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100年越しのプロジェクト「ウクライナ」

2014-05-12 16:29:08 | 欧州情勢複雑怪奇

ウクライナ東部の住民投票を巡って、EUがロシアを制裁する気らしい。

EU外相理事会が対ロシア圧力強化を決定へ、初の企業制裁も視野
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0DS03Z20140512

[ブリュッセル 12日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、12日にブリュッセルで開催する理事会において、ウクライナ問題をめぐって強硬姿勢を崩さないロシアへの圧力強化を決定する見通しだ。企業への制裁にはじめて踏み込む可能性もある。

どこが「強硬姿勢」なんだろうかと疑問に思うが、もうこの問題はロシアは何を言っても、何を言わなくても、何をしてもしなくてもロシアが悪い、制裁だ~、という仕様が決まっている。

ロシア当局者もそれを理解しているからこそ、外に出てこないんだと思う。

この話の肝は3月からずっと同じで、過去10年の政治動向から考えても緩やかな連邦制にしないとウクライナはまとまらないですから、キエフだけでなく東部、南部の代表も入れて憲法の書き換え案を作りませんか、というロシアの提案が一番合理的かつ現実的。

それを言葉上やる気を出したふりをして軍を投入し、実質的に拒否したのがキエフの傀儡政権。だからその代替案を出す必要があるのは、この政権をかついだEU&アメリカにある。が、ここがてんでやる気がない。モスクワが全面的に降伏するはずだ(キエフ政権を認めるはずだ)とずっと妄想を追いかけているに等しい。というか、そのうちロシアを制裁すればロシアが崩壊する、それだ!になっている。そもそも、政権奪取の意欲はあるが、ウクライナの統治をどうするのかまで考えてなかったんでしょうね。

■ ドンバスの意思表示

で、結果はどうなったのか。

いやぁ、面白いですね~とか思ってしまった。つまり、今回の住民投票の価値は、ドンバスは現在のキエフ暫定政権に従わない、という意思表示でしょ? 違法だ、不法だ、おかしい、茶番だと言いながら西側メディアがこぞってその意志表示を報道しているというのがなんとも皮肉。米国国務省なんかわざわざ実施前に、国際法違反だとかいう疑問の残る理屈をつけた声明を出して宣伝に一役買ってる始末。

(ロシア語の第二公用語化に賛成の比率)

ドンバスというのは、一番右端の部分。84と82のところ。

ここが重工業地帯であり、かつ、炭田地帯なので、ウクライナ国内で値段を付けるならセバストポリという黒海艦隊の基地を含むクリミア(先っちょの91%のところ)に次ぐお値段になるでしょうね。戦略的にはロシアはアゾフ海側の安定化に成功、でしょうか。

赤い方が収入が高い。つまりドンバス側は西部に比べたらずっと高いですよ、という意味。

この次にオデッサかハリコフが続いて、キエフ政権への納税拒否なんてことになったら、IMFは試算しなおさないどころか貸してどうする、となるのではなかろうか・・・。

でもそこまで行かなくても、キエフ政権は東部を掌握していないことが表現されたわけで、そうなると、5月末のウクライナ大統領選挙でどうせ親欧州派が勝っても、その際に、キエフの一存で進めることはできない。強硬に出たらドンバスは独立へと向かいます、と言いだす。つまり今回の表明はそのための橋頭保の構築ではなかろうか。

一旦侵略させて、敵の補給ラインを伸ばして、自軍有利にした後で戦いを再構築する、ってまるでロシア軍の戦いのようだ。軍事だけでなくメンタリティまでそうなってるのか。

■ 東部に進軍する気はない、の意味

ロシア当局はずっとウクライナ東部に進軍する気はないと語っている。それを日本を含む西側は、クリミアのことがあるからわからない、ロシアは襲って来る、大変だ~と語って来た。NATOなんかこれ幸いと全然方向違いのバルト三国に兵を出して訓練させたり、こっちもこれ幸いとルーマニアあたりに米の巡洋艦が長らく停泊していた

しかし、ウクライナ東部に軍を入れる気はない、制圧する気はないとはどういう意味だったのかをもう少し考えてみるべきだったのじゃなかろうか。

それはつまり、クリミアを除いた部分のウクライナは、EU&アメリカがクーデターまで起こして政権を奪取したんだから、まずはどうぞやってみれば、という意味でしょう。

ところが、ガス代問題が毎月発生しているのでもわかる通り、どうやらEUも本腰なんか入ってない。4500万人を治めるには知恵もお金も必要。革命で大変なのはその後なのに何のケアもなく、従わないものはテロリストだぁと一般人を砲撃する革命政権を喜ぶニューヨークタイムにガーディアンというとんでもない事態が現状なのだ。

ロシア当局者は、なんせつい20年ぐらい前まで同じ国だったわけだから、ウクライナの行政がどうなっているのかよく理解しているんでしょう。ソ連時代の「慣性」「惰性」で統治されているだけで、新しい統治モデルを推進するような勢力は存在していない、つまり屋台骨はないと見切っているのでは?

