建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

VEの本音(1)

2009-04-27 09:39:01 | Weblog
…………………………(VEの本音 1)……………

「現場でVEを提案してください」とか「VEをして利益を出せ」
と訳のわからない横文字で『現場四監理』の一つである原価監理に取り組んでいるような世界が建設業界なのである。

VEとはバリュー・エンジニアリング、訳せば『対称価値を向上する技術』だそうだが、もっと簡単に言えば「目的を追求する事で対象の価値を向上」すれば、儲かるらしい。
 そもそも、その儲けようとの考えが先行しているから、VEを唱えても成果が見えて来ないのではあるまいか。

「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」として平成9年に政府方針が発表されたこのコスト縮減の名目に建設業界は飛びついたのであるが、本末転倒している場合が多いようだ。
 つまり、VEという金科玉条により設計図からコストを下げる為には代替案に走り(指定Aの製品を類似品のC製品で創ればコストが下がり)下がった含み益が現場の儲けとなり、利益達成の目標値に近づける《裏ワザ》になったのである。

 だから現場では設計図に同等品と書いてあれば、単価の安いものを競って捜し求め、設計者に『変更願い』として見本品と共に提出するのである。
品質が向上する(お金が出て行く)方向には目をつむり、単価の安い物を探しまくるのだから、決して技術力が向上する筈もない。

 入札契約時の見積り時点の金額より安い品物に変更して、価格が下がるのであれば、建築計画の段階で最初からその品物を設計図に取り入ればいいのであって、設計者の製品選定能力が不足しているから、工事中に『VE提案』をして利益を出そうと言う魂胆もある。

 つまり、設計図は何の為にあるのか、創る側が設計図の意図を汲み取っていない。

 設計図を見て入札し、請負金が決まったのだから、設計図通りに創ればいいのではないでしょうか。
 契約書と同じ設計図が製本されて現場に届き、工事開始早々にVE変更案を提出するのでは設計者に対して失礼と思いませんか?

 工事進捗に伴って当然、設計変更が生じて来ます。
 その対応よりも、創る側の業者から同等品(値段の安い物)を提示して、設計変更を協議するのは創る側の身勝手な言い分だと思いませんか?

 私が設計者ならば、
「設計図どおりに創りなさい、設計図に基づいて入札・請負をしたのだから、同等品以上(値段が高い)ならば承諾願いについて協議します」と答える。
 創る上で技術力によって、工法の変更によるものなら協議する対象になるし、技術力によりコストダウンの場合でも請負金の減額にはしないのがVEの前提であって欲しい。

 躯体工事が完成してからも、更に品質アップのVEはないのかと情報を集めているところに、
「先生、クロス貼をやめて塗装仕上げにしましょうよ」
 と使いに出された事もある。
 更衣室とかあまり使わない部屋は
《仕上げの程度を下げよう》
 と提案する根拠が、副所長時代の私にはイヤな仕事であった。
 作業命令を出す上司も嫌いだが、VEをしなければ現場の業績が上がらない、つまり方向性の違うVEにて利益を出して、更に上役に出世した所長さんは一人や二人ではない。
 
                          《続く》
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KY活動(2)

2009-04-22 08:48:10 | Weblog
…………………………(KY活動 2)………………
         
『建物は職人が創るが、事故は職員が作る』
 私は安全大会で必ずこう話ます。

一瞬、場内が張り詰めます。
  --------講演実況記録から--------
 危険予知活動として危険箇所を毎朝発表しても、危険行動を見逃しては安全
監理になりません。
 信号でいえば、安全な現場は順調に仕事が進む青色、危険な現場は赤色で、
「作業停止」当然工程は狂います。
 さらに、危ないから○○に注意しながら作業する・させる・・・これは黄色
の信号に進入して左右を確認しながら作業をしている状態と同じ。
 これでもう事故が発生するのです。
 つまり、安全監理者は「周囲に気をつけながら作業させる」のではなく「安
全な状態で作業させているか」を監理するのです。
 例えば脚立から転倒事故を防ぐために足元を確認するよう指示するより、き
っちり足場を組む事が安心して作業ができる「安全の第一歩」なのです。
 足場がなくても簡易な短期作業だから事故はない・・・そんな保証は誰にも
できないのです。             ・・・(ここまで講演)・・・
        
