かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 67

2023-07-02 16:56:26 | 短歌の鑑賞
  2023年版渡辺松男研究⑨(13年10月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)33頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター 鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


67 見付けたきもの見付からぬ倉庫にて物言わぬ荷に視姦されいき

       (レポート)
 「私が物を見る」ということは、同時に「私は物から見られている」ということでもある。倉庫に入って意識的にものを探しているときには、「物を見る」という私の主体が強く働いている。ところが、当のものが見つからないとき、主体は肩透かしを食らって、今度は一転、私は客体に転化し、「物から見られている」という意識が強く浮上してくる。物言わぬ荷にまじまじ見つめられて、まるで視姦されているかのようだ。    (鈴木)


      (当日意見)
★私もよくこういうことがあります。本当はあるんだけど、見つけることができなく
 て、向こうから見られている感じ。(曽我)
★こういう場面はけっこうある。特に人気のない倉庫だと怖くて、物に見られている
 感じがする。子供がまだものが言えない赤ん坊の時、ふたりきりでいたら、赤ん坊
 の視線がとっても怖いと思ったことがある。我が子なのに目の奥に異星人みたいな
 得体の知れないものが潜んでいて覗かれているようで怖かった。それとこの歌の感
 覚は似ている気がする。(鹿取)
★こういうのを歌にするのは難しいことだし、こういう経験を即、まあ即かどうか分
 からないけど、歌にしてしまうところが渡辺さんのすごいところ。(鈴木)

 

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