季節風~日々の思いを風に乗せて

喜寿になったのを機に新しいブログを始めました。日々の思いをつぶやきます。

ファドが流れる~今月の短歌「塔」12月号 小林信也・選

2021-01-06 18:11:10 | 短歌
刺繍する君のつぶやく子らのことファドが流れる秋の夜長に

さうだよねつて言へばいいのにピーナツの殻剥きながら黙つてしまふ

聡明な子に育てかしみつしりと実のつまりたる葡萄のやうな

ありがたうと思はずつぶやくその言葉 君にかければいいのだけれど

あといくつ来るのだらうかこんな夜が虫の音のなか刺繍する君

塩辛の鰹の腸を切る母よ夜なべ終ひし父の肴に

湯がきたる蝗の肢と翅をとる宿題終へし吾と弟

柔らかな蝗の腹に触れしよりその佃煮は食へなくなつた



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