161206 ネコとの長いおつきあい 最近の傾向と対策
わが家にはいろんな生き物がやってきます。空を飛ぶ、野鳥といえばヒヨドリ、キセキレイ、ハクセキレイ、メジロ、アカハラ、エナガ、シジュウカラ、ジョウビタキ、アオサギなどに、トンボや蝶を含め昆虫もいろいろ。ところが最近はめっきり少なくなりました。あのモズのせいかしらと思うこともあります。なにせ高い木のてっぺんにとまって、キッキッキーと甲高い鳴き声で縄張りを宣言するのです。これも一つの生存競争でしょうか。
里山の麓のためか、いろいろな蛇がやってきたり、イタチは冬季は居ついている感じでした。以前畑でトウモロコシを作ったことがありますが、2度とも収穫間際にほとんど全部食べられてしまい、それ以降作る元気がなくなりました。一度はサルまでやってきて平気で庭を我が物顔に歩いたりします。が最近、いずれも見かけません。
ネコが居ついたというか、今年の春頃からひょっこり現れた子猫にえさをやるようになり、いまでは朝夕かかさずやってきます。最初はもう骨と皮のように今にも倒れそうな感じだったのですが、最近ではお相撲さんとまではいかなくても貫禄がでるほどまるまるとして、顔も穏やかになりました。一応、ネコの健康を考え、えさの種類や量を限定して、いくら鳴いてもそれ以上はやらない方針のようです。そのためか、それまで家の周囲を這い回っていたイタチがいなくなったようです。
で、前置きはこの辺にして、今朝の毎日は、神戸市議会が野良猫不妊去勢を公費負担し、殺処分をなくすことを目指す「人と猫との共生に関する条例」を昨日可決成立させたことを報じています。それ自体は気にならなかったのですが、その関連記事として、「和歌山県では今年3月に野良猫への餌やりを規制する都道府県初の条例が成立した。」ことを指摘していたことに驚き、わが家がやっていることが問題になっているのだと知りました。
たしかに野良猫が増えると、汚物や糞が散乱して悪臭が臭ってきたり、繁殖期などは深夜でも地響きのするような鳴き声が騒音になることもあるでしょう。といって殺処分はかわいそうです。不妊去勢も代替措置としてはやむを得ないかもしれません。その意味で、いたずらにえさやりをするのも控えるべきでしょう。が、それを条例で禁止となるとそれはいきすぎではないかと、具体の条例を見ようとウェブサイトを検索しました。
和歌山県の例規集に掲載しているのは改正前の条例(動物の愛護及び管理に関する条例)でした。ウェブ上の改正案を見ようとしたら、条例案内容は見つけられず、それに対するコメントとして、「これまでの同種の条例については、、野良猫の餌やりは直ちに違法な行為として禁止の対象とはならず、周辺の生活環境を著しく悪化させた場合に違法とされる、という構成でした。一方、和歌山県の条例案は、(1)所有者の同意がある場合(2)条例が定める地域猫対策による場合(3)獣医師の診療に伴う場合・・・これら3つの例外的ケース以外は、すべて禁止という構成になっています。つまり、原則と例外が逆転しているのです。」といった指摘があり、もしそのとおりであれば、もっともな批判ではないかと考えました。
それで、和歌山県に問い合わせして、担当者と話しをしたところ、概要次のような内容でした。条例案については2度にわたってパブリックコメントを求め、それをも反映する形で条例が可決されたとのこと。基本的には、一定の条件の下でないと野良猫への餌やりは禁止となりますが、まずは指導で、それでも問題があれば勧告、命令を出し、それに違反したときに初めて罰則適用となりますとのこと。いままでも近隣から苦情があるような餌付けをしている場合、保健所職員が指導していましたが、法的根拠がなかったので、適切に対応できなかったが、この条例で可能になりましたとのこと。
その法的構成を確認するため条例そのものを確認したいと言うと、来年施行なのでまだ例規集には掲載していないとのことで、可決した条例のウェブサイトを教えてもらい、条例文自体にようやくたどり着きました。
たしかに条例では、かなり厳しい条件付きで、いわゆる野良猫への給餌についておおむね以下のような遵守事項を定めています(14条)。
(1) 給餌等を行う場所の周辺住民への説明に努めること
(2) 生殖することができない猫に給餌等を行うこと
(3) 給餌等は時間を決めて行い、その場を汚したり、餌を放置したりしないこと
(4) 排せつ場(トイレ)を設置し、トイレのふん尿を適正に処理すること
これがただの遵守事項で、努力義務であれば格別問題が生じないでしょう。ところが、そうなっていないので、このまま条例を杓子定規に適用し運用すると、問題が生じかねないと思います。つまり、条例23条は勧告及び命令の規定ですが、第1項で、上記14条違反に対し、無条件に是正勧告を認めています。これまでの法令や条例で、野良猫に餌付けするといった程度の行為について、詳細な遵守義務を定めてこれに違反するだけで、勧告・命令さらには罰則を認めたものがあったでしょうか。
他方で、同条第2項では周辺の生活環境が損なわれている事態が生じた場合、第3項では動物への虐待の恐れが生じている場合など、他の条例等でも認めている餌付けに伴う悪影響が発生している場合を取り上げています。この2項、3項と1項との整合性がとれているのか疑問です。その意味で、上記の批判は1項については当てはまると思われます。
むろん実際の運用においては、通常、指導を行い、どうしても指導を聞き入れないとき、勧告に至る、また勧告も何度も行う(一般にはそれまで相当時間を要することが多いと思います)でしょうが、条文の規定自体は、なんの制約もなく、14条1項の遵守義務違反があれば、勧告でき、さらに命令もでき、それに違反した場合5万円以下の科料の罰則となるわけです(26条4項)から、条文の規定の仕方が罪刑法定主義違反といった大上段に構えなくても、いささか安直ではないかと疑問に感じてしまいます。
勧告、命令が23条2項、3項で十分この問題に対処できると思うのですが、なぜ遵守義務を究極には罰則まで用意して守らせる必要があるのか、はなはだ疑問を感じています。日本人が通常もつ社会的規範を尊重するという姿勢を育むという意味でも、行政が直ちに介入する範囲を拡大することには疑問を禁じ得ません。
私が現在起こっている野良猫問題を理解していないためかもしれませんが、それにしても生き物との共生についてもう少し柔軟な姿勢で対応できないかと思う次第です。
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