たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

融資システムの瓦解 <商工中金 業務改善命令 不正融資、全体を調査・・>などを読んで

2017-05-10 | 企業・事業・研究などの不正 適正な支援

170510 融資システムの瓦解 <商工中金 業務改善命令 不正融資、全体を調査・・>などを読んで

 

早朝ぼんやりとスギ・ヒノキ林で戯れる野鳥を眺めて過ごしたのですが、今日は和歌山往復もあり、結構タイトで、すでに5時を大きく回っています。曇り空で和泉山脈も高野の山々も今ひとつはっきりしない山容を見せ、ドライブ中も体調が思わしくなく、疲れてしまいました。

 

こういうときは余計話題が見つからないのですが、ともかくなぜか見出しのテーマにしました。ざっと毎日新聞を読みましたが、内容からはどんな不正かいまひとつ判然としなかったので、商工中金と経産省のホームページをのぞきました。前者には第三者委員会調査報告書がアップされていて、読もうとしたのですが、全文172頁、要約版で62頁と一時間では理解できそうもありません。とりあえず要約版を中心にざっと読んで、この問題について少し考えを書いてみようかと思います。

 

商工中金といえば、中小企業のための政府系金融機関として信頼性が高いと評価されていると思います。調査報告書でも、<商工中金は、その完全民営化の実現に向けて経営の自主性を確保しつつ、中小企業等協同組合その他主として中小企業の事業者を構成員とする団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図るために必要な業務を営むことを目的とし(商工中金法1 条)、融資、預金、債券、資金証券、国際業務その他の金融サービスを総合的に提供している。>と述べています。

 

その信頼性の高い金融機関が経産省から業務改善命令が出るような一体、どんな問題があったのか、調査報告書は、この問題について、「危機対応融資の事業」という公的資金で行われていること、その危機要件がないのにあるように不正を行ったこと、その不正の内容は日付け、金額、人数の改ざんに加えて試算表などを職員が作成していることなどを指摘したばかりか、不正発覚後の対応において、監査部が本来なすべき業務の適正チェックを怠ったばかりか、不正を隠蔽する作業を積極的に行っていること、これらの適正報告を役員側は真に受けていることなどを問題点として指摘しています。

 

この種の不正処理の原因である、内部統制やガバナンスがお粗末というか、まったく機能していない点を明らかにしています。

 

で、この不正行為について、調査委員会は、調査スコープをどのように設定したかを説明していますが、危機対応融資事業に絞っています。当該事業について多数の不正事案が発覚したことが契機になったことからだと思いますが、不正を行った支店数や口座の数を考えれば、それで足りるかは懸念が残ります。むろん時間と費用・人材に限界があるので、絞り込みはやむを得ないですが、これだけ大規模に、しかも監査部も巻き込み、役員側も虚偽報告を見過ごす状態からすると、全事業についてチェックする必要性はあったように思うのです。

 

また、危機対応融資の実行口座数22万余の口座中、調査対象にしたのは2.7万強の口座に絞っていますが、半分に当たる完済口座を含め大半を対象外にしています。その絞り込みに合理性があるか、今ひとつ、その説明を一度読んだだけでは腑に落ちない思いです。

 

不正の手口を取り上げていますが、具体的な資料は一切なく、抽象化されておりますが、少なくとも資料としては(プライバシー保護に配慮して黒塗りしてでも)添付するべきではなかったでしょうか。

 

全体として、上はトップマネジメントから下は現場職員まで、かなりの人を対象に、ヒアリングをしっかり行ったことが理解でき、その結果について、不正行為の原因や再発防止策の提案に生かしていると思われます。しかし、どうもそれぞれの時点でも役員議事録での発言との関係、支店長会議などでの指示内容、各支店での指示事項など、本来あるべき具体的な資料を踏まえた質疑が行われていないように思えてしまいます。ざっと斜め読みなので、見落としたかもしれませんが、ヒアリング内容にはそのような印象を抱かざるを得ませんでした。

 

なぜこの商工中金の不正問題をとりあげるかというと、危機対応融資は、国民にとって、また政府にとって、最高度に公益性の高い、必要度の高い事業です。その事業がこんないい加減な、危機要件がないのに、あるように細工して融資することがまかり通っていたことに驚きを隠せないと同時に、これまで多額の予算が計上されましたが、ほんとうに被災に遭った人のために使われているのだろうか、一向に復興の兆しが見えないではないかといった不満を裏付けるような内容だからです。

 

商工中金の貸出実績は、調査報告書によれば、

 

① 国際的な金融秩序の混乱(リーマンショック)

・平成20 12 6 日危機認定 ~ 平成23 3

・事業規模5 6,000 億円

・貸出実績4 7,700 億円

② 東日本大震災

・平成23 3 12 日危機認定 ~ 現在

・事業規模3 5,000 億円

・貸出実績2 2,000 億円

③ 円高等対策

・平成22 2 15 日危機認定 ~ 平成26 2

・事業規模3 3,000 億円

・貸出実績2 3,600 億円

④ 原材料・エネルギーコスト高及びデフレ脱却等対策

・平成26 2 24 日危機認定 ~ 現在

・事業規模4 5,000 億円

・貸出実績2 8,600 億円

⑤ 熊本地震

・平成28 4 15 日危機認定 ~ 現在

・事業規模1,000 億円

・貸出実績250 億円

 

と極めて巨額です。むろん不正事案として認定されたのはそのほんの一部です。それでも毎日記事によれば、<不正件数は制度が発足した2008年以降、92支店中35支店816件に上り、不正な融資額は198億円、利子補給は1.3億円に上るなど、全国に広がっていた。>ということで、決して看過できるような金額ではありません。そしてそれが不正の全貌といえるかも懸念が残ります。調査委員会による調査でも解明されたとはいえないと思います。

 

中小企業の味方であり、頼りになる商工中金が、まるでリーマンショックの引き金になったウォール街の金融機関と同様の(それほどの悪質性はないでしょうか、ま、極めて安直な不正とでもいえましょうか)得体の知れない金融機関に成り下がってもらっては困るわけで、早急に、体質改善を図ってもらいたいものです。

 

一時間で終わらせるため、無理矢理な論述になりました。調査報告書はしっかり読んで対応しないと失礼に当たりますね。次からはもう少し丁寧な対応をしたいと思います。

 

今日はこれでおしまいです。


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