180614 お金の使い方 <グリーンボンド>と<ESG投資>について
現代はお金の使い方、お金の集め方、いずれもが個人はもちろん、企業や公的団体も悩む事柄でしょうね。いや、それは貨幣経済が始まって以来、延々と続いてきた事かもしれません。
こんなことをふと思ったのは、長期の出張(といってもほんの5日間)で、疲労が今日も続いていて、事務所にいても電話や打ち合わせ以外はぼっとしているうちに、もう業務終了時間となってしまったことと関係します。お金は場合によっては独りでに稼いでくれる、あるいは利益を上げてくれる、あるいはやり方次第でいくらでもあつまってくる、玉手箱のようなときもありますね。自分の頭は働かそうとそれなりに努力しても働かないし、努力しないと、あるいは疲れてしまうと動こうとしません。お金は便利なようでもあるとふと思ったからです。
でも私の頭と同じで、私のお金の使い方や、集め方では、どうもうまくいきそうなイメージが浮かびません。ま、あまり縁のない世界と考えれば、落着するのですが。
しかし、世の中の経済や生活、地球環境や政治といったことを考えたとき、私の財布や使い方とは異なり、大きな問題になりそうです。
以前、預金金利や国債利回りがいいとき、そう90年代くらいまででしょうか、相当程度の基金があれば、その利回りなどで財団はもちろん、公益団体、NGO、あるいは宗教法人なども、一定の余裕を持って、経費を補い、事業を営むことができていたのではないかと思います。
当時、NPO法などがないころ、任意団体として信頼性を得て安定的に運営するために、財団設立には3億円程度の基金を確保することを求められていたように思いますが、そのため毎年、資金蓄積に努めていたのではないかと思います。
でも金融経済を含め世界経済はダイナミックに変貌したように思います。私のわずかな預金は利息収入がなくなり、それまで預金利息を期待して貯めていた多くの人がその将来に危うさを感じるようになったのではないでしょうか。
それは個人だけでなく、企業や公的団体も同じでしょう。単に一時的な利回りや株価上昇を追求して、債券や株式に投資することは大きな利益を得る可能性があると同時に、リスクも大きいですね。
だいたい、配当利益や利回りなどが少しでも多いところや、あるいは収益の持続的安定だけを考えた投資スタイルは、従前の預貯金に流れるお金の使い方と大同小異に思えるのは私だけではないように思うのです。
私は30年近く前、一時的に株式投資をしていましたが、私なりに環境保全銘柄など、企業方針・スタイルを選んでいました。ただ、しっかり理解していなかったため、当該企業がとんでもない事業を営んでいることを後でわかってがっかりしたと言うこともあり、いい勉強となり、数年で株式投資からは脱退しました。
そう、お金の使い方は、最後は自分が使うのですが、プロの視点で、その価値観を示して、それを適切に反映する形で、投資の形が提供されれば、地球環境という大きな基盤の保全と将来の産業構造立脚に役立つ可能性を秘めているように思えるのです。
それはポートフォリオなど金融工学を活用した投資スタイルとは異なる、一つの明確な価値観の提示と、そこに向かう技術革新や事業展開で利益を生み出す仕組みを提供し、それに賛同する無数の人からの投資を得て、10年あるいは50年、100年先を目指した夢、計画を実効性のあるプランで実現することに参画するような投資構造・市場が生まれるとすばらしいなと思うのです。
今朝の毎日記事<グリーンボンド脚光 環境に優しい事業に投資します 民間企業相次ぎ参入>は、そのような可能性のある環境債のはっこうシステムを紹介しています。
<再生可能エネルギーなど環境に配慮した事業に調達した資金の使い道を限定する債券「グリーンボンド(環境債)」の発行が活発化している。日本では従来、政府系機関や自治体が発行する例が目立ったが、最近は環境への取り組みをアピールできる狙いもあり、民間企業が活用する動きも広がり始めた。投資を通じて社会貢献を図れるため、大学なども資金の出し手となっており、企業の資金調達先の多様化にもつながっている。【小原擁】>
欧州ではすでに起債額が13兆円にも上っているそうで、飛躍的な増加傾向が見られるようです。他方でわが国の現状はいまのところ惨憺たる状態でしょうか。
<国内の主なグリーンボンド発行例
発行体(発行時期) 発行額 事業