 私は25年以上も現場にいましたが、労災事故報告書を書いた事は一度もあり
ません。 
 現場の安全点検の基本は「安全か、危険か」の判断ではないのです。
 場内点検パトロール時、安全・危険の判断基準は各職で様々でしょう。
 しかし、私は、
《安全か、安全でないか》
で監理していました。
 つまり、「信号は青なのか、そうでないのか」です。
 安全でないけれども作業を止めさせると工程がますます遅れるので、
「危なっかしいなあ…」
 と見過ごす・・・そんな現場マンにはなって欲しくありません。
        
 安全研修会で、事故を起こしそうな絵や写真の題材を見て危険を先取りする
学習も確かに危険予知です。
 しかし、現場の危険予知は、安全担当者のみならず作業員全員が安全から
外れそうな状況(青→黄)を予知する行動にしたいものです。
 そして危険予知したら即、安全作業が可能になるように措置を講じること
です。 
「気をつけながら作業します」という危険予知活動より、
「安心して作業出来ます」
 の安心確認運動にいたしましょう。

       (今号の一句) 安全か
                 安全でないかの 分かれ道
                    安心見つけて 一本道

                            《続く》 
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KY活動(1)

2009-04-17 23:34:07 | Weblog
    …………………………(KY活動 1)………………

「空気が読めない」を略して《KY》と新聞の政治欄に出ていたのには驚いた。
 もともとは建設現場で危険K・予知Yから『KY活動』としてのキィ・ワードであり、長年聞き慣れているものの、この場で少し話をしてみよう。

 建設現場で朝礼の後にKY活動の時間があり、職種グループ毎にミーティングを行う。
 グループリーダーが今日の仕事の中で「○○に注意しましょう」の言葉に皆が唱和する。
 一見、安全対策には問題はないようだが、本当にそれでいいのかと聞いてみる。
 場内が危険だから、前もって危険を予知するのは悪くないが、危険な状態で作業させている人達は、危険を取り除く事をしないで、毎日作業をさせていて安全監理なのか……である。
 職人さん達は危険な場所で作業するとは、思っていない。
 ところが、作業しようとすれば足場が無いとか、手が届かないとか、床に穴があるとの状態でも、
「周囲に気をつけながら、作業します」
と毎日唱えているだけのKY活動で、事故が無いのが不思議なくらいである。
 KY活動を全員が毎日やっているから事故にならないのではなくて、たまたま事故になってないだけで『KY活動の効果ではないのである』と私はいつも言っている。
 危ない箇所を知りながら、手をこまねいていて事故になったら、
『未必の故意』
つまり、必ず事故になる事を知っていながら……と業務上過失で、検挙されるのである。
 事故に合わさない監理、なおかつ事故にならない現場環境にするには、どうするのかである。
                   
 まず、KY活動を原点から掘り下げてみよう……(日立建機PR誌ティエラ79号から)…

安全大会の一環として協力業者と共に安全を考える会社もあれば、事故を起
こした反省会で安全大会を開く会社もあり、安全監理には難しさがあります。
安全監理の出発点「危険予知」の話をしましょう。
  ☆
 日々刻々と状況が進む現場は、昨日まで手摺があった所とか今朝ネットを外
した個所で事故が起きたなどとよく耳にします。
 毎日、朝礼時に危険予知運動を実施して全員に安全喚起を伝え、安全書類も
整備してあるのになぜ現場(仮囲いの内部)で事故が発生するのでしょうか? 
 会社の安全計画書・活動の決まりだから
「やるべき事をやらせている」
とほとんどの現場担当者は自負しています。
 77号にも書きましたが、《やらせている安全》には限りがあります。
「北風と太陽」の話のように力で押し付ける安全より、やれるべきところから
自主的に全員が基本から安全活動を行えば、成果は言うまでもありません。

