この病院には院内学級のほか院内図書室があります。広さも十分で書見台が二列あり、ノートに氏名と病室名を書いて病室へ借りてくるのも自由です。所蔵図書は文庫本を主体に病気の解説書や、古いが単行本など雑多にあります。数冊読んだ中に「甲状腺の病気」という1冊がありました。
甲状腺は全身の細胞の働きを活発にする、チロキシンなどの甲状腺ホルモンを分泌する。このホルモンが少なすぎると発育不全になるし、多すぎるとバセドウ病になって、眼球突出、動悸、頻脈などが出てくる。ホルモンの異常は血液検査で数値としてはっきり出てくる。
甲状腺の働きが弱まると、無気力、寒気、記憶力の低下、皮膚の乾燥、血中コレステロールの上昇などの症状が出る。橋本病(慢性甲状腺炎)は体の免疫機能が自分の甲状腺を敵とみなし破壊してしまう病気で女性に多い。昔、橋本博士が論文を書きドイツで知られ日本に逆輸入され病名になった。
甲状腺ホルモンの調節のしくみ 1、室温を感知する 2、エアコンを作動させる 3、暖かい空気を送る、部屋の温度を一定に保つに似ている。
1、脳の下垂体がサーモスタットの役目をする 2、脳の視床下部がTHSという物質でエアコンへの指令をする 3、喉にある甲状腺がエアコンの役目をする。という機能らしい。
甲状腺を全摘すれば、橋本病と同じで生涯にわたって薬で甲状腺ホルモンを補充、飲み続けることになる。アメリカは悪性、良性を問わず全摘するし、日本は手術では3分の1ほど残せばホルモン分泌は支障なしとされる。20年前の本(注1)と最近のネット情報に変りはない。
当初、診てもらった病院はアメリカ式だったので、転院して半葉切除の手術を受け、術後の検査でホルモン分泌に異常なし、と診断されたのは幸運だった。
インフォームド・コンセントは国立国語研究所が提案する外来語の言い換えで「納得診療」とされる。セカンドオピニオンは「別の医師の意見」と言い換える。これは大事なことで今回の入院手術の私の判断は適切だったし、治療も十分納得している。
昨日アップした亡妻の末期治療の病院提案の手術を実際に受けていたら、もっと悔やんだだろう。あのときは悩んで、在所の若嫁の姉さんの連れ添いで、浜松医大出の静岡県で消化器外科医を勤める遠縁の医師に意見を求めた。彼の回答は「病院に任せよ」だったが・・。
甲状腺がんは、放射性ヨウ素の被爆でも起こるため、東京電力福島第一原発事故で、こどもの被曝が心配されている。大人よりこどもが10倍も被爆吸収量が大きいからだ。
被爆で甲状腺がんが発生するのは4~5年後からで、福島県はこどもの甲状腺検査を行っている。「現時点では福島県民の甲状腺への被爆量はチェルノブイリよりずっと少ないとみられる。ただ、事故直後の放射性ヨウ素の影響は不明なので、こども36万人は生涯、甲状腺を検査していく」と、福島県立医大の鈴木真一教授(甲状腺外科)は言っておられる。(注2)
原発事故は大変な負の遺産を、福島県民に残したのだと憤っている。
(注1)「このがん この病院」朝日新聞科学部編 1990・7刊
(注2)2012・3.13朝日新聞 医療ページ「甲状腺がん 長期様子見も」