二日目の午前中、白衣の女性二人が病室を訪れました。年輩の方が「学生が実習のため入院中のあなたを看護するのでよろしく」と挨拶されました。可愛いこの実習生は後で聞くと岐大医学部看護学科の3年生で年輩の方は同教授とのことでした。
後日もこの看護科教授の訪問を何回も受け、学生さんには適時優しくフォローして貰い、なぜかVIP並みの扱いを受けることになりました。
午後には大学病院なので教授回診があるとナースさんが病室を回り、対象者に告げられました。そのまま待っていると催促に来られ、処置室前の廊下の椅子に腰掛けて待つよう促されました。回診というので病室を回られると勘違いしたのです。
椅子で待つ間、処置室を覗くと患者は診察用の椅子に掛け、上体を仰け反らせ診察中で周りを若い男女5~6人が取り囲んでいました。
回診中の担当教授は私が1年半、気楽に面倒を診ていただいて来た主治医の臨床教授でした。
案内誘導のナースさんに「○○先生は偉い人なんだ・・」というと、「そうそう偉い人、偉い人」。
自分の番が来たので入室すると昨日紹介された韓国留学生がいたので、「昨日お会いしましたね」、と声をかけました。先生には、「大勢おられますね学生さんですか?」というと、先生は「そうです。金の卵達です」と、いつもの調子で診察椅子に座らせ、甲状腺の腫瘍を触診する見本を示され、学生に「嚥下すると腫瘍が上下に動きます」、と私をモデルに実習を各自に指示されました。
韓国の留学生が真っ先に私の喉へ手を掛け積極的です。「片手で喉に手を当てた方がどうですか」、と余分なことを言うと、教授は「そうではありません。両手でこうして・・」とモデルを示され、「ゴッくんと嚥下して下さい」と指示されました。男女学生5~6人にやったらゴッくんが苦しくなりましたが、何とかモデルを努め、最後に今朝紹介された看護学生さんにも「この方が私の手術に立ち会ってくれるそうですから、やってもらって下さい」と、また余分なことを言い、看護実習生が最後に実習をしました。主治医の教授は終始いつもの物静かさでした。
午後には麻酔医の診断があるので3時に手術室前に行くよう指示されていて、午前中に看護学生とともに事前に場所を探検しました。
3階の手術室前廊下に掘っ立て小屋が建ててありそこで待つのです。3時が待ちきれず2時頃行ってみると、小屋の前でパソコンを前に事務担当の女性職員がいて1時間も早いといわれましたが、そのまま待つことにして、トイレに行ったりしていたら小屋に呼び込みがあり、そこではパソコンを見ながら、オペナースさんが待機していて、いろいろ問診されそれが終わると、手術室の隣部屋の麻酔医の診断でした。呼び込みがあり男先生に問診中、置いてきぼりにした看護学生さんが来て同室で診察を受けました。
先生は麻酔のパンフを交付され、「あなたは沢山経験しているようなのでよく知っていると思うが・・」と言いながらも、丁寧にやさしく問診と説明をされて、質問したのは「下半身麻酔は膀胱で2回経験し、大腸は脊髄くも膜下麻酔、肺は硬膜外麻酔だったと思います。私は覚醒が抜群にいいと言われました。喉は上半身麻酔というのは出来ないのですか」と、またも勉強です。Drは「喉の麻酔に背中からの麻酔は効かないのです。また上半身麻酔というのはありません」と優しかった。気管内挿管の実物や、歯を折る、欠けるなどの合併症の説明、歯の観察をされました。同意書を渡されサインして、後で病棟スタッフに提出を指示されました。「前に問題がなくても、今回も同じだとは限らないのが麻酔です」と付け加えられました。
前の病院では手術日前日の入院の時もあり、部屋に麻酔医二人が来て、ベッドに横に寝かせ背骨を丸めさせて麻酔の前日診察や説明でしたが、ここはやはり丁寧で徹底していました。