 安全規則も必要ですがそれよりも「安心」があれば事故はまず起きません。
「今日で終わらせろ、作業予定表を提出しろ、やり直しだ!職人さんを増やせ」
 作業開始前の打合せ時から現場監督がカミナリを落とし、腕自慢の職人さん
が《こころ》を見失っている中で作業をさせるからミスが発生するのです。
         
『建物は職人が創るが、事故は職員が作る』
 私は安全大会で必ずこう話ます。
 一瞬、場内が張り詰めます。

                              《続く》
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会話シリーズ 《喜》

2009-04-12 09:45:12 | Weblog
************************************************************
     会話シリーズ 喜 の編
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 建築屋としては苦労して創った建物が竣工した時、なによりの喜びを感じるのである。
-------------    ---------------    -----------
★竣工式の前日
「最初から突貫だったけど、よく間に合ったねえ」
「皆のチームワークで頑張れたよ、ありがとう」
「明日の竣工式の後、打ち上げ会はどこでするのですか?」
「金一封が、貰えるから全部飲もうか」
「金一封は経理部が没収です」
「見つかる前に内緒で抜いて来い」
 感謝状よりも《金一封》が気にかかる時期である。
-------------    ---------------    -----------
★工期も予算も足らなかったまま、竣工間近な頃、
「さすがに突貫の福さんですね…」
「工期の無い仕事はもう取らないでくださいよ」
「福さんをアテにして営業してるから…」
「もうイヤだよ、下請けさんも大変じゃん」
-------------    ---------------    -----------
★自分の現場から職人を連れて行った応援先で、
「福さんの応援部隊が来てくれて助かったよ」
「私達のやりたい放題でごめんね」
「もう1ヶ月ここにいてくれたら、良かったけどね」
「明日帰ったら、もう私の現場に火が点いてるかもよ~」
-------------    ---------------    -----------
★マンションのオーナーの奥様から、
「引越しで傷を付けたくないから、手伝って頂けない?」
「《新築に傷》の言葉に弱いのよ…誰から聞いたの?」
「これからここに住めるなんて夢のようですわ」
「システムキッチンは私の大サービスをお忘れなく」
「今度、ご馳走しますから来てください」
「はい、新築パーティには酒樽持って伺いますね」
-------------    ---------------    -----------
★1号店の落成式の後、
「これで2号店3号店が出来るようになったよ」
「私の1号店が標準共通仕上げになったのですね?」
「オープン記念セールまで付き合ってください」
「それより4号店は私の担当になるのは本当?」
-------------    ---------------    -----------
★落成式のパーティ会場では、
「この旨い酒が苦労を流してくれますねえ」
「次ぎは儲かる現場だよ、付いて来る?」
「儲かるンなら、次の竣工旅行は海外に決まりだね」
「しっ…、来週の旅行もナイショだからねッ」
「所長、あの金一封いくらあったの?今夜も飲めるの?」
-------------    ---------------    -----------
★☆★☆★ 
 竣工した建物の中に佇むと、昨日まで流した汗と、ひたすら職人さんと励んだ思い出、
それに事故もなく出来上がった喜びをかみしめて、一筋の涙が星空を煌かせてくれる。
少し淋しいけれど嬉しい、嬉しい《ひととき》でもある。
                             ★☆★☆★

 会話シリーズ《喜・怒・哀・楽》より。 
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CADで作図(2)

2009-04-07 11:11:37 | Weblog
                 ………………………(CADで作図 2)……………

 近年、現場のわかる人(施工図経験者)にチェックを依頼する業務(会社?)が現れている。
 普通、出来上がった図面は現場に納入して、若手現場監督が図面内容をチェックして、修正・訂正を加味し、作図者が再度修正して納品しなければ、満足な施工図には仕上がらないものだ。
 今回、CADで書いてあるその図面をチェックして欲しいと頼まれた時、
「図面屋さんの手書き図をCAD化(昔風に言えばトレース)したものですか?」
「いや、図面は若手スタッフが書いているから…チェックだけを……」
(何と?パソコンでそれらしく書いてあるだけの事なのだ)
と我ながら物足りない施工図を見て、呆れ果てたものである。

