かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 100 スペイン④

2024-09-22 09:12:44 | 短歌の鑑賞
2024年度版馬場あき子の外国詠11(2008年9月)
    【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
     参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放


100 震動幾山河震動させにつつオリーブの実を落す西班牙

      (当日発言)
★機械でオリーブを落としている音(藤本)
★米や小麦ではなく副食でもっている国。スペインという国を詠っている。(崎尾)

                             
      (まとめ)
 韻律が非常にいかつく、漢字も厳ついが、ダイナミックな印象を与える為の計算上のことである。震動を2回用いているのも、漢字の効果、リズムなど計算されているのだろう。結句をアンダルシアなどと産地の名前にせず国の名前「西班牙」と据えて大胆、豪快だ。スペイン中が轟きながら揺れているような時空の広がりを感じさせ爽快である。私の見たテレビ番組では手作業でオリーブの実を落としていたが、大規模の農園では機械を使うのだろう。一連を軽い歌で終わらせることの多い作者だが、ここはスケール大きく重厚に締めている。(鹿取)


      (レポート)
 (日の没することのない帝国)と言われた繁栄と凋落、独裁政権から民主国家への移行など。その変遷のいかなる時も「オリーブ」はみのり「オリーブの実を落す西班牙」であった。オリーブの収穫時の轟きを「震動」と詠い「震動幾山河震動させにつつ」と初句から3句までの破調と重複にスペインの激動とそれへの作者の深い感慨がこめられる。特に「震動」4音を初句に据える大胆さが一首によく働き、「つつ」で下の句へ繋がり「オリーブの実を落す西班牙」と作者の感動は一首を分けられない。一挙につかんでスケールの大きい一首に仕上げた手法に感服する。(慧子)


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