かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 40 アフリカ④

2023-08-18 13:54:58 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 5(2008年2月実施)
  【阿弗利加2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P165~
  参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、高村典子、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放

         
40 鏨打つ老爺の遊びに生れたる金いろばつた一つくだされ

     (まとめ)
 一種類しかない鏨を器用に扱って老爺が作る金いろのばった。金いろだから真鍮かなんかに金の色が塗ってあるのだろう。老爺のあまりに鮮やかな手業のゆえに、作者は感嘆し「遊び」と言ったのであろう。もちろん老爺は生活のためにばったを作っているのである。結句の「一つくだされ」という、民話のような言い回しに味わいがある。老爺のつつましい生活を重く受け止め、そこに老爺の誇りを見いだしているからこそ、労りのこころを込めて「一つくだされ」と言っているのだ。あくまで老爺との関係は対等である。老爺の作る「金いろのばった」は表題にもなっている重要な素材である。作る人びとにとっては日常的に見慣れたものであるが、作者は「金いろのばった」をアフリカの象徴としてこの一連の中にもちこんだのであろう。ただ、近年、このばったが大群となって穀物を食い荒らしながらアフリカの大地を移動し、農業に甚大な被害をもたらし、世界的な問題になっているのも事実である。(鹿取)
    



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