190209 信ずべきは何か <レオパレス21 施工不良・・・組織的な不正か>などを読みながら
玄侑宗久著『無功徳』の中に、「書類さまを信じる国 瀬戸際に、思う」という項があり、その中に、昨今の風潮を書類の扱い方を通して本質を捉えているように思える部分があります。まず、「人ではなく書類を信じる風潮が強まっている。」なにか事件が起これば(起こらなくても)書類が増えて、書類で安全になり、計画通りになると信じているようだと言うのです。この書類の横溢は、それをチェックする人々の都合だとも言うのです。その人々というのは国や行政が多いとしつつ、会社の場合もあるというのです。
ここで玄侑氏は、「しかし、じつは書類ほど偽造できるものはない」と断言します。まさに最近のデータ不正や偽装の報道では、さまざまな大企業や国・行政といままで信頼される?対象であったところで大胆に行われてきたことがクローズアップされました。
玄侑氏は「書類の山の前で脆き、ひたすらに「書類さま」を礼拝する人々。こんな莫迦な新興宗教が、今後も生き延びてい-のだろうか。」と、無功徳の勧めの前提として、提示されているように思います。
書類だけに依存する(その書類のいい加減さも問題ですが、それを見落とす状況も問題ですが)私たちの社会、そこには人の心を大事にすることを見落としてきた、忘れてきたようにも思うのです。ゴーン氏のコストカッターは、倒産の瀬戸際にある大企業にとっては有効な手段だったかもしれませんが、その趣向のみを中核にして事業を継続的に経営していけば、人の心は空虚となるでしょうね。日産のデータ不正は当然の結果でしょう。
そんな事態が再び報道を賑わしています。レオパレスの施工不正です。この問題で、施主のオーナー、賃借人である利用者、融資する金融機関、投資した株主、さまざまなステークホルダーに多大な損害を与えていることは自然の成り行きですね。建築という人にとって衣食住の基本的要素を担う人たちは、以前は大工さんなど施主との間信頼関係できちんと意思疎通ができていたと思います。むろんそのような場合でも不具合は起こりますが、大工さんは丁寧に補修なり是正措置を講じますね。本来の大工さんは見えないところに職人気質を出し、いい仕事をすると言われます。
しかし今回は意図的な不正です。しかも見えないところで不正を行っています。まっとな人の行いではないでしょうね。人が組織となり、企業となり、規模が拡大する中で変質したのかもしれません。
私も仕事柄、建築瑕疵とか不具合とかの事件を取り扱うことがあります。契約書では四寸角の柱を使うことになっていたのに、三寸角になっていたとか。最近の住宅は柱を見せない壁面とすることが多いですが、その場合柱の大きさは分かりません。他方で建築基準法上は、耐震構造としては柱の大きさの上記違いだけで決まるわけでなく、構造計算上はパスすることに問題ないのです。それが建築瑕疵と言えるかは問題となるでしょうけど、契約意思との関係でそれが重要な要素であれば問題となりうるでしょうけど、最近の施主は一般にはあまり問題視しないかもしれませんね。その場合施工者の心がけというか、ビルダーとしての気質に関係するかもしれません。
再びレオパレスの問題に移ります。これはひどすぎますね。
今朝の毎日記事<レオパレス21施工不良 外壁に違法部材 コスト削減、組織的な不正か>では、<建築確認の死角>として、
<レオパレス21の物件の不良箇所は壁材の内側など完成後の確認が困難な部分に集中していた。都道府県や民間の建築確認機関などは建築主側に工事中の写真を提出させて見えない部分の材質を確認しているが、今回の問題は建築確認制度の死角が突かれた形だ。>
建築確認制度では、現場でチェックするといってもすべてでなく、ましてや見えない部分は施工業者への信頼から、チェックしないのが一般だと思います。
<建築基準法が規定する耐火基準に反し、外壁の内部にグラスウールを挟むべきなのに発泡ウレタンを詰めた(925棟)
▽天井材を二重に張るべきところを一重にした(641棟)--などの施工不良があった。また、部屋間の仕切り壁(界壁)に同法の仕様と異なる材料を使い、遮音性能を満たしていなかった(771棟)。>
こういった場合でも、通常は是正命令で対応するくらいで、刑事責任を問うといったことはこれまでほとんどなかったのではないでしょうか。今回、東京地検特捜部はゴーン事件で総力を挙げているようですので、余裕があるのでしょうか、今は様子見でしょうか。当該違反が明確で、耐火性に重大な問題があれば、等閑視できないのではと思うのです。
オーナーの嘆きも分かります。
<福岡県宗像市の男性(69)は09年に同社でアパートを建ててオーナーになった直後から土台や廊下でひび割れが相次いだ。同社の対応にも疑問を感じ、昨年に運営や管理などの契約を解除した直後に不具合を調べる連絡が届いた。しかし、同社に連絡すると「件数が多すぎていつ調査できるか分からない」。10月になってようやく社員が説明に来たが、調査への立ち会いを求めると拒否され、いまだに調査できていない。>
レオパレスの株価が急落するのは当然ですね。
<レオパレス、株価急落 売り注文殺到でストップ安>これによって、投資家は期待を裏切られたでしょう。それ以上にやはり現在のオーナーや利用者は不安でいっぱいでしょう。
別の記事<レオパレス、施工不良で転居促す異例事態 人手不足、引っ越し混乱も>は、その現実を報じています。
突然、そこに住むことができない、転居先をみつけないといけないとなったら、大変でしょう。
玄侑氏のすすめる「無功徳」はだれにでも効用があるようにも思えるのですが、いや効用などといったらそれこそ的外れとなりますね。ともかく信頼できるのは心ある人でしょうか。そして人の心に届く問題対応を求めたいです。
今日はこの辺でおしまい。また明日。
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