建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

自主社内検査を迎えて

2024-08-19 07:43:05 | 建設現場 安全

 十二月 十八日(月) 晴れ

 ここ2~3日声が出ない。
風邪だと本人は自覚しているのだが、
「カラオケの歌い過ぎよ」
と専(もっぱ)らのウワサだ。

確かに忘年会は数回行いましたし、蟹も海老もフグも喰ったけれど、カラオケは……。
別に嫌いな方ではない。
音楽の道に進みたかった(フルバンドのピアノマンだった)だけに、アイドル歌手よりは
自分が歌っている方が上手い、とウヌボレている。

NHKの《のど自慢》に出ても鐘一つてな事はないだろうというオダテに昨日も乗って、あの
スナックでは「マイク離さーず」(離さない二人組)になっていた―――かな?

「喉(のど)の痛みよりも、声が出ない、喋(しゃべ)れない方が苦痛を感じる」
とN子に言ったら10分間も笑い転げられてしまった。

 こうして黙っているとやはりこの現場で必要及び不必要な事の何にでも(首・口?を出して
いたのか)と反省する機会となった。
でも私が黙ってると、周囲が暗くなって、
「所長さん、今日はどうして機嫌悪いの?」
なんてN子に職人達が小声で訊(きい)ている。

「そうなの、スタミナ切れでネ、しゃぶしゃぶのKに行くと直るそうなの」
とN子も誰に似て来たのか
『オットリ構えて核心を突く話』が出来る様になって来た。

冗談だわよ」から、
「冗談から駒」と私。

「冗談からゴマ」とN子。
「ゴマからゴマだれ」と私。

「ゴマだれは…しゃぶしゃぶのK」(二人同時だった)
と連発の誘導作戦だ。

今は忘年会シーズンに突入しているので夜毎の出張は各自自制してはいる。
それでもエサを蒔(ま)けば食いつくものもあるだろうけれど、エサも今の所、種切れだ。
だけど明日は営業関係者引き連れて、ここの現場関係の忘年会だ。

カラオケの為に喉(のど)を大事にしましょう。
熱はない。
鼻水が少しでて、喉よりも声がかすれる現象だ。

風邪だよ、やっぱり・・・。喋(しゃべ)れないのは苦痛だが・・・。


 十二月 二十日(水) 晴れ

昨日の忘年会で体に少々ヒズミが出てるみたいだ。

ここ数日は体調が悪いけれど、仕事への影響はほとんどない。
今日は午後から『社内検査』だ。
M店舗の時は満足に検査を受けられなかったので、Kビルはしっかりと見て頂きたいものだ。

もう残工事としては、植樹と一階の外部クリーニング、それから受電後の機器の本調整だ。
植樹は年末に行う予定だ。
正月休暇の間《植え木の管理》が問題なので、正月過ぎて植えた方が木が枯れなくて良いと
いう植木屋さんの声を聞いたものの、
「正月明けてイライラするのも嫌だから、年内最終便で植えよう」
となった。
お正月休み期間はガードマンに水をやってもらうように話をしよう。

建物への受電(メーター器設置・電力料金発生)は1月9日に予約を取ってある。
オーナーへ引渡しは1月20日、建物使用開始の入居第1号は2月1日以降と決定した。

社内検査で不備を指摘されても、手直し期間はあるし、この際隅々まで検査して頂いた。
精度的なもののみならず、監理書類の整備もチェックした。

この社内検査の内容を設計事務所に『自主検査報告書』として提出して、その後に設計事務
所とオーナーで『竣工検査』を行う手順になっている。

毎週の定例会議でオーナーと設計事務所とも打ち合わせをしているので、
「直せ!」「直らない・・・」
等の問題は出て来ないと思う。
スムーズに引渡しが行われるのが、創った者としては『最良の願い』だ。

