オリンピックが終わったら戦争だ、4月には戦争だ、6月には戦争だと朝鮮での戦争を期待する人が日本には信じられないほど多いわけだが、ともあれ南北はお話ししている。
直後に米が追加制裁をしたというのは、北にとっては打撃だろうが、今は軍事ではないという示唆と読むこともできる。
北朝鮮の金正恩委員長、韓国特使団と会談-最高指導者就任後で初
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-03-05/P543HQ6JIJUO01
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は5日、韓国の文在寅大統領が派遣した特使団と会談した。韓国大統領府が発表した。2011年に北朝鮮の最高指導者となった金委員長が韓国政府高官と会談したのは初めて。
中国は、こうした動きを歓迎とのコメント。
China welcomes post-Olympic peace mission as S.Korean delegation visits Pyongyang
By Bai Tiantian Source:Global Times Published: 2018/3/5 23:13:40
http://www.globaltimes.cn/content/1091927.shtml
研究者によれば、訪問自体はポジティブな動きだが、北朝鮮も米国も核問題について態度を変えるような気配はないとのこと。まぁ現時点ではそうでしょうね。
"The visit itself is a positive sign in improving ties between Seoul and Pyongyang. However, the US has shown only limited support for contact between North Korea and South Korea, and neither the US nor North Korea is willing to budge on the nuclear issue, which is at the core of any talks," Lü Chao, a research fellow at the Liaoning Academy of Social Sciences, told the Global Times on Monday.
一方、ロシアと北朝鮮の間では、
朝鮮国家科学院恩情分院とロシア科学アカデミー極東分院が、科学協力に関する議定書に調印という出来事があった。何をするのかわかりませんが、ちょっと気になったのは2018年から2020年の協力関係という2年間の合意というのは何か意味があるんだろうかという点。
http://www.naenara.com.kp/ja/news/?0+101089
またロシアと韓国については、両国間の関係は上昇しているけどまだブレークスルーってほどじゃないんだよね、といいつつ韓国とロシアの間で経済協力のコンサルティングをする機関を設置するようだ。
Major headway in Russian-South Korean ties, but no breakthroughs yet, senator says
"I won’t affirm that our approaches to modern world problems fully coincide, but I’m sure that the interests are the same. This interest is that the world should be safe, stable and be free from mutual threats and risks of military conflicts, what is especially vital given our common neighbor North Korea," he said.
http://tass.com/politics/992809
韓国からの記事も同趣旨で、こっちの方が具体的。
S. Korea, Russia form consultative body for economic cooperation
http://english.yonhapnews.co.kr/news/2018/03/05/91/0200000000AEN20180305010700320F.html
この2国の貿易関係は現状では互いに小さいけど、北東アジアを念頭にした「9つの橋」構想を通してエネルギー、電力のネットワークを作っていくというのは結構な発展可能性がある。
韓国は、折からの西側の対ロシア制裁クラブに一度も入ったことがないので、この状況を有効に使えればいいですね。(結局このクラブに入ってるのが、the West の下僕みたいなもの)
で、ロシアのマトヴィエンコ連邦議会上院議長が韓国を訪問する可能性があると、極東を担当してるコサチェフが言っているので、これはちょっと注目。この人なぎらけんいちに似てると常々思っているので写真も付けちゃう。
■ ミサイル問題の示唆
状況は極度の緊張ではなくなってはいるものの、去年から今年にかけて極東情勢は一つ変わっているとはいえる。それはこの問題をきっかけに、THAADとイージスアショアが韓国と日本に設置されたこと。
それに対してプーチンは、そんなもの無駄だ、と世界規模の大声を上げた。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
その反応はいろいろあるんだけど、それはそうなんですわ、最初から、という声も結構あってなかなか興味深いここ数日ではある。
つまり、これってレーガン政権が軍産におもねってはじめた、スターウォーズ計画とかいう軍産の営業品目の話だから、最初っからそんなの金儲けのネタ以外の何物でもないので、ロシアが気張って騒ぐほどのことはないという説。
ことはそう簡単ではないとは思うが、でもまぁそれも含めて、MADが呼び起こされたという効果は確認できると言っていいと思う。多くの人は忘れてる、または若い人は知らないわけだし。
さてそうすると、このそこはかたとない効果は極東情勢にも及ぶ可能性はある。
北朝鮮はソ連があったころは、こうまで武装する必要はなかった。逆にいえば、明示、黙示を問わず、北はソ連の核の傘の中だったということ。
ということは、北朝鮮とロシアが同盟したら、プーチンが言った Russia and allies の同盟の中に北が入る、という考えも今日考えられないこともないんだな、ということでは? 形態はともかく。
この間は黒海・地中海方面がまず最優先だろうと思ったけど、誰もそれに限るとは言っていない。
■ 今日的意味
プーチンはこれから選挙があるからこんな大きな話をしたのだ、と多分西側メディアは書くだろうが、そんなことをしなければ勝てない選挙ではないので、ここでどうしてこの核・ミサイル戦略をこうまでフィーチャーしたのかは考えておく必要があるでしょう。
多分、シリア、イランを本気で攻撃しようとしている奴らがいる、という可能性を否定できないからでは?
