DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

トルコの原発とNATO黒海拡大妄想

2018-12-04 16:53:46 | アジア情勢複雑怪奇

トルコの黒海側で日仏で作ろうとしていた原発はどうもダメっぽいとは既に半年以上前から言われていたのになぜ今なのだろう、など思った。

トルコ原発、建設断念へ 三菱重工など官民連合

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3849940003122018MM8000/

政府や三菱重工業などの官民連合がトルコの原子力発電所の建設計画を断念する方向で最終調整に入った。

とか思っていたら、重工は俺が言い出したわけじゃないと言っている模様。

三菱重工「当社の発表ではない」 トルコ原発断念で

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38507320U8A201C1EAF000/

 

なんですかね。

 

しかし、いずれにしても多分ダメなんじゃないですかね。つか、これは2つの面から考えるべきじゃないかな。

(1) フランスというNATO諸国が黒海に軍事施設を作ろうという話と同じだ

という話と、

(2) フランスの原発に対する信頼感の問題

で、(1)については、だってこういう場所なんだもの。黒海のクリミアの真ん前ですよ。

スィノプ原子力発電所

 

スィノプと書いてますが、世界史の日本語表記では、シノープの海戦で名高いでしょう。

この海戦は1853年に、ロシア帝国 vs オスマン帝国で行われたもので、ロシア帝国が圧勝する。そしてこの圧勝を、英がロシアの虐殺だ~と派手に報道して、イギリスが軍をクリミアに出すことを可能にした。ロシアと英仏の因縁の地でもあり、また、英が報道を使って騒ぎを大きくして侵略を正当化する初期のケースとも言える。「クリミア戦争」とか言うけど、これって単なる英仏によるロシア侵略。

 

■ 原発そのものの問題

フランスの原発がどうも信頼されていない感じがそこはかとなく見えるというのは、前にこのへんでまとめた通り。フィンランドでミソつけたあたりがピークだったような。

ハンガリー、新規原発着工にEUがゴーサイン

2017-03-08 12:43:17 | 欧州情勢複雑怪奇

 

■ 新規着工は圧倒的にロシアが多い

で、現在の世界で原発の新規着工件数はこんな感じ。これは今年の8月に the Economistが出してきた。もうダメポなのかな(笑)。

Russia leads the world at nuclear-reactor exports

https://www.economist.com/graphic-detail/2018/08/07/russia-leads-the-world-at-nuclear-reactor-exports

黄色がロシア、濃いブルーが中国、紫がフランス。紛らわしいけど薄いブルーが米でこの2基は中国で作った2基だと思う。

 

 

どうしてこうなるのか。

いろいろ理由つけて報道されてるけど、根本的に、原発みたいな軍が管理するようなものを安易に西側に預けたくない、と発想しているのではないのだろうかと思ってる私。

特に、スノーデンがいろいろ言ったことから考えても、西側の中には恐ろしい人々がいる可能性はとても大きいでしょう。そんな面倒になんで巻き込まれないとならないの?と考える人たちがいたとしても不思議ではない。

 

■ 地政学的事情変更ともでいうべきか

で、日本が原発を外に売ろうといいだしたのは安倍時代みたいに思われてるフシがあるけど、もっと前からでしょう。トルコの原発だってフランスのアレバと日本の三菱重工が組んだ合弁会社ができたのは2006年かそこら。こういうものは1年でできたりしないので構想は遡ること数年前と考えるべきじゃないですかね。

で、何を考えていたのか。そりゃ、NATO勢力の黒海進出では?

それって、あれ、他にもあった。そう。ウクライナをNATOに入れることによって、黒海にはりだしたロシアの名高い黒海艦隊ごとNATOに入れよう、具体的には、

NATOに入ったウクライナのクリミアに対する強い権限を利用して、ロシアを「ウクライナのクリミア」から追い出そう、

という話だったんだろうな、ってことです。

ウクライナでオレンジ革命があったのが2004年。このへんからずっとウクライナはロシアの黒海艦隊の土地を貸さないのへちまのと言い出し、ロシアを悩ませる。その間、アメリカの各種のNGOはクリミア半島に張り込んで、住民にNATOは怖い組織じゃないです、EUに入りましょうキャンペーンを繰り広げる(CFRで堂々とポッドキャストになっていたのを私は2008年秋に聞いた。)

2014年2月、ロシアがソチ五輪をやっている最中にキエフのマイダン広場が騒然とし、ついには、民主的に選ばれ東部を基盤としてゆるぎない支持を持っていたヤヌコビッチ大統領が追放され、米英主導のギャングにウクライナは乗っ取られる。

しかし、事態の進行に注意を払っていたクリミアのセヴァストポリ住民の意思と行動力によって、2014年2月を持ちましてこのプランは崩壊いたしました。プーチンの侵略が~とかいう空しい騒ぎをいくらしたってもうダメ。

また、2015年9月28日のプーチンの国連演説以来の、ロシア、シリア、イランの各軍と現地住民の奮闘により中東から黒海、東地中海全部にコントロールを及ばせようという西側合同プランも終了いたしました。