―――昔、―――
       「こんなモノじゃあ受け取れない、××を直せ」
       「△△を直したら精算金を支払う」
        とか言って、最後の工事支払い金を延ばすオーナーさんもいた……と聞く。
       「売れるのを見越してマンションを建てたが(売行きが悪くてその分こちらへ
         工事代金が廻って来ない)という、我々には資金調達には関係はない話であっ
        ても、精算して頂けないという事もあった………」とも聞く。

        支払期日いを延ばす(?)為か、微々たる事を大きく取り上げて、手直し検査を
        依頼しても、担当者が出張だとかで引き延ばし作戦に遇ったり―――とも聞く。

   「オーナーと仲良くして、工事代金を頂いて、初めて任務が終わる」
          と諸先輩から教えられたものだった。
   (工事期間中に施主と金銭を含むトラブルがあっては所長失格)
   は言わずもがなで、無災害で竣工し多少の利益を生まねばならないものだ。

          今はある程度の信用がないと、工事そのものを受注しなくなってはいるが、
        竣工時現金払いだった話なのに、手形が何割か入ったというのもママある。
       
   外壁吹付後「建物イメージが違う」と言ったオーナーもいたネ。
           設計変更通達書類が届き、修正・再施工にも係わらず、精算時には
   「知らないよ」
    といった設計事務所もあったものだ。―――

建物検査を終えて検査に立ち会っていた協力業者の方々も事務所に戻り、N子の淹(い)
たてのコーヒーに皆ホッと一息ついている。  

昔、「何だコレは!?・・・○○社長を呼べ!」
と不満の個所が出てくると《頭からガーン》と押さえ付けたがる検査官もいるみたいだった
けれど、今日は「平凡に」というか『無事に』終了したのは、職人さん達をふくめて皆の
努力の結果と言う事だ。

後は引渡し迄スムーズに仲良くやりましょう。
残り丁度1ヵ月となった所だ。

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原価管理の本音は

2024-08-05 07:41:05 | 建設現場 安全

十二月  一日(金) 晴れ   

師走。
ついに十二月だ。
建築業界は十二月末の竣工が一つのピークだ。

区切りとしての年末か年度末かに竣工日が集中する。
新しい年から新しい建物でという日本人の固執してしまっている考えに、古いこの業界が押し
切られている訳だ。

昨日現在出来高は94%だ。
もう終わったも同然だが『追加工事の金額』を決定させるのが(近日決定)私の責任仕事の
一つだ。
今月には追加工事の支払いが一部出て来るのだから、ここ1週間以内には決める見通しだ。

Kビルの竣工は1月だ。
今月の中頃には竣工検査を―――と気合を入れ始めた所へ、
官庁検査関係は1月になってから行うので、年内に業者の自主検査を済ませる様にネ」
とA設計事務所より連絡が入った。

今、室内は4階迄床カーペット貼りが完了していて、上履きスリッパで作業している。
クロス貼りは6階施工中でもう少しで完了だ。
クロス貼りの完了した部屋には、設備工が電気のスイッチや空調のカバーを取り付けている。
設備担当のK君とH君もこれからが《本番》だ。

各室には鍵が掛かって……アレッ?掛かっていないヨ。(工事期間様の仮鍵のままだ)
これ明日、即、手配の確認だ。

塗装工事も終了していて、傷がついた所をもう一度チェックして仕上げると終わりだ。
(やり残しているものは―――)
と昨日からそればっかり頭の中が空回転している。

こういう時は契約書を見るに限る。
その中の見積書(請負契約書)だ。
一式という所(項目)はパスしても、各工種毎に内訳明細がある。
 例えば雑工事の場合―――
         避難ハシゴ2台、消火器B型8本、鍵ケース1ケ、各階案内板、室名札、黒板、
         掲示板、郵便受け、タオル掛け、旗竿・・・。
取り付ける物も結構あるものだ。
他に外構工事では―――。

今日は安全大会の日だ。
昼食時に場内にいたのはEV工、設備工と片付け人夫で合計しても8名の淋しい大会だった。

今年もまた12月後半は労基署の『歳末特別パトロール』が実施(来場)される。
Kビルはまだ一度も立ち入り検査を受けていないので、今月は来場がありそうな気配が濃厚だ。
15日からは
「無事故の歳末、明るい正月」
の垂れ幕を掲げて一年を締めくくるのも例年通りだ。

