かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 312、313

2024-04-20 19:14:18 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子旅の歌42(11年8月)【キャラバンサライにて】
     『飛種』(1996年刊)P139~
     参加者:N・I、崎尾廣子、T・S、曽我亮子、藤本満須子、T・H、
        渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部慧子 司会とまとめ:鹿取未放
                  

312 うら若き駱駝は夢をみるといふキャラバンサライの胡桃の木下

      (まとめ)
 311番歌「キャラバンサライの廃墟に胡桃の木ぞ立てる机を置きて眠る人あり」を見ると、人間だけが涼しい木陰の机の上で眠っている図と読めるが、つづくこの歌では駱駝もその木陰の恩恵を受けているのだろう。上の句は短歌的独断かもしれないが、「うら若き駱駝」という設定が何とも魅力的である。涼しい胡桃の木下で若い駱駝の見る夢は、きっとやすらかで楽しいものであろう。(鹿取)

313 アナトリアの大地に砂の鳴る夜は冬近い駱駝の瘤も緊りて   

      (まとめ)
 冬近い沙漠は嵐がひどくなるのであろうか。そんな厳しい砂嵐に備えるように駱駝の瘤は緊っていると歌う。そのような説明を受けたのかもしれないが、アナトリアという雄大な名がゆったりとして歌柄を大きくしている。(鹿取)

    (レポート)
 「アナトリア」とは小アジアの別名。太陽が昇ることを意味し、ビザンチン帝国以来使われている。「アナトリアの大地」の自然現象から「駱駝の瘤」への小さなものへの絞り込みも見逃せない。(慧子)

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