建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

オリジナル看板製作

2023-09-25 08:38:12 | 建設現場 安全

   八月 十九日(土) 晴れ   

 念願というかやってみようとした、私の『オリジナルの看板』が製作完了した。
5月頃に藤本工事部長から《何か特徴のある現場》をアピールしたらというテーマを与えられ
て以来、『オリジナル看板』を正面の外壁足場に掲げようと模索していた。

 先月中旬頃から、そのタイトルを何にしようかと迷っていたけど、結局は会社で掲げている
『チャレンヂ21』に決めた。
社内的には数年前からチャレンヂ、チャレンヂ21世紀と目標を掲
げ、会議の中でもよく
使うキィワードになっている。


 しかし、対外的には「?(チャレンヂ?・・・21?・・・何なのソレッ?)」だ。
 これを通行客が多く又、朝夕の通勤電車の中から、まっ正面の所へ掲げ様とするのだが、
これ
だけでは色気もアピール度も全くないので少し遊んでみた。

―――さて、いかに創るぞや・・・と―――

1.8m×5.4mの白地のシートに書くのだけれど、デザイン文字もオリジナルにしたいので
型紙に図案を書いて切り抜いてシートに並べてみる。

一文字の大きさを割り出したり、このコンテ(草案)を考えてる間は遊びの気分だった。

最初は「トライ・チャレンヂ21」にしていたら、二つも重なった意味だと言われた。
それもそうだ。
トライの変わりに何かを捜せ、考え出せだ。
全てを英文字にしたいし、頭の文字は赤色、
21も赤、会社のマークも赤で残りは黒文字
としよう。


レッツ・トライも駄目、ビギンもノーだ。
ステップ・バイステップ―――セフティ・ファースト・・・ありきたり過ぎる。

だが英文字数にして11から12個にしないと『チャレンヂ21』の見栄えが悪い。

セフティ・ファースト(安全第一)だと決まり文句過ぎる。大衆へのアピール度が弱い。
ウーン何かいい言葉、最善の看板製作―――と思ったら『ベスト』が浮かんだ。

「そうだベストだ!もうこれしかない」
トライ・ユアーベスト チャレンヂ21を2段表示にするコンテは決定だ。

20分の1の看板図面を早速書いて、文字の大きさをきめた。
   『RY YOUR BEST!
      
HALLENG・21

が、英字は文字によっては横の長さが一定ではないのに気がつくのが遅かった。
 Lの底辺は縦の巾分しか右に出さない、HとAの文字間隔は少し詰める、Gは少し太めに
る・・・レタリングの本を見ながらの素人看板文字を作った。

文字を切り抜き、シートへ写す頃からN子の健闘が始まった。
良く頑張ってくれた。
事務の仕事は一時中止して、看板製作に打ち込んだものだった。(こっちの方が面白い)

休憩所の隣部屋で、床面に大きく拡げたシートの上に切り抜き文字を並べている。
アンダーラインは入れておいたが、
「文字間隔はこの位だわね」
とバランス良く配置してくれた。

ペンキを塗る頃からはツナギの作業服に着替えて(決めて)いるN子の出番だった。
周りにはヤジ馬(職人さん達)が、
「所長達、何遊んでるの?、お盆で頭おかしくなったのかね?」と冷やかす。

「今日から看板屋のオッサンだ、助手のN子は看板娘だからね」と軽いノリだった。

この時、私自身ペンキが上手に、せめて遠目で看板らしく出来るかどうかは半信半疑どころ
ではなく、2割の自信しかなかった。
でももう止められない、止まらない。

 チャレンヂと目の前にあって、何で逃げれようか。
文字になる(ペンキを塗る)線の外側にはガムテープで全て塞(ふさ)いでおいた。
こうすれば私とN子で塗りつけたペンキが少々はみ出ても、ガムテープを取ったら文字が
くっきりと浮き出て来る―――筈だ。

