建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

責任逃れ(1)

2010-05-28 08:55:06 | Weblog

                  

 

「弁護士さんに建築業界の説明をして頂けないでしょうか?」
と親しい金属工事の世話役から困惑気味の電話が来た。

ことの起こりは、
3年前に手がけたマンションの4階から子供が二人落ちて亡くなった
両親から手摺の取り付けミスで職人さんと会社に高額な賠償請求が来て
いる……
弁護士さんから建設業界について、もう少し勉強したい部分があると言
われて…
詳しい話は会ってから…と深刻な問題になりそうな気配が濃厚であった。

一週間後、社長と世話役がやって来た。

「小学校に入る前の子供さん二人が、窓の手摺を掴んだまま、買い物帰
りの母親の目の前に落ちて、二人とも亡くなられた。一人は近所の子供
で、遊びに来ていて、事故に遭った」

手摺を握ったままで手摺がはずれたの?」
と建築工事に重要なポイントを確認した。

事故の調査が始まって、関係者が集められた時、警察から、

「この手摺を取り付けた人は誰ですか?」
「済みません、私です」
と謝まりの言葉を職人さんが最初に言ったので、         
「原因の一つはこの人にもあり」
と直接手摺を付けた職人さんに、事故責任が一気に被さったという。

「ちょっと待ってよ、それはオカシイよ」
「だけど、外れた責任を最初に認めたので、賠償請求が…」
「その前にゼネコンには責任追及の手は伸びていないの?」
「3年前に竣工物件だから、もう、外れたのは関係無いと言っている…」
「施工ミスが原因であれば、職人よりも工事監理者が第一責任者だ!」

施工時のミスなのか、設計ミスなのか、入居者が破損させたのかで外れ
たことの責任の発端となるが、話を聞く程、だんだんと腹に据えかねる
ものが膨らんで来た。

そこで訴訟のいきさつを詳しく述べてみよう。

職人(Aさん)はその窓枠のみ違った方法で手摺を取り付けたのである。

他の窓の手摺は総て溶接して留めてあるのだが、その窓には溶接を受け
る金物がゼネコンにて取り付けられていなかったから、請負仕事は完了
せず手摺を会社に持ち帰っていた。

ゼネコンが受け金物を設置するまで2週間程度現場を空けていたら、
「明後日、足場を解体するので、あの手摺を早く何とかしろ!
「受け金物は付きましたか?」
「付いてないけど、何とかしろ」
「(2週間、何もしていなかったとは…)」

何とか出来るものなら2週間前に何とかして、作業完了させられたはず
である。
仕方なくAさんはサッシの枠に外部からネジで留める方法を担当者に伝
え、現場で工夫しながら半日以上もかかって、最後の1台の手摺を取り
付けたのである。

他の手摺のように溶接で留めてあれば事故は起きなかったのは確実であ
り、施工図にない作業命令を下したのはゼネコンで、Aさんは仕方なく
取り付けざるを得なかったのである。

更に悪いことに、この手摺はメーカーから

   《責任逃れ2へ 続く》

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塗装工事3

2010-05-10 16:02:25 | Weblog

では、楽しい塗装工事を……(日立建機PR誌ティエラ76号から)……

 塗装工事の目的は仕上がり面を華やかにすること。
この『色を付ける』という作業、簡単なように見えて実は施工監理
が難しい
ものなのです。
 塗装工事の監理について話をしましょう。

 マジックペンに油性・水性があるように、塗料もまずその成分
(アクリル・
ビニール・ウレタン等)を確認することから始まります。

 仮に鉄面に塗る場合、塗装は鉄を保護する役目、つまり錆から守る
役目を果
たしますが、海上の橋桁と高速道路の橋桁、あるいは歩道
橋とでは、例え色彩
が同じでも成分はまったく違います。

 鉄面の錆び止め処理は成分(JIS規格)の何種を何度塗装する
のか……を
まず第一に確認します。
 一般的に色(赤・黄・白等)を見て錆び止めの材質を判断していま
すが、一
種・二種の区別は18㍑の塗料缶に明記してあるので、事前
に必ず確認してくだ
さい。

 私の失敗を一つ、
錆び止め塗料と仕上げ塗装色のメーカーが異なっていたため、監理
者から、
「実際に問題は発生しないのか?」
と疑問を投げかけられたことがありました。

過去の組合せ実績が無い以上は「OK」とは言えません。このときも、
「多分良いでしょう」
の結論を出す前に、錆び止め塗料の総入れ替えを実施しました。
材質の違うものを混ぜるとか重ねる場合は慎重な配慮を怠った
のは私の監理ミスと判断したのです


鉄骨組み建て時にボルトのネジ部分は油が塗ってあり、油面に塗装は出
来ま
せん。
錆びを発生させて(油が落ちた状態)から錆び止めを塗ります。
コンクートに埋まる鉄骨部分に塗装した場合は付着力を弱めるので錆び
止め
処理は禁物です。
塗る・塗らないの境界位置も重要な管理ポイントなのですね。

仕上げ工事に突入した時点で工程が不足していれば、塗るというより色
を付
けるという作業になり、結果として一時しのぎで仕上げた事になり
ますが、こ
うしたケースは後で必ずツケが回ってきます。

鉄骨階段・手すり・建具などで数年も経過しないうちに仕上げ塗装色が
無く
なり、下地が現れている部分などを見ると、塗装した意味が薄れて
来ますね。
やはり簡単な言葉ですが「下地処理」が施工監理の重要ポイントになり
ます。
下地に1㍉の段差があれば塗装してもそのまま現れてきます。塗料で
1㍉も
厚さは塗れませんし、厚く固まった塗料は剥がれ落ちます。

下地の段差部分を同一面らしくカムフラージュして塗装しても、光が
あたれ
ば逆に補修面が浮き出る経験はよくあることです。
「塗れば隠れるから」
という雑な監理はしていないつもりでも、突貫工事現場に検査に行くと、
は飛び出たまま、しかも釘まで塗ってあるのを見ると、塗装監理に
合格点は与
えられません。

塗装工事の監理は塗り面に神経を使いますが、塗りの厚さも重要です。
塗り
厚さを計測できる便利な機械もあり、私は重要な場所は自主検査
記録表にてミ
クロン値を提出していました。

施工監理を十分行っていても、数年経てば止むなく塗装は色あせてき
ます。
しかし、色あせた塗装を除去している時に
「おっ!前のヤツらはいい仕事をしているな
と感嘆させる仕事こそが職人ワザでしょう。

塗装面はいつまでもキレイに見せておきたいものです。
 塗装工事が管理できれば長期間キレイで良い建物になることをぜひ
肝に命じ
ておいてください。

      塗るよりも
            付ける感じの 錆止めは
                  鉄面塗装の ガードマン 

  《続く》・・・コメント待ってるからね~
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《建設現場の玉手箱》 

《建設現場シリーズ最終章》
リストラの風により現場所長から一転した私は篩(ふるい)から
落ちた砂なのか篩いの中に残った土なのか…。
建設現場をこよなく愛する人達の《人間ドラマ》第3弾。

建築屋として苦労して築きあげたものは《信用》である。
信用とは《技術》であり、技術とは《人》である。
一流の技術であればこそ、次ぎの時代に繋がねばならない。
今、残せしもの、それは《信用と技術》である。
         (本文より)     名古屋丸善:刊 ¥1500-
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