かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 112

2022-08-10 09:46:50 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の15(2018年9月実施)
    【〈ぼく〉】『泡宇宙の蛙』(1999年)P75~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子   司会と記録:鹿取未放


112 ミリにはミリのしあわせがあるとパパは泣くヤマトクモスケダニの結婚

         (レポート)
 ヤマトクモスケダニが結婚をしていてそのパパと子の会話であろう。「ミリにはミリのしあわせがあるとパパは泣く」とはミリ単位でとらえるほどの自分たち(ヤマトクモスケダニ)だが、身のほどの幸せがあるのだと子に告げながら泣くという場面。この「泣く」を仮に「言う」と変えるなら一首に味わいがなくなる。「泣く」が微妙で一首を支えていよう。(慧子)

       (当日意見)
★ダニのお父さんがダニの子どもに言っているんですね。結婚って生殖のことでしょう
 か?(真帆)
★生殖とは違うような。吸血するお母さんは吸血しないお父さんより強いんじゃないです
 か。だからパパが泣く。(鹿取)
★お父さんが息子に向かってよよと泣いているんですね。これを人間に置き換えてどうこう
 言うと臭くなるので、あんまり深く考えないでいいんじゃないかな。ミリの小さな虫がこ
 んな事を言って泣いている楽しさ。(A・K)
★よく読むとパパが子供に言っているとは書いてないので、泣いているパパを見て子供の立
 場で描写しているのかもしれない。以前にも何度か紹介しましたが、松男さんの評論で
 「ダニが(さびしさに)堪えていたら人は笑うだろう」ってあったけど、あれの実践版。
 でも、とっても愉快な歌。(鹿取)

       (後日意見)
 ダニは全世界で約二万種とも言われているそうだ。「ヤマト」はつかないのだがダニの分類の中にササラダニ亜目クモスケダニ科というのがあった。Wikipediaの説明によると、ササラダニ亜目は吸血はしない。森林などの土壌中に多くいて腐植を餌にしているが、菌類食のものもいる。どちらかといえば人間に益がありそうだが、松男さんの歌は人間のためになるかどうかでは差別はしないのだろう。ただ、吸血するダニのメスとその夫という図と、夫婦とも吸血はしないで腐った草などを食べているダニの図では「パパは泣く」の鑑賞が微妙に違ってきそうだ。「菌類食のものもある」ところから4首後の「生き方はいろいろあるよパパ行こう冬虫夏草菌を探しに」の歌に繋がっていくのかもしれない。(鹿取)

     (後日意見)(2022年8月)
 ヤマトクモスケダニの体長は0.7㎜くらいだそうだ。上位(後日意見)のササラダニ亜目クモスケダニ科の中にヤマトクモスケダニは位置する。森林などの土壌中に生息しているようだ。
(鹿取)


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