刑務所でも工事建物案内看板3.6m×5.4m角を自作した経験があるではないか。
この根性を唯一の望みに託して、塗装もN子と手分けしてシツコク塗った。

本職の看板屋さんだってこうやって作る筈だから、まあ、
失敗すれば次へのチャレンヂだよネ」
と気軽にN子に言ってはみたものの、返事はないが今更後には引き下がれない。

それが今、塗装が乾いたので、ガムテープを取った。
 グッドだ。
とても素人の製作とは思えない、見えないシロモノだ。

しかも、地上10mの所に掲げるので、細かい所は見えないだろう。
色ムラが多少あるけれど大成功だ。
―――何とか仕上がっている?ようなものだが―――

これを一気に正面足場へ掲げた。

足代全周にはグリーンのメッシュシートが貼りめぐらされている。
ここへ白地に横文字(全て英語は現場初)の看板を目立つ所に取り付けてみた。

 かなり遠くからでも見えるKビルは、ビル工事中でも目につく程だから何と言う反応が
て来るだろうか。
すぐに頭からケチを付けるのが名古屋人の特徴だから、
「不細工だ降ろせ」
と言う意見が多いかも知れないが、果たしてどうなるか、いつ反応が現れるかを心待ちにし
て、周辺から眺めながらこの一週間の《お遊び仕事》を振り返っている。

今日は土休の人が多いだろうから、月曜日の朝、通勤途中に誰かの目に留まったら・・・。

「一週間かかって作ったのだから、せめて一週間は絶対に掲げておくからネ」
とN子と約束をした。
例え誰が何と言おうともだ。折角苦労して作ったんだものネ。

後日談話―――看板屋さん曰く「あれは17万円は掛かってるね、何処で作ったの?」と)

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お盆直前、躯体打設後に

2023-09-11 08:15:45 | 建設現場 安全

   八月 十一日(金) 晴れ   

5階のコンクリート打設だ。

一昨日ポンプ車の問題をクリアーしたので、昨日の仕事は配筋検査も十分行って、コンク
リート打ち前日にしてはめずらしく打設前チェックにゆとりがあった。

昨日は午後から半日鉄筋工も余裕があったので、6階の柱筋を圧接迄してしまった。
柱筋が先に組みあがったのでコンクリート打設時にホースの引き廻しに面倒かなと思った
けれど、配管を盛り変える様な事はなく、スムーズに打設ホースの移動を行えた。
鉄筋工は盆明け時に圧接工を手配する必要がなくなり、いつでも仕事にかかれる態勢になった。

大工さんの半分は1階と2階の『墨出し(ここが壁芯から1m、床仕上げから1mだよという
垂直水平の基準を各室全てに墨で線を引く事)』に取りかかる事が出来た。

墨出しが終ると躯体工事から仕上げ工事に切り替わり、仕上げの一番手はサッシュ工事だ。
サッシュは盆明け早々に納入する。
その時点では型枠は全て片付けて、基準墨出しも完了しておく予定だ。
設備の冷暖房ダクト配管を天井フトコロ(天井裏)に吊り下げておく仕事もある。

――5階のコンクリートを打ちながら、下から仕上げが始まって来た事を実感した。

6階の時、そう、盆明けからは最上階躯体と最下階仕上げ開始が主要な仕事だ。
中間は型枠支保工の解体撤去中となり、躯体工事ももう一頑張りだと見えて来た。

今日のコンクリート打ちも昼過ぎには終わるが、ポンプ車は次の現場が待っていて、一分
一秒でも早くKビルから出て行こうとかなりアワテテいる。
これを目のあたりに見て、
ダメコンを4階の時に打っていなかったらと思うと背筋が寒くなりました、所長」とF君。
「ポンプ車のお家の事情を現場マンとしてはチョッピリ気を配ってあげる事だね」と私。

