悲劇:深海でゆでダコ?海底火山の熱水噴出孔に集まる新種タコ発見
中米コスタリカ沖を探査中の研究チームが、水深3000メートルの深海、見たこともない紫色のタコが密集している光景に遭遇した。海底火山の溶岩が固まってできた岩場は、熱水が湧き出しており、酸素が非常に少なく、タコにとっては自殺行為だ。
不可解なタコの群れを発見したのは、アラスカ大学フェアバンクス校の地球物理学者チャールズ・ジェフリー・ウィート氏と、シカゴのフィールド自然史博物館の共同チーム。2013年から2014年にかけて、コスタリカから160キロ離れた太平洋の深海で、無人探査機を使って海底から高温の水が噴き出す熱水噴出孔を調査していた。
熱水噴出孔とは、地球の内部で熱せられた数百℃の水が湧き上がる場所で、この熱水にはマグマ由来の鉄のほか、銅や亜鉛などさまざまな金属成分が大量に含まれている。日本でも伊豆大島や沖縄本島沖の海底に存在し、その周辺からは金や銀などのレアメタルが見つかっている隠れた資源の宝庫だ。
231時間に及ぶビデオ画像を分析した結果、タコはすべて卵を抱いているメスだと判明した。ほとんどのタコのメスは、一生に一度しか産卵せず、卵がかえるとすぐに母親は死んでしまう。
これまでの研究で、水温が温かい環境だと、卵の発達が促進される可能性があると示されているが、コスタリカ沖の深海の水温は12℃余りと高くはないが、周辺海域に比べると、酸素の含有量が半分以下と少ない。そのため酸素欠乏が進んで、卵の発達はおろか、抱卵しているメスにも負担が大きく、ほとんど「自殺行為だ」という。
フィールド自然史博物館の学芸員ジャネット・ヴォイトさんは「姿形やサイズから、深海に生息するMuuscoctopus属の新種の可能性が高いが、この種のタコは通常、群れで集まりません。メスが守っている卵はどれも胚の発達が悪く、決して孵化することがないのに、なぜここで産卵したのでしょうか?」と頭をひねる。
研究チームの推理はこうだ。当初、卵を産み付けた岩場の海水温はそれほど暖かくなく、酸素もたっぷり含まれていたが、その後、火山活動など何らかの原因で熱水が噴出。しかし、一生に一度しか産卵しない母タコは諦められず、その場にとどまっているのだという。
「果たして卵から赤ちゃんがいっせいにかえり、タコの保育園ができることはあるのでしょうか?」
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