人種は存在しない -人種問題と遺伝学 | |
山本 敏充,林 昌宏 | |
中央公論新社 |
帯は大事だなぁと思った一冊。
帯に大きく示される
「集団内の多様性 > 集団間の多様性」
に内容が集約されています。
そのうえで、
人間の尊厳が等しいことは、
生物学的な秩序に基づくからではなく、
われわれの社会が生きのびるために必要不可欠な政治的選択であることを結論としています。
遺伝子研究の成果をただ並べるだけでなく、
優生学の歴史や、
人種差別に反対する人々の観点についての記述等、視点を変えながら、
現代を生きるわれわれが、遺伝についてきちんと認識する必要性を訴えています。
この本のテーマは、サブタイトルにもあるように、
人種差別と遺伝学のため、
遺伝的差異に焦点を当てています。
差異に対してどう捉えるか。
無意識のレベルにしまい込まれている前提認識はなかなか自覚できないように、
差別は無自覚に行われています。
ホモサピが生き残ろうと思うのであれば、
既にしまい込まれた、またはしまい込まれそうになっている差別意識、
つまり、すべての人間においてその尊厳は等しいと思わないという価値観を、
意図的に修正する場を設定する必要があるのです。
遺伝分野の授業を展開する時には、
差異に関する問題に配慮する姿勢はが最低限必要だと
改めて感じました。