東京都 (昨年10月) 100億円 スマートエネルギー都市
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(昨年11月) 200億円 都市鉄道利便増進
戸田建設 (昨年12月) 100億円 浮体式洋上風力発電建設
三菱UFJリース (4月) 100億円 太陽光発電投資>
再エネ事業自体が伸び悩んでいる実態とも関係するようにも思えます。一般市民が投資先を選択するメニューが限られ、ましてボンドとなると俎上にも上っていないのではないかと思います。政府がエネルギー政策においても、金融政策においても、なにか従前の方式にこだわり、新たな資金調達方法や事業創造を用意できていないように感じるのです。
金利ゼロでも預金から別の金融手段にシフトしないのは、個人や企業、公共団体だけの狭量な判断によるものとはいえないと思うのです。自分でお金の使い道を選ぶ、それも将来を見据えた使い方を考えることを、私たちはおそらく一度も学んでこなかったのではと思うのです。
その意味では、いま個々が選択をするために、自分の頭で考える時期なのではないでしょうか。公的年金といった莫大な資金投入を起爆剤にして、株式市場が活況?を呈しているようでは、将来の見通しが暗いように思えるのです。
企業は起債を積極的に行い、事業展開でも一定の価値観を体現するようになるには、グリーンボンドのような明確なビジョンをもつ必要が事業体に求められているように思えますし、政府もそのような市場構造にシフトする仕組みを用意する必要があるのではないかと思うのです。
少し古いですが、昨年の記事<ESG投資熱視線、生保に広がる 「食料」「女性」使途絞り高利回り>も現代的な流れを示していますが、残念ながらわが国ではさほど明確な動きがあるように思えません。
たしかに<環境、社会貢献、企業統治を重視して投資先を選ぶ「ESG投資」が、大手生保など国内機関投資家に広がっている。財務情報だけでなく、環境保全など長期的な企業価値向上につながる情報を重視しながら収益を求める手法で、超低金利下でも比較的高い利回りが期待できることも拡大を後押ししている。【中島和哉】>といった期待感はありましたが、ま、新しい商品の一つ程度にしか、見られず、伸び悩みが現状ではないかと思うのです。
<日興リサーチセンターの調査によると、2015年9月時点の日本のESG投資は46兆円で、12年3月時点の27兆円から7割も増えたという。>という大変な成果を訴える結果もありますが、他方で<三井生命は「社会的課題に取り組む企業ほど、長期的には安定的な高利回りを得られる傾向がわかってきた」として、今年度中にESG関連で計230億円を積む方針だ。日本生命、住友生命、明治安田生命もこれまでESG関連に約1000億~1500億円の投資を行った。>と、大手生保の多額投資を取り上げ、その巨額の調査結果を裏付ける一つのようにも見えるのですが、<ESG関連>というのが怪しさを含んでいるように思えます。
最初に一覧表にしたESG投資事例では、各社数10億円レベルにとどまっているのですから、ESGに適合する投資といえるのは実質的には極めて少額とみた方が正鵠を射ているのではないでしょうか。
なお、ESG投資の解説にあるように、世界の潮流ははるかにこの価値観を追求する方向にあるように思えるのです。
<ESG投資
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance=統治)の英語の頭文字から作られた言葉。「責任投資」「持続可能な投資」などとも呼ばれる。国連が2006年、「機関投資家の投資意思決定にESGの視点を反映させるべきだ」とする責任投資原則を提唱して機運が高まった。手法には、(1)投資先企業との対話を通じてESGへの取り組みを促す(2)ESGの観点で問題ありと判断した企業を投資先から除外する(3)資金の使途をESG関連に絞って投資や融資を行う(テーマ投資)--などがある。国際団体GSIAによると14年時点の世界のESG投資残高は21兆3575億ドル(約2450兆円)で、12年から1.6倍に増加した。>
そろそろ一時間となります。これを書いているうちに少し目覚めてきました。この辺でおしまい。また明日。
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