今年の師走はアンダンテ(歩く速度)で現場を過ごし、新年を迎える事としよう。

十二月  八日(金) 晴れ

全く現場とは関係ないけれども、今日は太平洋戦争開戦の日だ。
この日があって8月6日、原爆の日があって、戦争が終わった・・・と未だに思っているのは、
私が広島人だからだろうか。

《平和である、自由である》
という事は何をしてもいい事だとは思えない。

自分勝手に行動して、それが自由だという考えを教えたのは誰だ?
日本国憲法を自分の本棚にも入っていない日本人に、自由、平等を語る資格はない。
「勉強して出直して来い!」
と今日はヤケに堅い話になった。

というのも、これは朝、通勤途中のFMラジオのDJが、アシスタントの女性に、
「今日、8日は何の日か知っていますか?」
「巨人軍〇〇選手の誕生日です」
と自信満々に答えた時からムカーッと来た。

DJの方は戦争の話をするつもりで問いかけたのに、何と言う無知な女性よ。
(しゃべ)る事がプロにしては暦からの空気が読めないのでは
「一発で失格」
だネ情けない。

この平和、自由は降って湧いたものではない。
これを何とも考えていないから、楽な方へ楽な方へと若者も、日本人も、人間も(ついでに
私も)流されている。
やはり、歴史というもを通して、過去の人達の人生を通して、今日がある事を気づいて欲しい
のだ。

 寺院建築をみても平安時代にはその時代、鎌倉時代にもその時の息吹があり、戦争で無にな
ったものも有り、そして復興しての今日だ。

 今、我々が創っている建物、これが何百年後に有るかどうかも分からないが、残っていれば
我々の訴えようとしたものを形として現せるだけに、
《平和を守らねばならない》と私は叫ぶ。

ピラミッドは誰が作ったんだ?名もない人が王様の為に作った物でさえ、私は見学に訪れた
い欲望でいっぱいだ。
我々だって何かをこの地球に残せれば幸せだと思いませんか。

さて、本日の本題。
定例打ち合わせで(追加工事金を決定して頂いた)というよりも、
「△△△万で決めて来たけどいいね」
「ハイ!」
としか答えられない、簡単な一発回答の即決だった。


 頭の中で多少ソロバンの珠が動いたけれども、ここから50万~100万の増額願い話をして
もみみっちい。
これで儲けるつもりは当初からないのだし、予想金額最低ラインより少し上だったので
OKしてしまった。
(背広族は1円でも多く決めてもらえと当然のように言うて来るのだが・・・)

 もう1ヵ月の内でさほどのチョンボでもしない限り、予定外の出費さえなければ、一応私の
工事原価監理能力を疑われずに済む筈だ。

原価監理(予算書益金+〇%アップの儲け)は企業秘密として、建築業界として儲かったと言う
時代はオイルショック前迄だったのかも知れない。

見積書の中でも直接工事費に材料費、これだけで請負金の何10%も出て行ってしまう。
そして残った部分から、諸経費として仮設工事費、現場経費、安全監理費、支店経費を差し
引いていくと、引く金額が無くなって(純益そのものが0に近づく)
『赤字だ、赤字だ』
と騒ぐ場合も多々ある。

見積書の最後の項目に諸経費一式△△△万と書くと、その金額だけを見て、
「安くせよ、何で諸経費がそんなに……これがお前さん所の儲けだね」
と、さも分かっているような事を言う監理者もいる。

経費を全額残しても仮に10%なら、使わなければ10%は儲かりそうな計算も成り立つが、
使わずに仕事(建物)が出来るモノではない。

実施予算書の純益目標値から0.5%は益率の良化をする様に努力はしているが『現場四監理』
中で工程、品質、安全の後に原価監理が続いていては、まだまだ未熟者なのだ、この私は。

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