暗いトンネルを抜けると神秘的な青い水面が広がる。丹沢大山国定公園のユーシン渓谷にある玄倉(くろくら)ダム(山北町玄倉)。光の加減でエメラルドグリーンやコバルトブルーにも輝く。「ユーシンブルー」と呼ばれる美しさがネットで話題になり、昨年から観光客が急増。町は二月、ユーシンブルーの商標登録を特許庁に申請した。 (西岡聖雄)

 玄倉ダム(堤の高さ一四・五メートル、堤の長さ三〇・五メートル、貯水量五万二千立方メートル)は発電用で、一九五八年完成。丹沢湖へ注ぐ玄倉川にある。面積は百メートル四方程度と小さい。観光地化されておらず、新緑や紅葉シーズンは、知る人ぞ知る絶景スポットだった。

 林道を歩くユーシン渓谷ハイキングコース沿いにあり、一般車は通れない。七キロ、二時間ほど歩く。長く真っ暗なトンネルも通り、懐中電灯が必需品だ。クマが出没する恐れもある。

 ネットで人気が出てきたため、町は昨夏、最寄りの玄倉バス停の横に車両五十台以上が止められる駐車スペースを設け、秋に整地した。週末は満車となり、観光バスも来るという。

 武田信玄の隠し湯と伝わる中川温泉やキャンプ場も周辺にあり、町はユーシンブルーの観光資源化と商業利用を目指して二月、観光関係者らの検討会をスタートさせた。落石防止などの安全対策にも乗り出す。

 町商工観光課の加藤哲太さん(26)は「なぜこんな色になるのか分からないが、ユーシンブルーで、世界から観光客を呼びたい」と、ばら色の青写真を描く。

 ただ玄倉ダムは現在工事中で、ユーシンブルーを拝める確率は低い。ゲートを開け、来年三月まで貯水しないためだ。管理する酒匂川(さかわがわ)水系ダム管理事務所によると、通常はダム底が見える状態。降雨で水量が増すとユーシンブルーになる時もあるが、雨量が多すぎると濁ってしまう。

 ダム以外では、玄倉バス停から歩いて十五分程度の玄倉第一発電所の上流二百〜三百メートルの地点にあるせきの水も、ユーシンブルーだという。

 玄倉ダムに貯水して青い水面が復活する来年春に向け、観光地化の流れも水かさを増しそうだ。