心配した。
見つけたときは,港の奥で,ず~っと羽繕いをしていた。
外洋性の鳥が港に入るときは,弱っているときが多く,そのかなりの割合で油曝(ゆばく)被害。
しかし,今回は,そうではなさそう。
羽繕いの後,どんどん近くに寄ってきた。
潜った。
どこに行った? と探したら,なんと,足元にいた。
自分で寄ってきたくせして,警戒モードで,羽を寝かせて,ぺったり体に付けている。
ハマると,こんなことがあるが,この後,目の前で,さまざまなパフォーマンスを見せてくれた。
私しかいなかったので,この子,独り占め。
まずは,羽ばたきパフォーマンス。
地味な体色なだけに,羽ばたきすると,次列風切の真っ白にどっきり。
美しい。
翼のパターン。
次列風切の初列側の1枚(s1)が黒と白のツートンカラーになっている。
その隣りの羽も先っぽが黒いか。
次,あんまり面白くない図鑑風の画像。
左側面。
右側面。
私への警戒心が薄れたのか,最初よりふっくらしている。
油曝(ゆばく)している様子はなかった。
良かった,良かった。
左顔を拡大。
右顔を拡大。
「どっち向きがかわいい?」
上の画像を「決定版日本のカモ識別図鑑」(誠文堂新光社,氏原巨雄・氏原道昭著)の写真・解説と引き比べてみるが,アメリカ~でも,ニシ~でもなさそう。
残念ながら,ふつうのビロードキンクロのメス。
それも,お腹が淡色であり,全体も褐色がややまだらになっていること,また,顔の白っぽい部分が大きいことから,1年目冬の若鳥のようだ。
それにしても,この図鑑,アメリカ~とか,ニシ~まで,解説や写真,丁寧なイラストまで掲載しているって,すごいと思う。
私のように,識別や珍鳥にそれほど関心がない人間も,このように掲載されていると,読んで,確認してしまう。
こういう図鑑がスタンダードになれば,これまで見逃されていた亜種や種も,今後,次々と発見されるのではないか。
カモに限らず,もっと広い分野でこのような図鑑を出してほしいが,むずかしいのだろうなぁ。
さて,話を戻そう。
次は,潜水する様子を連続で。
翼を小さく広げて潜る。
翼の先っぽと広げた尾羽が見えて,水中に消える。
この潜水の仕方から,水中でどのように動いて食べ物を探しているのか想像する。
この子は,翼を小さく広げていることから,水中での推進力に,足ひれ以外に,翼も使っているのかもしれない。水中で飛んでいる感じで。
ホントはどうなのかわからないが,いろいろ想像すると,それだけでも楽しい。
で,戦利品。
これは,中身が入っていなかった。
すぐに,ポイ。
こんなこともある。
今度こそ。
ん!?
おお。
拡大して見ると,店頭で「つぶ貝」として販売されている巻貝のようだ。
今度は中身入り。
うまそう。
拡大画像にすると,くちばしと舌の奇妙な協調関係が見える。
つぶ貝をくちばしで咥えている,と見せかけて,実は舌も使っていた。
舌の根っこが,下くちばしの付け根に見えるのが面白い。
貝を食べるときは,丸呑み。
歯がないので,咀嚼することなく,丸ごと呑み込み,砂嚢(さのう)で貝殻を砕き,消化する。
砂嚢とは,いわゆる砂肝のことで,呑み込んだ砂や小石なども使って,その筋肉で貝殻なども砕き,すりつぶす。筋胃とも言われる部分。
呑み込まれた貝の立場からすると,恐ろしい器官。
ピノキオを作ったゼペットじいさんは,クジラに呑み込まれ,おなかの中で生き延びていたが,このクジラに筋胃がなくって,ホント,良かった。
もし筋胃があったら...。
あぁ,想像するだに,恐ろしい。
この子は,移動中,ちょこっとだけ,ここに立ち寄ったのだろう。
この漁港では,私が初認で,私が終認かもしれない。
あまり邪魔にならないよう,すぐに立ち去った。
(2024/03/16 ビロードキンクロ)
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