…………………………(JV・企業体)…………
いつの時代から始まったのか知らないが、一つの建築物を創るのに
JV(建設共同企業体)という看板名を出している現場が増えている。
『ジョイントベンチャー』なる言葉で土建屋のやっている事柄を、あたかも
大事業でも始まったかの言葉を使って世間体をごまかしているだけだ。
最初に言いたいのは、ジョイントする必要性が無いもので、三流タレントの
ジョイントコラボと似ていて、とにかく儲けようとの魂胆が大きいのだ。
このJVとして工事を行うシステムが発生したのは、大型工事をスーパーゼネ
コン1社に発注しない(皆=ジョイントしで儲けを分けよう)との大義名分から
であり、特に土木工事には多い。
ダム・新幹線・地下鉄・高速(高架)道路・トンネル・下水道など土木工事は、
ほとんどJV工事である。
建築では空港・高層ビル・官公庁庁舎・◎◎会館などの公共建築物にJV工事
が多い。
土建会社から言えば入札をして、1社で請け負いたいものだが、国の発注工事
には後ろで操っているヤカラがたくさん口出しして、官側が土建業者を1社に
落札出来ないウラ事情を張り巡らせている。
つまり、落札に天の声さえ聞く耳を持たず、《族》議員の力量で甘い汁の奪い
合いが始まるのである。
そこで更に工事範囲を分割し共同企業体の数を増やせば、ゼネコン数社に仕事が
分配される訳で、ひいては議員さんの『票』に繋がって行くのである。
《政》 が口出しをしない訳がない。
《土建屋》が談合をしない訳がない。
《業界》 にJVがなくなる訳がない。
、まともなモノが創れる訳が・・・
専門分野の仕事を持った業者が2~3社で共同企業体という看板で工事をする
のが、JVを組む目的だったが、土建屋は最初から賛成したとは思えない。
日本のゼネコンとしては専門技術力に大差がないのであるから、だれがどこと
JVを組んでも同じである。
「俺の会社は◆◇部門が弱いからその部分をZ建設にまかせよう」てな事は
ゼネコンの口から絶対に言わない。(プライドより意地があるのだ)
しかし、JVの組み方にしても極端な場合は会社更生法適用申請中のゼネコン
が最新の大プロジェクトのJV看板に名前が並ぶのだから、土建屋の裏という
よりも《政》がどのようにからんでいるのかをはっきりさせたいものだ。
共同と名を付けてみても実際は幹事会社が総てに主導権を握り、その下に名前
を並べる通称JVのサブ会社は社員を出向させるだけで、予算作成や下請け業者
の選定にも権限がない。
「幹事会社の言うとおりに総てお任せします」がJV組織円滑の基本である。
工事請負額の持分も幹事会社が60%取り、サブAが20%・サブBが10%・サブ
CDで10%のように比率を配分する場合も多々あるのに、共同とは何を指して
いるのやらだ。
儲けた場合も損をした場合も請負金の比率で負担する原則であるが、大儲けし
ても幹事会社が財布を握っている以上、サブには原価監理は霧の中であり、
予算より少し儲けた程度の清算書が公表されるのだ。
正直に儲けた全金額を発表するならば幹事会社の意味がないし、自社の儲けを
削ってまで企業体へ分与するほど幹事会社はマヌケじゃあない。
だからJVの幹事会社としてはサブの会社から出向してくる社員に対して、
請負金比率の頭数(人数)が揃えばいいのであって、実力を期待する必要は
なく、原価監理の乏しい人や幹事会社のイエスマンである方が、現場にとって
は円満に工事が進むので何かと都合が良いものだ。
企業体各社のトップがJV会議を開いて、工事予算書を承認すれば、余程の
ことが起こらない限り、竣工まで幹事会社の「やりたい放題」、思う壺で
仕切って行く。
共同企業体と言ってもすべてがオープンではなくて、応接室や所長室はもちろ
ん、幹事会社の担当者の机や書類ロッカーは鍵がかけられていて、マル秘の
書類や帳簿らしきものにはサブ出向社員と一線を引いて厳重管理されている。
幹事会社の契約書や請求書・経費伝票について口を出したり、工事途中で
共同利益の分配額を追求したりする人が出て来たら、現場の空気に軋轢が
生じるのを防ぐ為とでも言うのであろう。
現場構成の人数と年齢をJV会議で決めて、副所長にはサブコンが座り、
現場担当員も主要工区は幹事会社で占めて、サブは鉄筋工事(配筋検査でも
やらせとけ)が関の山である。
サブから出向社員が来ても『裏サブ』と言って会社の名前を出ないゼネコン
がJVにくっついている場合や、名前があっても出向社員はいなくて、名前
だけの幽霊社員の時もある。
(天の声の為、誰もが見て見ぬふりで………族議員のチカラに口を閉ざす)
JV工事と世間の目を向けさせていても専門分野で共同合作しているのでは
決してない。
私もサブとして出向した経験があるし―――
《JV・企業体ならば 2》へ続く