ということは、今後EU&アメリカが大金を出して人と知恵を出してウクライナを整備しようとしない限り、ウクライナの人心はキエフに立てられる政権から離れる。いずれにしても混乱する、対策はそこでしよう、という感じだと思う。今どんなに建設的なことを言ったって、ロシアが介入してくる、怖いぞ、来るぞ~の大合唱になるだけだし。

■ 100年越しのプロジェクトは崩壊するのか

ウクライナで騒ぎが起った頃、私は結局これは23年前冷戦が終結してソビエトが崩壊した頃から、アメリカ&EUはいつかウクライナを取ってやろうといろいろ仕組んできたんだなぁ、ぐらいに思っていた。

しかし、その後インターネット上で交わされた議論を読むうちに、これはもっと古いプロジェクトなんだなと考えるに至った。昔から不思議だったことのパズルのピースがあってきた、という感じさえしている今日この頃。

1900年ぐらいにウクライナなんて地域を独立的に考えている人々はどこにもいなかった。それがボルシェビキ政権あたりから勃興してきて、レーニンが東部をくっつけて、ソビエトがウクライナという行政単位を作っていくにつれて、ウクライナというunity(一体性)が徐々に作られていって、そのまま共和国として独立した。

その手段として、ウクライナ語が使われ、独立後はウクライナの歴史なるものが遡って作られた。(この歴史観があまりにもおかしいために、私を含めて世界中の多くの人々がこれは尋常ではないと興味を持ちだす)

しかし、どうもこれだけ時間をかけても全面的に成功したとは言えなかった。それどころか、今回の騒動でこの100年越しのプロジェクトは失敗に終わりそうな気もしてきた。来年には「ウクライナ」がどうなっているのか、誰にもわからなくなってきた。ボルシェビキ政権、特に第一世代とは何者なのかの理解も進むんじゃないかと思う。

歴史認識って大事です、ほんと。


■追記

ウクライナ危機をどうやって終わらせるのか/キッシンジャー

今思えば、3月上旬にこう発言したこのおじいさんが一番よくわかっていた。ウクライナをNATOに入れないとロシアに約束して、クリミアをくっつけたままのウクライナを守れ、という意味だったんでしょう。そうでなければウクライナを奪取するという100年プロジェクトの意味が半減するじゃないか、ということでしょう。

■追記 2

Ukraine Vote on Separation Held in Chaos
分離を巡るウクライナの投票、混乱のうちに行われる
http://www.nytimes.com/2014/05/12/world/europe/ukraine-referendum.html?hp&_r=1

NYタイムズの記事。でも、まるでものすごい混乱の中で少数の人がいやいやながら不法な投票をしたみたいな記事になっているんだけど、コメント欄でかなりぎっちり否定されている。

BBCも住民投票反対ではあるけど民衆が並んで投票している、大混雑だったことぐらいはフェアに報道してるよ、とか、投票自体が法的に意味がないとしてもこれは政治的な意思表示なんだからその部分は認めないとおかしくないか、投票用紙に書いてある文面が曖昧だっていうけど、そういう問題じゃないでしょう、意志表示なんだから、暴力におびえて投票したのは本当でしょ、キエフの暫定政権が武装した人を送り付けて投票妨害してたんだから、等々。

混乱しているのはNYタイムスとこのクーデータを賛美した一派だ

■ 米国務省の発言が楽しみでならない

さあ、次はケリー、オバマ、そして、あの飛び切りおかしなサキ報道官が何を言うのか予想しよう!

1. ロシア政府は責任を持って対処すべきだ(外国なのに?)
2. ロシア政府は住民投票を制止できなかったことに責任がある(介入して強権を発動してよいと?)
3. 住民投票はまったく無効。いや、国際法違反である

(国際法に違反する住民投票というアイデアを捨てた方がいいのではななかろうか、米国務省・・・。住民投票のみで分離を決するならば、それは国家の領土の一体性を尊重する観点から、国際慣習的に直ちに認めるわけにはいかない、ぐらいの考えが妥当ではなかろうか?)

4. 21世紀にあって、国家の領土的一体性を侵害するような住民投票は認められない。(え?)

5. 武装集団が存在する中での住民投票は一般に無効である。(アフガニスタンとかイラクじゃ、だいたい武装集団が見張ってるけど?)

 


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