プーチン大統領は昨日、セルビアを訪問していた。
ロシアのリーダーの訪れを歓迎していることが様々なシーンでよくわかり、それはどれも印象的だったが、ベルグラードで第二次世界大戦の戦没者の記念碑にブチッチ大統領と共に詣でる姿を見ていて、私は思わず涙目になった。
セルビアは、リトル・ロシアというあだ名が示す通り、歴史的、文化的、宗教的、民族的にロシアとの紐帯がとても深いところ。
だからこそ、ベオグラードがNATO軍に空爆された時に、名高い「プリマコフのUターン」が起こった。これはロシアがアメリカの属国となる道を止めると決意して立ち上がった事象と解されている。そこから今年で20年。
ミュヘン安全保障会議から10年、その前、プリマコフがNATOのベオグラード空爆を聞きつけ、向かっていたアメリカ行きの飛行機を大西洋上でUターンさせロシアに戻った1999年から18年でロシアはここまで来た。18年でここまででできるのだなと人材の優秀さと厚さに驚きもし、しかし、ロシアならずとも、これは出来ないことではないのだとわずかにしてもそこに希望を見る。
ミュンヘン安全保障会議から10年
惨たらしいユーゴ解体の解明の際には、NATOのみならずバチカンにも過去の行動について釈明する義務がある。
それはともかく、そうしてほどけそうになりつつもセルビアとロシアの国民間の絆は今も残り、あたりをドイツ系に囲まれコソボを切り取られ、今にも再度侵略されそうな中、ともあれ、なんとかかんとか「~の春」的な出来事を起こされずに来た。
そういう間柄なわけだが、グローバリストのこぎたない先兵たる日経にかかるとこういう事態はこう描かれる。
ロシア、バルカンへの影響力死守 プーチン氏、セルビアに
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40159500Y9A110C1000000/
恥を知れと言っても無駄なのだろうが、他人の生き血を吸い、他人を破壊し、他人の暮らし方を断絶させることこそ彼らの望みという態度を止められない人々なのだなと改めてわかる。
そして、どうして日経を含むグローバリストがあれほどヒラリー&オバマを必要としていたのかもわかる。仲間だから。
前にも書いたが、ヒラリーvsトランプの選挙は、トランプがどういう奴なのかが問題ではない、ヒラリーを追い落としたことが重要だった。この悪魔にすらなれない愚か者のグローバリストグループ、99%の人類の敵を追い落としたことは大変に素晴らしい出来事だった。
そしてこれらすべての出来事にとって大きな意味を持ったのは、2007年のミュンヘンの安全保障会議。
ミュンヘン安全保障会議から10年
そして、第二次世界大戦終結70周年の記念の年となった2015年も重要だった。ここで、例年モスクワで開かれるヴィクトリーデーに、中国の習近平国会主席が出席した。
英米が徹底的に無視したり、唾棄したり、文句たらたらの大騒ぎをする中、中国軍、インド軍が儀仗兵を出してロシアと共に対ナチスの戦争の終結を記念した(他にも参加した国はあります。例えば上のセルビア軍)。
この意味は何だったかというと、冷戦中英米がまきちらした、第二次世界大戦はアメリカが一人でやった戦争みたいな嘘八百を粉砕することが一つ。
そして、もう一つは、今後の世界において露中インドは互いを敵として戦争するような、要するに使われる存在にはならない、という意味だった、最低でもその萌芽だったと考えるべきでないかと思う。
メディア上の真実・地上の事実
5月9日のビクトリーデーについて、NHKは、
「ロシア戦勝70年軍事パレード 欧米首脳欠席」という記事を出したわけだが、ユーラシア3国が並んで出席していることの意味を決して追っていない。
また、実に困った人たちではあるわけだが、この時ドイツは、英米のメディア的には、ナチスを反省みたいな当たり障りのない話が主流だったが、実際には、
その上、ソ連にとっての本当の敵であったドイツは、この間も書いた通り、外相はスターリングラードに詣でるし、大統領はソビエト戦士の墓に詣でるし、明日はメルケルがモスクワに行くわけね。