 パソコンの並んでいる部屋の中で机を与えられて、さて周囲の若者を見ると、設計図と向き合っている時間があまりにも少ないようである。
(さすがにパソコンだから…)
と感心したが、そう長くは持たず、頭が爆発してしまった。
 どうやら外国で作図させて、あたかも(日本で作図している)とゼネコンを騙している。
 どの国に外注して作図させても構わないが、日本製だと偽って作図を請負って、中国市場の超安価な世界に発注し、建築技術に係わりなく商売として建築業界を混乱させている。
 施工図作図は本来、現場員の重要な仕事なのであるが、職員不足や工期の問題から、ある程度は外部発注せざるを得ないのである中を、現場応援ではなくて、安かろう悪かろうで一枚幾らの儲けでゼネコンに《施工図》を納品している事に対して、私は技術屋として許せない。

「チェック以前の問題だろうが!建築用語(単語)が間違っている!直せ!」
 叱られた担当者の顔色に反省は一向にない。
 それより、どこが間違っているのかさえ分からなく、眼もうつろなのである。
「CADなのに何でこんな事が違うの……」
 理由をよく聞けば、
「私が作図したのではありません、中国で作図させていますので……」
 中国であろうとなかろうと、施工図をゼネコンに納品するのに、明らかに間違った図面では建築屋としての図面価値も信用も全くない。
 一例で言えば、日本のブロックは20㌢×40㌢なのに、柱から柱の間を等分した35㌢のブロック割り付け図があった。
 設計図からデータをそのまま複写してから作図したようである。
「35㌢のブロックで、おかしいとは思わなかったのかね?」
 等間隔で割り付けてあるから、半端が無くてピッタリ納まっていて、漫画的な絵であった。

 情けないと言えばそれまでだが、この図面で建設現場に納品しているという厚顔無恥な図面会社にいれば、建築屋として今までのプライドが許さないから、
「得るモノは何も無くて、無くするモノばかりだから」
と言い、早々に紹介された《施工図チェック》の仕事とは縁を切った。
 しかし、まだこの会社はゼネコン所長さん達から出入り禁止を食らいながらも、(安い図面ならいい)と言う二流現場を対象にして、施工図屋として存続しているようだ。

『安かろう悪かろう』
 からスタートした図面から、決して建物が良くなる筈がない。
 構造計算をどうこうする能力がないだけまだマシとは言えるが、所詮、ゼネコンを騙して低品質の施工図で稼いでいるのだから、そのツケは建物(施主)が背負う事になるのである。
 途中まで書いていれば後はゼネコンが何とかするから……では施工図にならないのである。

 施工図ミスに気が付けば、現場に行ってデータを修正すべきであるが、それもせず(出来ず)知らぬ顔で新たな現場へと営業を行い施工図を作図するのだから、また同じ繰り返しでしょうね。
 少しでも現場期間中のミスを減らすには一番初めが施工図面であると言う事だ。

 設計図⇒出来上がったらこうなるよ・・・と言うだけの基本図面。
 施工図⇒このように創るのだぞと手順・寸法・詳細を職人に伝える為の工事実施図面。

「設計図」と「施工図」の違いの意味が分からない《施工図屋さん》がいて、建設現場を混乱させていると言う話である。
                          《続く》
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CADで作図(1)

2009-04-02 09:17:06 | Weblog
                ………………………(CADで作図 1)……………

 《施工図のチェック》と言う仕事口を紹介されて、何となく興味を持った。
 ここ数年来、パソコンで図面を書く『CAD作図』が一般的になって来た。
 製図版の上で定規を使って書く『手書き図面』には製図者の技量がはっきり現れて、図面そのものを拡げた瞬間にその図面の良し悪しが分かるものであった。
 現在では簡単な施工図でさえコンピューターで作図するので、
「一応きれいな図面になっているだけである」
と昔の技術者は口を揃えて言うのである。
 近年、ワープロからパソコンへと時代は急転回して、ほとんどの書類を提出するのに現場にてパソコンで作成するようになった。パソコンのソフトが急成長して操作も簡単になり文章に枠とか飾りを付けたりして、見た目の良さが優先されるようにもなった。

