180809 障害者とともに? <グループホーム「マンション退去を」 管理組合提訴>を読みながら
グループホームは割合軽い障害をもった方が自立して暮らすには有効な手法の一つではないかと思うのです。重度の障害のある方だと、家族みんなで一人を世話することも大変苦労されています。それでも家族の中でみんな寄り添って頑張っている家庭もあるでしょう。他方で、いつまでもそれが続けられない場合もあり施設で職員の支援を得て集団生活を送ることもあるでしょう。
他方で、家族の支援から距離を置いて障害のある方だけで一緒に共同生活を送ることができれば、施設内にあるさまざまな束縛から離れ、自分なりの生活スタイルを、一定の支援を受けながら送ることもできるでしょう。グループホームはそんな役割を期待されているのかなと思うのです。
ところが、その部屋を確保するのが容易でないですね。一戸建ての家などを借りようとしても、分譲地内だと反対も出たりして、簡単に借りられない状況があるように思えます。以前、近くの空き家をグループホームに貸そうとしたら、近隣を含め分譲地で強く反対する声を私も聞いたことがあります。私自身、近隣の人とも懇意にしていたので、直接異論を挟みませんでしたが、問題点を話し合う機会がとれればと思っているうちに、話が進まなかったように思います。
話は変わりますが、軽度の知的障害者の通所施設が当時、近くにあり、最寄りの駅や分譲地の周囲では、障害のある人たちをよくみかけました。近隣の高齢の方はその施設にボランティア支援にでかけ、こどもたちのために手製のボールを作ってあげたりしていて、わが家の子どもにもいただいたりして、身近に感じていました。幼い頃わが子たちはこれで家の中でずいぶん遊び暴れたものでした。
ただ、電車に乗っていたりすると、障害のある子の中には、奇妙な言動をしたりするので、他の乗客から驚きに視線が集中することもありました。通い慣れた私たちには、ああ、あそこに通っている障害のある一人だなと思いつつ、がんばって通所できているなと感心していました。といってなかなか声かけたり、隣家の高齢の方のように施設まででかけて支援というか、交流というか、そういったことまでできませんでした。
さて本題に戻ると、昨夕の毎日記事では<グループホーム住居か施設か 「マンション退去を」 管理組合提訴・大阪>とマンション利用をめぐる対立が裁判で争われることになっています。残念なことです。
< 少人数の障害者が共同で生活するグループホーム(GH)を巡り、大阪市内の分譲マンションの管理組合が、部屋を借りてGHを運営する社会福祉法人に対し、「住宅以外の使用を禁じた管理規約に違反している」として、部屋の利用禁止を求める訴訟を大阪地裁に起こした。8日に第1回口頭弁論があり、法人側は請求棄却を求めた。>
要は管理規約に違反するか、それが退去請求の正当性を持つかが争われています。
さらに記事は<訴状などによると、このマンションは1988年築。法人は15年前から2部屋を借り、現在は知的障害がある女性6人が暮らしている。組合側は2016年に消防から指摘を受け、GH事業の実態を把握。管理規約に違反しているとして退去を求めたが、法人側は応じなかった。>と、問題発覚の経緯を取り上げています。
この後に、管理組合がとった管理規約の改定という対応は、おそらく管理会社か弁護士に相談して行ったのではないでしょうか。
<このため、組合は16年11月、管理規約を改定し、GHとしての利用を禁じる規定を追加。17年7月にはGHの利用停止を求めて大阪簡裁に民事調停を申し立てたが、成立せず、今年4月の総会で提訴を決めた。「部屋を事業に使うのは共同の利益に反する行為」とし、部屋の利用禁止や違約金約85万円の支払いを求めている。>
このくだりは少しわかりにくいように思います。管理規約の改定自体は、「GHとしての利用を禁じる」規定を追加したということですから、GHとして利用することは規約違反となりますが、それだけでは退去理由の正当性として弱いと思ったのでしょうか。さらに「部屋を事業に使う」ことが組合員全体の「共同の利益に反する」と付け足したのでしょうかね。
他方で、法人側の説明では<借りているマンションの2部屋には、40~60代の女性6人が暮らしている。間取りは3LDKで、1人ずつ個室がある。利用者らは日中に作業所などに出向き、夜はテレビを見たり音楽を聴いたりして過ごしている。GHの職員らは食事や掃除、入浴などのサポートでマンションに出入りする。>とし、また、<「マンションは、利用者が毎日暮らす住居で、管理規約には違反しない」と主張している。【戸上文恵】>さらに<担当者は「障害のある人が自分らしく生活することができる場を奪わないでほしい」と訴える。>
さて、どちらの主張が法令、管理規約、そして社会的正義に適合するのでしょうか。
<大阪府立大の三田優子准教授(障害者福祉)の話>が取り上げられています。
<グループホーム(GH)は住まいであり、地域で暮らすことを望む障害者にとって重要な選択肢の一つだ。賃貸住宅を利用できなくなれば、同じような形態のGHに対する影響は大きい。GHが事業だとして退去を求めるのは障害者差別解消法に抵触する恐れがあり、多様性の排除にもつながる。>
なにゆえ共同社会を形成する人たちは、障害者とのともに生きる社会を避けようとするのでしょうか。このような主張は、ヘイトスピーチとか、妄信的な主張とは異なり、普通に日常生活を送る少なくない方の心の中にも共通するものがあるかもしれません。いや、そういう私自身、まったくないなんてことは言えません。私自身、自分が差別意識を持つことにヘイトしますが、そのような意識が自分の中に起こらないとは断言できません。ただ、そういう意識を持ったときの自分を嫌い、許せない気持ちになるだけです。
では、本件訴訟のようなケースではどのような解決が求められているのでしょうか。記事の経過が正しいのだとすると、法人によるGH利用は15年間も継続していて、その利用によるトラブルがあったことは認められません。
このような場合に、総会で管理組合規約を適正手続で改定したとしても、その内容が社会的正義を逸脱するものであれば、権限の乱用の性格を帯びる可能性があるかもしれません。そうでなくても、つまり、規約自体は一応、有効としても?その違反を理由に退去を求めるだけの正当性を持つという解釈には疑問があります。障害者との共生は現代社会の基本的な要請であり、障害者差別解消法の趣旨にも相容れないものではないかと思われます。
むろんGHといえども、管理がいい加減で、管理組合の平穏な利用を著しく脅かすような利用があれば別ですが、そのようなこと自体、偏見的なものの見方ですし、具体的な裏付けのない限り、他の利用者と同じように対応するのが本道ではないでしょうか。
なお、少し古い記事で、グループホームの開所を祝うものがありますが、分譲地でも、マンションでも、偏見を持たず、このように明るく受け止めたいものです。
<グループホーム完成 障害者の生活拠点に 出雲・NPO法人 /島根>
<グループホーム障害者と地域、交流の場 与謝野・岩滝に 6月にはカフェもオープン /京都>
ちょうど一時間となりました。本日はこれにておしまい。また明日。
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