原発のコストは、決して安いとはいえない。一方、自然エネルギーのコストは劇的に下がってきている。
高浜原発の核燃料が、いったん3,4号機から取り出されるという。
大津地裁で運転差し止めの判断が出され、関電はその執行停止を求ていたがそれも却下され、しばらくの間は運転できなくなるためである。
これでもまだ、関電は高浜3,4号機の再稼動をあきらめてはいないようで、再稼動できれば電気料金を上げるというアメとムチのようなことをいっている。
自民党の議員なんかも、電気代のことを理由にして、原発再稼動を主張している。
たとえば、山東昭子・元参院副議長。「これから本当に世の中の景気を良くしようとか、中小企業もこれから発展させていくために、電力やエネルギー問題を本格的に議論を、将来的なことも含めてうんぬんしなければならない時に、もちろん訴訟の詳細を熟知しているわけではないけれども、これから夏に向けて、電力料金の値上がりにつながらないだろうかと危惧している」ということである(朝日新聞電子版より)。
しかしこれも、よく考えてみればおかしな話だ。
アベノミクスの「期待インフレ率を上げる」という観点からすれば、電気料金が下がるのだって別にいいことではない、というかむしろよくないことという話になるはずで、実際、原油価格の下落なんかもその文脈では物価上昇を妨げる望ましくないことととされている。だったらむしろ、自民党の議員らは電気料金が上がることを歓迎するべきではないか。
まあ、それはさておくとして、やはり一般的には電気料金は下がったほうがいいということになる。
では、果たして原発が本当に経済的なのかということが問われなければならない。そこで、久々の原発関連記事として、今回は原子力発電の経済性について書く。
まず、再処理にかかるコストについて。
昨年11月に東京で「原発と核」というシンポジウムが開かれた。米国原子力規制委員会の元委員や、ホワイトハウスの元科学技術政策局次長なども参加したというが、このシンポジウムにおいて、再処理は乾式貯蔵の7倍のコストがかかるという試算が出された。ゆえに、再処理よりも乾式貯蔵のほうが安上がりで、核燃料サイクル自体をもう断念すべきだというのである。
では、その具体的な額は、いったいどれぐらいなのか。
再処理はフランスに委託されるなどしていて、契約に関わることとして電力会社はその金額を公表していない。しかし、一応の推算は可能である。朝日新聞がそれを試みているのだが(今年2月28日付の記事)、貿易総額などから産出したところによれば、MOX燃料一本あたりの値段は、高浜原発の場合で9億円にもなるという。決して安価といえるものではない。このことを報じる朝日の記事では、立命館大の大島堅一教授(環境経済学)の「安価になるからリサイクルするはずなのに、MOX燃料は逆に高価で、経済的におかしい。国は商業的にも技術的にも破綻(はたん)している政策を続けており、負担は国民に回ってくる」というコメントが紹介されている。
また、原発が事故を起こした場合の賠償や廃炉などの費用も考えなければならない。そうした費用を考慮して計算すれば、原発のコストは火力などよりも割高になるという見方もある。原発が安価だという話も、かなりあやしいのだ。
さて、再処理のコストが割高だという話をしてきたが、ではコストの問題で再処理をしないとなると、今度は核燃料が枯渇するかもしれないという問題が出てくる。原発の燃料として使える放射性物質はそんなに大量に存在するわけではなく、今後中国やインドなどが本格的に原発を使い始めれば、枯渇の危機も現実味を帯びてくるし、枯渇とまでいかずとも、燃料価格の高騰は避けられないのではないか。いずれにせよ、経済的コストという点だけ見ても、原発の未来はそう明るくないといわざるをえない。
その一方で、自然エネルギーのコストはどんどん下がってきている。
風力や太陽光の発電コストは、火力発電のレベルに近づいてきているし、まだ下げしろはある。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が今月発表した報告によれば、太陽光発電のコストは2010年から2015年までに58%下がり、今後10年でさらに59%下げられるという。風力発電についても、今後10年で陸上風力発電で26%、洋上風力発電で35%のコスト削減ができると見込まれている。風力発電は、発電量においても今後十数年で原発の発電量を超えると予想されていて、確実にエネルギーの転換は進んでいるのだ。
日本があくまでも原発にこだわり続ければ、新たなエネルギー開発の潮流に乗り遅れてしまうことにもなりかねない。
高浜原発の話に戻ると、3、4号機は停止し続けているものの、1、2号機については稼動期間を20年間延長するという話になっている。わざわざ進んで時代の流れに取り残されようとしているのである。もういい加減、原発再稼動路線と訣別して再生可能エネルギーのほうに舵を切るべきだろう。