それを思わせるのは、プーチンはロシアの核ドクトリン以上のことを言ったから。
ロシアの核ドクトリンはロシア連邦に対する攻撃に対してロシアは報復する、という話なのだが、プーチンは、ロシアとその同盟国と言った。ロシアにはもはやワルシャワ条約機構はないけど、多分、集団安全保障体制CSTOの加盟国(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)とシリアを指すのではあるまいか。
プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD
よく考えると、北と中国との間ではそういう関係になれなかったということなんだろうなとも思え、それも興味深い。思えば去年、北朝鮮が中国に悪態をついていたわけだし、どうも遺恨はあるんでしょう。
また、南北問わず朝鮮は中国と1:1になることを恐れているというのは一般的にあると思う。そこでロシアが入る、と。この地域は露館播遷あたりに戻ってるのか、と言いたいが当時と劇的に違うのはチャイナが大きくなったことと、日本が単独プレーヤーでないこと、か。
ロシア外務次官韓国訪問&露館播遷
■ 中・朝・露関係
そういうわけで、今後は中・朝・露の関係をどう安定的に拡大強化するのか、というのも課題ではあるんだと思う。そこで、2017年秋、北朝鮮のリ・ヨンホ外相がロシアを訪問したあたりでTASSと行ったインタビューを思い出してみる。
北朝鮮外相とTASS通信のインタビュー
リ外相は、
・核兵器開発によってアメリカとバランスできた、この状態に満足している、
・こういう強い隣国がいることはロシアの利益に合致するものと信じる
と言っていた。
My country today is attaining a victory and acting as a worthy counterbalance to the United States, which refers to itself as the “only superpower.” I believe that having such a strong neighbor by its side quite agrees with Russia’s interests.
http://tass.com/world/970085
この時も書いたけど、実際それは一理ある。
対して、このインタビューの2週間ほど前に中国には非常に辛辣なことを言った。
ロシアには特に苦情を述べていないし、むしろ互いに理解していると強調しているようなことを北は言っているが、中国に対しては2週間ぐらい前、長い間こうやって俺らがかんばってたことを忘れて、お前らと来たらアメリカに譲歩しまくって恥ずかくないのか、お前らがはじめて核兵器を持った時誰が最初に賛成したと思ってんだ、キッシンジャーの訪中を白旗をあげていると言ってやたのは誰だか忘れているのか云々、みたいな物凄い檄文というか特大の非難を中国に向けていた。実際これもそうでしょう。現在の中国は強くなったけど、混乱していた時代のことを考えると北朝鮮の言い分には理はある。
これもまったくそう。
北朝鮮が倒れなかったことの第一の利益者は中国なんだと思うんだな。ロシアでも被害はあるだろうが、場所的には中国側の方に被害は大きいと思う。つか、そういう場所だからこそ日本は朝鮮半島の上の方から満洲を欲しがったわけだし。
どうなるか先は結構長いと思うけど、いずれにしてもロシアには朝鮮半島で再び戦争を起こさせるような、それを容認するような気配はないようにみえる。妄想の多い世の中でこの正常な感覚がわけても好ましい。
■ オマケ
北朝鮮による日本の「安倍一味」(彼らは最近こう呼んでいる)に対する批判はずっと激烈。2月27日のネラナ(http://www.naenara.com.kp/ja/news/?0+101072)はこのように述べている。
われわれの「脅威」を口を極めて世論化して自分らの醜悪な政治的野心と再侵略野望を実現してみようとするのが、対朝鮮対決狂信者である安倍一味の卑劣な下心である。
一触即発の戦争の危険が徘徊(はいかい)していた朝鮮半島に和解と平和の気流が流れることを一番快く思わないのがまさに、日本の反動層である。
敗北以降、こんにちまで夢見てきた「戦争が可能な国」に向かって軍国主義馬車をヒステリックに駆り立てる名分と口実を失うようになるからだ。
否定できないのが辛い。
でも多分、一番は韓国の一部じゃないかと思うので、日本の支配層は二番ではないかと思うのだが(笑)、どうだろう。でもでも韓国のKCIAとか財閥の一部とて、自分んちが戦争になるようなことまで許容する気はさすがにないから、やっぱり日本なのか。
ここもすごい。
(安倍一味は)わが民族に働いた希世の罪悪に対して謝罪する代わりに、再侵略の刀を研ぎながら狂奔している日本の反動層こそ、われわれの千年来の敵であり、日本社会の不幸の禍根であり、アジアと世界平和の敵である。
どうしてもこの大げさな言い方を読むとまず笑ってしまうんだが、しかし、笑ってる場合じゃなくて、やっぱり国内でこのぐらい言う集団も必要だと思うな。日本のエリートじゃないエリート層は一体自分が何をしているのか、二手、三手先の周辺環境を考えながら判断するような人たちじゃないですから。