 最近の設計図はほとんどCADで作図されていて、設計図にデータを添えて施工業者に最初に渡して、施工図もCAD図を要求されるようになっている。
 設計事務所・ゼネコン・各現場事務所において、共通のCADソフトならばデータのやりとりが簡単で図面チェックも省力化なのだが、現実は大混乱中である。
 設計事務所はプレゼンテーション用にも対応した図面が主流だから高価なソフトを使用せざるを得ないし、毎年のようにヴァージョンアップするソフトで設計する。
 現場は『施工図』を作図するのだから複雑な機能は必要ない。
 しかし、設計事務所と同じソフトに合わせていて、宇宙ロケットも製図可能のソフトを建築業界に持ち込み、しかも職人が看る為の現場用の図面にこのソフトを使っても意味がない。
 それは現場の木屑を運ぶのに最高級乗用車を現場に購入したようなものであり、せめてライトバン程度を使えば十分である事なのに、上司がパソコン音痴ではどうにもならない。
「高いソフトの現場購入を認めたのだから、若手はしっかり利用しろ」
 この程度が建設現場のトップのIT能力なのである。

 高額なソフトが2年毎にヴァージョンアップされていて、最新版のソフトで作図したデータが一昨年買ったソフトではもう使えない事もある中で、JWWのソフトは新旧入り混ざっても全く心配がなく、建築図面をグループ毎に個別作図するのには最高である。
 建築屋の為に開発されたJWWはフリーソフト(無償)でありインターネットで取り込めるし、何より施工図を書く事に際し、全く不足がない優れものである。
 設計図としてプレゼンテーション的な《絵》の色彩感覚が必要なら少し無理があるが、建設現場で施工図を書くのに、仲間内で共有して作図出来る簡単・便利さでは一番である。
 私は商売柄AUTO・DRA・JWWの3種類のソフトを使っていて、どのソフトを導入しようかと相談を受けると、施工図を書くのにはお金のかからないソフトが一番だと薦める。
 一人で1枚だけを専用に書ける、複雑な操作をCADの初心者が使いこなせる、高額なソフトを毎年買い替えられる等、これらの内一つでもあれば「JWW以外だね」と答えている。

 話を戻して、CADで作図した《施工図》図面は設計図からデータを複写・拡大をして、あたかも自分が作図したように配置を変えて一枚の《完成施工図》としているのが現実である。
 機械が扱えない人は綺麗な図面を見て一応良く出来ていると思い、正確かどうかは後回しになってしまい、ついついそのまま現場で使う事になる。
 確かに設計図の縮尺では見えにくいし、納まりから割り出した寸法ではないから、例えば手すりの柱は書いてあっても、この間隔は何㌢なのか記入が無い施工図もある。
 壁を貼る場合CADならば仕上の品物の位置に色で区別表示出来るが、白黒印刷の現場では一本の黒線にしか見えないので、仕上げを見間違う事になる施工図もある。

 昔の図面屋さんと言う人は1本の線を引くにしても、消して再度記入するような無駄な操作はしないし、紙の上にケシゴムの後とか鉛筆の窪みによる汚れは極力避けていたから、Aから引いた線がBから引いた線と、どこで交点になるのかを理解して図面を書いていました。
 従って、自分が引いた線の行く先がどこで止まるのか分からないと言う事はあまりなくて、柱がここで壁がここ、建具はここでタイルはここ……と頭の中で完成した図面から一本の直線を理解してから《施工図》として更に詳しく書いていたものである。
 昔の人の図面の如く、あたかも出来ていて、
「CADで清書しました」
 と言うような図面が最近やたらと多くなっている。
 その原因については・・・。

                     《続く》
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