まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

2017母子すちゃらか旅 ふりーだむ編

2017-07-11 21:14:19 | 日記


町のいたるところにあるTATOOの看板。

ニュージーランドの先住民族には刺青の慣習があるそうだが、
オーストラリアのアボリジニにはないようで、これらは伝統というよりは、あくまでファッションの流行りのようだ。

日本語の漢字を彫るのも人気があるみたい。今日見かけたのは、龍。勢いあるなぁ。
映画で見た女の子は、くびのうしろに安って彫ってあったけど、意味わかってるのかな。わたしはチープな女よ。

日本では公共の場にはふさわしくないっていう雰囲気がある。もとをただせば罪の印であるし、衛生面も心配される。

私の会社では、刺青を持っている人はどこの部位にどのサイズであるかを申告することになっている。
整体にかかったときのカルテみたいに、体の前側と後ろ側のイラストがある用紙を配られたときに、余計なお世話じゃないか、とむかついた。

今現在わたしにはないし、入れたこともないけど、
気が向けば入れるかもしれないし、もしそうなっても、誰かに迷惑かけたり、見えるところにあって不快感与えたりするんじゃなけりゃ、ほっといてほしい。
ネイルアートとどこが違う?

二日目担当のガイドが、この国ではよく刺青は見かけるけど、さすがにホテルのカウンターのような職業だと無理かなーとかいってた。
公務員がするのもどうかとおもいますね、だって税金で暮らしてるんだし、だって。
このガイドいろいろダメポイントたくさんあったんだけど、ここがいちばん私にはダメだった。
税金で暮らしてるひとにはそんな基本的な自由すらないのか?
税金で暮らしてるひとは食べたくてもペヤングチョコレート焼きそばは食べちゃいけないのか?

海外旅行だってのにこんなにリラックスしてるのは、
治安がよいことや、車が左側通行で日本車が多いことや、
冬とはいえ過ごしやすい気候であることはもちろん、
いちばんの原因はおおらかで自由で余裕のある国民性だとおもう。

アメリカのへんな大統領に意見してこき下ろされたあげく、
そんならいいよべつに、こっちはなんでも自分のとこで賄えるし、無理に仲良くしなくてもさー、
とかいう態度を取れる恵まれた国なのだ。
自分のところに資源もなく、大国の舎弟にならざるをえない日本とはだいぶ様子が違う。

この国の多くのひとが描く将来の夢は、
持ち家売っ払ってトレーラーハウスを購入し、
オーストラリア全土を巡る旅に出ることで、
それは叶わぬ夢ではなく手に届くところにあるものなのだそう。

もちろん、もっとすごい夢、
たとえばウォーターフロントの一等地に船着き場つきの戸建てを買って
クルーザーをそこにつけて外洋へカジキ釣りにいく、なんてのは
なかなか叶えられるひとは希少だ。

でも残り10年、20年をゆるりと移動しながらさまざまな風景のなかで暮らすというのは、
最高に贅沢な生き方なのではないか。雪に閉ざされたり耐えがたい蒸し暑さと戦ったりしなくてよい、
もっといえば地震も水害もほとんどない国だからこその夢だなぁと羨ましかった。

2017母子すちゃらか旅 熱帯雨林編

2017-07-11 18:01:24 | 日記
観光が大事な資源であるこの国にとって、近年増加している中国からの来訪者はたいせつなお客様である。
ではあるが、やはりそのマナーの悪さには辟易としてる。最近になってここらへんのホテルはみんな、デポジットをとるようになったのだが、それは彼らの所業の悪さによる。不動産もばんばん買われてしまい、問題になってる。

ゴールドコーストのホテルから車で一時間半ほど、スプリングブルックは亜熱帯や温帯など、数種類の多雨林が隣接している希少なエリアで、世界自然遺産に登録されている。

大昔、ゴンドワナ大陸という広大な陸地があり、それに亀裂が入って南アメリカやアフリカ、南極、オーストラリア、ニュージーランドなどに分かれたと言われている。
スプリングブルックに威風堂々そびえるブナは、同じ種が南極の凍土から化石で見つかったことから、「南極ブナ」と呼ばれる。
樹齢2000年。神様の宿る大木。

