180307 不正と不適切 <神戸製鋼所 データ改ざん 社長ら辞任・・調査報告書>などを読みながらふと考える
今日はいい知らせがあり、気持ちの良い一日を送ることができました。天候も若干寒さを感じましたが、日も差し、野鳥も楽しそうに騒いでいました。今日も終日仕事に励み、いつのまにか業務時間が過ぎています。
本日のテーマはと考えて、トップ記事の南北首脳会談の行方や、両面一杯に掲載された廃炉・除染問題も、荷が重いと思いまして、別に何面にもわたって大きく取りあげら得た神鋼データ改ざん問題にすることにしました。
この記事を見ていて、毎日のスタンスが若干、変わったのかなと思ってしまいました。以前は見出しで「神鋼データ不正」と「不正」を明確に打ち出していたのが、今日の記事ではまず、「神戸製鋼所」となって、「データ改ざん」なり別の言葉に置き換えているのです。
なぜそうなったかが気になり、神戸製鋼のホームページからその広報<当社グループにおける不適切行為に関するご報告>は当然として、また外部調査委員会として発表した<当社グループにおける不適切行為に関する報告書>も、「不適切行為」としているからではないかと思われるのです。
後者の報告書は、外部調査委員会名ではなく、神戸製鋼所名での報告書となっていることも、ま、「外部」とはいえ、日弁連の第三者委員会ガイドラインにそった調査・評価・公表が行われたかについて、疑義が残るというよりかは、あえて第三者委員会として活動した結果ではないですよともいいたそうです。
ほんとはきちんとこの報告書を読んで議論すべきですが、80pありますので、内容は東芝のそれと比べると、さほど複雑ではないとしても、ちょっと時間が足りないので、少しだけ引用する程度にとどめます。
むろん毎日記事も、具体的な言及では「不正」と明確に指摘しています。だいたい、データを改ざんしたり、ねつ造したりすることを、「不適切」と表現する調査委員会の考えが私には理解できません。そこを少しだけ掘り下げてみたいと思います。
なお、改めて「不適切」という言葉の意味をネット(残念ながら広辞苑をPCに入れていたのですが新しいPCに変えるとき入れないままでしたので広辞苑ではありません)で調べたら、<大辞林 第三版の解説>では<取り扱いや対処の仕方がまずかったりふさわしくなかったりする・こと(さま)。 「 -な発言」 「 -な対応」>ということです。
これに対し、「不正」は<正しくないこと。正当でないこと。また、そのさま。 「 -を働く」 「 -な行為」 「 -乗車」>でした。
ま、常識的な解説に近い方と思います。むろん外部調査委員会においても、この「不適切」と「不正」との違いをきちんと一定のメルクマールで仕分けして、定義づけした上で、今回の改ざん行為やねつ造行為は不適切にとどまると言うのであれば、それは定義が妥当かどうかの議論にはなっても、それなりの見解として見ることができます。
しかし、報告書では、なんの定義づけもなく、当然のように「不適切行為」として改ざんやねつ造の例を類型化して具体的に取りあげています。それはおかしいと思うのは私だけではないと思うのですが。
さて毎日一面の記事<神戸製鋼所データ改ざん 社長ら辞任 688社に出荷 調査報告書>では、<神戸製鋼所は6日、アルミ製品などのデータ改ざん問題の責任を取って、川崎博也会長兼社長(63)と、アルミ・銅事業部門長の金子明副社長(63)が4月1日付で引責辞任すると発表した。また、不正があった製品の出荷先が新たに163社判明し、延べ688社に増えたことを明らかにした。>不正製品の責任をとって社長・副社長が辞任するとしています。
それは調査報告書で<試験データが顧客の求める仕様に満たない場合にデータを改ざんしたり、試験を実施していないのにデータを捏造(ねつぞう)したりする不正が、1970年代から行われていた。不正のマニュアルがあったことも判明。アルミ・銅事業部門で、3人の執行役員が不正を認識しており、2人の元役員は役員就任以前に不正行為に直接関与していたことが確認された。>(毎日が「不適切」と報告されているのを「不正」と記載しています)ことからです。これは不正と委員会も、神鋼もきちんと認識し表現すべきでしょう。
<データ改ざん 最終報告書 要旨>の記事では、「不正」の内容を次のように簡潔に整理しています。
<・顧客仕様を満たさない検査結果について、満たす数値に改ざんする行為、測定したかのように試験結果を捏造(ねつぞう)する行為などが確認された。