さらに、2016年7月のトルコのクーデター失敗事件により、トルコの西側との紐帯は細くなり、地域プレーヤーとしてのトルコが新たに確立されることになりましたのでご承知おきください。

みたいな感じですかね。あははは。

 

多分、北方領土交渉も実はこれと同期した、東西挟撃プロットの一部でしょう。西側が何を狙っているかというと、千島列島に日本を割り込ませることによって、オホーツク海への入り口を国際化する≒米or NATOが入れるようにする、ってこと。日本は要するに、ただの先兵。

黒海もどうにかしてソ連/ロシアを地中海に出さない or 黒海内の力を削ぐってのが冷戦中からのテーマ。現実には、モントルー条約があるから沿岸国でないところの軍艦をそうたくさん入れられない。入っても制限がある。これを突破するために黒海内のブルガリア、ルーマニアをNATOに入れコロニーにした。なんとかしてここを唆して黒海であばれてもらいたいわけだが(笑)、ブルガリアや基本が親ロシアだし、ルーマニアも別に脳みそがないわけではないので、なかなか難しい。

 

ということだったわけですが、そんなことに気が付かないロシアではないって話だし、トルコもいつまでも東西挟撃作戦だのへちまだのにつき合わされていられっかよ、となって、それならロシアと対等の立場で一緒に黒海をマネージする枠組みの方がはるかに将来性あるよな、となったと。

トルコストリームをロシアと一緒に作ることによって、トルコはロシア産ガスのヨーロッパ向けのハブになるわけだから、通過料で儲かるというのもおいしい。

 

で、トランプの登場というのは、これらの失敗に対する敗戦処理であるはずだったと思うわけですよ。ところが2年間グダグダでどこもかしこも、単純にじり貧。

この2年間の、イギリスMI6あたりとか、フランスの中東でのぐじゃぐじゃなんかはここを整理できない、諦めきれない人々による抵抗なんだろうと思うな。だからもう、みっともないこと甚だしい。

しかし、世界制覇チームの野望は大きく意味不明に自信満々なので、ダメになるぐらいならみんなで死のう、みたいな感じになる恐れもあるので怖い。

 

■ ASTRID凍結

宗純さんのところを読んだら、フランスがASTRID(高速実証炉)開発を凍結すると発表していたんですね。

フランス政府は2019年で研究を中断し、2020年以降は予算を付けない意向で、事実上の研究開発の中止となります。

これまでフランス政府は2019年までに10億ユーロ(約1200億円)を投じ、2020年代半ばまでに建設可否を判断する姿勢を示していましたが、建設コスト高騰のため2018年6月に計画の縮小方針を日本側に伝えていました。

https://buzzap.jp/news/20181129-astrid-france/

 

France reviews fast-breeder nuclear reactor project

https://www.reuters.com/article/us-france-nuclearpower-astrid/france-reviews-fast-breeder-nuclear-reactor-project-idUSKCN1NY27A

 

で、高速炉を持って動かしてる唯一の国がロシアです、と上のロイターの記事にもあるが、日本ではこれを言いたがらない。面白いぐらい言いたがらない。日本の報道の中では原発の話はロシア抜きで、というのが何かどこかで合意されているか強制されているとしか思えないほどだというのは前から書いてる通り。

Russia is the only nation to have working breeder reactors, which can burn spent uranium fuel, plutonium and other nuclear waste products. 

 

それはともかく、総合して考えるに、ここ10年近く妙な感じだったフランスの原発産業または原発開発の退潮ぶりが明らかになった、ということでしょうか。そして、10年ぐらい前に既に気づいていた欧州勢(特にドイツ)をよそに日本は東日本大震災以降もお付き合いをしていたが、どうも本格的にダメポになった、といった成り行き?

 

■ 関連記事

もんじゅの次は「新もんじゅ」

2016-09-21 21:27:23 
 
 

対ロシア制裁が見せてくれるロシアの多段階対応能力

2017-07-29 17:53:25 

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 差別主義的な実に差別主義的... | トップ | フランス、燃料税の増税6ヵ月... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
西側原発村の退潮 (ローレライ)
2018-12-04 17:40:12
西側原発村の退潮はイランの原発がドイツ製からロシア製に変更後ハッキリしている。イラン原発はアメリカのウィルス攻撃をロシア軍が凌いだ事件後ロシアの原発の宣伝となった。スノーデンに告白は西側技術のトロイの脅威を宣伝した。
返信する
日本人のメンタリティーが心配 (ブログ主)
2018-12-04 18:48:15
ローレライさん、

そうなんですよ、実に。要するに新規着工がなぜロシアなのか、っていえば各国は安全面でもサポートお願いしますね、という意味でロシアを選んでるわけですよ、まず間違いなく。テクニカルだけでなく。

これってつまり米(or イスラエルを含む西側)は狂ってる場合が多いと言ったも同然なわけです。

で、ほぼ100%西側こそすべてと思って生きてきた日本人はどうなるんだろうとそこが心配。まぁ、見なかったことにするという伝家の宝刀もありますが(笑)。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アジア情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事