ブナは表面を美しい緑の苔で覆われている。その一部がところどころ剥がれているのは、彼らが上ってそこで写真を撮るためだ。

ちゃんと手前に柵がめぐらせてあるんだから、ふつうは乗り越えないはずなんだけど、べつに立て看板に乗り越えちゃいけませんとか書いてはいない。

だからガイドがもし見かけたとしてもそこで抗議は出来ないそうだ。レンジャーならまだしも、ただ喧嘩になるだけなので、処置なしといったところ。

それにしても、この神々しい樹に足だの手だのかけられるだなんて。
どこまでいってもわかりあえないんだろうな、かの国のひとらとは。

昨日のゆうごはんのデザート、ティラミスを食べたとき、ホイップの山を覆い尽くす緑の葉っぱがあって、なんだろ?とおもったらミントだった。
気候が良いのでなんでもよく育つらしい。
ポインセチアはこっちのは樹木である。

そしてこのシダ。
いったいどうした?!という巨大なもの。
恐竜時代のサイズを保ってるらしい。

しかし他のどの植物をも圧倒するのがユーカリの木。
かつてこの国には一面ユーカリが覆っていた。痩せた土地を好み、みずから樹皮を落として養分にし、足りなきゃ枝も落とす。
種子は800度の高熱で発芽する。なぜそんな高温なのかといえば、山火事を生き延びる知恵である。
ユーカリの木は、幹にも葉にも油分を多く含み、たとえば葉が擦れて日光が射すと空気が乾いていれば発火する。山火事はこの国の天災の代表的なものである。

おもしろいのが、自然発火だと認めた場合、人間は消火しないということ。人的な原因であったり、民家に燃え移りそうであれば消しとめるが、そうでなければ放っておく。
山いちめんが燃え盛るようなことにはならず、幹を焦がしたり枝葉が燃え落ちたりする程度であることがほとんどだそう。

ユーカリには600種あるのだそうだが、コアラが全種類食べるかというと、そうでもないらしい。
ユーカリの葉には毒素が含まれていて、新芽に特に多い。
コアラはたくさんのユーカリのなかでも、毒素が少ない種を選んで食べる。少しの毒素ならばコアラには免疫があるそうだ。

火事を利用して増えたり、古い皮を養分に回したり、毒を持って敵を減らしたり、ユーカリのサバイバル精神に圧倒される。
ぱりぱりと剥がれかけた樹皮の下のつややかでまっしろい肌に、もはや意思すら感じる。

熱帯雨林にはへんてこな生き物がたくさんいるらしい。
青東屋鳥。
サテンボウバード、と英訳されるそう。
雄は枯れ枝や藁を拾ってきて
奥行き高さとも20センチくらいの
小屋風なものを作る。
そのまわりに、やはり拾ってきた
青いものを並べる。
自然界には青いものはなかなかないので、
彼らは人間の住まいのあたりから
ペットボトルのキャップやストローを
失敬してくる。
飾り付け終わったらあとは
雌が来てくれるのを待つ。
来たな、と言うタイミングで
雄は艶めく深い藍色の体で
素敵なダンスを躍り
小屋のなかに誘いこむ。
入ってきた雌に青い飾りをプレゼントし
すかさず交尾、のあとは立ち去る。

もし狭いエリアでほかの雄が
小屋を作ろうもんなら
取り壊しにかかる。
青い飾りは盗む。
雌はそれを観察し
より強い方の雄を選ぶ。
欲しいのは遺伝子、それだけ。

コアラといい、こいつといい
男は親業しないっていうのが
なんかさみしい。

2017母子すちゃらか旅 コアラ編

2017-07-11 16:15:26 | 日記
多分最後になると思うから、一緒に行こう、奢るし、
って言われてホイホイついて行ったオーストラリア。
3泊6日の旅。
これ書いてるのは帰ってきたその日の午後ね。
もちろん仕事なんか最初から休み取ってるわけね。
ゆるっとご飯食べたり洗濯したり娘を学校まで送ったり昼寝したり。
しかし今頃母は近所で執り行われている
「輪投げの会」の主催としてお茶入れたりお菓子配ったりしてる。
早朝に着くんなら10時からの別件も出ようかなあとか言ってたし
どんだけタフなんでしょうか。78歳。

今回の旅は母についても体験したことについても
いろいろ面白すぎてとりあえず現地でメモ取ってきたりして
それを元にゆるゆると書き連ねていこうと思う。

紆余曲折を経て(その辺また書く予定)着いたブリスベン、土砂降り。
1年365日のうち300日が晴天だというのに、お迎えガイドさんが焦ってる。
そのまま車で1時間程走って、ゴールドコーストのホテルへ。
ビジネスクラスにしては高級感も漂うホテルにとりあえず荷物を置いて
そこから30分南下、カランビンの街へ。

