習近平・トランプの会合は、米中は良い関係であることをこれでもかと示すイベントとなった。さらに、25兆円分ぐらいの取引が成立した。
が、多くがMOU、つまりMemorandom of Understanding、日本語で言うところの覚書の調印であったために、そんなのは実効性がないとアメリカの主流メディアがトランプ叩きに使っている。
おもしろいね。
トランプ=習近平2500億ドル超の商談契約 拘束力なく不履行の可能性も
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/11/2500.php
2017年11月9日(木)18時21分
トランプ米大統領の初の訪中に合わせて成立した米中間の商談は、2500億ドル超規模に上った。ただ多くは拘束力を持たず、契約が実現するかどうかは別の問題となる。
普通、MOUを経て詳細を詰めて仮契約、本契約と流れるんだから、ここで実効性がないと騒ぐというのはどうなのそれって感じ。
そういえば、ロシアのロスアトムという原子力屋さんが世界中で原発の受注をしていた一昨年あたりも、米メディアでは、多くはMOUだ、あんなものは結局成立しないのだとかなんとか言ってましたが、その後政治的に難航しているところもあるけど、イラン、トルコ、インドあたりの重量級のディールは本当に着工してますがな。
中国に戻ると、
トランプ大統領と中国の習近平国家主席が署名式に出席し、米航空機大手ボーイング、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米通信用半導体大手クアルコムが調印を行った。
予想通り、ボーイング、GEあたりが来てますね。あと、ここには載ってないけどアラスカからの天然ガスの話もあったと思う。要するに、軍産と一部資源系のためにトランプは懸命だという話だし、中国もアメリカが何を欲しがっているか知っているから話しを持っていって、トランプの顔を潰さないってことでしょ。
その間、日本では安倍ちゃんのゴルフが~とか、日米同盟の重要性が~とかいう枯れたようなことを懸命になってメディアが掻き立てている。それを見た孫崎さんが、
日本の大手メディアはかつてのソ連紙のプラウダや国営テレビより酷くなったのでないか。公平を装いながら、安倍首相に都合の悪い事はカット。日米首脳会談の目玉はゴルフ。個人的絆を強めたと報ずるのに、安倍首相後方一回転事件はテレビ東京の他は報道なし。無料1時間
とおっしゃるのだが、私は、少なくとも戦後、日本の主流メディアがプラウダやソ連国営テレビに勝てたことが一度としてあったのだろうか、と言ってみようと思うな。
なぜなら、プラウダは、世界中の動きをソ連がどう見るかを分析して出してたわけでしょ。
だからこそ、世界中にソ連ウォッチャーという人たちがいて、その人たちが、ソ連は何と言っているんだ?というのをマジで理解しようとしていた。これって、重量級の役割というべきではないの? その過程に、ソ連国内向けに大量の嘘があったことは多分本当なんだろうけど、外国人にとって問題はそこではない。
日本のメディアの評をそこまで重要視していた、あるいは、している状況は、戦前には多少あっただろうけど、戦後はないのでは?
■ アメリカン・プラウダ
で、うちのメディアはもうプラウダだ、というのはアメリカでもここ数年何度も書いている人がいる。元CIAのアナリストで最近はずっとロシアを敵視するなという方向であちこちでお話しているマクガバーン氏などは、そういえば、ソ連はよく、bloodthirsty Wall Street(血に飢えたウォールストリート)という言い方をしていて、当時は、何を言ってるんだと思ってたけど、今となってはこれは本当だったかもしれないなと思うようになった、とコンソーシアムニュースにあった記事に書いていた。
アメリカのオールタナティブ系としてはかなり充実している言論サイトにUnz.comというサイトがあって、これを立ち上げた人Unzさんは、アメリカの主流メディアから排除されている視点や記事を掲載しようとしてこのサイトを立ち上げたと表明している。その中でご自身でアメリカの主流メディアについて分析していたのだが、そのシリーズのタイトルは、American Pravda(アメリカン・プラウダ)だった。
アメリカン・プラウダという壁をぶち破るしかない、という発想。
American Pravda: Breaching the Media Barrier
http://www.unz.com/runz/american-pravda-breaching-the-media-barrier/
要するに、ソ連にしてもアメリカにしても中の人間を誘導しようとしてナラティブ(ストーリー)を整えて行ってるわけですね。で、一方は一回終わったので、その過程で、大分風通しがよくなった。しかし、片方(つまり私たちの the West)の方は、途切れないどころか一極支配を狙っているわけだから、ますます誘導が酷くなっている、ということでしょう。中の人間にとっては、もう嘘だらけで気が狂いそうということで「1984」などが出て来る。
ここらへんは、アメリカン・コミンテルンを清算せよ、のパット・ブキャナンと通じるものがあるかも。
という具合なので、現状を指して、プラウダより酷いというのは既に新しい考え方ではない。だけど、それを日本で言って何がどうなるんだろうと思うのは、そもそも日本はプラウダほど「独自性」はあるのだろうかと思うから。
前にも書いたけど、現スプートニク(元ロシアの声)の編集者だったバビーチさんという人は、世界中のメディアの85%は the West のコントロール下にあるとソ連はみなしていた、とRTの討論番組で言っていた。で、現在はそれが 90%ぐらいまで高まっているとロシアは考えているようだった。(一極化は進んでいるわけですよ)
その後、RTというほんの小さなインターネットとケーブルを利用したメディアがこれだけアメリカの支配層から忌み嫌われ、ほとんど騒動にまでなっているのは、RTはよくやっているということだ、とプーチンが語っていた。これは、上のメディア占有率などを考えた上での発言なんだろうなと思った。
日本はこの巨大なアメリカン・プラウダの下流にいる。
■ オマケ
問題はメディアによるおおざっぱにいえばthought control(思想統制)、あるいはナラティブ管理なんだ、というのは、Unzさんたちのようなどちらかというとリパブリカンの方にもいるけど、もっと精緻にやっていたのはそういえば、チョムスキーなどのデモクラッツの方ではなかっただろうか?
それが一体全体なんだって、これらのいわゆるレフトの人々は大挙して、ロジカルに言えばロシアとの核戦争を望む方向に懸命になっているのだろうか?
この「リベラル」の浮かれムードを解体できるかどうかがアメリカの今後(ひいては世界の今後だが)のために重要って気がする。