十一月 三十日(木) 晴れ
今月で一気に完成した気分になったのは、外部足代(あしば)が無くなったせいだろうか。
建物周辺もさっぱりした感じになっているけれど、花壇の立ち上がり壁コンクリート打設
とか立体駐車場の排水管等の埋設工事もあり、まだまだ地面が落ち着く迄には日数がいる。
今月を振り返ってみるまでもなく、来月のカレンダー「最後の一枚」12月を開いてみた。
年末に祝日が一つ増えているし、ボーナス、忘年会、クリスマス会、二日酔い予定の日等
遊ぶ事や楽しい事が沢山ありそうだ。
―――年末休暇、お正月休みも目の前だなあ……。来月のこの頃は正月気分だろう―――
但しKビルが予定通りに出来上がっていればの話だがネ。
足代の材料も予備分を残して返送終了した。
引き続いて今度は仮囲いを解体する。
今までは道路使用許可を受けて車道へ1mほど飛び出していたのが、スッキリとして来た。
しかし、竣工迄は不用心なので、簡単なネットフェンスで仕切りを作った。
背を伸ばせば敷地の中が見える位だが、道路の境界線より内側に一応設置した。
まだ敷地内はアプローチ(道路~正面玄関)に床石貼り工事を残しているし、交通災害に
お互い関わり合いたくない。
この簡単なフェンスで現場内作業時には安心して仕事が出来るが、強風で倒れはしないかと
一抹の不安はあるので、建物から控えを十分に取り付けておいた。
朝の6時からM店舗でも世話になったT組の45㌧大型のレッカーが、入口に座っている。
交通量の少ない時に、屋上へ《分電盤》と《高架水槽タンク》を荷揚げの為だ。
レッカー車自体は敷地内に入っていて問題はないのだが、搬入トラックが半分歩道に飛び
出してしまう。
警察で一応許可は受けているものの、第三者への交通の流れを悪くすると事故の誘発原因に
もなりそうで、早朝に荷上げを行う計画としたのだ。
僅(わずか)40分のレッカー作業時間だけれどガードマンさんにも半日作業補償、つまり半日
分の賃金を支払っての作業だが、もったいないがやむを得ないと言う気持ちにさせられる。
このレッカーは8時には他の現場へ「お早うさん」と何気なく出勤するのだろうね。
屋上へひとまず置いてある荷物は『重量物運搬工』という専門業者で設置する。
コロに載せたり滑車で吊ったりして《物理の原則》がここにあると思える位に、理屈抜きの
方法で作業を行うのは、人間の知恵と言うものだろう。
しかし、いつもの事ではあるが、高架水槽の荷揚げや設置の度に、
(これは何とかならないものだろうか)と思う。
昔から高い所にありデッカイ『高架水槽』だけれども、最近は小型化にある程度なって来て
はいるものの、建物の外観上から奥の方へ追いやられていて、おまけにスペースも狭い。
デザイン的に丸い物やステンレスの物、塗装を施したものもあるけれど、風格のある建物に
見せる場合は塔屋を囲って「外観に現さない」場合が多いが、
しかし、このテッペンを誰が気にして見ているのだ?――と私はいつも思う。
タンク自体もいいデザインだと私には思えるが……。
設備工もたった一個の物体の為に荷上げ方法で悩むのだ。
レッカーが設置出来ないと、本気で(ヘリコプターで持って来ようか?)と考えてしまう。
私はまだヘリコプターで搬入した経験はないけれど、現実には時間の問題となろう。
そうまでして、高所で辺ぴな所に設置する必要はどこに原因があるのだ?
設計図面通りの位置の為か、それとも建築基準法の斜線制限をのがれるためか―――。
建築とは『建て築く』という精神を忘れて、デザイン、法律に走り過ぎていませんか?
これらは創る側の勝手な言い分だと思えるでしょうが、このタンク一個の為にどれだけ日本
国内で建築業者がムダな事を行っているか迄考えるのは、私位のものだろうか。
官庁の『○○館』の建物ならいざ知らず、一般建物でも屋上にデザインを要求しますかね。
『税金のムダ、土建屋の儲け』のバランスを保っているのなら、私も黙っていよう。
民間の建物の場合、タンクを隠す壁の高さ(建物の最高部)さえ同業他社のビル建物より10㌢
でも高い、高くしろ(この市内では最高だ)と競っている企業もあるくらいだしね・・・。
―――方丈記、曰く―――
「たましきの都のうちに棟を並べ甍(いらか)を争へる、
高き卑(いや)しき人のすまひは、世々を経て尽きせぬものなれど、
これをまことかと尋(たず)ぬれば、昔ありし家はまれなり・・・」
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