・アルミニウム・銅事業部門では、役員2人が工場勤務当時に不適切行為の存在を認識しており、ほかの役員1人も昨年4月に認識した。過去の役員2人は役員就任以前に直接関与していた。
・アルミ・銅事業部門の真岡製造所では遅くとも1970年代から不適切行為が行われていた。>
ま、さすがに毎日も、報告書の要旨ということで、ここでは「不適切行為」とそのまま引用していますが。
報告書では、大量の頁を使って再発防止策に力を注いでいますが、この要旨では次のように整理しています。
<・社外取締役を3分の1以上とする。会長職を廃止して、社外取締役の中から議長を選出し、任意の諮問機関である指名・報酬委員会を設置する。コンプライアンスと品質を総括する取締役をそれぞれ配置する。
・品質保証人材を全社共通の専門人材と位置づけ、事業部門・事業所間を横断したローテーションや育成を行う。
・試験・検査記録の自動化を進め、データ入力の1人作業をできるだけなくす。新規受注時の承認プロセスを見直す。>
たしかに社外取締役を増やすとか、そこから議長を選出するとか、よくあるパターン化した再発防止策で、形は作れても、内容というか魂というか、そういうものが見えてきません。
<品質保証人材>って、どんな人でしょう。これまで長年にわたって改ざん・ねつ造を繰り返してきた組織をどう変えるか、これだけでは見えてきません。もう少し報告書の詳細を読んでからここは批判なり議論なりすべきかもしれませんので、この程度にしておきます。
最後はAIなり機械的処理に依拠すると言うことですか、これまたよくあるパターンですが、自動化自体、簡単にプログラミングできない場合もあるでしょうし、この具体策を方向書で見てみたいものです。
<データ改ざん 不正、70年代から 受注・納期が至上主義>の記事を見る限り、神鋼の組織自体に根深い問題があるように思います。そのような営業至上主義的な体質をどう変えるかが見えない中で、トランプ政権のようなアメリカファーストを理由に、鉄鋼・アルミの輸入制限措置を打ち出しているとき、きちんとした対応がとれるのか、懸念されますね。
<データ改ざん 根深い「現場任せ」>では、神鋼を含む主要素材メーカーについて<発覚した主な品質不正事案>が一覧表になっていますが、横並び式の業界体質が、特定の産業だけでなく広範に不正処理が侵食しているおそれを感じてしまいます。
いや素材メーカーとか完成品業界とか、限定されることなく、幅広く日本の企業の中に、それも大企業の中に蔓延している病態かもしれないと不安を感じます。
それは財務省や厚労省の例をあげるまでもなく、国・自治体の官僚組織にも及んでいる可能性を否定できないように思うのです。
<データ改ざん 中島経営法律事務所 中島茂・代表弁護士、早稲田大商学学術院・伊藤嘉博教授の話>は、いずれも基本的な視点でごもっともと思いますが、それは短い記事ではこの程度しかいえない、あるいはカットされた物かもしれませんね。実効的な策を個別に検討されるべきでしょう。と同時に、いま日本の企業が株高のおかげで、資本利益が潤沢に内外から入ってきて潤っているだけで、実体経済はほんとに好調なのか、気になりますし、それもこういったデータ改ざんやねつ造による砂上の楼閣であるかもしれない懸念を感じます。
最後に報告書の一部を取りあげて、これを不適切というべきでなく、不正というべきという点を指摘しておきたいと思います。
委員会は安全性の検証を行い、それには問題がなかったという結果を報告しているようです(4,5p)。
その上で、材料検査について不適切行為と認定した部分を一つ取りあげます。
材料検査の結果が、顧客仕様を満たさなかった場合、再検査、屑化(処分でしょうか)、あるいは転用等を決定することとされていたのです。それは顧客との約定上、当然のことでしょう。
ところが、品質保証部のスタッフが、材料検査結果に独自にアクセスして、数値が顧客仕様を満たすように書き換え、改ざんし、合格品として出荷させていたというのです(9,10p)。
これは顧客の信頼を売りギルだけでなく、厳密に言えば顧客との契約違反ではありませんか、それがなぜ「不適切」なのでしょうか。こういうことを不適切といって通るのであれば、わが国が自負してきた品質第一とかも、あいまいになりませんか。不適切と言ったあいまいな言葉で通すのでは、再発防止策も「適切」というか、的確なものが樹立されるか心配です。
今日はこの程度で終わりとします。また明日。
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