◇大阪の「IVFジャパン」発表 卵巣のミトコンドリア移植

 高齢出産になる女性の妊娠率向上などを目指して、本人の卵巣から採取したミトコンドリアを卵子に注入する自家移植治療を実施し、2人が妊娠したと、大阪市の不妊治療施設が29日発表した。米国企業が中心に開発し、「卵子の若返り」と呼ばれて一部で注目されている手法で、国内での実施は初めて。一方、効果や安全性が科学的に証明されておらず、専門家から慎重な対応を求める声もある。

 今回実施を公表した「IVFジャパン」によると、この方法は、腹腔(ふくくう)鏡手術などで患者の卵巣にあるとされる「卵子前駆細胞」からミトコンドリアを抽出し、体外受精の時、卵子に精子とともに注入するというもの。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る小器官で、「良質なミトコンドリアを注入することで卵子の質を改善し、体外受精の成功率を高める」という。

 今年2月から27〜46歳の女性25人を対象に卵巣の細胞を採取。うち6人でミトコンドリアを注入した受精卵を子宮に戻し、27歳と33歳の2人が妊娠した。ミトコンドリアの移植が妊娠につながったかは不明という。患者は費用として250万円を負担する。

 森本義晴最高経営責任者(64)は「卵子の質が悪い患者にはこれまで有効な治療法がなかった。今後、日本中でこのサービスを使えるようにしたい」と語った。

 日本産科婦人科学会の倫理委員会は昨年12月、他人のミトコンドリアではないため問題は少ないとしつつ、「(効果や安全性を確かめる)臨床研究として行われることがふさわしい」と判断していた。開発した米企業によると、海外ではカナダなど3カ国で270例以上実施され、約30の出産例があるという。