界各地につくるデータセンターを結ぶ専用網としての比重が大きくなっているからだ。米調査会社TeleGeographyによると、大西洋を横断する海底ケーブルのデータ通信量の実に8割がグーグルやフェイスブックなどコンテンツ事業者が占めるという。
グーグルなど巨大IT企業は、自国はもちろん欧州やアジア各地、南米などに自社サービスを配信するためのデータセンターを建設している。これらの地域の消費者は、地理的に最も近いデータセンターにアクセスする。その方が体感品質は向上する。
世界各地に点在するデータセンターが蓄える膨大なデータを同期させるためには、海底ケーブルを使った大量の通信が必要になる。「グーグルやフェイスブックは以前、通信事業者が敷設した海底ケーブルを調達していた。しかしデータ量が膨大に膨れあがり、経済合理性から自ら海底ケーブルを引いた方がよいという判断に変わった」(海底ケーブルの動向に詳しい情報通信総合研究所 主任研究員の小川敦氏)。
2020.06.23
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。中国が握りたい「海底ケーブル」覇権 “ファーウェイ撤退”の本当の狙い
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1908/01/news037.html
記事より抜粋
海底ケーブルを巡る緊張、ファーウェイの決断は……
現在、同社は90件の海底ケーブルを敷設している。本数だけみれば、世界の4分の1に同社が関わったことになる。ただ海底ケーブル業界では本数よりも設置した長さを見るらしく、世界約120万キロのうち、ファーウェイ・マリーンはまだ5万キロほどにすぎない。世界で見ると、NECをはじめ、米サブコムと仏アルカテルの3社が海底ケーブルの9割を担っており、同社はまだまだこれからといったところだ。
もともと、米国がファーウェイを排除した理由は、同社がシェアを広げていた通信機器などがスパイ工作に使われることを懸念したからだった。だがインターネットのインフラ事業を行っているファーウェイ・マリーンについては、今のところ米国もブラックリストには入れていない。
ただ中国は、この海底ケーブルの敷設も、現代版のシルクロード経済圏構想「一帯一路」計画の一部と見ているようで、かなり力を入れてきたという背景がある。そんなことから、米ウォールストリート・ジャーナル紙は19年3月、米高官らがファーウェイ・マリーンを安全保障のリスクだと見ているとするコメントを掲載。いつブラックリストに加えられてもおかしくない緊張感が漂っていた。
そんな米国の様子を見ながら、ファーウェイが最近、先手を打った。
ファーウェイは19年6月、ファーウェイ・マリーンを手放すと発表。代わって、中国・江蘇省に本部を置く江蘇亨通光電(ヘントン社)という企業が引き取ることになるという。すでに米国からの制裁などで望ましくない評判が広く喧伝(けんでん)されているファーウェイが先に冠を手放した形だ。さもないと、まともにビジネスができないと考えたのだろう
「海底ケーブル冷戦」の可能性も
この動きは一見、ファーウェイ(そしてその背後にいる中国)が屈したかのように見えるが、実際はそうではない。というのも、ヘントン社は会長が中国共産党員であり、全人代のメンバーだからだ。
つまり、中国としては、海底ケーブルのビジネスは諦めておらず、ファーウェイを外してでもここを押さえておきたい、という意志の表れだとも取れる。
それもそうだ。スパイ工作に使える可能性がある海底ケーブルをどんどん自社で各地に敷設すれば、それだけインフラを押さえることができる。情報収集に使えなかったとしても、例えば、海底ケーブルを「遮断してしまう」という力を手にすることができる。また彼らの通信ケーブルをつなぐことができる通信機器を中国製に限定することだってできるだろう。そうなれば、地上にも自分たちのケーブル網を広げることができる。「陸路と海路」という意味のある一帯一路で、中国の「通信網」によるインフラ支配が拡大することを意味するのである。
そしてこの流れが広がっていけば、安全保障などのリスクを警戒する西側の国々と中国との間に、「海底ケーブル冷戦」とでもいえる分断が生まれる可能性すらある。
日本としては、NECに頑張ってもらい、安心して利用できる海底ケーブル網を広げてもらったほうがいい。もっとも、そんな懸念をしなくとも、米国が中国の海底ケーブル関連事業に対して、また強硬な動きをする可能性もあるのだが。しばらく海底ケーブル関連ニュースは要チェックかもしれない。ーーー2019年08月01日