170119 先住民と移民、そして国 毎日記事「先住民族アイヌの今」を読んで
今朝は昨日と打って変わって、ほんわりとして暖かさを感じるのは、人間の相対的な皮膚感覚からでしょうか。機能がマイナス5度近く、今朝は3度程度ということで、田畑を含め生気あふれる様子。それが自然に寒気の和らぎを感じてしまうのかもしれません。
今朝の毎日一面、三面は、<現場報告・トランプと世界>と題して、不法移民の大量流入により白人の低・中間層が元の住処を追い出され、トレーラー生活などをしている窮状と、他方で移民制限により将来の生活への不安を訴える移民層が対比して大きく取り上げられています。
このアメリカ大陸の不安定な状況は、こんどは中東でも新たな火種になりそうです。昨年12月、国連安保理はイスラエルによるユダヤ人入植(住宅)地建設活動の停止を決議し、強引な(違法との裁判もある)入植を非難しました。オバマ大統領は、この問題について従来拒否権を発動してきましたが、中東の安定を図るため、イランとの協定とともに、大きく舵を切りました。
これに対し、毎日は<トランプ次期米政権 側近の姿勢、硬軟混在 対イスラエル・パレスチナ>の記事によれば、中心的メンバーの多くが正統派ユダヤ教徒で、親イスラエルの旗手を鮮明にしており、ユダヤ人入植を支援する方向に大転換しそうな雲行きです。そうなると、当然、イスラム世界からアメリカへの反発が強くなり、ISなどのテロ活動をなんらかの形で容認する姿勢が全世界的に広がる危険性も指摘されています。
ところで、トランプ次期政権は、移民に対し、排外主義的な立場を強調しています。それはアメリカという国家の基本に抵触しないか、気になります。他方で、ユダヤ人・民族という巨大な政治経済の力をもつ白人層が、アメリカの富の大半を握る一角を占めつつ、他方で白人層で将来にわたり住居も学歴も展望がない低中間層を巧みに誘導して、その劣悪な環境にあるのは移民のためだと宣伝して、親ユダヤ政権を樹立させたのではないかと勘ぐってしまいたくなる面もあります。
そもそもアメリカ白人層も、新大陸と称して移民してきた人々です。先住民族であるインディアンなどはその生活拠点を奪われ、20世紀に入り次第にその先住民族の権利が認められつつあると思いますが、やはり大きな格差が存在していると言われていると思います。
その北側にあるカナダは、アメリカほど、強奪的に先住民族の権利を奪ったということはなかったと思いますが、他方で巧みな貿易や交渉術で彼らの土地支配権を実質的には奪っていったと思います。その意味では、現代国家という組織は、先住民族の価値・利益・慣習法的権利と言ったものを、近代的所有権などを中核とする自らに有利な法律制度により、収奪してきた歴史ではなかったかと思うのです。
アメリカでは20世紀以降、先住民族による多くの訴訟で、次々とその保護を図る法制度が作られ、カナダでも同様の傾向は遅れながら続いているのではないかと思います。
20年余り前、一時期、カナダの先住民族の権利をめぐる訴訟や法制度を調べていたことがありますが、整理しないまま、断片的な記憶だけが残っています。
そんな中、99年にイヌイットの北極圏での広大な経済的主権を認める新政府、ヌナブト(Nunavut)が準州として成立しました。その前に、ユーコンやノースウエスト準州の政府を訪ね、ほんのわずか聞き取りをしたことがありますが、政府で働く人はほとんどが白人という印象を持ちました。法制度は、英語・仏語で表記されますが、イヌイットの多く人はそれを理解できないのではないかと思いました。
というのはユーコンでは90年代初め、最先端とも思われる、環境法が制定されていて、その環境保全にかかわる法的手続きは見事なほど精緻なものでしたが、政府職員にうかがったとき、その運用実態はあまりないとのことでした。
カナダの中でも、先住民族の権利関係が確立されていないと言われるBC州では、ダムやパイプライン、森林開発などをめぐり、先住民族との間で環境アセスメントや訴訟で繰り返しその権利が問題となっていました。そして州や連邦最高裁は、次第に先住民族の権利を認める画期的な判決を出すようになった言ったと記憶しています。
私がとくに記憶に残ったのは、環境アセスメント手続きにおける、先住民族の利益保護です。彼らに対して、事業者側は事前協議をかなりの内容で実施することが義務づけられていまいした。そして彼らの利益保護のため、伝統的知見(たしかtraditional knowledge)を調査することが義務づけられていて、その保護を図ることが必要とされていました。そしてこの伝統的知見とは、まさに先住民の核心的な利益で、狩猟・採取する場所や貴重な鉱物資源のある場所であったりしますが、それはいずれも口頭で伝承されたものであり、秘密事項ですので、環境アセスメントの報告の中でも特定できないような配慮がされていました。
と前置きばかりが長くなり、今日のタイトルとどう関係するのか、私自身も心配になりそうです。そろそろ和歌山に出かけていかないといけないのに、本論に入れません。
さて、同じく先住民であるわが国のアイヌ民族、アイヌ人は、わが国においてこれまで適切な対応がされてきたでしょうか。北米や国連などでの諸外国の先住民保護の流れに大きく立ち後れているように思います。
今朝の毎日は、<先住民族アイヌの今>という見出しで、北海道アイヌ協会理事長・加藤忠氏からの聞き取りを掲載しています。
先住民族アイヌに関する国立の複合施設「民族共生象徴空間」の開設や新法制定の検討など、政府のアイヌ政策が動き出していることを踏まえて、加藤氏にその意義を聞いているのです。
アイヌ民族の歴史について、どのような考察があるのか私は分かっていませんが、1万5000年近い歴史を持つ縄文人の東日本を代表する民族との見方に惹かれます。弥生人や古墳時代の大和族?から長く「蝦夷」と言われた先住民族として北海道を含む東日本はもちろん、樺太、千島列島を自由に往来していた民族ではなかったかと思うのです。
大和民族といわれる人々自体、渡来人ではないかという見方にもなかなか魅力を感じている私には、アイヌ民族をしっかりと理解しておくことが大事ではないかと思っています。
政府が進める「民族共生象徴空間」の実態を私は承知していませんが、いま問題になっている、わが国をはじめ西欧の研究機関が無断で掘り出し整理せず保管している遺骨の取扱について、加藤氏はその返還場所、慰霊の場所と考えているとされています。しかし、それは遺骨、副葬品といったものはアイヌ民族の基本的な単位である、コタンという的組織こそ、帰属主体であり、そこに返還して慰霊されるべきであると、異議を唱える人々の声を無視できないと思います。
アイヌ民族といっても、そういうコタンという小組織が、各地に多様な文化・歴史を形成し、土着的な生活様式を持続させてきたのだと思います。それを、まるで集団納骨のように、そのような固有の伝統的な価値を喪失しかねない、慰霊の場所は、その本質を損ねかないのではないかと思うのです。
時間がなくなりました。帰ってきてから書く時間があれば、補充します。
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