という状況だった。大統領、首相、外相が揃って行動して誠意を見せていた。ウクライナ侵略中に何を言ってんだと言うのは簡単だが、長い目で見れば賢い。なぜなら、ドイツ人は2015年に生きるだけではなく、この先も、どんな政権になろうともドイツ人はドイツ人だから。
そして日本の安倍ぽんは、ポツダム宣言はよくわかんないなどと答えてこの年を終えた。
■ 「第二次世界大戦の結果を認めらない唯一の国」
そこから3.5年。日本はロシアに
第2次大戦の結果を認められない唯一の国
と言われ、かつ、
ロシアとの関係改善は、中国を抑止する、containするのにいいんですよと自民党が言っていることをロシア外務省にとがめられる。
翌日、中国外務省の広報官の華春瑩さんは、
中国とロシアとの関係がいかに良好かを語り、さらに、この2国間の関係は他国の模範となるものとまで言っている。
China praises bilateral relations with Russia
このへんは、応答しあってるでしょう。
さらに今年は1949年から70年なので、ソ連→ロシアと共産中国との国交樹立70周年ということになり、いろいろと行事があるでしょう。その前に、三一、五四の話も出て来るはず。
というわけで、順調にいわゆる戦後秩序、あるいは冷戦期の嘘だらけの世界認識は壊され、ある種1945年あたりに戻ったと考えてみてもいいのかもしれない。
■ 渤海湾と黒海方面
だからこそ、渤海湾の朝鮮は南北で戦争するんじゃなくてさ、という方向を模索していると考えることもできるでしょう。
また、黒海側のトルコは、ソ連の影響を恐れて朝鮮半島の紛争に兵を出してNATOに入るという成り行きだったものが、ほどけてしまっている。
トルコは、ソ連の影響を恐れたとよく書かれるが、具体的に何を思っていたのかというとおそらくクルド問題ではないのだろうか。なぜならスターリンがクルド人国家を作ったから。すぐに潰されてしまうんだが、しかしこれってよく考えるとスターリンを悪者にしつつ作っておいた方が後世にとってはよかったんじゃないかという見解も成り立つでしょう。だって民族として人数がしっかりいるんだもの。
で、現在、シリア北東部ではロシアの仲介でクルド集団がシリア政府管轄下に入った。ロシアはスターリン時代とは比べものにならないほど歓迎されてそこにいる。
従って、トルコは自身の国家としての統一、安全を考えたらロシアと敵対できない。
一体この50年は何だったのだ状態ではなかろうか?
■ そこで日本
いや、これがわからんのですわ(笑)。
一体全体何をしようとしてこんなにへんな人たちになっているのか、理解できない。
しかし確実に一つ太い線はある。それは、ラブロフが言う通り、第二次世界大戦における敗戦の否認でしょう。これは白井聡さんが名高い「永続敗戦論」で見つけてくれた「敗戦の否認」というアイデアととても似てる。
ただし、白井さんはそれを対米従属との観点でのみ考えてらっしゃるが(お若いから?)、事態はもっと複雑かつ深刻で、大日本帝国(現在はv.2)が否認しているのは、1945年に至る25年ぐらいの期間の総まとめとして敗戦したという事実でしょう。
シベリア出兵、三一・五四運動・関東大震災問題、関東軍の対ソ敗戦(ノモンハン&1945年8月)が、どうにもこうにもタブー化、曲解化されているのは否認したい当のターゲットだから、ではなかろうか。
そしていつしか、連合国に負けたことをアメリカに負けたと言い習わすうちに、アメリカの姿しか見えなくなった。
別の言い方をすれば、片面講和という綱渡りによって獲得した、ソ連、朝鮮、中国との対話を拒否したままの状況が心地よいのでこのままにしたい、という幼児的な執着が異常に強いとも言えるのではないかと思う。
だんだんまとまってきてうれしいが、どうするのこれと考えると暗澹とせざるをえない。
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いやマジで、目先の利益だけで適当なことを言ってきたことの総決算しなよと中露から言われてるのに、ず~っと無視してここに来たという感じ。