塗装工事が始まる頃で現場の進捗事態が推測出来るのだ。
躯体工事が遅れ気味の状態になっていれば、
「下塗りだけでも済ませておこう」
と、気が急くのも無理はないものの、コンクリートやモルタルの下地が
乾いていなければどうにもならない。
竣工検査日は言うに及ばず、竣工日当日もまだ塗装をしている現場も多く
見たものだ。
仕上げ工事の最終が色付けであるので、工事が遅れているのが塗装屋さん
の責任みたいに見えるのは、仕方のない職業のようだが、実態を分かって
あげたいものだ。
階段の手摺とか建具の扉とかはそれぞれの職人さんが取り付けてからが、
塗装屋さんの仕事始めになって、
「塗った所が傷ついた」とか「汚れた」とかで,
竣工しても補修用に色を残している。
塗装工事は何回塗るとかの決まりがあっても、決められた塗り回数以後は
「追加工事代の請求だ」との話は、あまり聞かない。
『ペンキ塗りたて』の小さな張り紙があっても、触ってみて、
「まだ乾いてないかな?」
と塗装屋さんの仕事を増やす人もいるものだ。
塗装工事を監督しながら、クダラン事をしていた(今もしているかも)話
がある。
塗料の入った一斗缶(18㍑)を現場搬入時に数量が確認出来るように積
んで写真を数枚も撮る。
塗装面積に対して塗布量が決められているから、大概の塗料数量は計算
出来る。
例えば、トイレの天井だけ塗るにしてもその色の必要量を計算して、納
入写真を撮る。
建物全体の塗装面積は見積資料にあるものの、男女のトイレは普通では色
が違っているので、塗料の色毎に搬入数量を計算するのは、誰の仕事なの
だろうか。
『色々』と言う言葉のように、建設現場にて使う色は三~五色では納まら
ない。
塗装工事の色毎への気配りは色事の話に似て、綺麗な中にも面倒と思うと
前に進まない。
塗装面積を計算すれば青色22缶、肌色30缶、アイボリー45缶…色は濃淡・
つやの量も様々であるし、塗る場所に於いても水性・油性・樹脂の他にも
多種あるし,JIS1種2種とか、木に塗る場合と鉄面に塗る場合など、
材料搬入までの準備が煩わしいものだ。
色の三原色を持ってきて、塗装職人さんが色を調合するものと思ってい
たが、建設現場の塗装の量を思えば、塗料メーカーが品種・材種・規格に
適合した調合したものを、職人さんが塗ればいいだけになったのは、大進
歩である。
(見方を変えればクロス屋さんが指定メーカーのクロスを貼るのと同じ
かな?ただ貼るだけ…ただ塗るだけ…ならばネ)
さて、現場搬入した一斗缶は空になっても処分が出来ないのである。
空になった缶をそろえて潰して、これまた数量がわかるように撮影する。
潰れた缶は見苦しい形になっていて、塗料の残りが缶の表面にこぼれ出て
いる。
「これを写真に撮って何の意味があるの?」
「さあ、昔から役所の仕事では塗装工事の提出写真に必要だから」
予定量を塗ったら空き缶になって、空き缶の数で塗った事を証明出来る
からなんて本気で思っていたのだろうか。
塗料は刷毛からボタボタこぼれて床や手にまで付くし、丁寧に塗装して
塗料が缶に残った場合は地面に捨ててでも、とにかく空缶を大切に集めて
写真を撮れば、塗装監理が終わったような話である。
「クダラナイ」といえば同感出来るし、『ヤレ!』と言われても、
《やってられない》話である。
ペンキを頭からかぶるようなシーンが、映画や劇に出て来るのは塗装屋
さんから見れば、パイを顔面にぶつける喜劇のようで、侮辱されたような
気分になるのではあるまいか。
《塗装工事2へ 続く》