そこには動物園というよりは保護施設と呼ぶようなものがある。
ここでお約束のコアラを抱っこして写真を撮ろうのイベント。
ところがもう直ぐ現地という車の中で
「私、コアラはいいです」という母。
「えっ?!あ、動物苦手ですか?」ガイドさん再び焦る。
とはいえ「コアラとツーショット写真を撮り、カレンダーに仕立ててお渡し」までが
彼の任務なのであれこれ交渉した結果
「スタッフさんが支えたコアラを隣に差し出して一緒に写る」ことで納得。

この、自分は見切れなきゃ、というスタッフさんの背筋力を見てよ。

私はもちろん仰せに従い、抱っこショットに挑む。
手の指を組みあわせてお腹の前に置く。連れてこられたコアラの不安そうな瞳にちょっと同情。
私の手にお尻を乗せられ、胸のあたりに前足を突っ張って頑張るコアラ。
絨毯みたいな手触り。野獣みたいな匂いはしないな。あったかい。可愛い。
お勤めお疲れ様です。

そのあと、抱っこされるコアラ達が集う木の下に案内され、スタッフさんの説明を受ける。
コアラは1日に20時間眠るのだそう。
「ここの子たちは働き者よ。1日に3時間も働くの。」
そして1日働いたら2日休み。スチュワーデスみたいなシフトね。
そして抱っこされるコアラ達はみんな女子。
だいたい2歳になると成人なのだそう。
よく見るとそれぞれ顔立ちが違う。母娘や姉妹はなんとなく似てる。
自然界での寿命は10年くらいだけど、ここにいる子たちは環境が良いので
20歳まで生きることもあるそうだ。

コアラの雄は縄張り意識の強い、しかし気の弱い生物なのだそうで
抱っこされる仕事には向かないばかりか、群れて暮らすことさえ無理な孤独なやつら。
子供を作るときだけ一緒にいて後は放置、育児は母だけが担当。
私の父も生活は支えてくれたとはいえ、子供にはてんで興味のない人だったから、
母は3人の娘を結構大変な思いで育てたとおもう。
「私たちはママだけの子だよね」なんてよく言ったものだ。

コアラの営業ガールズのご飯はユーカリ。それも新芽しか食べないので
スタッフさんは朝昼晩とユーカリの枝を新しく交換するのだそう。
さらに種類もいくつかあって、スタッフさんが葉っぱをちぎって渡してくれた。
匂いを嗅ぐ。これは甘い香り、こっちはスパイシー。
なるほど、いつも同じじゃ飽きるもんね。
薬用オイルにもなるほどの植物、これだけを食べてるコアラは
あまり病気をしない健康な動物なのだそう。
コアラとはアボリジニワードで「水を飲まない」という意味なんだって。
かつて全世界に生息していた彼ら、ユーカリの減少に伴い
現在はこの国にしかいなくなってしまった。
日本ではユーカリが育たないから、日本の動物園にいるコアラたちのご飯は
東南アジアあたりから空輸してる。一頭を飼育するのに費用が年間1億円だって。
同じお金だったら野生区の保護に使ったほうが何倍も価値があると思うんだけど。

ユーカリ自体は600を超える種があって、その中でも
コアラが食べる種類は限りがあるのだけど
その話もまた後で書く。

ガイドさんに渡された小袋の中にはカンガルーの餌が。
カンガルーを放牧してあるところで、これを食べさせてあげるんだって。
当然、母は拒否です。
クロコダイルの観察?そんなの完全拒否です。
この多種多様な珍しい生き物がいる施設で
母が一番楽しそうだったのが「小鳥」のエリアでしたとさ。

よく言えば慎重派、と、自分で言ってたけど
母はとにかく怖がりだ。知識不足、経験不足っていうけどそれだけではなく
何か新しいことに直面した時、起き得る最大限に悪いことを常に予測する。
結果、「思ってたのより全然マシだった」となることで
やっと心の平穏が訪れる。
それは日々いろいろとしんどいだろうな、と思う。
でもそうやって守ってくれたおかげで今の私たちがいるんだな。

小鳥と言えば私が会うことのなかった母の父という人も
小鳥が大好きで文鳥やら十姉妹やら飼っており
床屋(母の実家は東京下町の床屋さん)の店の床をちょんちょん歩いてたそうだ。
同じように金魚も愛でていて、彼が毎朝水槽に餌やりに行くと
金魚たちがみんなで寄ってくるのを可愛いと言ってたらしい。
早くに病気で亡くなっており、母は
「自分が丈夫でなかった分、小さな命が愛おしかったんでしょう」と言う。

そのテイで言ったらコアラなんか一捻りでしょうに、お母様。