今日のコンクリート打設は何だか静かだった。
そういえば鉄筋工の姿がない。
『コンクリート相番』といって鉄筋の乱れを直しながら、サシ筋等を段取りする筈なのに一人
もいない。
サシ筋は昨日の内に全て先組みしてあるからいいものの、

「打設中に鉄筋の乱れをどうするのだ?」と私。
「上手に打って下さい、乱れた所は設備屋さんが今回は直すから……」
と言ったかどうかは定かでない。

明日コンクリートを打つどこかの現場の為に、鉄筋の組み立ての応援に引き抜かれているの
が本音であり、昨日の雑談の中とか、それらしき電話が昨日午後から沢山あった。

昨日―――
「何人でも集めろ!!」
の号令で、今日、今晩中に鉄筋をバタバタと組んで、設備屋さんが夜中から朝の十時迄かか
ろうと、とにかくコンクリートを打つんだという現場へ応援に行くと聞いている。

設備屋さんは鉄筋の上筋と下筋の間に配管するので、鉄筋が組上がらないと仕事をしように
配管の接続さえ出来ない。
壁から上がって来ている管をスラブ(床)に接続する部分は(実際には床でなくて天井用の
電気となる配管)大混雑だ。
それに配筋検査はいつするのだろうね。

壁へのコンクリート打ちが終わる迄にスラブ配管作業も、配筋検査も終わるのだろうけれど、
そんなにバタバタと仕事をしてミス、手直しはないのだろうか・・・。
それで果たして盆明けの段取りは出来ているのか……と他人事ながら気にしてしまった。

―――Kビルに話を戻して―――
Kビルのコンクリート打設は昼食抜きで、12時40分には完了した。丁度100㎥。
4階の時にダメコン(雑コン)を打っているので、昼からはどこを打とうか?と考えるのは
甘い。
ポンプ工に今そんな事を言うと首締められるほど殺気だっている状態は先に述べたネ。

午後からは次の現場へ120㎥も打ちに行かねばならないそうだ。
14時になると型枠工事が終わって打てるだろうという所へ、食事もせずに、
「所長さん、悪いけど今日はこれで………」
と飛んで、まさに飛んで出て行った。
何はともあれ御苦労さんだ。

左官工(K業務店)の山内さんも昼食抜きで、3時迄頑張って終了となった。
もう上を歩いても大丈夫だけれど、12時前後に打った付近の所は少し表面が柔らかい。
という事は、夕方からは今日打ったコンクリートの上で作業が出来る。

「えッ?」
この暑さでコンクリートが固まる迄に表面を『均す』スピードが付いて行けないので、左官
工は大忙しだった。
一晩寝かせて朝墨出しをするのが普通(正確には24時間その上を歩かないで養生する事) だけれ
ど、運動靴で歩くには支障のない(傷が付かない)程、表面は固まって来た。

それに陽は長い。
現在5時。夕陽を見るだけでもまだ暑いのに、足元のコンクリートも相当な凝固熱(固まろう
とする熱)を出している。
撒水(さんすい)養生してもすぐに表面は乾いてしまった。

6時になったら『夕陽の墨出しマン』をやろうと打ち合わせをした。
それまで大工もF君もひとまず喫茶店で休息也。

そろりそろりと歩きながらの墨出し作業だったけれど、主要な部分は全て終了した。

打設後は気が抜けるものだ。
特に今回はお盆休みに入るので、安堵感も大いにある。
もう仕事の話は止めて「休みの予定話」が大賑(にぎわい)わいだ。

「明日は今年前半無事終了を記念して昼食会を『しゃぶしゃぶのK』へ行こう」
とN子に予約手続きを頼んだ。

「明日からお盆休みじゃあないのですか?」
「多分半日でも出て来ればの話だけど、うまいもので釣れば皆さんきっと来るでしょう。俺も
来るけどN子も出ておいでよ、夏休み中の子供二人、連れて来ていいからサ」
「わァーい、で、パパは?」    
「ん?(パパいたの?)」  
                     



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