180928 入場拒否と身分証 <安室さんコンサート 療育手帳で入場断られ>などを読みながら
安室奈美恵さんという歌手の人気はすごいですね。私の年代ではというか、私のような時代遅れの人間には、縁遠い存在です。
とはいえ今日の毎日記事<平成という時代第2部 この場所/4 渋谷・スクランブル交差点 多様性あふれる文化の発信地 育児・仕事、私が決める>では、安室さんの生き方に憧れ、自分の仕事、結婚、子育てにあたってもお手本みたいにしている若い子育てしながら働く女性が活き活きとこれまで歩んできた生活スタイルを語っています。ただ、この女性の場合夫はどうやら家事を一緒にするタイプではなさそうな感じなのが残念ですが・・・
そんな憧れの安室さんのコンサート、そういった仕事と家庭を両立させてバイタリティあふれるような女性だけが魅了されるわけではないようです。知的障害、身体障害、精神障害など障害をもつ人たちや家族にとっても、とても興奮したり楽しむことのできる内容のようですね。
障害のある人やその家族は、わが国の現状では、コンサートやさまざまなエンターテインメントの会場などに出かけて臨場感を楽しむことが容易とは言えないでしょう。いや、かなり厳しい環境下にあるのでしょう。バリアフリーという言葉がいつ頃から使われ出したのでしょうか。ハード的な措置については相当程度進展したかもしれません。しかし、それはあくまで身体障害者対応であって、それ以外の障害については十分ではないと言えるでしょう。
なによりもソフトの面では、障害者の種類に関係なく、進んでいないのが現状ではないでしょうか。先日のNHKテレビで、パラリンピックの選手が前回大会の英国を訪問したときの感想を聞かれ、ハード面は石畳が多く、それほどバリアフリーが進んでいなかったけれど、心のバリアフリーがなく、とても快適に過ごせたと言った印象を述べていました。
石畳を車いすで進もうとしたら、近くの人がすぐに支援の言葉をかけてくれ、快く手助けしてくれたとのこと。それがどこでもそういう人たちが周りにいて、心が解放されたような印象だったそうです。わが国は逆に、ハード面の改善を行政が進めるものの、周りの人は知らん顔が普通かもしれません。内心は違うかもしれませんが、気軽に手助けする意識はなかなか育っていないように思います。
さて本題の入場拒否の話に戻ります。今朝の紙面に載っていましたが、ウェブ記事では26日付けで<安室さんコンサート療育手帳で入場断られ…「取り返しがつかない」憤りの声>と問題を取り上げています。
なにが問題となっているかですが、<引退した歌手の安室奈美恵さんが2~6月に開催した最後のコンサートツアーで、知的障害者に発行される「療育手帳」を身分証として提示した客が入場を断られた問題で、当事者から「取り返しがつかない」と憤りの声が上がっている。>これは大変な事態ですね。入場拒否理由が療育手帳を身分証明にならないというのですから。これは合理性のない差別的取扱いと言われても仕方がないと思うのですが、なんらかの合理性があるのか、毎日記者は追求しています。
<本人確認の業務を請け負った電子チケットサービス大手の「ボードウォーク」(東京都千代田区、飯田尚一社長)は、入場を断られた客にチケット代を返金する方針だが、国会議員が厚生労働省に対応をただすなど、問題は広がりを見せている。【大村健一/統合デジタル取材センター】>
入場拒否の経緯は次のようだったようです。
<2番目の妹愛子さん(34)はダウン症。音楽が好きで、安室さんや浜崎あゆみさんのコンサートに姉妹でよく行った。「愛子はコンサートの後、うちわやペンライトを片手にいつも楽しそうに踊っています」と、雅代さんは話す。雅代さんは安室さんのファンクラブ会員で、会員向けの先行抽選でチケットを手に入れた。福岡にライブを見に行くことは、家族にとって数年に1度のぜいたくでもあった。>
そのライブ会場受付で、<愛子さんは係の男性に「療育手帳は国から発行されたものではないので入場できない」と言われたが、意味がのみ込めず、係員に何度も手帳を見せた。見かねた雅代さんが駆けつけて説明したが、係員は「入場できない」の一点張り。やむなく愛子さんの入場を諦め、母親が付き添って会場の外に残り、雅代さんと一番下の妹だけで入場した。>
本人確認業務を行っていたボードウォーク社は、身分証によってこれを行っていたようですが、<昨冬のチケット販売開始当初、障害者手帳も身分証として有効と公式サイトで説明していた。>
<障害者手帳とは一般的に療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類を指す。>のですから、療育手帳も含まれますね。それを同社が今年3月上旬に療育手帳を除外して残り2種類に限定したのです。
その理由は、療育手帳について<「複数の呼称や様式があり、多数を短時間に入場させる必要のある大規模コンサートにおける本人確認作業になじまない」>ということです。
愛子さんが入場拒否されたのはこの公表の前でした。
さて、療育手帳を身分証として認めない、身分証がないとの理由で入場拒否することが合理的な差別的取扱といえるのでしょうか。
国が発行したものかどうかといった理由は問題外でしょう。都道府県や政令指定都市など行政が発行したものを身分証明として認めないなんてことは不当な理由ですね。また療育手帳には<「複数の呼称や様式があ>ることは確かですが、<多数を短時間に入場させる必要>を理由に身分証と認めないのも、合理的な根拠とはなりえないでしょう。
これが発行者が民間企業や団体ならともかく、都道府県などれっきとした自治体が発行したものですから、その真実性になんの問題もないでしょう。手帳の名称や様式が異なるといっても、確認すべきことはそれが「療育手帳」で、その中に表示されている本人の住所氏名と写真により本人確認は容易にできますし、それ以外の記載は見る必要もないのですから、それぞれの手帳内容の違いは問題にすること自体、疑問です。
仮に同社が身分証の種類を指定して、それ以外は認めないとして公表した上で、入場拒否したとしても、それが合理的な取扱とはいえない以上、違法な差別的取扱として損害賠償の対象となると考えます。同社はチケット代の返金を行っているようですが、コンサートで安室さんの歌を楽しむことができなかったことの損害はそれではカバーできないとても重大なものですね。
チケットの転売やダフ屋など、これをめぐる悪質行為がはびこっているため、同社の対応も厳しくなるのかもしれませんが、それとこれとは違いますね。障害者対応の意識の低さを示しています。安室さんにはもちろん問題はないですが、コンサートの運営主体は彼女の最期の舞台をこういった面でもしっかり支えてもらいたかったと思います。知的障害のある方や家族に差別的取扱があったなんてことは、安室さんの気持ちに大いに反することだったと思います。彼女のことは知りませんが、沖縄問題に触れた姿を見て、きっとそういう方だと思うのです。
今日はこれにておしまい。また明日。
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